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第24話 襲来する厄介者達
第24-3話 出立する厄介者達
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○武器と防具を作りましょう3
「まずはエーネですが、武器はどうしますか」
「近接戦闘はあまり得意ではありませんので、できれば魔法の使いやすい杖をお願いします。でも、戦闘になった際に自衛できないとなりませんから剣の方が良いですかね」エーネは戦いのイメージがないので、そんな答えになっています。
「わかりました。杖と兼用になる槍を考えましょう」
「よろしくお願いします」
「そしてキャロルですが、キャロルの武器はすでに完成してお渡ししてあります。防具はどうしますか」
キャロルは、帯刀していたレイピアを抜いてみせる。剣を見る目が嬉しそうです。
「防具ですか。胸当てくらいですね。私は、ユーリ様やパム様と違って筋肉量があまりありませんので、速度と回数で相手を翻弄するしかありません。ですからあまり重いと動きを鈍らせますので。あと、インナーとスパッツを私もお願いします。魔力量がユーリ様と同じくらいですので、戦闘中に魔法に魔力を割くとどうしても剣での戦闘に影響が出ますので。ああ、魔法耐性がありませんので、どちらを優先した方が良いのか。悩みどころですね。ユーリ様、パム様アドバイス願います」
「怪力・快速系の魔族はユーリ。怪力肉弾系は私ですので、たぶん言い方は申し訳ないのですが、エルフィの魔法の矢の弾幕を越えてきた中堅の魔族が相手となりますね。なので、魔法力重視の方がバランスは良いと思います。もっとも最近は、そんな戦闘もめっきり減ってきましたから気にすることは無いと思いますけれど」パムもこれと言ってイメージが湧いてないようです。
「実は今回。私にアイディアがひらめきまして。あるものをご用意させていただきました」私はそう言ってメアに言った。メアは頷いています。
「実はおふたりにあわせて製作した衣装があります。2階に用意してありますので、ぜひ着てみてください」
「着るのですか?」
「ええ、私も一緒に行って着替えをお手伝いします」メアがかなり嬉しそうだ。
「はあ」キャロルもエーネも中途半端に言いました。
そうしてまずキャロルがメアと一緒に2階に上がっていった。
「おぬしの趣味が先行している衣装じゃな」モーラがそう言った。楽しそうです。
「ええまあ、ちょっとだけ」
「ええぇぇぇぇぇ」と2階からキャロルの叫び声がする。
「あんたまた変な服を開発したんでしょう」アンジーがため息をつく。
「たしかにそうなんですが、ちゃんと実用的なんですがねえ」
そうして、メアに手を引かれてキャロルが居間に入って来る。その姿は、いわゆる白いフリルのたくさんついたゴシックロリータと言われる衣装でフリルフリフリのミニスカートのドレス的な何かだった。しかも顔の前にレースのベールがついていて顔が隠れるようになっている。
「ほう、おぬし趣味が良いのう」モーラが言いました。
「これはなかなか」とパム
「あんたのデザインじゃないわね。あの古着屋の店長・・・いや、今は服屋か。あの店長のデザインでしょう」
「大当たりです」
「よく手放したわねあの店長」店長の趣味を知っているアンジーがそう言った。
「こちらから仮デザインをお渡ししています」私は胸を張ってそう言いました。
「なるほどオーダーしたのね。さすがは前世のメイドマイスター」アンジー。それは馬鹿にしているつもりで褒め言葉になっているのですよ。褒めて褒めて~
「もっとも店長はもっとすごいやつをデザインしていましたよ」
「それは次に服を買いに行く時が問題ね」アンジーがとても嫌そうです。
「アンジー様もモーラ様も店長が手ぐすね引いて待っているとナナミさんが言っていました」メアが嬉しそうです。
「それを聞いただけで行きたくなくなったわ」モーラもげんなりしている。
「どうですか?」キャロルはその場でクルクルと回ってみせる。
「もう!最高です!」私は大きな声で言ってしまいました。両手を前で組んでちょっとお釜っぽく叫んでしまいました。
私の姿にもちろん周囲はドン引きです。その間にメアがエーネを連れて居間を出て着替えに行きました。
「これにはどういう特殊効果が付けられていますか」パムは私を見て聞いてきました。きっとただのゴスロリ衣装だったら軽蔑するつもりでしょう。もちろんそうではありませんよ。
「はい。新しい要素は、魔法剣を振る時に体から発散している細かい魔法の残滓を吸収します」私はそこで一拍おきました。
「それは、メアのメイド服に装備しているわよ。ちっとも目新しくないわよ」アンジーが私の予想通りの返しをしてくれました。グッジョブ!
