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第一章「『魔法少女☆マジカラ』編」
第3話(Aパート)
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休日である土曜日の朝、日差しが熱いくらいに強い
ごく普通の一般女子中学生赤井かないこと私はガラス越しの強すぎる光に、嫌々ながらも目を覚めさせられ仕方なく起き上がった
休日だし、まだ全然寝たりないし妙な寝癖のせいで気分ちょっと悪い
時刻は少し早い午前八時、寝惚けながらもフラフラと居間に移動する私、足取りは意外にも重く歩くのもおっくうになってくる
一緒に泊まっていた皆は既に全員起床して私を待っていた
「あっ!!おはようございます、かないさん」
今日、一番最初に早朝の挨拶をしてくれたのは笑顔ののぞみちゃん
「おはよう、かない」
「やっと起きたのね、この寝坊助」
「いやゆめみさんまだ八時なんスけど…」
それからかさみちゃん、ゆめみちゃん、アイリスと順に見かけては挨拶がてら一言を私に投げかける、どうやら既に私以外は全員起きている様だ
よくこんな朝早くからお目目パッチリに目覚められるな、面倒臭いし絶対に見習う事は無いけども
となればさっさと洗面所で顔を洗って髪も整えて、先に歯磨きもついでに済ましてから皆と一緒に居間でゆっくり朝ご飯でも食べよう
知ってる?朝の歯磨きは朝食前のが良いんだってね
「っぷはぁ…あー、朝早くから顔洗うとスッキリするなぁ」
慣れない洗面所で顔を洗いタオルを手探りで探しては拭き、次に髪を思いっきり濡らしてドライヤーで乾かしながら櫛でとかしていく
しっかしこの後はどうしようか、どこかに遊びに行こうかなぁ
いやでもこんな風に幼馴染メンバーが全員揃ってお泊りするってのも中々無かったし、皆と此処でのんびりだらけるってのも良いか
そう、私達がお泊りしたこの家ーー
「さぁーて、せっかくの休日だし…今日は何をしようかしらね
何が良いと思う?正さん」
ーー正さんが住んでいるこの家で!!
「うん、一先ず自宅にでも帰ってくんない?今すぐ」
ー【第3話『仲間入り!!初めての秘密基地』】ー
「ひっどいなぁもう、それがうら若き美少女に言い放つセリフ?そんなんだとモテないよ、私達よりも随分大人なクセして全く…」
にしても思った以上に辛辣、もしかしてエロ本か何か宅配してんの?
「散々強引に押しかけたのはお前らだしモテなくても良いし邪魔だしプライバシーの侵害だし邪魔だし邪魔だし物凄く邪魔だしさぁ…」
邪魔って言った、四回も邪魔って言ったよこの人!!こうなったらスーパー美少女かないちゃん必殺の悩殺泣き落としをするしかあるまい
「酷い…こんなか弱い少女四人+妖精を放り出すっていうの!?」
「か弱き乙女かー、そら住宅街のど真ん中でも漏らすわな」
「ゴメン流石に勘弁してあげて、ゆめみちゃん泣いちゃう」
しかし参った、私お得意のくっそウザい挑発ならいざ知らず…半ば悪ふざけでやったとはいえ泣き落としも通じないとは一体どうしたものか
実は前回の後、私達は怪人達との戦いによる疲弊等(主に仲間の失禁)で自分の家にも帰れそうな状態へとなってしまっていた
そんな時に夜遅くの時点で私達でも丁度泊まれそうな所…もとい少しばかりは休めそうな場所、即ち正さんの家が近くにあったのだった
…まぁ、元から押し入る予定だったのは言うまでもないが
と、そんな訳で私は兎に角家主の言質を無理矢理ではあるが取った上で正さんの住処にてストライキ張りに居座り寝泊まりした、という感じでした
はい八割私のせいです、残りの二割?それにノった我が親友達だよ
「幾ら前回のあらすじ解説で誤魔化そうが仲間にさりげなく罪なすりつけようが結局全部認めて開き直ろうがどの道押しかけたのは許さないからな?」
「畜生やっぱり気づいてやがったコイツ!!」
馬鹿な、この私必殺かつ小説セオリー破壊覚悟の奥の手『メタ説明で時間稼ぎしつつなぁなぁにする』が通用しない、だと…!?
「お前らボケ倒し勢の考え方なんざお見通しなんだよバーカ」
「クソッ…貴様の方が一枚上手だったという事か…!!」
「さて、どうしてやろうか…男女平等パンチとか」
「待って第一話の反則パンチは本気で洒落にならない」
いやそれ魔法少女でも割と冗談抜きの死刑宣告(ガチ)なんですがそれは、というか取り付くシマもありゃしないしどうしよう
「いやね?もっと手心というか、笑って済ませられるカンジので…」
「パンチ?念力?それともビーム?」
「何サラッとバカップル夫婦の妻側が言いそうなフレーズの韻を踏みつつ物理的に目を光らせてんの、止めて発射準備しないで」
ピピピピという独特な音と共に正さんの片目がこっち向いたまま光りだす
「どうした酷い顔だぞー?顔でも洗っとけよ」
「その状態でコッチ向くな回れ右しろ危ない危ない危ない!!」
「大丈夫だよお前しか狙ってねぇから」
「余計タチが悪いわ!!」
よりによってボケ倒しの上に仕置きの方法が洒落になってないんですけど、確実に一発掠っただけでも完全に即死なんですけどそれ
というかさっきよりも徐々に光が強くなってーー
「そんじゃ俺の気分的に光子力ビームで、5、4…」
「いや本気で死ぬって、ねぇ聞いてる?ちょっせめて変身状態でーー」
あっ違うわコレ、100%確定演出で私の息の根を止める気だ
「さーん、にー、いーち…」
「終わった…確実に…」
私の人生の終わりを告げる光が体ごと包み込んで今放たれようとしていた、魔法美少女マジカルレッドちゃんの次回作にご期待ください
「ゼロ、発sーーーー」
だが、そうは問屋が卸さないのがここの小説なのです
「おーい正さーん、朝食出来たんで早く来てくださいッス!!」
「ういうい分かりましたっと、今行くよー」
「!?」
アイリスの呼び声と共に発射寸前の光が瞬時に消え、私に向けていた筈のトンデモ殺気が和らぎ何も無かったかの様な雰囲気で背を向けた
「いやぁ悪いね朝食なんか作らせちまって、言えば作んのに」
「泊まらせて貰った礼ッス!!私の料理をご賞味あれ!!」
「アンタは料理運んだだけでしょうが…」
「まぁまぁ、それでも大分助かりましたし」
「おなかすいた…」
私を除いた賑やか四人組が朝食準備済みの今に向かっていく
そこでようやく私は気づいた
「…え?
アレ、私…からかわれ損な上にさりげなくハブられた?」
信頼していた全員から、おもっくそ仲間外れにされたという事に…
という事があってからの朝食の後
「…………」
「かないさーん、私達が悪かったですって…」
あの後の話で分かった事だが、結局アイツら全員グルだった
早朝から起きて計画していたそうです、もうお前ら全員私の敵だ
「かーなりふてくされてるわねぇ、いつもより重症よコレ…」
「やっといてなんだけど面倒くせぇ」
「ッスねぇ」
因みに犯人は勿論正さん…ではなく真面目なキャラの筈のアイリスだった、てかテメェ何元凶なクセに他人事なフリしてんだ
「かない、かないー…」
「ツーン」
幾らかさみちゃんでもこればっかりは許さない、故に物凄く可哀想な気もするが無視だ無視無視徹底的に兎に角無視だ
…物凄く構ってあげたいけども
「むぅー」
「ほらかさみ、そんな不審者に話しかけるのやめなさい」
「流石にやめたげてッス」
疑いの目と言いい今回の事と言いゆめみちゃんはそんなに私をいじめて楽しいのか、私に恨みでもあんの?
「というかそう言うアイリスが言い出しっぺなんじゃない」
「あ、あはは…」
あははじゃないからな、やって悪い事だってあるんだからな
「普段の仕返しのつもりだったんスけど…ちょっと効き過ぎてるッスね」
「つってもこんな状態、どうするんですか…かないさん完全に卑屈になってますよ?律儀に部屋の隅で綺麗な体育座りしてますよ?」
ふてくされてないもん、ただちょっと人生について考えてるだけだもん
…主に友達や同僚の付き合い方とかについて
「…仕方ないわね」
ゆめみちゃんが何やら如何にも面倒そうな顔をしてコッチに歩いてくる、たとえ蹴られようが殴られようが動くつもりは毛頭ないけど!!フンッ!!
と、そう思ってる間にもゆめみちゃんは何やら耳元で何か言おうとする
「ちょっと耳貸しなさい」
「……………」
何をするつもりかは見当もつかないけどどうせ暴力に物言わせるんだ、そんな事してもこの最終防御形態である今の私には全く効かないって…
「欲しがってた新発売のゲーム、お詫びと言っちゃなんだけど…」
「ハァイかないちゃん復活!!今すぐ復活しましたァ!!」
と思ったけど良く考えたら不毛だよね仲良くした方が皆の為だよね!!
