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35.文化祭準備③
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「デザインが集まったので、みんなで確認していきましょう」
松本さんともう一人の文化祭委員が手元に集まったデザインを黒板に貼っていき、みんなのアイデアを見ていく。
さり気なく光琉に肩を並べてみたりして…
「ふっ」
「なんだよ」
「いや…日向もっと俺に寄って」
ちょっと調子に乗ったらグッと肩を寄せられてしまった。人が集まってきたから、デザインが見やすいようにって光琉は寄せてくれたんだろうけど。
気を紛らわせるためにも意識をデザイン案に向けていると、ひよこが何かを食べているデザインが目に入ってきた。
「このひよこ上手くね?」
「あっ、それ宇都宮作。食ってるのはバニラアイスだって」
「まじ!?」
一緒にデザインを考えていた一樹が言うから、本当に宇都宮が描いたんだろう。
「これピヨちゃんにあげるよ」
「ありが…「いらない」」
なんで光琉が断るんだよ。不覚にもちょっと欲しかったのに。
「はいはい。ならこのデザインやるからさ、光琉がステンドグラスで作れば? どうせ2人で考えたデザインも作るつもりなんだろ?」
「そうなのか?」
「せっかく描いたしね。余ったセロファンで作ろうと思ってたよ」
「俺も…俺も作りたい」
「一緒に作ろう」
もう2人ともあっちに行っとけと、輪から追い出されてしまった。ここからだとよく見えないじゃんか。
「何枚か次元が違う上手さなんだけど…あっ! ねぇあの辺の絵って松本さんのデザイン? すごいね」
「ふふ~、ありがとう。でも私は岩清水くんと香坂くんのデザインが素敵だと思うの。アレンジは必要だけどね」
「そう、かな? ///」
嬉しい。違うのに、デザインを褒められただけなのに、俺と光琉が並んでいるのが素敵だって、そう言われたような気がしてしまう。
「やっぱり岩清水くんって可愛いよね。あのね岩清水くん、私ずっと前から気になってたんだけど…」
「松本」
「あーっとごめんなさい。ちょっと私デザイン見てくる」
?
「何を気になってたんだろう?」
「興味ない」
「光琉が名前呼んだ途端逃げるようにあっちに行ったけど」
「不思議だな」
さっきまで名前すら知らなかったくせに。松本さんが言おうとしたこと、光琉は気付いてそうなのがモヤモヤする。
*
「花とか緑とか、自然をモチーフにした作品が多いので、それらのデザインを集めてアレンジしようと思います」
サラサラっと松本さんはラフスケッチを始め、仕上がったデザインは壮大過ぎるものになった。元々松本さんがデザインしたものを背景に、自然モチーフのデザインが描かれていき、見事に一つの作品に仕上がっている。
俺達が描いたデザインも自然モチーフに該当するためしっかり採用され、ちょうど真ん中に当たる場所に描いてくれている。
「ちゃんとバニラとりんごの花に見えるな」
「そうだね」
「……寄り添ってるな」
「絡み合ってたら最高だったんだけどね」
「かっ、な、そ、それは難しいだろ」
まただ。俺のフェロンがりんごの匂いに似ていたらと、日に日に強く思うようになったからなのか、花の話なのに変な気持ちになってしまう。
*
松本さんが描いた下書きをグループ分に切り分け、それを確認しながら下書きを作る。宇都宮のお陰で下書きはいい感じ。
かなり複雑なデザインで、クラスみんなが繊細な作業に没頭している。
完成まで日数が必要だからと放課後に残れる人は残って作業し、文化祭準備に割り当てられている時間はみんなで協力し、少しずつ完成品に近付いてワクワクが止まらない。
ある日は代表で飲み物を買いに行ったり、またある日はお菓子を買いに行ったり。いつの間にか教室の後ろにお菓子ボックスができ、作業時用としてみんなが持ち寄ったお菓子が入れられている。
「日向、楽しそうだね」
「おう! もうすぐ完成するって思うと楽しみで」
「俺も楽しみ。――あー、可愛い――」
そんな作業を続け、ようやく完成した。文化祭前日に窓に飾り付けてみると…
「「「おぉー!!」」」
クラスみんなで拍手喝采。作るのが大変だった分、完成した喜びと達成感が半端ないよな。
