上 下
6 / 106

5.行きたい高校

しおりを挟む
 ―――翌日

「違和感しかなかったな」

 先生が言っていた通りネックガードは制服で隠れたから良かったものの、首元が気になってついつい触ってしまう。ちなみに体育はタオルを上から巻いて隠すことにした。
 心配していたオメガ疑惑をかけられなかったのは…良かったんだけど、ちょっとだけ複雑。

 そして今日はまた新たな問題発生。って前々からいつか話さないとと思っていたことなんだけど。

 進路希望調査の提出…俺は全バース受け入れている高校、稜里高校に行きたい。

 母さんは…何て言うだろう? ずっとオメガなのは何かの間違いのはずだと、姉ちゃんと同じベータ校に行かせるつもりだったのは知ってる。そして父さんは国内のオメガ校の学校案内の資料請求してた。

 父さんから説得して…あっ!! 姉ちゃんだ! 俺にアルファと付き合ってほしいって言う姉ちゃんをまず味方につけよう。




 結果としては大成功。

 母さんはオメガであると受け入れている最中で、ベータ校に進学すると信じたまま頭が切り替えられてなかったし、父さんも思っていた通りオメガ校を勧めてきた。

 先に折れたのは父さんで…まぁ電車通学になるから条件付だけど。

 稜里高校は付属大学に内部進学ができるとか、オメガ校出身者は高校卒業後すぐ結婚する人が多いけど、私よりも先に日向を嫁に出すのかとか、なんか色々説得力のある内容で姉ちゃんが言いくるめてくれたんだ。

 俺的にはオメガらしくないから、ベータ偽装できる全バース校であり、1番家から近いから稜里高校に行きたいってだけだったんだけどな。

 しかも話し合い中ずっと泣いてる母さんに対し、もういい加減疲れるわって思ってたところで、『お母さん、これ読んで』とBL漫画を出した姉ちゃん。『日向の幸せがここに描かれてるから』って…流石というか、姉ちゃん強すぎな。

 でも母さんは姉ちゃんの提案をすんなり受け入れていて、姉ちゃんももっと早くに提案してくれたら良かったのにって思ったのは心に留めておくことにした。

 それより姉ちゃんって少女漫画みたいな恋愛をしたことがあるのか? BL漫画みたいな恋愛なんて俺には起こらないと思うんだけど。

 ってか父さんも漫画を読むって言い出すし、家族みんなでBL漫画読むってどんな家族だよ。

 でもまぁ、姉ちゃんには感謝してる。せっかく素直に『ありがとう』って言ったのに、お礼はアルファの彼氏ねって言ってきたのにはちょっと呆れたけど。いつでもブレない姉ちゃん。姉ちゃんが姉ちゃんで良かった…コレは言わないけど。





 夏休みに入り、部活も引退して本格的に受験モード。

 稜里高校に行くってことを一樹に伝えると、俺もそうする! と春から一緒に火・金の週2で駅前の塾に通い中なんだ。……夏期講習には参加してない。通常授業ではアルファは別なのに、夏期講習は一緒だって聞いたから、何となく。本当に何となく、参加はやめとこうって。

 火曜日の今日は通常授業の日。購入先が塾の横にあるのコンビニに変わったけど、帰宅途中で買い食いして帰るルーティーンは変わらずで。

 あっちののコンビニと違って狭いけど、入口に人が溜まってないのが良い!

「あっつー、夏休みに塾とか受験生って感じだよな。そういえば日向さ、最近バニラアイスお気に入り?」
「あー、何か塾に来ると食べたくなるんだよ」
「頭使うと甘いもの欲するって言うもんな!」

 そう言って買ったドリンクを一気飲みした一樹。

「何かこの塾さ、ちょっとバニラの香りするじゃん?」
「そう? 芳香剤かなんか?」

 芳香剤じゃない気がするんだけど…安心するというか…妙に落ち着いて、家で勉強するよりはかどるんだよな。

「それ前も言ってたよな。確か春くらい」
「そうだっけ?」

 そう言われるとそんな気もしてきたような? 一学期は色々あったからなぁ。

「前は何でもいちごだった日向が懐かしいわ」
「……俺も大人になったんだよ」
「バニラって大人か? 俺はいつでもコーヒーだから大人だけどな」
「一樹はコーヒーじゃなくてコーヒー牛乳じゃん」

 確かに前はいちご味が好きだった。女子みたいだから黙ってたのに一樹にはバレてたのか。ちょっと恥ずい。



 俺がもっとオメガらしかったらオメガ校も選択肢に入れただろう。でもそうなるとこうやって一樹と一緒に塾通いすることもなかった。だから俺の選択はきっと間違ってなかったって思うんだ。

 時代が変わったとはいえ、自分にも周りにとってもオメガ校が一番安心する学校だって分かってる。それでも俺の気持ちを汲んで、協力してくれてる家族のためにも、絶対に合格する!!