「そうですね。それにレイの服は相手の魔法を魔力として吸収して打ち出す事が可能です。しかし今回の服は、このスカートのフリルが、魔法の残滓を一度吸収して服の周囲に拡散します。しかも、拡散する時に魔力耐性を付加して舞い上がって服に吸着されますので、魔法耐性の魔法をかける必要がないのです。さらに魔法耐性の魔法がすでにかけてある場合には、その効果をさらに増幅させます。限界はありますけれど、中級魔族程度の魔法攻撃には充分対抗できます」
「なるほどな。そのスカートのフリルにはそういう効果があるのか」
「白を基調にして作っているけど、戦場ではかなり目立つんじゃないのかしら」アンジーがやはり突っ込みました。
「その前にですね、我々の服は普段着と戦闘と共用できるようになっていますので、地味な服です。これもですね、ああ、私がしてはいけませんね。キャロル。そのベールをあげてください」
「はい。こうですか?」ベールをあげるとベールが頭の上で変化してホワイトプリムに変わる。そして、服全体のフリルが咲いていた花がつぼみに戻るように閉じていき、長さも膝上から膝下に変化すると同時に色が黒が基調になり、前のフリルが白のままなので、エプロンに見えてメイド服のように見えるようになります。
「どういう原理じゃ」
「単純です。剣に魔力を込めると魔法が励起され伸びていた黒色の繊維が縮んで下に隠れ、白い色の糸が前に出てきて開いたようになります。そして、ベールをカチューシャのところに持ちあげると励起が解除されて黒い糸が伸びて白い糸を隠すようになっています」
「また、わけのわからないものを作りおって」
そうしているうちにメアがエーネの手を取り居間に入って来る。今度は黒を基調としたゴシックロリータでデザインはほとんど同じだがスカートのフリルが若干おとなしめで裾がフリルではなくレースの刺繍になっている。刺繍が凝っていてまるで魔方陣のように見える。同じようにベールで顔が隠れている。
「キャロル。悪いが剣に魔法を込めて、さっきのモードにしてみてくれぬか」
「はい」キャロルは、剣の束に手をかけ目を閉じる。するとさきほどのミニスカートフリルでベールがおりた目隠しモードになる。
「なるほど、体格差はあるが、まるで双子のようじゃなあ」
「白と黒の対比がいいですねえ」
「実はこれ、色も変えられます。白か黒かどちらにもできます」
「あんたが意図していることはわかったわよ。つまり、誰が戦っているかわからなくするためなのね」アンジーがハッと気付いてそう言った。
「おお、そういうことか」
「それにしては目立ちすぎませんか」とはパム
「ちょっとそれぞれその場で回ってくれませんか」だまって二人はその場で回転してみせる。
「みなさん顔見ましたか?」
「いえ、フリルの動きに目が行って顔までは見られませんでしたね」
「そんなの戦場で通用するかしら」
「近接戦闘になった時には、接敵した敵には見られるでしょう。まあ、それは仕方がありません。でも、目立っていると言うことは、遠距離攻撃の的として狙ってくるでしょうからその周囲には敵が近づかないと思うのです」
「そういうことですか。言い方は悪いですけど囮にするつもりですか?」ユーリが嫌そうに言った。
「いえそうはなりませんよ。色を変えられると言ったでしょう?黒にもなりますから」
「やれやれ、せっかくエーネが可愛い服を着てきたというのに一言もなしか」
「もうね。言葉もありません。純白の天使と漆黒の天使どちらも可愛いです」
「ぬし様、エーネの衣装にはどのような特徴がありますか」パムはそれも知りたいらしいです。
「そうですね。こちらの衣装は、単純に魔力増幅ですね。魔法を使用した時の効率がかなりあがりますので、威力は格段にあがります。それと詠唱速度ですね。エーネ、簡単な魔法を詠唱してみてください。気をつけて!威力がかなり上がってますので。まず、武器に一度魔力を込めて、そして魔法を詠唱してみてください」
「はい」一瞬で指先に炎が吹き上がる。ええ、天井に届くくらいに。
「あの~発動が早すぎます。イメージしただけで一瞬で発動しています。これは危険です。それと威力がありすぎます。これは日常生活に支障を来します」
「ああ、解除方法は、ベールをあげてホワイトプリムにすると服が閉じます」
実際にベールをあげるとカチューシャになってメイド服みたいな感じにかわりました。
「これは、日常もこれを着ていた方が良いのでしょうか」キャロルが心配そうに尋ねた。
「ああ、お二人ともこちらの趣味を押しつけてすいません。違う服もご用意しますので、今回はあくまで作りたかった、着てもらいたかったという作品です。希望のデザインがあればお願いします」
「私は、以前からこの格好をしていましたので違和感がありませんが、さすがにこれを着ているとファーンでは目立ってしまいます。ブラウスに短いスカートと下にスパッツでお願いします。それならばレイピアをさげても対応しやすいので」
「私もできればスカートが良いです。でも動きづらいので短めにして同じようにスパッツをはきたいです」
「メアさんとデザインについてお話しください。それではこの2着は残念ですが・・・」
「サイズ直して私が着るわ」アンジーが恥ずかしそうに言った。
「ほう、ではわしも黒い方をもらおうか」
「あのー申し訳ありませんアンジー様。これは、私も着たいのでこのまま持っていたいのです」
「私も気に入っていますので。大事に着させていただきます」
「なるほどな、しかし、わしもそろそろあつらえた物が欲しくなったぞ」
「それはそうね。私も一着あつらえようかしら」
「それには、どんな特殊効果を付けましょうか」
「いや、そんなのいらないし。きっとすごく余計な物だと思うし」アンジーがすごく嫌そうです。
「まったくじゃ、完全無欠のわしらに一体どんな特殊効果が必要だというのじゃ」モーラは怒って言いました。
「そうでしたねえ」
そう言いながらも、私はこっそりとアンジーの服には、聖属性の魔法を強化するように細工をしました。さすがにモーラには、何も付けませんでした。考えてもアイディアが浮かばなかったのです。
「余計なことをしないでよね」
「まあ、少しは役に立つじゃろう。それにしてもよく考えたら、わしはドラゴンに変身する時に脱がなければならんな。デザインだけ模倣して変身するしかないか」