言っておくけど物に釣られた訳じゃないんだからね、本当だからね
「ふぁ!?あれだけふてくされてたッスよね!?」
「はっはっはっちょっと何言ってるか分かんないです、私はさっきからいつも通り元気なかないちゃんですよー!!」
「しかも何かちょっとウザくなってるんスけど、超ウザいんスけど」
あっはっは復活早々に容赦なく辛辣だなぁ全くもうはっはっはっhあぁいやゴメンやっぱもうやめてもう心折れそう
「ゆめみさん、一体何をしたんですか?」
「…買うとは言ってないのだけどね」
あれ?今何か聞き逃せない言葉が聞こえて様な気がする…
「コント終わった?ほれ、麦茶かコーラのどっちかを選べ」
「何回も言っているけどコントでは無い!!あ、コーラは貰う」
と、騒ぎが丁度一区切りついたという絶妙なタイミングで、居間の奥の小さなキッチンから正さんが人数分のコップと麦茶&コーラを持って現れた
「ありがとうございます、あっ私は麦茶を」
「キンキンに冷えてやがるっ…!!」
「本当に変わり身早いわよねアンタ…私はコーラで」
そう言うゆめみちゃん達もさり気に飲み物とって居座ってるし、それこそ本当に昨日の泣き顔は何処へやらって感じでさ
「麦茶をお願いしますッス、って本当に冷たいッスってやだ手が結構痛い」
「冷えた、コーラで…」
「ほいほーい、てか自分でやれ」
正さんは持っていたでっかいコーラのペットボトルと麦茶の入った容器、更に空のコップが乗っけてあるお盆を目の前のテーブルに置く
そして眠たそうな目で堂々と横に座り壁に寄りかかった
「よっこらしょっと…あー、麦茶が美味い」
コップに注いではチビチビと飲む様子は休日の酒飲みのおっさんにも見える、いやこうやって人の家で勝手に居座ってる私が言うのもなんだけどさ
「ふー、偶には魔法少女抜きでのんびりするのも良いわね…」
「そうですね…このまま暫く此処に居たい位です」
だが私以外にも既に魔法少女組は完全にリラックス状態
「あ、それ良いね!!それじゃ私は一旦家にゲーム取りに行ってくる!!」
そう言って私は大きく欠伸し、皆と遊ぶ為のゲームを取りに行こうと…
「いや帰ってくんない?」
した直後のこの部屋の主人からの帰れコールが突如出てしまった
「でしょうね」
「…えっ、あれ?」
アレ?今のは完全に此処でゆったりする的な空気だったんですが…
「まぁ、ずっとこのまま居ても迷惑ですッスしねぇ」
「昨日無理にでも泊まらせてくれて、その上で更に泊まるというのもちょっと…というか大分気が引けるというか、かわいそうですし…」
あらやだのぞみちゃんあんな天パのおっさんにもかわいそうとか割と優しいって違う!!いやフラグ的に今のは絶対此処に居座る的なアレだったじゃん!?
何でまた私だけ梯子外したの!?またさり気に常識知らず扱いなの私!?
そうだかさみちゃん、私と同じく泊まろうとしてたかさみちゃんなら…!!
「…ごめんなさい、また来ても良い?」
「おう、今度はちゃんと前もってアポ取ってから来いよ」
「ありがとう、正さん」
ちょっとかさみちゃぁああんんんん!!!?
いや君昨日は私の味方だったでしょうがぁああ!!梯子外されたどころか思いっきり目の前であっからさまに裏切られてんだけど私ィ!!
さっきのといいそんなに私恨み買った?そんなに君達に何かした私?
「まぁ名残惜しいけどしょうがないッスね、どうせだしかないさん以外のコッチの魔法少女メンバーの自己紹介とかもしたかったッスけど
まぁこちらも魔法少女としてのパトロールもありまスし…」
…そういえば毎週土曜日に怪人が居ないか街を見回る自主的なパトロールをするって、そういうのがライフワークに確かにあったような気があったような無かったようなやっぱあったような
い、いや忘れてたわけじゃないよ?ただちょっと寝惚けてただけで…
「でもどうせお世話になったんですし、折角の機会なので軽く名前だけでも憶えて貰ってから行くのも悪くないと思いません?」
「確かに…昨日みたく怪人を倒せるのなら適度に交流しても損は無いわね」
「それ位なら全然大丈夫だ、帰れっつったがやる事自体は特に無ぇしな」
物凄く不味いしヤバい、私抜きでドンドン話が進んじゃっている
このままではこの魔法少女アニメの読者達もとい視聴者さんに『主人公なのにゲスいし青と緑の方が主人公っぽい』と何処かしらで叩かれかねない
一刻も早く何処かでこう、裁判ものっぽく切り返さなければ…
「私の名前は【緑野 のぞみ】って言いますっ!!趣味は読書とかで…え、えーっとその、魔法少女をやっていますっ!!」
「のぞみさん落ち着いて、魔法少女はそちらさんもう知ってるッス」
「…私は【青川 ゆめみ】よ、この馬鹿に誘われて魔法少女やってるけど…趣味はスポーツとかね、まぁ一応宜しく頼むわ」
「なかまぁー…」
なんて考えている間にも自己紹介終えて今にも帰ろうとしてる、早く何とかしてどうにか…何でも良いから正当化出来ないか…?
てかどうせ泊まるなら先に自己紹介位しとけよ君ら、いや私が言うべきでは無いんだろうけどさ
「それじゃあ帰りましょうか、またお元気で」
「まーすぐ会う事になるッスよ、その時はちゃんと連絡するッス」
「ばいばーい」
「おうまたなー」
ヤバい時間がもう無い、何かないか何かないか何かないか…!!
「…その、正とか言ったわよね」
「お?あぁうん、どうしたんだ?」
「そ、その…ゎたしが、漏らぃた事…その、お願いだから…」
「うん分かった、だから涙目&上目使いで服引っ張らないで、君が故意じゃなくても傍から見たら俺犯罪者にしか見えなくなっちゃうから、ね?」
何かない…ん?まてよ、お漏ら…し……
…そうか、その手があった!!
私が見つけた唯一の突破口、多少ごり押しでかつ強引だがやるしかない
「かないさーん、帰るッスよー!!」
「何してるんでしょうか…?」
見よ、これが私のパーフェクトコミュニケーションだッ!!
「…ゆめみちゃん
その【不祥事】した下着、どうしたのかな?」
「…………えっ」
そう、この私の作戦というのは…
「あっれぇー?まさかまさか…忘れて部屋に置きっぱなしにしたのかな?それとも…正さんに信頼(意味深)して預けてきたのかなぁ?
そ・れ・と・も、まさかぁ…その家主もそれを知ってて預かったのかな?JCの染み付きパンツをさぁ!?」
「」
ゆめみちゃん&正さんを下げて自然に私を持ち上げるという寸法なのだ!!
実を言うと家に出る前にふと何故か染み付きのまま放置してあったパンツがチラリと目についたのだ、その時は思い違いだと素通りしたが…
良く考えるとおかしいって事で即座にチラリと確認し、忘れた事を改めて確かめた上でこの行動に移ったというわけなのだ、我ながら天才だ!!
…いや、良く考えたら本当に何でパンツ置いてきたのこの娘
「…ゆめみさん、その…ッス」
「い、いや違…アレ本当に無い!?」
「あ、その…ゆめみさん
私はゆめみさんの事、何があっても…友達と、思ってますから…」
「お願いだから重い感じにすんのやめて!?何かの間違いだから!!」
よーしよし…いい感じに生暖かい目で見られてる、これなら私も大丈夫だ
「まぁ誰しも人には間違いなんてあるよ…」
「だから何かの間違いだって言ってんでしょーが!!」
チッ強情だな…まぁ良い、なら私が直々にトドメを刺してくれるわぁ!!
「いやそうは言ってもぉー、実際部屋に染み付きパンツあるわけだしぃ―」
必殺証拠を突きつける!!
「うぅ…嘘でしょ、私がこんな…幼稚園児でもしないような恥を…」
良し良し後もうちょいで落ちる、このまま一気に畳みかけて…
「…かない、何でお前下着が部屋にあるって分かったんだ?
バッグを見てどっかに忘れたってんなら分かるけども、何で見てもいないのに部屋の中に置き忘れてるって分かったんだ?」
………あっ、やべ
「お前、故意に置いてきたか何かしたろ?」
「…かない?」
「待った話せば分かる、からかったのは悪かったが仕方が無かったんだ」
そう、これは私のカーストを挽回する為の致し方ない犠牲だったんだ
「流石にやり過ぎだ、故意にトラウマ作るのは見逃せんそ…」
やだまた何か私に向かっ何かてチャージしてる、私本気で死んじゃう
「かぁーなぁーいぃー、良くも私を陥れようとしたわねぇー」
こっちもこっちで別のモンをチャージしてる、やだ私四面楚歌…
「?」
「かさみさんは見ない方が良いですよ」
いやのぞみちゃん、かさみちゃんの目を塞いでないで助けて!?
「こればかりは、自業自得だ…」
「覚悟は良いわね…?」
うんこっわいちびりそう、でもせめてここで食い下がる訳にはいかない!!
「待った、アンタら何か誤解してますン!!」
「ほう、何を誤解してるって?」
「面白いわね、言ってみなさい…!!」
いやそのゆめみちゃん?君に関する事なんですけども
「下着の件は何でもなく本当にゆめみちゃん自身が忘れただけです、私はそれをそのままにしといてドッキリ風にしただけですねん」
「…何を言うかと思ったらそんな嘘が通じるとでm」
とゆめみちゃんが聞く耳を持たずとしようとした瞬間
「そういえば夜からずっと、居間に青いパンツあったよ」
ナイスかさみちゃん、エクセレント援護だ
「朝も置いてあったけど、ゆめみのなの?」
「……へ?」
「「うわぁ…」」
…仕掛けた張本人の私が言うのもなんだけどさ、記憶喪失なだけとはいえ子供の思考って時として物凄く残酷だよな
「つまり本当に嘘はついてないと」
「YES」
これにはアイリスは勿論のぞみちゃんすらも本気のドン引き&苦笑い、というか乙女の尊厳を忘れてくるって時点で実は私も結構ドン引きである
「う、嘘だ…うわぁああああーーーーッッ!!!!」
見るからにゆめみちゃんの顔が福〇ばりにぐにゃあしていき、膝から崩れ落ちる
うんまぁ、ドンマイ
「…あー、でだ…つまり君は下着自体は仕掛けてないと?」
「YES」
そしてコチラも正さんの事情聴取、しかし悪い事では無いのだ
私はただその場で常に堂々と肯定していれば良い
「て事はアイツのポンコツのせいって事?」
「YES」
「君はただそれを報告しに行っただけって事?」
「YES」
「でも悪意自体はあったって事?」
「YES…って、あっ」
あっ…
「どうやらマヌケは見つかったようだな…」
「あ、あはは…お手柔らかに?なんて…」
「だ が 断 る」
ゴメン、今度こそ本当に死んだわコレ
「あああああああああああああああああああああッッッッ!!!!」
さらに十分後…
「やーっと収まったな、やっと落ち着ける」
「私、頑張りました!!」
「あーはいはいお疲れさん…っと、お前さん達パトロールだっけ?があんだろ、そろそろさっさと帰ったほうが良いと思うぜ」
正さんはそう言いながらのぞみちゃんの頭を躊躇なくわっしわっしと遠慮なしに撫でまくっていた、新種のロリコンかな
と、その時アイリスが何やら申し訳なさそうに何かを言おうとする
「あーその事なんスけど…
その悪いんでスが正さん、一緒にパトロールして貰って良いッスか?」
それは読んで字の如く、正さんも一緒に見回りに行くというものだった
正直厚かましいんじゃなーい?