 そう気合を入れ、猛勉強して受験して、合格して……入学式!!

 の前に初めての発情期が来てしまった。

 西井戸先生にも、オメガフェロモンの測定値が上がってきてるからそろそろ来そうだね。って言われていたから覚悟はできていた…けど、想像以上に辛かった。身体への負担が一番少ない弱い薬から試したからであってほしい。

 春休みはほぼ発情期で潰れてしまったけど、問題なく入学式に出席できたから、それだけは良かったのかな。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染から離れたい。

June
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。 だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。 βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。 誤字脱字あるかも。 最後らへんグダグダ。下手だ。 ちんぷんかんぷんかも。 パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・ すいません。

僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

エル
BL
(2024.6.19 完結) 両親と離れ一人孤独だった慶太。 容姿もよく社交的で常に人気者だった玲人。 高校で出会った彼等は惹かれあう。 「君と出会えて良かった。」「…そんなわけねぇだろ。」 甘くて苦い、辛く苦しくそれでも幸せだと。 そんな恋物語。 浮気×健気。2人にとっての『ハッピーエンド』を目指してます。 *1ページ当たりの文字数少なめですが毎日更新を心がけています。

俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。 しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。 それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。 だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。 流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…? エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか? そして、キースの本当の気持ちは? 分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです! ※R指定は保険です。

森の中の華 (オメガバース、α✕Ω、完結)

Oj
BL
オメガバースBLです。 受けが妊娠しますので、ご注意下さい。 コンセプトは『受けを妊娠させて吐くほど悩む攻め』です。 ちょっとヤンチャなアルファ攻め✕大人しく不憫なオメガ受けです。 アルファ兄弟のどちらが攻めになるかは作中お楽しみいただけたらと思いますが、第一話でわかってしまうと思います。 ハッピーエンドですが、そこまで受けが辛い目に合い続けます。 菊島 華 (きくしま はな)   受 両親がオメガのという珍しい出生。幼い頃から森之宮家で次期当主の妻となるべく育てられる。囲われています。 森之宮 健司 (もりのみや けんじ) 兄  森之宮家時期当主。品行方正、成績優秀。生徒会長をしていて学校内での信頼も厚いです。 森之宮 裕司 (もりのみや ゆうじ) 弟 森之宮家次期当主。兄ができすぎていたり、他にも色々あって腐っています。 健司と裕司は二卵性の双子です。 オメガバースという第二の性別がある世界でのお話です。 男女の他にアルファ、ベータ、オメガと性別があり、オメガは男性でも妊娠が可能です。 アルファとオメガは数が少なく、ほとんどの人がベータです。アルファは能力が高い人間が多く、オメガは妊娠に特化していて誘惑するためのフェロモンを出すため恐れられ卑下されています。 その地方で有名な企業の子息であるアルファの兄弟と、どちらかの妻となるため育てられたオメガの少年のお話です。 この作品では第二の性別は17歳頃を目安に判定されていきます。それまでは検査しても確定されないことが多い、という設定です。 また、第二の性別は親の性別が反映されます。アルファ同士の親からはアルファが、オメガ同士の親からはオメガが生まれます。 独自解釈している設定があります。 第二部にて息子達とその恋人達です。 長男 咲也 (さくや) 次男 伊吹 (いぶき) 三男 開斗 (かいと) 咲也の恋人 朝陽 (あさひ) 伊吹の恋人 幸四郎 (こうしろう) 開斗の恋人 アイ・ミイ 本編完結しています。 今後は短編を更新する予定です。

王冠にかける恋【完結】

毬谷
BL
国立天風学園にはこんな噂があった。 『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』 もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。 何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。 『生徒たちは、全員首輪をしている』 ◆ 王制がある現代のとある国。 次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。 そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って…… ◆ オメガバース学園もの 超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

恋人が本命の相手と結婚するので自殺したら、いつの間にか異世界にいました。

いちの瀬
BL
「 結婚するんだ。」 残されたのは、その言葉といつの間にか握らせられていた手切れ金の紙だけだった。

処理中です...