モーラから聞いた話では、ドラゴンに変身する時は、服を置いていき、どこかで子どもに変身する時には服を同時に作っていて、戻ってきた時に裸に変身してから服を着るそうです。それは面倒ですね。
○エーネの杖
「それではエーネ用の杖です」私はエーネに杖を持参しました。本当に細身の長い棒です。握りの部分が2つつけてあり、模様が描かれています。
「あまり長くないのですね」エーネは実際に握って振り回します。
「一応、握りをちょっと捻るとですねえ」私はそう言って、握りの部分を回させる。すると2つある握りのうち手前を回すと、反対側の杖の先から剣が飛び出しました。
「鋭い穂先が飛び出るのですね」
「もうひとつの握りを回すと反対側から剣が出て、それらをさらに回すと、剣の刃が広がります」
「なるほど。わあビックリ」自分に向けて回す人がいますか。危険ですよ。
「戻す時は少しつなぎ目を引っ張るようにして逆に回します」私が言うとエーネは回してただの杖に戻りました。
「長さは、あの衣装を着て回るとちょうど良いくらいの位置に刃先がでているので、回転しながら槍を振り回すとそばに寄ってこられないようになります。詠唱するときには回ってください」
「目が回りそうです」
「あと折りたたんで腰に下げる事も出来ます」
「おお、あの衣装を着ないときでも十分機能的です。これが一番便利かも知れませんね」
「そうでしたか・・・とほほ」
○戦闘訓練
そうして武器を持っての訓練です。エーネがへっぴり腰すぎます。以前来た時に練習したはずですが。
「今回いただいた杖が軽すぎて調子が出ないのです」そういえばエーネは、繰り返し体を動かして覚えるタイプの人でしたね。練習あるのみです。
キャロルは、動きに無駄がありません。
「レイピアは、一撃の威力が余りありませんから、手数と躱しとしなりで攻撃してくださいね」
「慣れてくると軌道が見えてきました」
「あと、剣先は魔法の連射にも使えます」
「これは面白い魔法が使えそうです」
練習後に2人で連携の練習をコソコソしているようです。ユーリがついて行っているの大丈夫でしょうが、なぜパムは一緒に行っていないのでしょうか。
○そういえば
「一緒に旅する事にしてから聞くのもなんだけど、私がいなかったらこの後どうするつもりだったの?家出娘としてあの家に住まわせてもらうつもりだったのかしら」
「考えなしでした。ただ皆さんに会いたい一心で」
「気持ちはわかるけどね」
「今考えると恥ずかしいです」
「さて、お金に頼らない旅をしましょうか」
「確か、獣を狩って生活するのですよね」
「そのためには魔族の匂いを消さないとね。普通の獣も魔獣も寄ってこないわ」
「不可視のローブなら匂いも消せるのでしょうか?」
「少しだけなら大丈夫のようね。あとでDT様に聞いてみましょう」
「そういえば、私達が話をしていた時にきっと聞かれていたのでしょう。最近外で狩猟をしていたり料理を手伝わされたりしているのはたぶんそういう意図なのでしょう?」
「そうなのですか」
「暫くはここにいても良いとは言っているけど、早い方がいいわね」
「はい」
「親に連絡がつくのかしら」
「いいえ」
「そうなのね、旅をすることになるのは教えておいた方がいいでしょうね」
「はい」
「でも本当に私と一緒でいいのかしら」
「私は嬉しいのです。一人の対等な相手として扱ってくれている事が。旅に連れて行くではなく一緒に旅しようと言ってくれたことが」
「大丈夫よ。私も旅は初めてなのだから」キャロルは片手を出し、同じようにエーネも手を出す。お互い、手を叩く。そして反対の手でも同じように手を叩いてからお互いの肩を抱いた。傭兵同士の慣習である。信頼が置ける仲間同士の。
○合宿
その日は居間に全員が揃った。
「さて、そろそろ良いかしらね」アンジーが全員を見る。キャロルとエーネ以外は頷いています。
「キャロルとエーネ。とりあえず隣の家に2人で暮らしなさい。自給自足の生活をするのよ」言われた2人はポカンとしている。
「そこには家具や食器なんかは用意してあるわ。キャロルは使ったことがあるでしょう?」確かヒメツキさんと来た時に使っているはずだ。
「火や水は自分で調達しなさい。馬のエサもちゃんと買うのよ」
「生活用品は荷馬車に最低限つめるだけにしなさい。洗濯もやるのよ」2人は色々言われてただ頷くのみである。
「スパルタですねえ」
「仕方ないでしょ。このまま放り出すほうがよほど冷酷でしょう?」
「そうなんじゃが」
「この家ではお客さんではいられません。何かあった時のために隷属も必要でしょう」メアが言った。気持ちはわかります。
「それを強要するのは嫌ですね」私はそう言った。
「嫌がらないとは思いますよ~」エルフィはそう返す。
「私たちが非常識だと思うべきです」パムはエルフィに言った。
「残念だけどどちらも問題があるのよ。一人はヒメツキさん。一人は魔王なのよ。何があってもなくても問題なのよ」
「確かにどちらもなあ」
「とにかく今は、どちらからも了解が来るまでには鍛え上げて旅ができるようにしておいてちょうだい」
「ヒメツキは元々旅をするのは了解済みじゃが、あっちは厄介じゃな。連絡が取れぬ」
「モーラちょっとひとっ走り行ってきてくれないかしら」
「風の奴に連絡を取らせることになっておる。それよりもヒメツキが渋っているのが問題なのじゃ」
「何が問題なの」
「一緒に行かせることで危険な目にあうかもしれぬと危惧しておる」
「わからない訳ではないけど親バカね。一度は了解しているのでしょう?」
「仕方がなかろう。人と魔族が旅をするなどあまり考えられぬ。想定外すぎるわ」
「最近はよく見るそうですよ」パム
「そうなのか?」
「さすがに田舎や小さい町には現れてはいませんが、大きい都市ではごくまれにみるそうです」
「なるほど。そうであれば問題もないか」
「あのー。エーネの魔王の娘の匂いは消せませんよー」レイがすまなさそうに言った。
「ああそれは問題じゃな。おぬし何とかならんのか?」
「匂いばかりは、レイほどの嗅覚であれば隠し通すのは難しいでしょう?」
「他の魔族や獣人はどうなのかしら」
「元魔王様の時には、まったく気付いていませんでしたから大丈夫ではないかと思います」確か馬車で運んだ時には大丈夫でしたねえ。
「あのローブで大丈夫なのか。どういう仕掛けなのじゃ」モーラが私を見る。
「ついでに確認してみなさいよ」
「消臭剤の強い奴みたいですねえ。空気中の匂いの分子を分解しているみたいです」
「作れそうか」