「…いや君達魔法少女共で事足りなくない、いつもやってる事なんだろ?」
まぁそう聞きますよね、そうですよね
「それもそうなんスよねー
…二人がそこで戦闘不能にでもなってなかったら、の話ッスけど」
「あー、やっぱり?」
あぁうん、やっぱり結局そこに行きつきますよねごめんなさい
因みにだが今の現状、ゆめみちゃんがすぐ近くの電柱の傍で体育座りで落ち込みのぞみちゃんがそれを必死に介抱、更にその先でヤ○チャしてる私
「まぁあのバ…かないさんは置いといて、ゆめみさんはちょっと戦闘出来そうにないんで出来れば宜しくお願いしまッス
一回家に帰るのも面倒なんでもうこのまま行くつもりッスし」
おい今バカって言おうとしたろ、おい
「いや…今お前ら制服姿だろ、このまま歩くと補導されんぞ
それとも何か、魔法少女に変身したまま街を練り歩くって事か?」
「その通りっちゃその通りッスけど言い方…
まー大丈夫ッス、それに関しては私の仲間に根回しする様に言うんで」
「それで良いのか現役女子中学生、後周りの目とか的に俺」
でた、町中にはびこるアイリスの仲間…待って警察の中にも居るの?
「…まぁ兎に角、何にせよだ」
っとそんな事考えてる場合じゃない、それよりも…
「こんなの絶対死ぬしかないじゃない…」
「いや死んじゃ駄目ですよ!?というか周りの目がアレなんですけど!!」
「やっべ動けない、誰かザオリクかけてマジで」
一番心配するべきはこの私のボロッボロっな肉体だ、いや本気で痛いし動けないってか誰か起こしてくださいお願いします
「…アレ、どうにかしてからだな」
「…はい」
余談だがその時の二人の目は物凄く冷ややかで白かった
ーーーー
で、真昼間かつ街中のど真ん中
私達はいつも通り駄弁りながら予め決められたルートをひたすらに見渡しながら、ただゆっくりと全員で固まり歩いていた
と言ったものの基本的にはパトロールというよりも散歩である
「…で、警備ってのは聞いたが
さっきから街ン中歩いてるだけだが、そもそも具体的にはどうすんだ?」
そのすぐ後ろにて正さんがついていきながら私達に話しかける
「うーん…買い物、とか?」
「いやとかって俺に聞かれても…」
とは言ったもののやる事自体は本当に特に至って無いのだ
そもそもこのパトロール、元はちょっとした事件が原因でやっているのだ
正さんが来るよりもずっと前…やっと三人が集まった直後の出来事だった、正直この頃は連勝していたのもあって今よりも調子の乗っていた
そんな時期に突如として街から現れた怪人の大量出現、量自体は第二話よりかは少ないけど私達三人を圧倒するにはそれでも十分だったんだ
何とか被害を受けつつもギリギリやっつけた後にアイリスが調べて分かった事なんだけど、その怪人達は前々から盗難や追剥等とこっそり犯罪を犯しながらも自身の魔力で数を増やしていた事が分かったという
その潜伏期間たるや一か月以上、怪人が軍団に成るには十分すぎる時間だ
つまりは大きな魔力反応が出てから行動していたが為に行動も遅れ、負けかけたのだ
その事件からは近くであれば小さな魔力も見つけられるアイリスと共に小さい芽から潰さんとこのような街の見回りを週一でする事になったのだ
…とまぁ長々と大げさに言ったが、やる事自体は単なる街中の散歩も同じ
正直そこらのバイトよりも割の良い仕事だ…うん、給料無しを除けばだけど
「まぁ怪人が近くに居るならアイリスが教えてくれるから、私達はただ街中ぶらり旅でもしてれば大丈夫だからさー」
「それでいいのか街のヒーロー」
それで良いのだ、だって私達も元は所詮ただの一般学生だし
「お前らが良いならそれでも良いんだけど…」
「別に警察でも無いんスから気楽にやれば良いんでスよ、もし何かがあった場合は私が気づきますし細かい事はあまり考えなくても良いんッスよ」
一見いい加減に聞こえるが実際気負い過ぎても疲れるだけだしね、それにアイリスの言う通りコレの魔力探知で何とかなるってのも本当だし
「その油断が命取りにならなきゃ良いんだがな」
ちょ、不吉な事言わないで…最近本当にそういうの敏感なの
「そういえば、一つ聞きたい事があるんですけど…」
「どうしたののぞみちゃん?」
と、ここでふとのぞみちゃんが質問したいとばかりに手を上げる
「私あまり正さんの事知らないなーって思って…初対面ですし、折角ならこのお出かけを機に色々お話ししたいなー、なんて」
あー、そういや簡単な自己紹介しただけであんま詳しい事は話してないや、なら確かにのぞみちゃんの言う通り割と丁度良いかも
「いや…とは言ってもよ、話す事なんて特に無いんだけど」
しかし正さん、ここにきて急にちょっと辛辣というか塩対応な返事
「なら趣味とかはどうなの?何か好きな事とか…」
「あー基本的に色々やる、料理にスポーツやゲーム…果ては機械弄りとかそれこそ色々沢山のを」
わーお思った以上に結構な多趣味かつ広範囲なものだった
「あら、数を除けば思ってたよりも随分普通な趣味ね、てっきり人体改造か何かだと思ってたわ」
バッタのライダーか何かかな?
「お前はを何だと、こちとら小市民ぞ?」
「悪いけど小市民は怪人をワンパンしないしビームも出さないと思うの」
というかそれ以上にごく普通のモブはメタネタなんか言わねーから、【第三の壁】とか見ないというかしそもそも見えねーから、な?
「兎に角趣味は至って普通のやつだ、色々適当にやってるとだけ」
「えーっ、もっと色々きかせてよーぅ」
話題はまだ腐る程あるし質問攻めにでもしてやろう、主に朝の仕返しに
と、そんな時に何故かのぞみちゃんが徐ろに私を押しのけ前に出た
「…読書、するんですか?」
「うん?あー読むぞ、漫画ラノベに文学小説その他諸々だな」
「あっ」
やっべ、のぞみちゃんのあの発作の事…すっかり忘れてた
「正、さん…」
「ちょっと待った、あって何だというかコイツ目が座ってる気が…」
あーあ私知ーらない、私何も見てなーいっと
「…………
やっぱり!!て事は本が大好きですよね、いや絶対そうに決まってます!!」
「!?」
「ジャンルは何が好きですか?ラノベだからファンタジー?それとも推理もの、いやSFか青春ものかホラーものか…あぁ想像するだけで楽しみが止まりません!!好きな作品のタイトル、いや作者様は誰かいるんですか!?ここはやはり王道らしく超人気な作者様なんでしょうね、いやマイナーな作者もそれはそれで良作がたくさんあって趣もあるというか寧ろそっちのほうが良いかもしれませんね…一体どんなものなんでしょうか、さぁ教えてください早く!!あぁそれとも私のお勧めの本でも聞きますか?それともいっそ一緒に探しましょうか、そうですそうです一緒に二人で名作を読んで語り合いまs…」
「はいそこまでェッ!!」
「ごめすッ!?」
流石に暴走どころか狂気に片足突っ込んでるので無理矢理殴って止めた
のぞみちゃんは一見魔法少女の中でも優しく学校のクラスの中でも人気者、まさに紅一点で三人の中で一番の常識人に見えるのだ
…そう思っていた時期が私にもありました
アレは本好きを遥かに通り越しての読書キチです、いざ本に関する事となると今のコレみたいに中毒症状ばりの興奮状態になっちゃうのだ
うん、見方変えればただのド変態だなコレ
「あたた…す、すいません私本の事になると暴走しちゃうというか…」
「…魔法少女ってド変態の集団なん?」
「……あながち違わなく無いかもッス」
いや違うからね、限りなく誤解だからね!?
「天然おバカに路上お漏らしに読書キチに後輩キャラ付けに記憶喪失少女、最後以外で変態か馬鹿以外に何があるってんだよ」
「いや私のはほぼ全部アンタのせいだろーが!!」
「私に至ってはキャラ付けってなんスか!?素ですッスよ!!」
ゆめみちゃんは単に下が緩いだけとして…アイリスは、素…えっ?