「これ、展示物部門で賞とれるんじゃないか?」
なんてみんなが色めき立つくらいには、凄いステンドグラスが完成した。
松本さんともう一人の文化祭委員が手元に集まったデザインを黒板に貼っていき、みんなのアイデアを見ていく。
さり気なく光琉に肩を並べてみたりして…
「ふっ」
「なんだよ」
「いや…日向もっと俺に寄って」
ちょっと調子に乗ったらグッと肩を寄せられてしまった。人が集まってきたから、デザインが見やすいようにって光琉は寄せてくれたんだろうけど。
気を紛らわせるためにも意識をデザイン案に向けていると、ひよこが何かを食べているデザインが目に入ってきた。
「このひよこ上手くね?」
「あっ、それ宇都宮作。食ってるのはバニラアイスだって」
「まじ!?」
一緒にデザインを考えていた一樹が言うから、本当に宇都宮が描いたんだろう。
「これピヨちゃんにあげるよ」
「ありが…「いらない」」
なんで光琉が断るんだよ。不覚にもちょっと欲しかったのに。
「はいはい。ならこのデザインやるからさ、光琉がステンドグラスで作れば? どうせ2人で考えたデザインも作るつもりなんだろ?」
「そうなのか?」
「せっかく描いたしね。余ったセロファンで作ろうと思ってたよ」
「俺も…俺も作りたい」
「一緒に作ろう」
もう2人ともあっちに行っとけと、輪から追い出されてしまった。ここからだとよく見えないじゃんか。
「何枚か次元が違う上手さなんだけど…あっ! ねぇあの辺の絵って松本さんのデザイン? すごいね」
「ふふ~、ありがとう。でも私は岩清水くんと香坂くんのデザインが素敵だと思うの。アレンジは必要だけどね」
「そう、かな? ///」
嬉しい。違うのに、デザインを褒められただけなのに、俺と光琉が並んでいるのが素敵だって、そう言われたような気がしてしまう。
「やっぱり岩清水くんって可愛いよね。あのね岩清水くん、私ずっと前から気になってたんだけど…」
「松本」
「あーっとごめんなさい。ちょっと私デザイン見てくる」
?
「何を気になってたんだろう?」
「興味ない」
「光琉が名前呼んだ途端逃げるようにあっちに行ったけど」
「不思議だな」
さっきまで名前すら知らなかったくせに。松本さんが言おうとしたこと、光琉は気付いてそうなのがモヤモヤする。
*
「花とか緑とか、自然をモチーフにした作品が多いので、それらのデザインを集めてアレンジしようと思います」
サラサラっと松本さんはラフスケッチを始め、仕上がったデザインは壮大過ぎるものになった。元々松本さんがデザインしたものを背景に、自然モチーフのデザインが描かれていき、見事に一つの作品に仕上がっている。
俺達が描いたデザインも自然モチーフに該当するためしっかり採用され、ちょうど真ん中に当たる場所に描いてくれている。
「ちゃんとバニラとりんごの花に見えるな」
「そうだね」
「……寄り添ってるな」
「絡み合ってたら最高だったんだけどね」
「かっ、な、そ、それは難しいだろ」
まただ。俺のフェロンがりんごの匂いに似ていたらと、日に日に強く思うようになったからなのか、花の話なのに変な気持ちになってしまう。
*
松本さんが描いた下書きをグループ分に切り分け、それを確認しながら下書きを作る。宇都宮のお陰で下書きはいい感じ。
かなり複雑なデザインで、クラスみんなが繊細な作業に没頭している。
完成まで日数が必要だからと放課後に残れる人は残って作業し、文化祭準備に割り当てられている時間はみんなで協力し、少しずつ完成品に近付いてワクワクが止まらない。
ある日は代表で飲み物を買いに行ったり、またある日はお菓子を買いに行ったり。いつの間にか教室の後ろにお菓子ボックスができ、作業時用としてみんなが持ち寄ったお菓子が入れられている。
「日向、楽しそうだね」
「おう! もうすぐ完成するって思うと楽しみで」
「俺も楽しみ。――あー、可愛い――」
そんな作業を続け、ようやく完成した。文化祭前日に窓に飾り付けてみると…
「「「おぉー!!」」」
クラスみんなで拍手喝采。作るのが大変だった分、完成した喜びと達成感が半端ないよな。
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