「大丈夫ですね。もっとも顔や裾の部分から漏れる分までは対応できないでしょうけど」
「それ位は仕方がなかろう」
「風の方から連絡です。元魔王に連絡がついたそうです。旅をさせてやって欲しいと。責任は娘自身にあるとそう伝えて欲しいそうです」外で訓練をしていたパムとユーリが玄関から入って来てそう言った。
「そうか。あの子は箱入り娘で人族の常識や慣習に慣れていない上に純真だからなあ」
「それにしても元魔王様は能天気なのか。それとも本気なのかわかりませんねえ」
「あと奥様からは「すでに嫁に出したと思っております。よろしくお願いいたします」と言っていたそうです」
「嫁ですか? 誰の嫁と言っていましたか」
「残念ですが言われておりません」
「やるわねえ、あのババア」
「アンジー様落ち着ていください。「出したと思って」と言っていますよ」パムがたしなめる。
「ああそうね。考えすぎね」
「ともかく旅は了解されたということでよいな」
「そうなりますね」
「であれば早急に鍛え上げていくしかなかろう。今にも何かが起きるかもしれないのでな」
「寂しくなりますねえ」
「本当です~」
その後でヒメツキさんからも了解の連絡が来ました。
2週間程度はかかるかと思いましたが、エーネは意外に出来る子でした。
「料理の味付けはあなたにお願いするわ」キャロルがエーネにそう言った。
「キャロルも大丈夫ですよ。ちょっとだけ調味料が少ないだけなのですから。その後に入れすぎるのも問題なのです」
「あなたに調味料の加減を教えられるとは思わなかったわ」キャロルがため息交じりにそう言った。
「えへへ」
「じゃあ、問題なければ明日には出発よ」
「はい」エーネがそう応えて。ふたりは見つめ合い。ニッコリと笑った。
○旅立ちの日
昨日から宣言していたので、昨日の夕食は居酒屋で宴会でした。エルフィが泣き出してエーネが酔っ払って羽やら尻尾を出しかかって大変でしたが、何とか家に戻ってきて、客間で寝ていました。
今朝。朝食をみんなで食べてからキャロルとエーネが旅装に着替えて立っています。
「ではしばらく旅に出ます」
「ます」
「滞在をお許しいただきありがとうございました」キャロルはそう言って一礼する。
「ました」一礼しながらエーネが言った。
「エーネ。キャロルについて言ってないで、あんたも何か一言いいなさいよ」アンジーが言った。
「えーと。必ず無事に帰ってきます」
その言葉にキャロルを含め全員が崩れる。
「違うでしょ。しばらくしたらまた顔を出しますでしょ」キャロルが慌てて訂正させる。
「あ、そうでした。第2の我が家のような気がしてました。あはは」頭をかくエーネ。
「もう」
「まあキャロルよ。うまくやれ」
「はい」
「エーネよ。世界は広い。そなたは見聞を広め知識を積み重ねよ。それがおぬしの未来を拓くと知れ」
「はい」
「よくわかっておらんだろうが、おぬしの未来にはこの旅の経験が必ず糧になる。見て感じてそして悩むがいい」
「はい」
「キャロルさん」今度は私がキャロルを見つめています。
「DT様。なんでしょうか」ちょっとドギマギしている感じですねえ。
「この子は、純粋すぎて人の言葉でも魔族の言葉でもすぐ信じてしまうでしょう。彼女がこれから魔族や獣人、人族など多様な種族と関わっていく時に、疑うことも覚えていかなければなりません。もちろんそれをあなたに担わせるつもりはありませんが、旅の途中できっとこの子の事が面倒になる時が来るかもしれません。その時は、放り出すのではなく、その危機を乗り越えてから放り出すかどうか考えてみてください。それがあなたの良い経験になると思います」
「はい」
「まあ、危険だったらその場で放り出しても良いですけどね」
「その時はここに逃げ込むことにします」
「これは一本取られました。その切り返しができるなら大丈夫そうですね」
「はい」
「そしてエーネさん」
「は、はい」
「正直あなたを旅に出すのは不安です。キャロルがそばにいても不安です。ですが、私には止めることも邪魔することもできません。それがあなたの意志なのですから。人族があなたを見る目はきっと厳しいでしょう。ですが決して自暴自棄にならないようにしてください。最後に、あなたにはご両親がいるのですから、ご両親に悲しませるような行動を軽々しくしないようにしてください。どんな状況でもあきらめずに最後まで、キャロルと一緒に無い知恵を絞ってください。必ず方法が見つかるはずです」
「はい・・・あのう無い知恵というのはあんまりかと思いますが」エーネが涙目です。
「ああごめんなさい。無知の知という言葉があるのです。知識が無いと言うことは、知識に縛られずに自由な発想ができるという意味です。言い方を間違えてしまいましたね」
「はあ」
「だからそこで納得しないの。あんた多少は馬鹿にされているのよ」キャロルがたしなめる。
「発せられた言葉からは感じませんでしたが、そうなのですか?DT様ひどいです」また涙目だ。
「最後に試したかったのです。あなたの素直さがどの程度なのか。あなたの純粋さは弱点でもあり武器でもあります。あなたのその純粋さが事態を良い方向に導かせるきっかけになる事を祈っていますよ」
エーネは怪訝そうにキャロルを伺って、キャロルが頷いたのを見て
「ありがとうございます」とエーネは頭を下げた。
「あんたも大概意地悪よねえ」アンジーが私を見て言った。
「あまり遊びすぎるなよ。大事な門出ではないか」モーラからも言われてしまいました。
「旦那様~わかりますよ~おちゃらけないと泣きそうなんですよね~」
「ぬし様。こういう時は、感情が伝わるのも善し悪しですね」パムも笑っている。
「皆さん人が悪いですね。ご主人様が困っていらっしゃいます」
「メ、メアさんあれを」私はごまかすために話をそらしました。
「はい。お待ちください」メアは台所に用意していた物を持って居間に入ってきました。
「これは?」キャロルとエーネがそれを見て驚いています。
「魔族の匂いを軽減するローブです。あと荷馬車には匂いよけの魔法をかけてあります。多少は旅の危険を回避できるでしょう」
「そしてこれを」私は手に持っているネックレスを見せる。
「これは皆さんが首にかけているのと同じネックレスに見えますが」キャロルが嬉しそうに言いました。
「あ、本当です。いいのですか?」