「アイリス、正直それは無いわ…」
「あからさま過ぎる後輩キャラはやりすぎかなって」
「畜生こんな世の中なんて嫌いだ!!」
いやどう考えてもひっどいキャラ付けだよそれは
というかそんな事よりも物申したいのは私らが変態扱いされてる点だ、寧ろキャラ付けだけな分アイリスのが評価がマシなんですよ
「心外ね、こいつ等と一緒にしないでよ」
「るせぇオムツ中学生!!」
「それを言ったら戦争だろうがこの野郎!!」
屋上行こうぜ…久しぶりに、切れちまったよ…久しぶりでもないけど
「さて、喧嘩している間にさっさと本屋にでも行くか」
「…(本屋)付き合ってくれるんですか!?」
その瞬間、ちょぴっとだけ周囲がざわついた
「OK、だからその言い回しを止めて一旦離れてくれ警察が来ちゃうから」
ほんの一言でも食いつき過ぎだなのぞみちゃんってか胸が当たってる当たってる、マジで正さんが予備軍じゃなくマジの犯罪者になっちゃうから
「で、本屋って何処だっけ」
「あ、私場所知ってます!!良い所紹介しますよー!!」
「ちょっと待った服引っ張んないで伸びる伸びるてか肌つねんな」
はっはっは、それにしてものぞみちゃんいつになく晴れやかな笑顔だこと
「本…面白いのあるかな」
「おっ、かさみさんも探してみるッスか?私手伝うッスよ」
ってちょっと待って置いてかないでこの小便臭い青いのどうにかして、さっきから寝技かけまくろうとして割とヤバい絵面になってんの
「ちょっ、置いてかな…」
「逃さんぞ貴様だけは…!!」
お願いマジストップ本気で首がしままままままmmmmmmmmm
ーーーー
「てな訳で現在位置は本屋」
「あの二人は置いてきた、この戦いに着いていけそうにないからなッス」
私の居ないまま本当に行きやがったアイツら、因みに私はまだ現在進行形でゆめみちゃんに首締められたままです
本屋の店内は案外結構広く小説や漫画から参考書まで選り取り見取りであった、具体的に言うなら駅のデパートに良くある本屋的な
のぞみちゃんにしては意外にも普通で逆に身構える
「で、どこから見て回りますか!?やはり有名な文庫から攻めて…!!」
「はーいキリが無いので一時間程度にしておくッスよー」
またのぞみちゃんが暴走しかけたところでアイリスが止める、ナイス妖精
「ち、ちょっとだけ…ちょっとだけですから…」
「落ち着け、鏡見てみろ鏡」
明らかに女子中学生がしちゃいけないレベルのヤバい顔してるよこの子、これが小説なのが惜し…いやまだ幸いです
「…にしても、勢いで本屋に来たは良いが何を見るか」
正さんが顎に手を乗せて辺りを見回しながら悩み始める
「決めてないんスか?」
「決めるもクソも俺引っ張られただけだよこの問題児に」
主にのぞみちゃんの戦犯です、本当に私以上にどうにかなんないのあの子
と言っている間にもかさみちゃんが本に対して何やら興味を示している模様
「本、何があるの?」
「ほらかさみさんも居るんスから、ちゃんと一緒に見ましょうッスよ」
そしてその後ろにいる暴走特急もその様子に興味を示している模様…
「ふへへ…何か見たいのある?私が探してきますからね…」
「どうしよう、どっからどう見ても事案にしか見えないッス」
奇遇だな、私も完璧にそうとしか思っていなかったところだ
「…まぁテキトーに何か探すか」
あ、アレは無視で良いんですね
「んー…」
そういうわけで正さんは私達全員そっちのけで本を見に行ってしまった
といっても、常時眠たそうな目なので真面目に読んでいるかは知らないけど
「…ふむ、うん」
「おっいたいた、正さーん!!」
と、そんなところにアイリスがやって来る
…今更だけど人前でのアイリスはちゃんと普通の大きさの人の姿に擬態してるからね?こんなしょうもない正体バレとか無いからね?
「全くあんな地雷原に置いてくなんて酷いッスよ!!」
「そうか、どうなった?」
「何とか静止させた結果、何故か幼稚園の先生になったッス」
いやちょっと待って一体どういう状況なのそれ
「っとそれは兎も角…一体何を読んでるんスか?」
「んあー?コレよコレ」
そう言って正さんが見せてきたのは、意外や意外なものだった
その本とは、簡単に言ってしまえば所謂超能力だのというオカルト本だった
「どれどれ…あー、オカルト的なアレッスか」
まぁ、と言ってもそこまで胡散臭い本という訳でも無く、どっちかというと寧ろ面白い雑学的なものが乗っている週刊雑誌みたいなものである
「っと…やっと見つけたわ、ほらあそこよ」
「く、首が痛い…」
と、そこに四人を見失った後に気が付いて必死の如く探し回っていた私とゆめみちゃんが、和気藹々と話していた二人とやっとの合流を遂げた
「ん?あぁ何だかないさん達ッスか」
「何だじゃないよ何だじゃ…危うく私の出番がもうナレーションしかないんじゃないのと焦りまくったわ!!…まぁ再登場までそこまで字数かからなかったけども」
「OK少し黙ってろ、色々と不味いから」
何にせよやっと見つかって良かった、勿論出番的な意味で
「で、何見てんの?」
私とゆめみちゃんは正さんが持っている本に顔を覗かせる
「うわっ超能力って、随分胡散臭いの見てんのね自分がそんな存在なのに」
「…………」
「私が悪かったからそのファイティングポーズ解いてお願い」
ゆめみちゃんにヘイトが集中している間に私は本をコソッと拝借する
そこにあったのはまぁごく一般的なオカルト超能力の説明や雑学、本当にサイコキネシスやテレパシーに予知能力と私でも知ってるのばかり
「へー、案外図鑑っぽくて面白そう」
「結構分かりやすいんスね、てっきり表紙から小難しい系のものかと」
一応説明しておくと中身こそ小学生か中学生の自由研究に使う図鑑本のそれなのだが、表紙は何でこんなんにしたのかまるで怪しい魔導書である
本当に何でこれが子供に取ってもらえると思ったのか、これが分からない
「本当ねぇ…ネクロノミなんとかかと思う様な表紙だけど」
「止めろ、魔法少女がいるこの世の中じゃ冗談にならないから、マジで」
マジな方のが出るから、本当にやめて
「ま、折角だし…一応買ってから、家でゆっくり読んでみるかね」
だがどうやら正さん自身はこの本は嫌いでは無かった様で、少しばかり興味があるみたい
「…そういえば、前から思っていたんだけど」
「何スか?」
と、そんな時ふとゆめみちゃんがとある疑問を口にする
「その、正の昨日のあのビームとか怪人共を玉にしたのって結局何なの?この本に書いてある超能力にも感じるんだけど…」
「あー…」
それは持っている本と目の前を照らし合わせながらの質問だった
そりゃあそうだわ、そんな質問にもなるわ
「で、そこんとこどうなんスか?」
「あぁえーっと、あー…超能力、的なもので良いんじゃね」
「返答が壮絶に雑ッ!!」
超能力なのか、それともそうでないのか一体どっちなのか
「はっはっは、んな事言われても答えにくいわ
俺自身どう説明したらよいか分からんし、つか正体自体知らんし」
「えっ知らないって…ちょ、ちょっとタイム!!」
正さんの返答を聞き一旦作戦タイム&集合、のぞみちゃん居ないけど
(…どう思う?)
(どうって…本人自体アレは良く知らないみたいね
となるとどうなのかしら、生まれ持ったものか最近覚醒したものだから自分自身あの力をそこまで理解しきれていない…ってところかしら?)
(た、確かにその線が一番ありそうッスね、もしくは何かのトラウマで忘れたとか暴走した過去があるとかそういう…)
((おっそろしい事言うなバカ!!アレが暴走するとか考えたくも無いわ!!))
あんなトチ狂った化け物がトラウマ想起で暴走なんてものは愚か、いっそもう敵に回るという最悪のシナリオまで考えられるなんて想像すらもう嫌だ
というかそんなもん私ら数秒持たずにBADENDじゃまいか
(…と、取りあえずそこには触れず…現状維持という事で)
((了解、というか厄介事的な意味で二度と触れたくない))
と、安全パイでそういう事になった
…あくまで触れないのが一番って話だから、決して先送りとかじゃないよ?
「おーい、タイム終了はまだかー?」
「あ、もう大丈夫ッス…うん大丈夫!!の筈ッス!!」
「不安しか感じない」
いや下手か!!誤魔化すのも動揺隠すのも下手か!!
「まぁ良いや…会計行ってくるからあの暴走娘シクヨロー」
まぁそこは張本人の度量というところか、気づかないフリして行ってくれた
い、いや気づかないフリしてるのかはイマイチ分かんないけど…
「…ふぅ、何とか誤魔化せたッスね」
「ポンコツ駄目妖精」
「ドジっ子キャラ作り」
「何で急に貶されてるんスか私!?」
や、あのお前それ本気で言っているんだったらいよいよ本気で君の頭と目を心配するしかないぞ私達
…それにしてもさっきのいい加減な答えは結局何だったんだろう
多分まぁ嘘じゃ無いんだろうけどめっちゃ気にはなるなぁ、いや嘘じゃないって根拠も所詮ただの堪や雰囲気とかでしか無いんだけどさ
しっかしそれにしてもあのテキトーに取って付けた様な返答に私は、ゆめみちゃんの予想とはもっと違うかの様な違和感を感じていた
まるで、何かを隠してる様な感じが…
「…アレ?そういえば」
っと、ここでまたしてもゆめみちゃんがある事に気づいた様だ
「どうかしたの?」
「いや、そういえば今さっき何か重要な事言ってた様な…確か
暴走娘しくよろ、とかなん…と…か……!?」
…正直言おう、ここで私は今さっきの自分を恨む事になった
「どうしたのゆめみちゃ…ん……」
「うん?何スか…あっ」
何故ならば
「…皆さんそこで何してるんですか?、一緒に本を見回りましょう?」
私達の後ろに、そこに悪魔が居たからだ
「いやえっと…その、待って?」
「ふふふかないさんおかしいですよ?一体何を待つんですか?」
アカン、目のハイライトが死んでる、ヤンデレの顔になってる
「…私は別に見たい物があったからこれで」
「私もゲーム屋の方に行きたいので失礼ッス」
「逃がさんっ!!」
私を生贄にして逃げようとする二人の足を私は力強くガッシリと掴んだ
「ちょっ冗談はやめなさい!!離せ!!」
「今ならまだ間に合うッスよ!!」
「人を身代わりに置いて逃げようとしてよくそんな事言えるな君ら!!」
もうアレだ、この二人だけは絶対に逃がさん何がどうしたって絶対逃がさん
「兎に角お前等全員私の犠牲に…」
だが、そんな揉み合いは無駄だった
「いいえ、皆さん全員で行くんですよぉ…?」
「「「あっ」」」
悪魔は既にすぐそこにいるのだがら
「「「ァァァァァ…!!」」」
「まぁ、そうなるな」
そしてさり気無く正さんはそれを察知しての事かさり気無く危機を回避していた
《【Bパート】へ続く》
ごく普通の一般女子中学生赤井かないこと私はガラス越しの強すぎる光に、嫌々ながらも目を覚めさせられ仕方なく起き上がった
休日だし、まだ全然寝たりないし妙な寝癖のせいで気分ちょっと悪い
時刻は少し早い午前八時、寝惚けながらもフラフラと居間に移動する私、足取りは意外にも重く歩くのもおっくうになってくる
一緒に泊まっていた皆は既に全員起床して私を待っていた
「あっ!!おはようございます、かないさん」
今日、一番最初に早朝の挨拶をしてくれたのは笑顔ののぞみちゃん
「おはよう、かない」
「やっと起きたのね、この寝坊助」
「いやゆめみさんまだ八時なんスけど…」
それからかさみちゃん、ゆめみちゃん、アイリスと順に見かけては挨拶がてら一言を私に投げかける、どうやら既に私以外は全員起きている様だ
よくこんな朝早くからお目目パッチリに目覚められるな、面倒臭いし絶対に見習う事は無いけども
となればさっさと洗面所で顔を洗って髪も整えて、先に歯磨きもついでに済ましてから皆と一緒に居間でゆっくり朝ご飯でも食べよう
知ってる?朝の歯磨きは朝食前のが良いんだってね
「っぷはぁ…あー、朝早くから顔洗うとスッキリするなぁ」
慣れない洗面所で顔を洗いタオルを手探りで探しては拭き、次に髪を思いっきり濡らしてドライヤーで乾かしながら櫛でとかしていく
しっかしこの後はどうしようか、どこかに遊びに行こうかなぁ
いやでもこんな風に幼馴染メンバーが全員揃ってお泊りするってのも中々無かったし、皆と此処でのんびりだらけるってのも良いか
そう、私達がお泊りしたこの家ーー
「さぁーて、せっかくの休日だし…今日は何をしようかしらね
何が良いと思う?正さん」
ーー正さんが住んでいるこの家で!!
