13 / 106
12.テスト勉強② side光琉
しおりを挟む
窓から差し込む夕日が、集中して勉強に取り組んでいる日向の顔に当たって綺麗だ。
日向はどちらかといえば可愛いよりも綺麗な顔をしている。だからオメガらしくないと本人は思っているようで、危機感が少ないのが心配で仕方ない。言動がすごく可愛い事にも気付いてないし。
「やばっ、もう18時じゃん」
「本当だ。そろそろ帰ろうか」
「あー電車混んでそう」
帰宅ラッシュか。朝ほどではなくても確実に混んでいるだろう。俺達が一緒とはいえ本当は日向を電車に乗せたくない。
「車で送るよ。今日はいいでしょう?」
「一樹も?」
はい、でた。また日比野。
「日比野は暖が送るって」
「俺? まぁいいけど」
「私は親に用事があるので先に帰っていてください」
初めてだ…初めて二人きりになれる。日向の気が変わる前に迎えの車を呼ぼう。
*
「お、お邪魔します…」
「ふっ」
「笑うなよ! 家の車と全然違うし、見るからに高級車なんて緊張するに決まってるだろ」
「ごめん、可愛いなって思ってさ」
「っ! か、可愛くなんてないし」
そんな耳まで真っ赤にして言ったって説得力ないぞ。
「あのさ…今日はありがとな。光琉のお陰で結構良い点取れそう」
そう何度もお礼を言わなくたっていいのに。いつもより長く一緒にいれて俺の方がお礼を言いたいくらいなんだ。
「役に立てて良かったよ。明日も一緒に勉強する?」
「英語も教えてくれると嬉しい」
日向は照れると顔を横に向ける。俺が話しかける時によく見る光景だ。それは運命だからなのか、俺自身を意識してくれているからなのか。
「じゃあ明日は英語にしようか」
「お願いします」
大分打ち解けては来ている。でも今の会話だって日比野だったら『おう!』とか『頼むな』とかもっとフランクに頼んでいるだろう。……暖でも同じかもしれない。
理由はどうあれ緊張しているからだと分かっているが、早く俺が一番近い存在になりたい。
………何したって可愛いと思ってしまうのに、本能を無視して好意を抱けるか確認なんて俺にできるんだろうか。今だって眠そうに眼をこすっているのが可愛いとか思っちゃてるし。
「疲れただろう? 寝ていいよ。着いたら起こすから」
「いや、だぃじょぶ……」
これは寝るな。
それにしても、日向がお手洗いに席を立った時の日比野には驚かされたな。何にも考えていないやつだと思っていたけど、思いの外日向を大事にしているようだった。
***
「なぁ、香坂ってもしかして日向のこと好きだったりする?」
「だったら?」
「いや、いいんだけどさ。アルファって異性のアルファとオメガしか恋愛対象じゃないと思ってたから。女子ならベータでもあるのかもしれないけど…日向男子じゃん? もしかして女子に興味ないとか?」
こいつ、日向がオメガだと知らないのか。
「男も女も関係ない。俺は日向にしか興味ないだけ」
そう伝えると少し考えてから話しだした日比野。
「あのさ…選ぶのは日向だから俺が言うことじゃないんだけど、あいつすげぇいいやつなんだ。普通に幸せになってほしいっていうか。だから…だからさ、あいつの意思を無視して無理やり付き合うとか、好きな女子ができた時に邪魔するとか、そういうのはやめてほしい」
「言われなくても」
「まぁ…日向も満更じゃなさそうだけどな! 頑張れよっ」
そう言って笑って肩を叩いてきた。………日向の親友だから許してやろう。
「あぁ」
「……ほんっと日向がいないと愛想ないよな」
「必要ないだろ」
***
ベータだし恋愛に発展することはないだろうが、信頼し合っているこの関係が羨ましい。
はぁ。日向が大事にしている相手だから、認められたいと思ってしまう俺もいるんだよな。
「日向、起きて」
「ん。。」
「ぽやぽやしてる」
つい声に出してしまった。
「??」
「家についたよ」
「………っ! ごめん寝てた」
「遅くまで勉強してたしね」
「送ってくれてありがとな。その、光琉が家に着くのが遅くなっちゃってごめん」
日向って『ありがとう』と『ごめんなさい』をちゃんと言えるよな。そもそも俺は間違えることの方が少ないけど、プライドが邪魔して謝るのが苦手。日向のこういうところ、尊敬できる。思いやりの心もあって、日比野が言うように本当にいいやつなんだ。
「俺が送りたかっただけだから。それに俺の家、ここから結構近いしね」
「そっか。光琉ん家って門とかあって敷地内も車で移動とかしてそう」
「流石にそこまでじゃないよ」
車が出るまで外で見送るつもりの日向と、家の中に入るまで動かないという俺の攻防戦を繰り広げる事数分。両者の要望を叶えるため、日向が自室から見送ってくれることに。
日向の部屋が道路に面しているのが嬉しいような、危機感のない日向がカーテンを開けたまま着替えたりしないか心配なような、少しだけ複雑な気分になった。
日向はどちらかといえば可愛いよりも綺麗な顔をしている。だからオメガらしくないと本人は思っているようで、危機感が少ないのが心配で仕方ない。言動がすごく可愛い事にも気付いてないし。
「やばっ、もう18時じゃん」
「本当だ。そろそろ帰ろうか」
「あー電車混んでそう」
帰宅ラッシュか。朝ほどではなくても確実に混んでいるだろう。俺達が一緒とはいえ本当は日向を電車に乗せたくない。
「車で送るよ。今日はいいでしょう?」
「一樹も?」
はい、でた。また日比野。
「日比野は暖が送るって」
「俺? まぁいいけど」
「私は親に用事があるので先に帰っていてください」
初めてだ…初めて二人きりになれる。日向の気が変わる前に迎えの車を呼ぼう。
*
「お、お邪魔します…」
「ふっ」