「何か危ない事があったら。迷わず引っ張って鎖を引きちぎってくださいね。その場から逃げる事ができます。できれば馬か荷馬車も掴んでいてください。魔法でつながっていれば全部を転移できます」そう言いながら私は、キャロルとエーネそれぞれの首にネックレスをかけました。
「ありがとうございます。とても嬉しいです」かけられたネックレスについた小さな宝石を手に取って嬉しそうに見ています。
「私も嬉しいです」
「あんた転移先はどこにしたのかしら」
「ファーンの入り口です」
「家に私達がいなかったら入れないでしょうが」
「その時はあきらめて宿に泊まっていてくださいね」
「仕方が無いわね」
全員で見送りをして、カーブしている道を抜けて見えなくなってから、家の中に戻りました。ユーリとエルフィはちょっとだけ目が潤んでいます。
「旅に出してよかったのかのう」
「仕方ないでしょう。ここにいて隷属もしていないならあの子たちを保護する方法はないのよ」
「出発した事だけは伝えてもらおうかしら」
「風とミカに連絡しよう。あとエリスに頼んでビギナギルの領主にも入れておくか」
「そうね。本当に手のかかる子達だわ」
「まあ、子どもは手のかかるものですよ」私はそう言った。
「子どもねえ」アンジーが何か言いたげです。
「ふたりは女の子です。もう子どもではありません。恋を知ったとたん大人になりましたよ」ユーリがそう言いました。
「綺麗な言い回しだけど問題発言よねえ」アンジーがため息をついてそう呟いた。
家の外も中もしばらくは静かになりました。
Appendix
おう、でかけるのか。さみしなるなあ
そうやな、気をつけてな。自分の身と姫さん方の安全の両方に気をつけてな。
あんた達大概ね。私が心配なのはまぐさの質よ
ああ、そっちかいな
ここのは良い物だからねえ。しばらくお別れだわ
そうも言ってられへんで。もう一人の魔族のねーちゃんはトラブルメーカーっぽいからなあ
わかるんか
ああ、そう言う感じや
ああ、お迎えが来たわ。じゃあまたね
遊びに来る事もあるやろう。元気で頑張りや
続く
「まずはエーネですが、武器はどうしますか」
「近接戦闘はあまり得意ではありませんので、できれば魔法の使いやすい杖をお願いします。でも、戦闘になった際に自衛できないとなりませんから剣の方が良いですかね」エーネは戦いのイメージがないので、そんな答えになっています。
「わかりました。杖と兼用になる槍を考えましょう」
「よろしくお願いします」
「そしてキャロルですが、キャロルの武器はすでに完成してお渡ししてあります。防具はどうしますか」
キャロルは、帯刀していたレイピアを抜いてみせる。剣を見る目が嬉しそうです。
「防具ですか。胸当てくらいですね。私は、ユーリ様やパム様と違って筋肉量があまりありませんので、速度と回数で相手を翻弄するしかありません。ですからあまり重いと動きを鈍らせますので。あと、インナーとスパッツを私もお願いします。魔力量がユーリ様と同じくらいですので、戦闘中に魔法に魔力を割くとどうしても剣での戦闘に影響が出ますので。ああ、魔法耐性がありませんので、どちらを優先した方が良いのか。悩みどころですね。ユーリ様、パム様アドバイス願います」
「怪力・快速系の魔族はユーリ。怪力肉弾系は私ですので、たぶん言い方は申し訳ないのですが、エルフィの魔法の矢の弾幕を越えてきた中堅の魔族が相手となりますね。なので、魔法力重視の方がバランスは良いと思います。もっとも最近は、そんな戦闘もめっきり減ってきましたから気にすることは無いと思いますけれど」パムもこれと言ってイメージが湧いてないようです。
「実は今回。私にアイディアがひらめきまして。あるものをご用意させていただきました」私はそう言ってメアに言った。メアは頷いています。
「実はおふたりにあわせて製作した衣装があります。2階に用意してありますので、ぜひ着てみてください」
「着るのですか?」
「ええ、私も一緒に行って着替えをお手伝いします」メアがかなり嬉しそうだ。
「はあ」キャロルもエーネも中途半端に言いました。
そうしてまずキャロルがメアと一緒に2階に上がっていった。
「おぬしの趣味が先行している衣装じゃな」モーラがそう言った。楽しそうです。
「ええまあ、ちょっとだけ」
「ええぇぇぇぇぇ」と2階からキャロルの叫び声がする。
「あんたまた変な服を開発したんでしょう」アンジーがため息をつく。
「たしかにそうなんですが、ちゃんと実用的なんですがねえ」
そうして、メアに手を引かれてキャロルが居間に入って来る。その姿は、いわゆる白いフリルのたくさんついたゴシックロリータと言われる衣装でフリルフリフリのミニスカートのドレス的な何かだった。しかも顔の前にレースのベールがついていて顔が隠れるようになっている。
「ほう、おぬし趣味が良いのう」モーラが言いました。
「これはなかなか」とパム
「あんたのデザインじゃないわね。あの古着屋の店長・・・いや、今は服屋か。あの店長のデザインでしょう」
「大当たりです」
「よく手放したわねあの店長」店長の趣味を知っているアンジーがそう言った。
「こちらから仮デザインをお渡ししています」私は胸を張ってそう言いました。
「なるほどオーダーしたのね。さすがは前世のメイドマイスター」アンジー。それは馬鹿にしているつもりで褒め言葉になっているのですよ。褒めて褒めて~
「もっとも店長はもっとすごいやつをデザインしていましたよ」
「それは次に服を買いに行く時が問題ね」アンジーがとても嫌そうです。
「アンジー様もモーラ様も店長が手ぐすね引いて待っているとナナミさんが言っていました」メアが嬉しそうです。
「それを聞いただけで行きたくなくなったわ」モーラもげんなりしている。
「どうですか?」キャロルはその場でクルクルと回ってみせる。
「もう!最高です!」私は大きな声で言ってしまいました。両手を前で組んでちょっとお釜っぽく叫んでしまいました。
私の姿にもちろん周囲はドン引きです。その間にメアがエーネを連れて居間を出て着替えに行きました。
「これにはどういう特殊効果が付けられていますか」パムは私を見て聞いてきました。きっとただのゴスロリ衣装だったら軽蔑するつもりでしょう。もちろんそうではありませんよ。
「はい。新しい要素は、魔法剣を振る時に体から発散している細かい魔法の残滓を吸収します」私はそこで一拍おきました。
「それは、メアのメイド服に装備しているわよ。ちっとも目新しくないわよ」アンジーが私の予想通りの返しをしてくれました。グッジョブ!