「うん、一先ず自宅にでも帰ってくんない?今すぐ」
ー【第3話『仲間入り!!初めての秘密基地』】ー
「ひっどいなぁもう、それがうら若き美少女に言い放つセリフ?そんなんだとモテないよ、私達よりも随分大人なクセして全く…」
にしても思った以上に辛辣、もしかしてエロ本か何か宅配してんの?
「散々強引に押しかけたのはお前らだしモテなくても良いし邪魔だしプライバシーの侵害だし邪魔だし邪魔だし物凄く邪魔だしさぁ…」
邪魔って言った、四回も邪魔って言ったよこの人!!こうなったらスーパー美少女かないちゃん必殺の悩殺泣き落としをするしかあるまい
「酷い…こんなか弱い少女四人+妖精を放り出すっていうの!?」
「か弱き乙女かー、そら住宅街のど真ん中でも漏らすわな」
「ゴメン流石に勘弁してあげて、ゆめみちゃん泣いちゃう」
しかし参った、私お得意のくっそウザい挑発ならいざ知らず…半ば悪ふざけでやったとはいえ泣き落としも通じないとは一体どうしたものか
実は前回の後、私達は怪人達との戦いによる疲弊等(主に仲間の失禁)で自分の家にも帰れそうな状態へとなってしまっていた
そんな時に夜遅くの時点で私達でも丁度泊まれそうな所…もとい少しばかりは休めそうな場所、即ち正さんの家が近くにあったのだった
…まぁ、元から押し入る予定だったのは言うまでもないが
と、そんな訳で私は兎に角家主の言質を無理矢理ではあるが取った上で正さんの住処にてストライキ張りに居座り寝泊まりした、という感じでした
はい八割私のせいです、残りの二割?それにノった我が親友達だよ
「幾ら前回のあらすじ解説で誤魔化そうが仲間にさりげなく罪なすりつけようが結局全部認めて開き直ろうがどの道押しかけたのは許さないからな?」
「畜生やっぱり気づいてやがったコイツ!!」
馬鹿な、この私必殺かつ小説セオリー破壊覚悟の奥の手『メタ説明で時間稼ぎしつつなぁなぁにする』が通用しない、だと…!?
「お前らボケ倒し勢の考え方なんざお見通しなんだよバーカ」
「クソッ…貴様の方が一枚上手だったという事か…!!」
「さて、どうしてやろうか…男女平等パンチとか」
「待って第一話の反則パンチは本気で洒落にならない」
いやそれ魔法少女でも割と冗談抜きの死刑宣告(ガチ)なんですがそれは、というか取り付くシマもありゃしないしどうしよう
「いやね?もっと手心というか、笑って済ませられるカンジので…」
「パンチ?念力?それともビーム?」
「何サラッとバカップル夫婦の妻側が言いそうなフレーズの韻を踏みつつ物理的に目を光らせてんの、止めて発射準備しないで」
ピピピピという独特な音と共に正さんの片目がこっち向いたまま光りだす
「どうした酷い顔だぞー?顔でも洗っとけよ」
「その状態でコッチ向くな回れ右しろ危ない危ない危ない!!」
「大丈夫だよお前しか狙ってねぇから」
「余計タチが悪いわ!!」
よりによってボケ倒しの上に仕置きの方法が洒落になってないんですけど、確実に一発掠っただけでも完全に即死なんですけどそれ
というかさっきよりも徐々に光が強くなってーー
「そんじゃ俺の気分的に光子力ビームで、5、4…」
「いや本気で死ぬって、ねぇ聞いてる?ちょっせめて変身状態でーー」
あっ違うわコレ、100%確定演出で私の息の根を止める気だ
「さーん、にー、いーち…」
「終わった…確実に…」
私の人生の終わりを告げる光が体ごと包み込んで今放たれようとしていた、魔法美少女マジカルレッドちゃんの次回作にご期待ください
「ゼロ、発sーーーー」
だが、そうは問屋が卸さないのがここの小説なのです
「おーい正さーん、朝食出来たんで早く来てくださいッス!!」
「ういうい分かりましたっと、今行くよー」
「!?」
アイリスの呼び声と共に発射寸前の光が瞬時に消え、私に向けていた筈のトンデモ殺気が和らぎ何も無かったかの様な雰囲気で背を向けた
「いやぁ悪いね朝食なんか作らせちまって、言えば作んのに」
「泊まらせて貰った礼ッス!!私の料理をご賞味あれ!!」
「アンタは料理運んだだけでしょうが…」
「まぁまぁ、それでも大分助かりましたし」
「おなかすいた…」
私を除いた賑やか四人組が朝食準備済みの今に向かっていく
そこでようやく私は気づいた
「…え?
アレ、私…からかわれ損な上にさりげなくハブられた?」
信頼していた全員から、おもっくそ仲間外れにされたという事に…
という事があってからの朝食の後
「…………」
「かないさーん、私達が悪かったですって…」
あの後の話で分かった事だが、結局アイツら全員グルだった
早朝から起きて計画していたそうです、もうお前ら全員私の敵だ
「かーなりふてくされてるわねぇ、いつもより重症よコレ…」
「やっといてなんだけど面倒くせぇ」
「ッスねぇ」
因みに犯人は勿論正さん…ではなく真面目なキャラの筈のアイリスだった、てかテメェ何元凶なクセに他人事なフリしてんだ
「かない、かないー…」
「ツーン」
幾らかさみちゃんでもこればっかりは許さない、故に物凄く可哀想な気もするが無視だ無視無視徹底的に兎に角無視だ
…物凄く構ってあげたいけども
「むぅー」
「ほらかさみ、そんな不審者に話しかけるのやめなさい」
「流石にやめたげてッス」
疑いの目と言いい今回の事と言いゆめみちゃんはそんなに私をいじめて楽しいのか、私に恨みでもあんの?
「というかそう言うアイリスが言い出しっぺなんじゃない」
「あ、あはは…」
あははじゃないからな、やって悪い事だってあるんだからな
「普段の仕返しのつもりだったんスけど…ちょっと効き過ぎてるッスね」
「つってもこんな状態、どうするんですか…かないさん完全に卑屈になってますよ?律儀に部屋の隅で綺麗な体育座りしてますよ?」
ふてくされてないもん、ただちょっと人生について考えてるだけだもん
…主に友達や同僚の付き合い方とかについて
「…仕方ないわね」
ゆめみちゃんが何やら如何にも面倒そうな顔をしてコッチに歩いてくる、たとえ蹴られようが殴られようが動くつもりは毛頭ないけど!!フンッ!!
と、そう思ってる間にもゆめみちゃんは何やら耳元で何か言おうとする
「ちょっと耳貸しなさい」
「……………」
何をするつもりかは見当もつかないけどどうせ暴力に物言わせるんだ、そんな事してもこの最終防御形態である今の私には全く効かないって…
「欲しがってた新発売のゲーム、お詫びと言っちゃなんだけど…」
「ハァイかないちゃん復活!!今すぐ復活しましたァ!!」
と思ったけど良く考えたら不毛だよね仲良くした方が皆の為だよね!!
