上 下
36 / 106

35.文化祭準備③

しおりを挟む
「デザインが集まったので、みんなで確認していきましょう」

 松本さんともう一人の文化祭委員が手元に集まったデザインを黒板に貼っていき、みんなのアイデアを見ていく。

 さり気なく光琉に肩を並べてみたりして…

「ふっ」
「なんだよ」
「いや…日向もっと俺に寄って」

 ちょっと調子に乗ったらグッと肩を寄せられてしまった。人が集まってきたから、デザインが見やすいようにって光琉は寄せてくれたんだろうけど。

 気を紛らわせるためにも意識をデザイン案に向けていると、ひよこが何かを食べているデザインが目に入ってきた。

「このひよこ上手くね?」
「あっ、それ宇都宮作。食ってるのはバニラアイスだって」
「まじ!?」

 一緒にデザインを考えていた一樹が言うから、本当に宇都宮が描いたんだろう。

「これピヨちゃんにあげるよ」
「ありが…「いらない」」

 なんで光琉が断るんだよ。不覚にもちょっと欲しかったのに。

「はいはい。ならこのデザインやるからさ、光琉がステンドグラスで作れば? どうせ2人で考えたデザインも作るつもりなんだろ?」
「そうなのか?」
「せっかく描いたしね。余ったセロファンで作ろうと思ってたよ」
「俺も…俺も作りたい」
「一緒に作ろう」

 もう2人ともあっちに行っとけと、輪から追い出されてしまった。ここからだとよく見えないじゃんか。

「何枚か次元が違う上手さなんだけど…あっ! ねぇあの辺の絵って松本さんのデザイン? すごいね」
「ふふ~、ありがとう。でも私は岩清水くんと香坂くんのデザインが素敵だと思うの。アレンジは必要だけどね」
「そう、かな? ///」

 嬉しい。違うのに、デザインを褒められただけなのに、俺と光琉が並んでいるのが素敵だって、そう言われたような気がしてしまう。

「やっぱり岩清水くんって可愛いよね。あのね岩清水くん、私ずっと前から気になってたんだけど…」
「松本」
「あーっとごめんなさい。ちょっと私デザイン見てくる」

 ? 

「何を気になってたんだろう?」
「興味ない」
「光琉が名前呼んだ途端逃げるようにあっちに行ったけど」
「不思議だな」

 さっきまで名前すら知らなかったくせに。松本さんが言おうとしたこと、光琉は気付いてそうなのがモヤモヤする。



「花とか緑とか、自然をモチーフにした作品が多いので、それらのデザインを集めてアレンジしようと思います」

 サラサラっと松本さんはラフスケッチを始め、仕上がったデザインは壮大過ぎるものになった。元々松本さんがデザインしたものを背景に、自然モチーフのデザインが描かれていき、見事に一つの作品に仕上がっている。

 俺達が描いたデザインも自然モチーフに該当するためしっかり採用され、ちょうど真ん中に当たる場所に描いてくれている。

「ちゃんとバニラとりんごの花に見えるな」
「そうだね」
「……寄り添ってるな」
「絡み合ってたら最高だったんだけどね」
「かっ、な、そ、それは難しいだろ」

 まただ。俺のフェロンがりんごの匂いに似ていたらと、日に日に強く思うようになったからなのか、花の話なのに変な気持ちになってしまう。



 松本さんが描いた下書きをグループ分に切り分け、それを確認しながら下書きを作る。宇都宮のお陰で下書きはいい感じ。

 かなり複雑なデザインで、クラスみんなが繊細な作業に没頭している。

 完成まで日数が必要だからと放課後に残れる人は残って作業し、文化祭準備に割り当てられている時間はみんなで協力し、少しずつ完成品に近付いてワクワクが止まらない。

 ある日は代表で飲み物を買いに行ったり、またある日はお菓子を買いに行ったり。いつの間にか教室の後ろにお菓子ボックスができ、作業時用としてみんなが持ち寄ったお菓子が入れられている。

「日向、楽しそうだね」
「おう! もうすぐ完成するって思うと楽しみで」
「俺も楽しみ。――あー、可愛い――」

 そんな作業を続け、ようやく完成した。文化祭前日に窓に飾り付けてみると…

「「「おぉー!!」」」

 クラスみんなで拍手喝采。作るのが大変だった分、完成した喜びと達成感が半端ないよな。

「これ、展示物部門で賞とれるんじゃないか?」

 なんてみんなが色めき立つくらいには、凄いステンドグラスが完成した。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お兄ちゃんは妹の推しキャラに転生しました

negi
BL
病死した俺は15禁BLゲームの妹の推しキャラである悪役令息セレスティンに転生した。一度国が滅亡してしまった世界をやり直して欲しいと言われたけど以外にハードルが高いぞ。 ※ R18作品です。予告なくそういった描写が出てきます。 一応オメガバースですが、かなり緩いうえに独自設定になっていると思います。 少しでも楽しんでもらえると嬉しいです。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?

み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました! 志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ

中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。 ※ 作品 「男装バレてイケメンに~」 「灼熱の砂丘」 「イケメンはずんどうぽっちゃり…」 こちらの作品を先にお読みください。 各、作品のファン様へ。 こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。 故に、本作品のイメージが崩れた!とか。 あのキャラにこんなことさせないで!とか。 その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)

【R18】翡翠の鎖

環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。 ※R18描写あり→*

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 前話 【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!

水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。 正確には、夫とその愛人である私の親友に。 夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。 もう二度とあんな目に遭いたくない。 今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。 あなたの人生なんて知ったことではないけれど、 破滅するまで見守ってさしあげますわ!

義兄に告白されて、承諾したらトロ甘な生活が待ってました。

アタナシア
恋愛
母の再婚をきっかけにできたイケメンで完璧な義兄、海斗。ひょんなことから、そんな海斗に告白をされる真名。 捨てられた子犬みたいな目で告白されたら断れないじゃん・・・!! 承諾してしまった真名に 「ーいいの・・・?ー ほんとに?ありがとう真名。大事にするね、ずっと・・・♡」熱い眼差を向けられて、そのままーーーー・・・♡。

処理中です...