「そうですね。それにレイの服は相手の魔法を魔力として吸収して打ち出す事が可能です。しかし今回の服は、このスカートのフリルが、魔法の残滓を一度吸収して服の周囲に拡散します。しかも、拡散する時に魔力耐性を付加して舞い上がって服に吸着されますので、魔法耐性の魔法をかける必要がないのです。さらに魔法耐性の魔法がすでにかけてある場合には、その効果をさらに増幅させます。限界はありますけれど、中級魔族程度の魔法攻撃には充分対抗できます」
「なるほどな。そのスカートのフリルにはそういう効果があるのか」
「白を基調にして作っているけど、戦場ではかなり目立つんじゃないのかしら」アンジーがやはり突っ込みました。
「その前にですね、我々の服は普段着と戦闘と共用できるようになっていますので、地味な服です。これもですね、ああ、私がしてはいけませんね。キャロル。そのベールをあげてください」
「はい。こうですか?」ベールをあげるとベールが頭の上で変化してホワイトプリムに変わる。そして、服全体のフリルが咲いていた花がつぼみに戻るように閉じていき、長さも膝上から膝下に変化すると同時に色が黒が基調になり、前のフリルが白のままなので、エプロンに見えてメイド服のように見えるようになります。
「どういう原理じゃ」
「単純です。剣に魔力を込めると魔法が励起され伸びていた黒色の繊維が縮んで下に隠れ、白い色の糸が前に出てきて開いたようになります。そして、ベールをカチューシャのところに持ちあげると励起が解除されて黒い糸が伸びて白い糸を隠すようになっています」
「また、わけのわからないものを作りおって」
そうしているうちにメアがエーネの手を取り居間に入って来る。今度は黒を基調としたゴシックロリータでデザインはほとんど同じだがスカートのフリルが若干おとなしめで裾がフリルではなくレースの刺繍になっている。刺繍が凝っていてまるで魔方陣のように見える。同じようにベールで顔が隠れている。
「キャロル。悪いが剣に魔法を込めて、さっきのモードにしてみてくれぬか」
「はい」キャロルは、剣の束に手をかけ目を閉じる。するとさきほどのミニスカートフリルでベールがおりた目隠しモードになる。
「なるほど、体格差はあるが、まるで双子のようじゃなあ」
「白と黒の対比がいいですねえ」
「実はこれ、色も変えられます。白か黒かどちらにもできます」
「あんたが意図していることはわかったわよ。つまり、誰が戦っているかわからなくするためなのね」アンジーがハッと気付いてそう言った。
「おお、そういうことか」
「それにしては目立ちすぎませんか」とはパム
「ちょっとそれぞれその場で回ってくれませんか」だまって二人はその場で回転してみせる。
「みなさん顔見ましたか?」
「いえ、フリルの動きに目が行って顔までは見られませんでしたね」
「そんなの戦場で通用するかしら」
「近接戦闘になった時には、接敵した敵には見られるでしょう。まあ、それは仕方がありません。でも、目立っていると言うことは、遠距離攻撃の的として狙ってくるでしょうからその周囲には敵が近づかないと思うのです」
「そういうことですか。言い方は悪いですけど囮にするつもりですか?」ユーリが嫌そうに言った。
「いえそうはなりませんよ。色を変えられると言ったでしょう?黒にもなりますから」
「やれやれ、せっかくエーネが可愛い服を着てきたというのに一言もなしか」
「もうね。言葉もありません。純白の天使と漆黒の天使どちらも可愛いです」
「ぬし様、エーネの衣装にはどのような特徴がありますか」パムはそれも知りたいらしいです。
「そうですね。こちらの衣装は、単純に魔力増幅ですね。魔法を使用した時の効率がかなりあがりますので、威力は格段にあがります。それと詠唱速度ですね。エーネ、簡単な魔法を詠唱してみてください。気をつけて!威力がかなり上がってますので。まず、武器に一度魔力を込めて、そして魔法を詠唱してみてください」
「はい」一瞬で指先に炎が吹き上がる。ええ、天井に届くくらいに。
「あの~発動が早すぎます。イメージしただけで一瞬で発動しています。これは危険です。それと威力がありすぎます。これは日常生活に支障を来します」
「ああ、解除方法は、ベールをあげてホワイトプリムにすると服が閉じます」
実際にベールをあげるとカチューシャになってメイド服みたいな感じにかわりました。
「これは、日常もこれを着ていた方が良いのでしょうか」キャロルが心配そうに尋ねた。
「ああ、お二人ともこちらの趣味を押しつけてすいません。違う服もご用意しますので、今回はあくまで作りたかった、着てもらいたかったという作品です。希望のデザインがあればお願いします」
「私は、以前からこの格好をしていましたので違和感がありませんが、さすがにこれを着ているとファーンでは目立ってしまいます。ブラウスに短いスカートと下にスパッツでお願いします。それならばレイピアをさげても対応しやすいので」
「私もできればスカートが良いです。でも動きづらいので短めにして同じようにスパッツをはきたいです」
「メアさんとデザインについてお話しください。それではこの2着は残念ですが・・・」
「サイズ直して私が着るわ」アンジーが恥ずかしそうに言った。
「ほう、ではわしも黒い方をもらおうか」
「あのー申し訳ありませんアンジー様。これは、私も着たいのでこのまま持っていたいのです」
「私も気に入っていますので。大事に着させていただきます」
「なるほどな、しかし、わしもそろそろあつらえた物が欲しくなったぞ」
「それはそうね。私も一着あつらえようかしら」
「それには、どんな特殊効果を付けましょうか」
「いや、そんなのいらないし。きっとすごく余計な物だと思うし」アンジーがすごく嫌そうです。
「まったくじゃ、完全無欠のわしらに一体どんな特殊効果が必要だというのじゃ」モーラは怒って言いました。
「そうでしたねえ」
そう言いながらも、私はこっそりとアンジーの服には、聖属性の魔法を強化するように細工をしました。さすがにモーラには、何も付けませんでした。考えてもアイディアが浮かばなかったのです。