言っておくけど物に釣られた訳じゃないんだからね、本当だからね
「ふぁ!?あれだけふてくされてたッスよね!?」
「はっはっはっちょっと何言ってるか分かんないです、私はさっきからいつも通り元気なかないちゃんですよー!!」
「しかも何かちょっとウザくなってるんスけど、超ウザいんスけど」
あっはっは復活早々に容赦なく辛辣だなぁ全くもうはっはっはっhあぁいやゴメンやっぱもうやめてもう心折れそう
「ゆめみさん、一体何をしたんですか?」
「…買うとは言ってないのだけどね」
あれ?今何か聞き逃せない言葉が聞こえて様な気がする…
「コント終わった?ほれ、麦茶かコーラのどっちかを選べ」
「何回も言っているけどコントでは無い!!あ、コーラは貰う」
と、騒ぎが丁度一区切りついたという絶妙なタイミングで、居間の奥の小さなキッチンから正さんが人数分のコップと麦茶&コーラを持って現れた
「ありがとうございます、あっ私は麦茶を」
「キンキンに冷えてやがるっ…!!」
「本当に変わり身早いわよねアンタ…私はコーラで」
そう言うゆめみちゃん達もさり気に飲み物とって居座ってるし、それこそ本当に昨日の泣き顔は何処へやらって感じでさ
「麦茶をお願いしますッス、って本当に冷たいッスってやだ手が結構痛い」
「冷えた、コーラで…」
「ほいほーい、てか自分でやれ」
正さんは持っていたでっかいコーラのペットボトルと麦茶の入った容器、更に空のコップが乗っけてあるお盆を目の前のテーブルに置く
そして眠たそうな目で堂々と横に座り壁に寄りかかった
「よっこらしょっと…あー、麦茶が美味い」
コップに注いではチビチビと飲む様子は休日の酒飲みのおっさんにも見える、いやこうやって人の家で勝手に居座ってる私が言うのもなんだけどさ
「ふー、偶には魔法少女抜きでのんびりするのも良いわね…」
「そうですね…このまま暫く此処に居たい位です」
だが私以外にも既に魔法少女組は完全にリラックス状態
「あ、それ良いね!!それじゃ私は一旦家にゲーム取りに行ってくる!!」
そう言って私は大きく欠伸し、皆と遊ぶ為のゲームを取りに行こうと…
「いや帰ってくんない?」
した直後のこの部屋の主人からの帰れコールが突如出てしまった
「でしょうね」
「…えっ、あれ?」
アレ?今のは完全に此処でゆったりする的な空気だったんですが…
「まぁ、ずっとこのまま居ても迷惑ですッスしねぇ」
「昨日無理にでも泊まらせてくれて、その上で更に泊まるというのもちょっと…というか大分気が引けるというか、かわいそうですし…」
あらやだのぞみちゃんあんな天パのおっさんにもかわいそうとか割と優しいって違う!!いやフラグ的に今のは絶対此処に居座る的なアレだったじゃん!?
何でまた私だけ梯子外したの!?またさり気に常識知らず扱いなの私!?
そうだかさみちゃん、私と同じく泊まろうとしてたかさみちゃんなら…!!
「…ごめんなさい、また来ても良い?」
「おう、今度はちゃんと前もってアポ取ってから来いよ」
「ありがとう、正さん」
ちょっとかさみちゃぁああんんんん!!!?
いや君昨日は私の味方だったでしょうがぁああ!!梯子外されたどころか思いっきり目の前であっからさまに裏切られてんだけど私ィ!!
さっきのといいそんなに私恨み買った?そんなに君達に何かした私?
「まぁ名残惜しいけどしょうがないッスね、どうせだしかないさん以外のコッチの魔法少女メンバーの自己紹介とかもしたかったッスけど
まぁこちらも魔法少女としてのパトロールもありまスし…」
…そういえば毎週土曜日に怪人が居ないか街を見回る自主的なパトロールをするって、そういうのがライフワークに確かにあったような気があったような無かったようなやっぱあったような
い、いや忘れてたわけじゃないよ?ただちょっと寝惚けてただけで…
「でもどうせお世話になったんですし、折角の機会なので軽く名前だけでも憶えて貰ってから行くのも悪くないと思いません?」
「確かに…昨日みたく怪人を倒せるのなら適度に交流しても損は無いわね」
「それ位なら全然大丈夫だ、帰れっつったがやる事自体は特に無ぇしな」
物凄く不味いしヤバい、私抜きでドンドン話が進んじゃっている
このままではこの魔法少女アニメの読者達もとい視聴者さんに『主人公なのにゲスいし青と緑の方が主人公っぽい』と何処かしらで叩かれかねない
一刻も早く何処かでこう、裁判ものっぽく切り返さなければ…
「私の名前は【緑野 のぞみ】って言いますっ!!趣味は読書とかで…え、えーっとその、魔法少女をやっていますっ!!」
「のぞみさん落ち着いて、魔法少女はそちらさんもう知ってるッス」
「…私は【青川 ゆめみ】よ、この馬鹿に誘われて魔法少女やってるけど…趣味はスポーツとかね、まぁ一応宜しく頼むわ」
「なかまぁー…」
なんて考えている間にも自己紹介終えて今にも帰ろうとしてる、早く何とかしてどうにか…何でも良いから正当化出来ないか…?
てかどうせ泊まるなら先に自己紹介位しとけよ君ら、いや私が言うべきでは無いんだろうけどさ
「それじゃあ帰りましょうか、またお元気で」
「まーすぐ会う事になるッスよ、その時はちゃんと連絡するッス」
「ばいばーい」
「おうまたなー」
ヤバい時間がもう無い、何かないか何かないか何かないか…!!
「…その、正とか言ったわよね」
「お?あぁうん、どうしたんだ?」
「そ、その…ゎたしが、漏らぃた事…その、お願いだから…」
「うん分かった、だから涙目&上目使いで服引っ張らないで、君が故意じゃなくても傍から見たら俺犯罪者にしか見えなくなっちゃうから、ね?」
何かない…ん?まてよ、お漏ら…し……
…そうか、その手があった!!
私が見つけた唯一の突破口、多少ごり押しでかつ強引だがやるしかない
「かないさーん、帰るッスよー!!」
「何してるんでしょうか…?」
見よ、これが私のパーフェクトコミュニケーションだッ!!
「…ゆめみちゃん
その【不祥事】した下着、どうしたのかな?」
「…………えっ」
そう、この私の作戦というのは…
「あっれぇー?まさかまさか…忘れて部屋に置きっぱなしにしたのかな?それとも…正さんに信頼(意味深)して預けてきたのかなぁ?
そ・れ・と・も、まさかぁ…その家主もそれを知ってて預かったのかな?JCの染み付きパンツをさぁ!?」
「」
ゆめみちゃん&正さんを下げて自然に私を持ち上げるという寸法なのだ!!
実を言うと家に出る前にふと何故か染み付きのまま放置してあったパンツがチラリと目についたのだ、その時は思い違いだと素通りしたが…
良く考えるとおかしいって事で即座にチラリと確認し、忘れた事を改めて確かめた上でこの行動に移ったというわけなのだ、我ながら天才だ!!
…いや、良く考えたら本当に何でパンツ置いてきたのこの娘
「…ゆめみさん、その…ッス」
「い、いや違…アレ本当に無い!?」
「あ、その…ゆめみさん
私はゆめみさんの事、何があっても…友達と、思ってますから…」
「お願いだから重い感じにすんのやめて!?何かの間違いだから!!」
よーしよし…いい感じに生暖かい目で見られてる、これなら私も大丈夫だ
「まぁ誰しも人には間違いなんてあるよ…」
「だから何かの間違いだって言ってんでしょーが!!」
チッ強情だな…まぁ良い、なら私が直々にトドメを刺してくれるわぁ!!
「いやそうは言ってもぉー、実際部屋に染み付きパンツあるわけだしぃ―」
必殺証拠を突きつける!!
「うぅ…嘘でしょ、私がこんな…幼稚園児でもしないような恥を…」
良し良し後もうちょいで落ちる、このまま一気に畳みかけて…
「…かない、何でお前下着が部屋にあるって分かったんだ?
バッグを見てどっかに忘れたってんなら分かるけども、何で見てもいないのに部屋の中に置き忘れてるって分かったんだ?」
………あっ、やべ
「お前、故意に置いてきたか何かしたろ?」
「…かない?」
「待った話せば分かる、からかったのは悪かったが仕方が無かったんだ」
そう、これは私のカーストを挽回する為の致し方ない犠牲だったんだ
「流石にやり過ぎだ、故意にトラウマ作るのは見逃せんそ…」
やだまた何か私に向かっ何かてチャージしてる、私本気で死んじゃう
「かぁーなぁーいぃー、良くも私を陥れようとしたわねぇー」
こっちもこっちで別のモンをチャージしてる、やだ私四面楚歌…
「?」
「かさみさんは見ない方が良いですよ」
いやのぞみちゃん、かさみちゃんの目を塞いでないで助けて!?
「こればかりは、自業自得だ…」
「覚悟は良いわね…?」
うんこっわいちびりそう、でもせめてここで食い下がる訳にはいかない!!
「待った、アンタら何か誤解してますン!!」
「ほう、何を誤解してるって?」
「面白いわね、言ってみなさい…!!」
いやそのゆめみちゃん?君に関する事なんですけども
「下着の件は何でもなく本当にゆめみちゃん自身が忘れただけです、私はそれをそのままにしといてドッキリ風にしただけですねん」
「…何を言うかと思ったらそんな嘘が通じるとでm」
とゆめみちゃんが聞く耳を持たずとしようとした瞬間
「そういえば夜からずっと、居間に青いパンツあったよ」
ナイスかさみちゃん、エクセレント援護だ
「朝も置いてあったけど、ゆめみのなの?」
「……へ?」
「「うわぁ…」」
…仕掛けた張本人の私が言うのもなんだけどさ、記憶喪失なだけとはいえ子供の思考って時として物凄く残酷だよな
「つまり本当に嘘はついてないと」
「YES」
これにはアイリスは勿論のぞみちゃんすらも本気のドン引き&苦笑い、というか乙女の尊厳を忘れてくるって時点で実は私も結構ドン引きである
「う、嘘だ…うわぁああああーーーーッッ!!!!」
見るからにゆめみちゃんの顔が福〇ばりにぐにゃあしていき、膝から崩れ落ちる
うんまぁ、ドンマイ
「…あー、でだ…つまり君は下着自体は仕掛けてないと?」
「YES」
そしてコチラも正さんの事情聴取、しかし悪い事では無いのだ
私はただその場で常に堂々と肯定していれば良い
「て事はアイツのポンコツのせいって事?」
「YES」
「君はただそれを報告しに行っただけって事?」
「YES」
「でも悪意自体はあったって事?」
「YES…って、あっ」
あっ…
「どうやらマヌケは見つかったようだな…」
「あ、あはは…お手柔らかに?なんて…」
「だ が 断 る」
ゴメン、今度こそ本当に死んだわコレ
「あああああああああああああああああああああッッッッ!!!!」
さらに十分後…
「やーっと収まったな、やっと落ち着ける」
「私、頑張りました!!」
「あーはいはいお疲れさん…っと、お前さん達パトロールだっけ?があんだろ、そろそろさっさと帰ったほうが良いと思うぜ」
正さんはそう言いながらのぞみちゃんの頭を躊躇なくわっしわっしと遠慮なしに撫でまくっていた、新種のロリコンかな
と、その時アイリスが何やら申し訳なさそうに何かを言おうとする
「あーその事なんスけど…
その悪いんでスが正さん、一緒にパトロールして貰って良いッスか?」
それは読んで字の如く、正さんも一緒に見回りに行くというものだった
正直厚かましいんじゃなーい?
