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31.席替え

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 あっという間に夏休みが終わり、新学期が始まって数日。

「席替えするぞ~」

 今日は待ちに待った席替え。でも今の席ってそう悪くないからこのままでも良いような、やっぱり席替えは嬉しいような、するなら光琉と近い席になるといいな、とか考えていると後ろから肩を突かれた。

「ピヨちゃん俺と離れるの寂しい?」
「寂しくない」

 宇都宮は悪いやつじゃないけど、少し離れてるくらいがちょうどいいんだよ。

「冷たいなぁ。まっ、ピヨちゃんは光琉と近い方がいいか」
「………別にそんなことないけど。でも全員が近い席だと嬉しいかもな」
「可愛いこと言うじゃん」
「はっ? 近い方が休み時間とか周りに迷惑かけないかなって思っただけだし」

 本当に。だって近かったらイスを借りたりしなくていいしさ。

「仕方ないなぁ」

 仕方ないって何するんだ?

 おぉ。クジじゃなく自由に席を決めたいって、めっちゃいい提案するじゃん。でもなぁ…みんなも期待の目を向けているけど流石に難しいんじゃないか?

 なんて思ったのに簡単に宇都宮の意見が通った。

 先生…、面倒くさがりだから、その場合は年度末まで席替えなしでいいって言われてラッキーって思ったのかな? それとも提案者がアルファだから?

「どっちもかな」
「ん?」
「なんでもない。窓際取れたらいいなぁ」
「窓際の後ろで固まりたいよな」

 提案者の宇都宮から席を選んでいいよとの好意に甘えて、俺達が最初に席を決めさせてもらえた結果、俺は窓際の後ろから2番目の席。後ろは光琉で前は稜ちゃん、隣が一輝で光琉の隣が宇都宮になった。

 身長的に稜ちゃんと逆の方がいいんじゃないかって提案したら、全員に速攻で却下され…本当は光琉と近すぎるとドキドキしてしまうから、間に稜ちゃんを挟みたかったんだけどな。

「おーい、授業中のお喋りが多かったら問答無用で席替えだぞ。真面目に授業受けろよ~」

「だってよ、宇都宮」
「ピヨちゃんの方が…「日向」」
「ん? なんだ?」
「授業で分からない事があったら何でも聞いてね」
「ありがとう?」

 それって話している最中に食い込んでまで言うことだったか? まぁいいけど。チラッと宇都宮の方を確認してみたら、呆れた顔で俺達のこと見てるじゃん。

「それと今日は先週言った通り防災訓練があるからな。授業中とは限らないし、ちゃんと放送を聞いておくように」

 とか言って絶対授業中にやるんだろうけど。



 予想通り授業中に防災訓練が始まった。地震が起きたと仮定しての訓練。まず初めに机の下に隠れ…

「ふはっ、光琉狭そう」
「机の下に入る方がどこかにぶつけてしまうかも」
「言えてる」

 揺れが収まった合図の放送で廊下に出て、クラスごとに固まりつつも運動場に出るまでは順不同で移動。

 その移動中、階段の中腹部で誰かに背中を押された気がした。

 しかも絶対にわざと。犯人は誰か分からない。そりゃあ俺だって、もしかしたら転けそうになった時に、たまたま俺の背中を押す形になったのかなって思おうとしたけどさ。

 でもさ…

「うわぁっ!」
「日向! 大丈夫?」
「大丈夫。ありがと」

 転げそうになったところを光琉が支えてくれた時、後ろから舌打ちが聞こえたんだよね。これって絶対わざとだよね?

「念の為保健室に向かおう。俺も付き添うから」
「光琉が支えてくれたし大丈夫」
「ダメ。念の為行こう。伊織、暖」
「了解」
「担任に伝えておきますね」

 また舌打ち…あーあ、犯人分かっちゃった。



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