「余計なことをしないでよね」
「まあ、少しは役に立つじゃろう。それにしてもよく考えたら、わしはドラゴンに変身する時に脱がなければならんな。デザインだけ模倣して変身するしかないか」
モーラから聞いた話では、ドラゴンに変身する時は、服を置いていき、どこかで子どもに変身する時には服を同時に作っていて、戻ってきた時に裸に変身してから服を着るそうです。それは面倒ですね。
○エーネの杖
「それではエーネ用の杖です」私はエーネに杖を持参しました。本当に細身の長い棒です。握りの部分が2つつけてあり、模様が描かれています。
「あまり長くないのですね」エーネは実際に握って振り回します。
「一応、握りをちょっと捻るとですねえ」私はそう言って、握りの部分を回させる。すると2つある握りのうち手前を回すと、反対側の杖の先から剣が飛び出しました。
「鋭い穂先が飛び出るのですね」
「もうひとつの握りを回すと反対側から剣が出て、それらをさらに回すと、剣の刃が広がります」
「なるほど。わあビックリ」自分に向けて回す人がいますか。危険ですよ。
「戻す時は少しつなぎ目を引っ張るようにして逆に回します」私が言うとエーネは回してただの杖に戻りました。
「長さは、あの衣装を着て回るとちょうど良いくらいの位置に刃先がでているので、回転しながら槍を振り回すとそばに寄ってこられないようになります。詠唱するときには回ってください」
「目が回りそうです」
「あと折りたたんで腰に下げる事も出来ます」
「おお、あの衣装を着ないときでも十分機能的です。これが一番便利かも知れませんね」
「そうでしたか・・・とほほ」
○戦闘訓練
そうして武器を持っての訓練です。エーネがへっぴり腰すぎます。以前来た時に練習したはずですが。
「今回いただいた杖が軽すぎて調子が出ないのです」そういえばエーネは、繰り返し体を動かして覚えるタイプの人でしたね。練習あるのみです。
キャロルは、動きに無駄がありません。
「レイピアは、一撃の威力が余りありませんから、手数と躱しとしなりで攻撃してくださいね」
「慣れてくると軌道が見えてきました」
「あと、剣先は魔法の連射にも使えます」
「これは面白い魔法が使えそうです」
練習後に2人で連携の練習をコソコソしているようです。ユーリがついて行っているの大丈夫でしょうが、なぜパムは一緒に行っていないのでしょうか。
○そういえば
「一緒に旅する事にしてから聞くのもなんだけど、私がいなかったらこの後どうするつもりだったの?家出娘としてあの家に住まわせてもらうつもりだったのかしら」
「考えなしでした。ただ皆さんに会いたい一心で」
「気持ちはわかるけどね」
「今考えると恥ずかしいです」
「さて、お金に頼らない旅をしましょうか」
「確か、獣を狩って生活するのですよね」
「そのためには魔族の匂いを消さないとね。普通の獣も魔獣も寄ってこないわ」
「不可視のローブなら匂いも消せるのでしょうか?」
「少しだけなら大丈夫のようね。あとでDT様に聞いてみましょう」
「そういえば、私達が話をしていた時にきっと聞かれていたのでしょう。最近外で狩猟をしていたり料理を手伝わされたりしているのはたぶんそういう意図なのでしょう?」
「そうなのですか」
「暫くはここにいても良いとは言っているけど、早い方がいいわね」
「はい」
「親に連絡がつくのかしら」
「いいえ」
「そうなのね、旅をすることになるのは教えておいた方がいいでしょうね」
「はい」
「でも本当に私と一緒でいいのかしら」
「私は嬉しいのです。一人の対等な相手として扱ってくれている事が。旅に連れて行くではなく一緒に旅しようと言ってくれたことが」
「大丈夫よ。私も旅は初めてなのだから」キャロルは片手を出し、同じようにエーネも手を出す。お互い、手を叩く。そして反対の手でも同じように手を叩いてからお互いの肩を抱いた。傭兵同士の慣習である。信頼が置ける仲間同士の。
○合宿
その日は居間に全員が揃った。
「さて、そろそろ良いかしらね」アンジーが全員を見る。キャロルとエーネ以外は頷いています。
「キャロルとエーネ。とりあえず隣の家に2人で暮らしなさい。自給自足の生活をするのよ」言われた2人はポカンとしている。
「そこには家具や食器なんかは用意してあるわ。キャロルは使ったことがあるでしょう?」確かヒメツキさんと来た時に使っているはずだ。
「火や水は自分で調達しなさい。馬のエサもちゃんと買うのよ」
「生活用品は荷馬車に最低限つめるだけにしなさい。洗濯もやるのよ」2人は色々言われてただ頷くのみである。
「スパルタですねえ」
「仕方ないでしょ。このまま放り出すほうがよほど冷酷でしょう?」
「そうなんじゃが」
「この家ではお客さんではいられません。何かあった時のために隷属も必要でしょう」メアが言った。気持ちはわかります。
「それを強要するのは嫌ですね」私はそう言った。
「嫌がらないとは思いますよ~」エルフィはそう返す。
「私たちが非常識だと思うべきです」パムはエルフィに言った。
「残念だけどどちらも問題があるのよ。一人はヒメツキさん。一人は魔王なのよ。何があってもなくても問題なのよ」
「確かにどちらもなあ」
「とにかく今は、どちらからも了解が来るまでには鍛え上げて旅ができるようにしておいてちょうだい」
「ヒメツキは元々旅をするのは了解済みじゃが、あっちは厄介じゃな。連絡が取れぬ」
「モーラちょっとひとっ走り行ってきてくれないかしら」
「風の奴に連絡を取らせることになっておる。それよりもヒメツキが渋っているのが問題なのじゃ」
「何が問題なの」
「一緒に行かせることで危険な目にあうかもしれぬと危惧しておる」
「わからない訳ではないけど親バカね。一度は了解しているのでしょう?」
「仕方がなかろう。人と魔族が旅をするなどあまり考えられぬ。想定外すぎるわ」
「最近はよく見るそうですよ」パム
「そうなのか?」
「さすがに田舎や小さい町には現れてはいませんが、大きい都市ではごくまれにみるそうです」