「笑うなよ! 家の車と全然違うし、見るからに高級車なんて緊張するに決まってるだろ」
「ごめん、可愛いなって思ってさ」
「っ! か、可愛くなんてないし」
そんな耳まで真っ赤にして言ったって説得力ないぞ。
「あのさ…今日はありがとな。光琉のお陰で結構良い点取れそう」
そう何度もお礼を言わなくたっていいのに。いつもより長く一緒にいれて俺の方がお礼を言いたいくらいなんだ。
「役に立てて良かったよ。明日も一緒に勉強する?」
「英語も教えてくれると嬉しい」
日向は照れると顔を横に向ける。俺が話しかける時によく見る光景だ。それは運命だからなのか、俺自身を意識してくれているからなのか。
「じゃあ明日は英語にしようか」
「お願いします」
大分打ち解けては来ている。でも今の会話だって日比野だったら『おう!』とか『頼むな』とかもっとフランクに頼んでいるだろう。……暖でも同じかもしれない。
理由はどうあれ緊張しているからだと分かっているが、早く俺が一番近い存在になりたい。
………何したって可愛いと思ってしまうのに、本能を無視して好意を抱けるか確認なんて俺にできるんだろうか。今だって眠そうに眼をこすっているのが可愛いとか思っちゃてるし。
「疲れただろう? 寝ていいよ。着いたら起こすから」
「いや、だぃじょぶ……」
これは寝るな。
それにしても、日向がお手洗いに席を立った時の日比野には驚かされたな。何にも考えていないやつだと思っていたけど、思いの外日向を大事にしているようだった。
***
「なぁ、香坂ってもしかして日向のこと好きだったりする?」
「だったら?」
「いや、いいんだけどさ。アルファって異性のアルファとオメガしか恋愛対象じゃないと思ってたから。女子ならベータでもあるのかもしれないけど…日向男子じゃん? もしかして女子に興味ないとか?」
こいつ、日向がオメガだと知らないのか。
「男も女も関係ない。俺は日向にしか興味ないだけ」
そう伝えると少し考えてから話しだした日比野。
「あのさ…選ぶのは日向だから俺が言うことじゃないんだけど、あいつすげぇいいやつなんだ。普通に幸せになってほしいっていうか。だから…だからさ、あいつの意思を無視して無理やり付き合うとか、好きな女子ができた時に邪魔するとか、そういうのはやめてほしい」
「言われなくても」
「まぁ…日向も満更じゃなさそうだけどな! 頑張れよっ」
そう言って笑って肩を叩いてきた。………日向の親友だから許してやろう。
「あぁ」
「……ほんっと日向がいないと愛想ないよな」
「必要ないだろ」
***
ベータだし恋愛に発展することはないだろうが、信頼し合っているこの関係が羨ましい。
はぁ。日向が大事にしている相手だから、認められたいと思ってしまう俺もいるんだよな。
「日向、起きて」
「ん。。」
「ぽやぽやしてる」
つい声に出してしまった。
「??」
「家についたよ」
「………っ! ごめん寝てた」
「遅くまで勉強してたしね」
「送ってくれてありがとな。その、光琉が家に着くのが遅くなっちゃってごめん」
日向って『ありがとう』と『ごめんなさい』をちゃんと言えるよな。そもそも俺は間違えることの方が少ないけど、プライドが邪魔して謝るのが苦手。日向のこういうところ、尊敬できる。思いやりの心もあって、日比野が言うように本当にいいやつなんだ。
「俺が送りたかっただけだから。それに俺の家、ここから結構近いしね」
「そっか。光琉ん家って門とかあって敷地内も車で移動とかしてそう」
「流石にそこまでじゃないよ」
車が出るまで外で見送るつもりの日向と、家の中に入るまで動かないという俺の攻防戦を繰り広げる事数分。両者の要望を叶えるため、日向が自室から見送ってくれることに。
日向の部屋が道路に面しているのが嬉しいような、危機感のない日向がカーテンを開けたまま着替えたりしないか心配なような、少しだけ複雑な気分になった。
14
お気に入りに追加
277
あなたにおすすめの小説
幼馴染から離れたい。
June
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。
だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。
βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。
誤字脱字あるかも。
最後らへんグダグダ。下手だ。
ちんぷんかんぷんかも。
パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・
すいません。
僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜
エル
BL
(2024.6.19 完結)
両親と離れ一人孤独だった慶太。
容姿もよく社交的で常に人気者だった玲人。
高校で出会った彼等は惹かれあう。
「君と出会えて良かった。」「…そんなわけねぇだろ。」
甘くて苦い、辛く苦しくそれでも幸せだと。
そんな恋物語。
浮気×健気。2人にとっての『ハッピーエンド』を目指してます。
*1ページ当たりの文字数少なめですが毎日更新を心がけています。
森の中の華 (オメガバース、α✕Ω、完結)
Oj
BL
オメガバースBLです。
受けが妊娠しますので、ご注意下さい。
コンセプトは『受けを妊娠させて吐くほど悩む攻め』です。
ちょっとヤンチャなアルファ攻め✕大人しく不憫なオメガ受けです。
アルファ兄弟のどちらが攻めになるかは作中お楽しみいただけたらと思いますが、第一話でわかってしまうと思います。
ハッピーエンドですが、そこまで受けが辛い目に合い続けます。
