【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

30.花火大会③ side光琉

　日向が可愛い。

　はぁ。。それにしても鶴間ってやつがオメガならオメガだって最初からそう言えっての。こっちは怒りを抑えるの大変だったんだぞ。

　でもまぁ…機嫌をとろうとしてきたり、照れてポカポカと叩いてきたり、顔を真っ赤にしたり、色んな可愛い姿を見れたのはよかった。

　今だって屋台に目を輝かせているのが可愛いし。ドサクサに紛れて手を繋いでることにも気づいてないんだろうなぁ。教えたらきっと手を離されるだろうから言わないけど。

　日向が俺を意識してるのは分かる。でもそれは運命だからなのか、俺だからなのか、正直まだ判断できない。聞けよって話なんだけどな。

　でも俺は、日向に番いたいと言わせたい。

「あっ！　射的がある！　光琉っ、どっちが勝つか勝負しようぜ」
「いいよ」
「よしっ、負けたらかき氷な！」

　日向を勝たせたいから、様子を見つつ調整しよう。

　パンッ

「よしっ、あたった！　光琉もはやくっ」
「はいはい」

　パンッ、パンッ

　！！　えっ？　日向うますぎだろ！！？

「あっ、ミスった…」
「へっへーん。俺は全部当てた！」

　いや…負けるつもりでいたからいいんだけど…わざとミスするつもりであって、本気でミスするつもりはなかったんだ。

「っていっても当てたの全部駄菓子だけどな」
「俺も全部駄菓子だよ。後で一緒に食べようか」
「だな！　よしっ、かき氷買いに行くぞー！」

　専門店やこだわっている店は違うだろうけど、こういった屋台で食べるかき氷のシロップはは、香料とか着色料が違うだけで基本的に同じ味だと聞いたことがある。

　それでも日向はいちご味を選ぶだろうと、そう予想できるくらいには日向を知れていると、改めて実感できるのが嬉しい。

「練乳もいい？」
「ふっ、いいよ」
「やったね！　お兄さん練乳多めにお願いしまーす！」

　お兄さんって…どう見てもおじさんじゃ？

「おっ、兄ちゃんうまいこと言うなぁ。よしっ、特別にたくさんかけてやろう」
「いえーい」

　満面の笑みでピースサインを向けてくるとか、可愛すぎかよ。

　購入後は近くにあったベンチで横並びで座り、2人でかき氷を頬張る。日向の少食を理由に今日は全部シェアする予定なんだ。

「日向、もしかして射的得意？」
「実はコツがあるんだよ」
「コツ？」
「父さんに昔教えてもらったんだ。まず、倒れやすいのを狙うのは基本な！　後は……経験を積む！」
「ふはっ。確かに経験は大事だよな」

　ドヤ顔して基本だけって。日向は終始テンションが高くて可愛いし。あー、ほんと楽しい。

「よしっ！　たこ焼きと焼きそばとお好み焼き、買いに行くぞ」
「焼きとうもろこしはいいの？」
「買う！　光琉はりんごも飴買うか？」
「もちろん」

　食料を手に入れ、あらかじめリサーチしておいた穴場へと向かい、打ち上げ時間までは夏休みの思い出話をしながら屋台飯を楽しんだ。


　ヒュー、ドーン

「あっ！　始まった！」

　こういう時、打ち上がる花火よりも隣りにいる番の方が綺麗だと思うんだろう。

　でも俺はそう思わない。

　もちろん花火の光が当たる日向の横顔は綺麗だけど、打ち上がるたびに目をキラキラとさせている日向が、花火の写真を撮ろうと一生懸命な日向が、可愛い。

　来年は後ろから抱きしめて一緒にスマホを構えよう。いや…俺が写真を撮るから、日向は俺の腕の中から花火を見ればいい。

　日向、早く俺の思いに追いついてくれ。



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本編一番上に、ものすごく簡易的に登場人物をまとめました。よければ参考にしてください。