「…いや君達魔法少女共で事足りなくない、いつもやってる事なんだろ?」
まぁそう聞きますよね、そうですよね
「それもそうなんスよねー
…二人がそこで戦闘不能にでもなってなかったら、の話ッスけど」
「あー、やっぱり?」
あぁうん、やっぱり結局そこに行きつきますよねごめんなさい
因みにだが今の現状、ゆめみちゃんがすぐ近くの電柱の傍で体育座りで落ち込みのぞみちゃんがそれを必死に介抱、更にその先でヤ○チャしてる私
「まぁあのバ…かないさんは置いといて、ゆめみさんはちょっと戦闘出来そうにないんで出来れば宜しくお願いしまッス
一回家に帰るのも面倒なんでもうこのまま行くつもりッスし」
おい今バカって言おうとしたろ、おい
「いや…今お前ら制服姿だろ、このまま歩くと補導されんぞ
それとも何か、魔法少女に変身したまま街を練り歩くって事か?」
「その通りっちゃその通りッスけど言い方…
まー大丈夫ッス、それに関しては私の仲間に根回しする様に言うんで」
「それで良いのか現役女子中学生、後周りの目とか的に俺」
でた、町中にはびこるアイリスの仲間…待って警察の中にも居るの?
「…まぁ兎に角、何にせよだ」
っとそんな事考えてる場合じゃない、それよりも…
「こんなの絶対死ぬしかないじゃない…」
「いや死んじゃ駄目ですよ!?というか周りの目がアレなんですけど!!」
「やっべ動けない、誰かザオリクかけてマジで」
一番心配するべきはこの私のボロッボロっな肉体だ、いや本気で痛いし動けないってか誰か起こしてくださいお願いします
「…アレ、どうにかしてからだな」
「…はい」
余談だがその時の二人の目は物凄く冷ややかで白かった
ーーーー
で、真昼間かつ街中のど真ん中
私達はいつも通り駄弁りながら予め決められたルートをひたすらに見渡しながら、ただゆっくりと全員で固まり歩いていた
と言ったものの基本的にはパトロールというよりも散歩である
「…で、警備ってのは聞いたが
さっきから街ン中歩いてるだけだが、そもそも具体的にはどうすんだ?」
そのすぐ後ろにて正さんがついていきながら私達に話しかける
「うーん…買い物、とか?」
「いやとかって俺に聞かれても…」
とは言ったもののやる事自体は本当に特に至って無いのだ
そもそもこのパトロール、元はちょっとした事件が原因でやっているのだ
正さんが来るよりもずっと前…やっと三人が集まった直後の出来事だった、正直この頃は連勝していたのもあって今よりも調子の乗っていた
そんな時期に突如として街から現れた怪人の大量出現、量自体は第二話よりかは少ないけど私達三人を圧倒するにはそれでも十分だったんだ
何とか被害を受けつつもギリギリやっつけた後にアイリスが調べて分かった事なんだけど、その怪人達は前々から盗難や追剥等とこっそり犯罪を犯しながらも自身の魔力で数を増やしていた事が分かったという
その潜伏期間たるや一か月以上、怪人が軍団に成るには十分すぎる時間だ
つまりは大きな魔力反応が出てから行動していたが為に行動も遅れ、負けかけたのだ
その事件からは近くであれば小さな魔力も見つけられるアイリスと共に小さい芽から潰さんとこのような街の見回りを週一でする事になったのだ
…とまぁ長々と大げさに言ったが、やる事自体は単なる街中の散歩も同じ
正直そこらのバイトよりも割の良い仕事だ…うん、給料無しを除けばだけど
「まぁ怪人が近くに居るならアイリスが教えてくれるから、私達はただ街中ぶらり旅でもしてれば大丈夫だからさー」
「それでいいのか街のヒーロー」
それで良いのだ、だって私達も元は所詮ただの一般学生だし
「お前らが良いならそれでも良いんだけど…」
「別に警察でも無いんスから気楽にやれば良いんでスよ、もし何かがあった場合は私が気づきますし細かい事はあまり考えなくても良いんッスよ」
一見いい加減に聞こえるが実際気負い過ぎても疲れるだけだしね、それにアイリスの言う通りコレの魔力探知で何とかなるってのも本当だし
「その油断が命取りにならなきゃ良いんだがな」
ちょ、不吉な事言わないで…最近本当にそういうの敏感なの
「そういえば、一つ聞きたい事があるんですけど…」
「どうしたののぞみちゃん?」
と、ここでふとのぞみちゃんが質問したいとばかりに手を上げる
「私あまり正さんの事知らないなーって思って…初対面ですし、折角ならこのお出かけを機に色々お話ししたいなー、なんて」
あー、そういや簡単な自己紹介しただけであんま詳しい事は話してないや、なら確かにのぞみちゃんの言う通り割と丁度良いかも
「いや…とは言ってもよ、話す事なんて特に無いんだけど」
しかし正さん、ここにきて急にちょっと辛辣というか塩対応な返事
「なら趣味とかはどうなの?何か好きな事とか…」
「あー基本的に色々やる、料理にスポーツやゲーム…果ては機械弄りとかそれこそ色々沢山のを」
わーお思った以上に結構な多趣味かつ広範囲なものだった
「あら、数を除けば思ってたよりも随分普通な趣味ね、てっきり人体改造か何かだと思ってたわ」
バッタのライダーか何かかな?
「お前はを何だと、こちとら小市民ぞ?」
「悪いけど小市民は怪人をワンパンしないしビームも出さないと思うの」
というかそれ以上にごく普通のモブはメタネタなんか言わねーから、【第三の壁】とか見ないというかしそもそも見えねーから、な?
「兎に角趣味は至って普通のやつだ、色々適当にやってるとだけ」
「えーっ、もっと色々きかせてよーぅ」
話題はまだ腐る程あるし質問攻めにでもしてやろう、主に朝の仕返しに
と、そんな時に何故かのぞみちゃんが徐ろに私を押しのけ前に出た
「…読書、するんですか?」
「うん?あー読むぞ、漫画ラノベに文学小説その他諸々だな」
「あっ」
やっべ、のぞみちゃんのあの発作の事…すっかり忘れてた
「正、さん…」
「ちょっと待った、あって何だというかコイツ目が座ってる気が…」
あーあ私知ーらない、私何も見てなーいっと
「…………
やっぱり!!て事は本が大好きですよね、いや絶対そうに決まってます!!」
「!?」
「ジャンルは何が好きですか?ラノベだからファンタジー?それとも推理もの、いやSFか青春ものかホラーものか…あぁ想像するだけで楽しみが止まりません!!好きな作品のタイトル、いや作者様は誰かいるんですか!?ここはやはり王道らしく超人気な作者様なんでしょうね、いやマイナーな作者もそれはそれで良作がたくさんあって趣もあるというか寧ろそっちのほうが良いかもしれませんね…一体どんなものなんでしょうか、さぁ教えてください早く!!あぁそれとも私のお勧めの本でも聞きますか?それともいっそ一緒に探しましょうか、そうですそうです一緒に二人で名作を読んで語り合いまs…」
「はいそこまでェッ!!」
「ごめすッ!?」
流石に暴走どころか狂気に片足突っ込んでるので無理矢理殴って止めた
のぞみちゃんは一見魔法少女の中でも優しく学校のクラスの中でも人気者、まさに紅一点で三人の中で一番の常識人に見えるのだ
…そう思っていた時期が私にもありました
アレは本好きを遥かに通り越しての読書キチです、いざ本に関する事となると今のコレみたいに中毒症状ばりの興奮状態になっちゃうのだ
うん、見方変えればただのド変態だなコレ
「あたた…す、すいません私本の事になると暴走しちゃうというか…」
「…魔法少女ってド変態の集団なん?」
「……あながち違わなく無いかもッス」
いや違うからね、限りなく誤解だからね!?
「天然おバカに路上お漏らしに読書キチに後輩キャラ付けに記憶喪失少女、最後以外で変態か馬鹿以外に何があるってんだよ」
「いや私のはほぼ全部アンタのせいだろーが!!」
「私に至ってはキャラ付けってなんスか!?素ですッスよ!!」
ゆめみちゃんは単に下が緩いだけとして…アイリスは、素…えっ?