菊島 華 (きくしま はな) 受
両親がオメガのという珍しい出生。幼い頃から森之宮家で次期当主の妻となるべく育てられる。囲われています。
森之宮 健司 (もりのみや けんじ) 兄
森之宮家時期当主。品行方正、成績優秀。生徒会長をしていて学校内での信頼も厚いです。
森之宮 裕司 (もりのみや ゆうじ) 弟
森之宮家次期当主。兄ができすぎていたり、他にも色々あって腐っています。
健司と裕司は二卵性の双子です。
オメガバースという第二の性別がある世界でのお話です。
男女の他にアルファ、ベータ、オメガと性別があり、オメガは男性でも妊娠が可能です。
アルファとオメガは数が少なく、ほとんどの人がベータです。アルファは能力が高い人間が多く、オメガは妊娠に特化していて誘惑するためのフェロモンを出すため恐れられ卑下されています。
その地方で有名な企業の子息であるアルファの兄弟と、どちらかの妻となるため育てられたオメガの少年のお話です。
この作品では第二の性別は17歳頃を目安に判定されていきます。それまでは検査しても確定されないことが多い、という設定です。
また、第二の性別は親の性別が反映されます。アルファ同士の親からはアルファが、オメガ同士の親からはオメガが生まれます。
独自解釈している設定があります。
第二部にて息子達とその恋人達です。
長男 咲也 (さくや)
次男 伊吹 (いぶき)
三男 開斗 (かいと)
咲也の恋人 朝陽 (あさひ)
伊吹の恋人 幸四郎 (こうしろう)
開斗の恋人 アイ・ミイ
本編完結しています。
今後は短編を更新する予定です。
俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜
明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。
しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。
それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。
だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。
流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…?
エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか?
そして、キースの本当の気持ちは?
分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです!
※R指定は保険です。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
王冠にかける恋【完結】
毬谷
BL
国立天風学園にはこんな噂があった。
『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』
もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。
何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。
『生徒たちは、全員首輪をしている』
◆
王制がある現代のとある国。
次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。
そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って……
◆
オメガバース学園もの
超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
ヘタレな師団長様は麗しの花をひっそり愛でる
野犬 猫兄
BL
本編完結しました。
お読みくださりありがとうございます!
番外編は本編よりも文字数が多くなっていたため、取り下げ中です。
番外編へ戻すか別の話でたてるか検討中。こちらで、また改めてご連絡いたします。
第9回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございました_(._.)_
【本編】
ある男を麗しの花と呼び、ひっそりと想いを育てていた。ある時は愛しいあまり心の中で悶え、ある時は不甲斐なさに葛藤したり、愛しい男の姿を見ては明日も頑張ろうと思う、ヘタレ男の牛のような歩み寄りと天然を炸裂させる男に相手も満更でもない様子で進むほのぼの?コメディ話。
ヘタレ真面目タイプの師団長×ツンデレタイプの師団長
2022.10.28ご連絡:2022.10.30に番外編を修正するため下げさせていただきますm(_ _;)m
2022.10.30ご連絡:番外編を引き下げました。
【取り下げ中】
【番外編】は、視点が基本ルーゼウスになります。ジーク×ルーゼ
ルーゼウス・バロル7歳。剣と魔法のある世界、アンシェント王国という小さな国に住んでいた。しかし、ある時召喚という形で、日本の大学生をしていた頃の記憶を思い出してしまう。精霊の愛し子というチートな恩恵も隠していたのに『精霊司令局』という機械音声や、残念なイケメンたちに囲まれながら、アンシェント王国や、隣国のゼネラ帝国も巻き込んで一大騒動に発展していくコメディ?なお話。
※誤字脱字は気づいたらちょこちょこ修正してます。“(. .*)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる