上 下
41 / 106

40.文化祭1日目⑤ side光琉

しおりを挟む
「うまっ」

 ハフハフとしながらたこ焼きを頬張っている日向。本当いつも美味しそうに食べるから、見ているだけで幸せな気持ちになる。

「俺にも一口ちょうだい」
「いいぞ。はい」

 そう言ってたこ焼きの入ったパックごと渡してきた。

「そうじゃなくてさ、食べさせて」
「ぬあっ、じ、自分で食べろよ」
「えー片手埋まってて食べにくい」

 なんて嘘だけど。

「でも熱いし」

 なんのために机に置けない綿菓子を最後に購入したと思ってるんだ。日向に食べさせて貰いたいからに決まってるだろ。

「日向が冷ましてよ」
「うっ…分かったよ」

 綿菓子を受け取ればいいだけなのに。気付かないとか可愛すぎか。

「ふーふー」
「かっ…」
「か?」

 やっべ。今のは可愛すぎる。どれくらい冷ますべきか確認したかったんだろう。目線は俺の方に向けたまま冷ますとか…俺、今煽られてるのか?

 あー、もう可愛すぎて心臓やばいわ。しかも俺に可愛いと言われるのが嬉しいのか、最近はみんなと一緒の時には隠してしまう可愛さを、2人きりの時は隠さずにいてくれる。恐らく無意識に。

「えっと…あーん?」
「ぐっ…」

 あーんって。あまりの破壊力に一瞬心臓が止まったかと思った。
 
 念願は叶ったけど、もうこれ以上は俺が耐えきれそうにない。綿菓子、先に食べてしまうか。

「俺も綿菓子食べたい」
「はい…ってちょっと日向!?」

 待て待て、自分で持ってくれよ。少しソースが付いたエロい唇を近づけられたら、今の俺ヤバいから。……いや俺が悪いな。先に食べさせてもらったの俺だし。

「ごめん…」
「あー、違うからっ! 日向がエロい…じゃなくって、ソース。ソース付いてるから」

 俺何言ってんだろ。

「なっ! ばっ、かじゃないのか。ソース付いてるだけでエロくないし」

 2人して顔を赤くするとか、ほんと何やってるんだか。

 あー早く付き合いたい。早く付き合ってあんな事とかこんな事とか、色々したい。



「やばっ、待ち合わせに遅れる」

 慌てて待ち合わせの場所へ向かうと既に4人は集まっており、俺達を待ってくれていた。少しカフェでゆっくりしすぎてしまったな。

 それにしても何で鶴間も誘うかなぁ。

 鶴間は過去に何があったのかアルファを嫌っているようで、俺達と無闇に関係を持とうとしないところは良い。けど、こいつがいると日向が鶴間を優先するのが我慢ならないんだよ。

 しかも普段俺達の間には入ってこない日比野も、鶴間に対抗意識を持っているのか日向に絡んでくるし。結果日向の左右をあいつらに取られることもしばしば…。

 そもそも鶴間はオメガであることを隠していないのに、俺達アルファ3人ではなく、日向を狙っていると噂されているのも気に食わない。アルファ嫌いだからベータの日向を狙っているとか…日向は俺の番だし、俺のオメガだっての。

「あっ、おいっ!」
「残念だったな光琉」
「諦めたほうがいいですよ。あの2人、岩清水の隣を譲らないでしょうから」

 ほんの少し油断している間に日向の隣を2人に取られてしまった。

「あいつ…」
「してやったりってか」

 ついでに鶴間に不敵な笑みを向けられた。くそっ。

「岩清水って天然のたらし要素がありますもんねぇ」
「俺の番なのに」
「ならいい加減付き合ってくださいよ」

 本当、早く付き合いたい。もう日向に俺をどう思ってるか聞いてしまおうか…。いや、運命に抗おうとした日向のことだ。運命なんて関係なく俺を好きだと思ってくれたら、きっと番になりたいって言ってくれるはずだ。

「運命だとはいえ、悠長に構えている間に誰かに取られても知りませんよ」

 もちろんそんなミスを犯すつもりはない。明日は一般公開日。誰に何と言われようと日向から離れないからな。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染から離れたい。

June
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。 だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。 βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。 誤字脱字あるかも。 最後らへんグダグダ。下手だ。 ちんぷんかんぷんかも。 パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・ すいません。

僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

エル
BL
(2024.6.19 完結) 両親と離れ一人孤独だった慶太。 容姿もよく社交的で常に人気者だった玲人。 高校で出会った彼等は惹かれあう。 「君と出会えて良かった。」「…そんなわけねぇだろ。」 甘くて苦い、辛く苦しくそれでも幸せだと。 そんな恋物語。 浮気×健気。2人にとっての『ハッピーエンド』を目指してます。 *1ページ当たりの文字数少なめですが毎日更新を心がけています。

俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。 しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。 それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。 だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。 流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…? エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか? そして、キースの本当の気持ちは? 分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです! ※R指定は保険です。

森の中の華 (オメガバース、α✕Ω、完結)

Oj
BL
オメガバースBLです。 受けが妊娠しますので、ご注意下さい。 コンセプトは『受けを妊娠させて吐くほど悩む攻め』です。 ちょっとヤンチャなアルファ攻め✕大人しく不憫なオメガ受けです。 アルファ兄弟のどちらが攻めになるかは作中お楽しみいただけたらと思いますが、第一話でわかってしまうと思います。 ハッピーエンドですが、そこまで受けが辛い目に合い続けます。 菊島 華 (きくしま はな)   受 両親がオメガのという珍しい出生。幼い頃から森之宮家で次期当主の妻となるべく育てられる。囲われています。 森之宮 健司 (もりのみや けんじ) 兄  森之宮家時期当主。品行方正、成績優秀。生徒会長をしていて学校内での信頼も厚いです。 森之宮 裕司 (もりのみや ゆうじ) 弟 森之宮家次期当主。兄ができすぎていたり、他にも色々あって腐っています。 健司と裕司は二卵性の双子です。 オメガバースという第二の性別がある世界でのお話です。 男女の他にアルファ、ベータ、オメガと性別があり、オメガは男性でも妊娠が可能です。 アルファとオメガは数が少なく、ほとんどの人がベータです。アルファは能力が高い人間が多く、オメガは妊娠に特化していて誘惑するためのフェロモンを出すため恐れられ卑下されています。 その地方で有名な企業の子息であるアルファの兄弟と、どちらかの妻となるため育てられたオメガの少年のお話です。 この作品では第二の性別は17歳頃を目安に判定されていきます。それまでは検査しても確定されないことが多い、という設定です。 また、第二の性別は親の性別が反映されます。アルファ同士の親からはアルファが、オメガ同士の親からはオメガが生まれます。 独自解釈している設定があります。 第二部にて息子達とその恋人達です。 長男 咲也 (さくや) 次男 伊吹 (いぶき) 三男 開斗 (かいと) 咲也の恋人 朝陽 (あさひ) 伊吹の恋人 幸四郎 (こうしろう) 開斗の恋人 アイ・ミイ 本編完結しています。 今後は短編を更新する予定です。

王冠にかける恋【完結】

毬谷
BL
国立天風学園にはこんな噂があった。 『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』 もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。 何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。 『生徒たちは、全員首輪をしている』 ◆ 王制がある現代のとある国。 次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。 そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って…… ◆ オメガバース学園もの 超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

悪役令息に誘拐されるなんて聞いてない!

晴森 詩悠
BL
ハヴィことハヴィエスは若くして第二騎士団の副団長をしていた。 今日はこの国王太子と幼馴染である親友の婚約式。 従兄弟のオルトと共に警備をしていたが、どうやら婚約式での会場の様子がおかしい。 不穏な空気を感じつつ会場に入ると、そこにはアンセルが無理やり床に押し付けられていたーー。 物語は完結済みで、毎日10時更新で最後まで読めます。(全29話+閉話) (1話が大体3000字↑あります。なるべく2000文字で抑えたい所ではありますが、あんこたっぷりのあんぱんみたいな感じなので、短い章が好きな人には先に謝っておきます、ゴメンネ。) ここでは初投稿になりますので、気になったり苦手な部分がありましたら速やかにソッ閉じの方向で!(土下座 性的描写はありませんが、嗜好描写があります。その時は▷がついてそうな感じです。 好き勝手描きたいので、作品の内容の苦情や批判は受け付けておりませんので、ご了承下されば幸いです。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

処理中です...