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63.焼きもち

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「さっきの授業中もあの2人を見てたよな」
「宇都宮…」
「気になるなら嫌だって言えばいいじゃん」

 はぁ…今はまだ出席番号順に座っているし、仕方ないのは分かってる。俺だって宇都宮と話すし、蓮と話すななんて言えない。

「別に喋るなとか思ってないし」

 でも光琉と隣の席なのが羨ましくて…蓮と話す姿を見ると好きになってしまうんじゃなかって思ってしまうんだ。

「光琉はピヨちゃんの嫉妬、喜ぶと思うけど」
「そんなわけないだろ」
「そもそも気にするほど話してないじゃん」
「………」

 その少ない会話でも内容が気になっちゃうんだよ。

「日向? 元気ない?」
「あ…大丈夫」

 並んでこっちに来た光琉と蓮…意味はないって頭では理解してる。現に一樹と稜ちゃんも並んで俺達の席に来たし、隣同士なんだからそうなるのも必然だって。

 蓮はこっちに来た一樹と稜ちゃんと3人でスマホ画面を見て話しているし、光琉は蓮に目もくれず俺の前にしゃがんで様子を見てくれてる。気にするなって言い聞かせてるけど…

「しゃーない。一肌脱いでやりますか」
「なに? 暖は日向の元気がない理由、知ってるのか?」
「まぁね。――今日の昼、ピヨちゃんは鶴間と2人でお弁当食べな。まずは鶴間と話せ」

 蓮は友達なのに、嫉妬してしまう俺自身が一番嫌。後ろからみてる宇都宮にはバレていたんだな。

「俺は反対。俺も日向と一緒にお昼食べるから」
「ダメだって。光琉、たまにはピヨちゃんを開放してあげろよ。ずーっとくっついて、ピヨちゃん窮屈じゃん」
「………日向は? 俺と一緒がいいよね?」

 うっ…物凄く断りづらい顔をしてくるじゃん。

「今日は蓮と2人………光琉?」
「この世の終わりみたいな顔だな。俺達だけじゃ不満なのかよ」
「嘘でしょ? 嘘だよね? 日向?」

 青い顔とは。って検索したら出てきそうな顔色だな。

「ごめん…」



「それで?」

 あまり人に聞かれたくない話だからとお願いし、今俺達は空き教室で昼食をとっている。

 光琉は……最後までゴネていて、『迎えに来るまで動かず、鍵は絶対に開けないように』と言って宇都宮に引っ張られていった。

「その…」
「香坂くんのことでしょ」
「………うん」
「あのさ、俺が香坂くんを好きになることは絶対にないし、香坂くんが俺を好きになることもないから」

 そんなの分かんないよ。

「日向には悪いけど、俺、香坂くんってタイプじゃないんだよね」
「は…?」

 光琉を好きにならない人なんているのか?

「………日向が考えてること、手に取るように分かるんだけど」
「俺、声に出してた?」
「顔に書いてた」

 そんな分かりやすい顔してるのか…と両手で頬を抑え、表情を隠してみる。

「日向って可愛いよね」
「可愛いのは蓮だろ」
「俺は単にオメガっぽいってだけ。日向みたいに性格可愛くないし」

 どうせ俺はオメガに見えませんよーだ。

「ほんと分かりやすい。確かに見た目だけだとオメガに見えないかもしれない。でもさ、性格の可愛さがにじみ出てるんだよ。表情とかね。っていうか結構整った顔立ちなのに最近嫉妬心が顔にでちゃってるよ」
「っ!!」

 それってめっちゃ醜いってことじゃん…最悪だ。

「ごめん。この間はどうしてもわからない問題があって香坂くんに教えてもらったんだ。俺、日向と一樹しか友達いないし、他に作る気もないしさ」
「えっと…光琉達は?」
「香坂くんは友達の彼氏。宇都宮くんと稜里くんは友達の友達かな」

 まさかの友達ですらなかった…。

「それに自分で言うのもなんだけど、ちょっと教えてもらうだけで好意を持ってるって勘違いされることが多すぎて、迂闊に聞けないんだよね」
「あっ…」

 そうだった。俺、蓮が苦労してきた事知ってたのに…最低だな。

「蓮ごめん!」
「ううん。俺が悪かった。最初から稜里くんに聞けばよかったとも思ってるし」
「俺のことは気にしないでくれ。光琉の説明分かりやすいし…「ないない」」

 ん?

「俺いっつもテスト前は光琉に教えてもらってるけど、分かりやすいぞ?」
「うん。そう聞いてたから香坂くんに聞いたんだよね。あの人が親切にするのって日向にだけだよ」
「そう、なのか…?」

 分からないから聞いたのに、教科書に書いてあることを読み上げるだけだったらしく、授業後に稜ちゃんに聞き直したらしい。

「ちなみに今日消しゴムを拾ってくれたのは、日向がこっちを見てたから」
「どういうことだ?」
「日向に嫌われたくないからに決まってるじゃん。俺は日向の友達だからね」

 ってことは光琉は俺の友達だから蓮と仲良く…仲良く? してるってだけ?

「顔赤いよ」
「言うな」



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