「アイリス、正直それは無いわ…」
「あからさま過ぎる後輩キャラはやりすぎかなって」
「畜生こんな世の中なんて嫌いだ!!」
いやどう考えてもひっどいキャラ付けだよそれは
というかそんな事よりも物申したいのは私らが変態扱いされてる点だ、寧ろキャラ付けだけな分アイリスのが評価がマシなんですよ
「心外ね、こいつ等と一緒にしないでよ」
「るせぇオムツ中学生!!」
「それを言ったら戦争だろうがこの野郎!!」
屋上行こうぜ…久しぶりに、切れちまったよ…久しぶりでもないけど
「さて、喧嘩している間にさっさと本屋にでも行くか」
「…(本屋)付き合ってくれるんですか!?」
その瞬間、ちょぴっとだけ周囲がざわついた
「OK、だからその言い回しを止めて一旦離れてくれ警察が来ちゃうから」
ほんの一言でも食いつき過ぎだなのぞみちゃんってか胸が当たってる当たってる、マジで正さんが予備軍じゃなくマジの犯罪者になっちゃうから
「で、本屋って何処だっけ」
「あ、私場所知ってます!!良い所紹介しますよー!!」
「ちょっと待った服引っ張んないで伸びる伸びるてか肌つねんな」
はっはっは、それにしてものぞみちゃんいつになく晴れやかな笑顔だこと
「本…面白いのあるかな」
「おっ、かさみさんも探してみるッスか?私手伝うッスよ」
ってちょっと待って置いてかないでこの小便臭い青いのどうにかして、さっきから寝技かけまくろうとして割とヤバい絵面になってんの
「ちょっ、置いてかな…」
「逃さんぞ貴様だけは…!!」
お願いマジストップ本気で首がしままままままmmmmmmmmm
ーーーー
「てな訳で現在位置は本屋」
「あの二人は置いてきた、この戦いに着いていけそうにないからなッス」
私の居ないまま本当に行きやがったアイツら、因みに私はまだ現在進行形でゆめみちゃんに首締められたままです
本屋の店内は案外結構広く小説や漫画から参考書まで選り取り見取りであった、具体的に言うなら駅のデパートに良くある本屋的な
のぞみちゃんにしては意外にも普通で逆に身構える
「で、どこから見て回りますか!?やはり有名な文庫から攻めて…!!」
「はーいキリが無いので一時間程度にしておくッスよー」
またのぞみちゃんが暴走しかけたところでアイリスが止める、ナイス妖精
「ち、ちょっとだけ…ちょっとだけですから…」
「落ち着け、鏡見てみろ鏡」
明らかに女子中学生がしちゃいけないレベルのヤバい顔してるよこの子、これが小説なのが惜し…いやまだ幸いです
「…にしても、勢いで本屋に来たは良いが何を見るか」
正さんが顎に手を乗せて辺りを見回しながら悩み始める
「決めてないんスか?」
「決めるもクソも俺引っ張られただけだよこの問題児に」
主にのぞみちゃんの戦犯です、本当に私以上にどうにかなんないのあの子
と言っている間にもかさみちゃんが本に対して何やら興味を示している模様
「本、何があるの?」
「ほらかさみさんも居るんスから、ちゃんと一緒に見ましょうッスよ」
そしてその後ろにいる暴走特急もその様子に興味を示している模様…
「ふへへ…何か見たいのある?私が探してきますからね…」
「どうしよう、どっからどう見ても事案にしか見えないッス」
奇遇だな、私も完璧にそうとしか思っていなかったところだ
「…まぁテキトーに何か探すか」
あ、アレは無視で良いんですね
「んー…」
そういうわけで正さんは私達全員そっちのけで本を見に行ってしまった
といっても、常時眠たそうな目なので真面目に読んでいるかは知らないけど
「…ふむ、うん」
「おっいたいた、正さーん!!」
と、そんなところにアイリスがやって来る
…今更だけど人前でのアイリスはちゃんと普通の大きさの人の姿に擬態してるからね?こんなしょうもない正体バレとか無いからね?
「全くあんな地雷原に置いてくなんて酷いッスよ!!」
「そうか、どうなった?」
「何とか静止させた結果、何故か幼稚園の先生になったッス」
いやちょっと待って一体どういう状況なのそれ
「っとそれは兎も角…一体何を読んでるんスか?」
「んあー?コレよコレ」
そう言って正さんが見せてきたのは、意外や意外なものだった
その本とは、簡単に言ってしまえば所謂超能力だのというオカルト本だった
「どれどれ…あー、オカルト的なアレッスか」
まぁ、と言ってもそこまで胡散臭い本という訳でも無く、どっちかというと寧ろ面白い雑学的なものが乗っている週刊雑誌みたいなものである
「っと…やっと見つけたわ、ほらあそこよ」
「く、首が痛い…」
と、そこに四人を見失った後に気が付いて必死の如く探し回っていた私とゆめみちゃんが、和気藹々と話していた二人とやっとの合流を遂げた
「ん?あぁ何だかないさん達ッスか」
「何だじゃないよ何だじゃ…危うく私の出番がもうナレーションしかないんじゃないのと焦りまくったわ!!…まぁ再登場までそこまで字数かからなかったけども」
「OK少し黙ってろ、色々と不味いから」
何にせよやっと見つかって良かった、勿論出番的な意味で
「で、何見てんの?」
私とゆめみちゃんは正さんが持っている本に顔を覗かせる
「うわっ超能力って、随分胡散臭いの見てんのね自分がそんな存在なのに」
「…………」
「私が悪かったからそのファイティングポーズ解いてお願い」
ゆめみちゃんにヘイトが集中している間に私は本をコソッと拝借する
そこにあったのはまぁごく一般的なオカルト超能力の説明や雑学、本当にサイコキネシスやテレパシーに予知能力と私でも知ってるのばかり
「へー、案外図鑑っぽくて面白そう」
「結構分かりやすいんスね、てっきり表紙から小難しい系のものかと」
一応説明しておくと中身こそ小学生か中学生の自由研究に使う図鑑本のそれなのだが、表紙は何でこんなんにしたのかまるで怪しい魔導書である
本当に何でこれが子供に取ってもらえると思ったのか、これが分からない
「本当ねぇ…ネクロノミなんとかかと思う様な表紙だけど」
「止めろ、魔法少女がいるこの世の中じゃ冗談にならないから、マジで」
マジな方のが出るから、本当にやめて
「ま、折角だし…一応買ってから、家でゆっくり読んでみるかね」
だがどうやら正さん自身はこの本は嫌いでは無かった様で、少しばかり興味があるみたい
「…そういえば、前から思っていたんだけど」
「何スか?」
と、そんな時ふとゆめみちゃんがとある疑問を口にする
「その、正の昨日のあのビームとか怪人共を玉にしたのって結局何なの?この本に書いてある超能力にも感じるんだけど…」
「あー…」
それは持っている本と目の前を照らし合わせながらの質問だった
そりゃあそうだわ、そんな質問にもなるわ
「で、そこんとこどうなんスか?」
「あぁえーっと、あー…超能力、的なもので良いんじゃね」
「返答が壮絶に雑ッ!!」
超能力なのか、それともそうでないのか一体どっちなのか
「はっはっは、んな事言われても答えにくいわ
俺自身どう説明したらよいか分からんし、つか正体自体知らんし」
「えっ知らないって…ちょ、ちょっとタイム!!」
正さんの返答を聞き一旦作戦タイム&集合、のぞみちゃん居ないけど
(…どう思う?)
(どうって…本人自体アレは良く知らないみたいね
となるとどうなのかしら、生まれ持ったものか最近覚醒したものだから自分自身あの力をそこまで理解しきれていない…ってところかしら?)
(た、確かにその線が一番ありそうッスね、もしくは何かのトラウマで忘れたとか暴走した過去があるとかそういう…)
((おっそろしい事言うなバカ!!アレが暴走するとか考えたくも無いわ!!))
あんなトチ狂った化け物がトラウマ想起で暴走なんてものは愚か、いっそもう敵に回るという最悪のシナリオまで考えられるなんて想像すらもう嫌だ
というかそんなもん私ら数秒持たずにBADENDじゃまいか
(…と、取りあえずそこには触れず…現状維持という事で)
((了解、というか厄介事的な意味で二度と触れたくない))
と、安全パイでそういう事になった
…あくまで触れないのが一番って話だから、決して先送りとかじゃないよ?
「おーい、タイム終了はまだかー?」
「あ、もう大丈夫ッス…うん大丈夫!!の筈ッス!!」
「不安しか感じない」
いや下手か!!誤魔化すのも動揺隠すのも下手か!!
「まぁ良いや…会計行ってくるからあの暴走娘シクヨロー」
まぁそこは張本人の度量というところか、気づかないフリして行ってくれた
い、いや気づかないフリしてるのかはイマイチ分かんないけど…
「…ふぅ、何とか誤魔化せたッスね」
「ポンコツ駄目妖精」
「ドジっ子キャラ作り」
「何で急に貶されてるんスか私!?」
や、あのお前それ本気で言っているんだったらいよいよ本気で君の頭と目を心配するしかないぞ私達
…それにしてもさっきのいい加減な答えは結局何だったんだろう
多分まぁ嘘じゃ無いんだろうけどめっちゃ気にはなるなぁ、いや嘘じゃないって根拠も所詮ただの堪や雰囲気とかでしか無いんだけどさ
しっかしそれにしてもあのテキトーに取って付けた様な返答に私は、ゆめみちゃんの予想とはもっと違うかの様な違和感を感じていた
まるで、何かを隠してる様な感じが…
「…アレ?そういえば」
っと、ここでまたしてもゆめみちゃんがある事に気づいた様だ
「どうかしたの?」
「いや、そういえば今さっき何か重要な事言ってた様な…確か
暴走娘しくよろ、とかなん…と…か……!?」
…正直言おう、ここで私は今さっきの自分を恨む事になった
「どうしたのゆめみちゃ…ん……」
「うん?何スか…あっ」
何故ならば
「…皆さんそこで何してるんですか?、一緒に本を見回りましょう?」
私達の後ろに、そこに悪魔が居たからだ
「いやえっと…その、待って?」
「ふふふかないさんおかしいですよ?一体何を待つんですか?」
アカン、目のハイライトが死んでる、ヤンデレの顔になってる
「…私は別に見たい物があったからこれで」
「私もゲーム屋の方に行きたいので失礼ッス」
「逃がさんっ!!」
私を生贄にして逃げようとする二人の足を私は力強くガッシリと掴んだ
「ちょっ冗談はやめなさい!!離せ!!」
「今ならまだ間に合うッスよ!!」
「人を身代わりに置いて逃げようとしてよくそんな事言えるな君ら!!」
もうアレだ、この二人だけは絶対に逃がさん何がどうしたって絶対逃がさん
「兎に角お前等全員私の犠牲に…」
だが、そんな揉み合いは無駄だった
「いいえ、皆さん全員で行くんですよぉ…?」
「「「あっ」」」
悪魔は既にすぐそこにいるのだがら
「「「ァァァァァ…!!」」」
「まぁ、そうなるな」
そしてさり気無く正さんはそれを察知しての事かさり気無く危機を回避していた
《【Bパート】へ続く》
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