「なるほど。そうであれば問題もないか」
「あのー。エーネの魔王の娘の匂いは消せませんよー」レイがすまなさそうに言った。
「ああそれは問題じゃな。おぬし何とかならんのか?」
「匂いばかりは、レイほどの嗅覚であれば隠し通すのは難しいでしょう?」
「他の魔族や獣人はどうなのかしら」
「元魔王様の時には、まったく気付いていませんでしたから大丈夫ではないかと思います」確か馬車で運んだ時には大丈夫でしたねえ。
「あのローブで大丈夫なのか。どういう仕掛けなのじゃ」モーラが私を見る。
「ついでに確認してみなさいよ」
「消臭剤の強い奴みたいですねえ。空気中の匂いの分子を分解しているみたいです」
「作れそうか」
「大丈夫ですね。もっとも顔や裾の部分から漏れる分までは対応できないでしょうけど」
「それ位は仕方がなかろう」
「風の方から連絡です。元魔王に連絡がついたそうです。旅をさせてやって欲しいと。責任は娘自身にあるとそう伝えて欲しいそうです」外で訓練をしていたパムとユーリが玄関から入って来てそう言った。
「そうか。あの子は箱入り娘で人族の常識や慣習に慣れていない上に純真だからなあ」
「それにしても元魔王様は能天気なのか。それとも本気なのかわかりませんねえ」
「あと奥様からは「すでに嫁に出したと思っております。よろしくお願いいたします」と言っていたそうです」
「嫁ですか? 誰の嫁と言っていましたか」
「残念ですが言われておりません」
「やるわねえ、あのババア」
「アンジー様落ち着ていください。「出したと思って」と言っていますよ」パムがたしなめる。
「ああそうね。考えすぎね」
「ともかく旅は了解されたということでよいな」
「そうなりますね」
「であれば早急に鍛え上げていくしかなかろう。今にも何かが起きるかもしれないのでな」
「寂しくなりますねえ」
「本当です~」
その後でヒメツキさんからも了解の連絡が来ました。
2週間程度はかかるかと思いましたが、エーネは意外に出来る子でした。
「料理の味付けはあなたにお願いするわ」キャロルがエーネにそう言った。
「キャロルも大丈夫ですよ。ちょっとだけ調味料が少ないだけなのですから。その後に入れすぎるのも問題なのです」
「あなたに調味料の加減を教えられるとは思わなかったわ」キャロルがため息交じりにそう言った。
「えへへ」
「じゃあ、問題なければ明日には出発よ」
「はい」エーネがそう応えて。ふたりは見つめ合い。ニッコリと笑った。
○旅立ちの日
昨日から宣言していたので、昨日の夕食は居酒屋で宴会でした。エルフィが泣き出してエーネが酔っ払って羽やら尻尾を出しかかって大変でしたが、何とか家に戻ってきて、客間で寝ていました。
今朝。朝食をみんなで食べてからキャロルとエーネが旅装に着替えて立っています。
「ではしばらく旅に出ます」
「ます」
「滞在をお許しいただきありがとうございました」キャロルはそう言って一礼する。
「ました」一礼しながらエーネが言った。
「エーネ。キャロルについて言ってないで、あんたも何か一言いいなさいよ」アンジーが言った。
「えーと。必ず無事に帰ってきます」
その言葉にキャロルを含め全員が崩れる。
「違うでしょ。しばらくしたらまた顔を出しますでしょ」キャロルが慌てて訂正させる。
「あ、そうでした。第2の我が家のような気がしてました。あはは」頭をかくエーネ。
「もう」
「まあキャロルよ。うまくやれ」
「はい」
「エーネよ。世界は広い。そなたは見聞を広め知識を積み重ねよ。それがおぬしの未来を拓くと知れ」
「はい」
「よくわかっておらんだろうが、おぬしの未来にはこの旅の経験が必ず糧になる。見て感じてそして悩むがいい」
「はい」
「キャロルさん」今度は私がキャロルを見つめています。
「DT様。なんでしょうか」ちょっとドギマギしている感じですねえ。
「この子は、純粋すぎて人の言葉でも魔族の言葉でもすぐ信じてしまうでしょう。彼女がこれから魔族や獣人、人族など多様な種族と関わっていく時に、疑うことも覚えていかなければなりません。もちろんそれをあなたに担わせるつもりはありませんが、旅の途中できっとこの子の事が面倒になる時が来るかもしれません。その時は、放り出すのではなく、その危機を乗り越えてから放り出すかどうか考えてみてください。それがあなたの良い経験になると思います」
「はい」
「まあ、危険だったらその場で放り出しても良いですけどね」
「その時はここに逃げ込むことにします」
「これは一本取られました。その切り返しができるなら大丈夫そうですね」
「はい」
「そしてエーネさん」
「は、はい」
「正直あなたを旅に出すのは不安です。キャロルがそばにいても不安です。ですが、私には止めることも邪魔することもできません。それがあなたの意志なのですから。人族があなたを見る目はきっと厳しいでしょう。ですが決して自暴自棄にならないようにしてください。最後に、あなたにはご両親がいるのですから、ご両親に悲しませるような行動を軽々しくしないようにしてください。どんな状況でもあきらめずに最後まで、キャロルと一緒に無い知恵を絞ってください。必ず方法が見つかるはずです」
「はい・・・あのう無い知恵というのはあんまりかと思いますが」エーネが涙目です。
「ああごめんなさい。無知の知という言葉があるのです。知識が無いと言うことは、知識に縛られずに自由な発想ができるという意味です。言い方を間違えてしまいましたね」
「はあ」
「だからそこで納得しないの。あんた多少は馬鹿にされているのよ」キャロルがたしなめる。
「発せられた言葉からは感じませんでしたが、そうなのですか?DT様ひどいです」また涙目だ。
「最後に試したかったのです。あなたの素直さがどの程度なのか。あなたの純粋さは弱点でもあり武器でもあります。あなたのその純粋さが事態を良い方向に導かせるきっかけになる事を祈っていますよ」
エーネは怪訝そうにキャロルを伺って、キャロルが頷いたのを見て
「ありがとうございます」とエーネは頭を下げた。
「あんたも大概意地悪よねえ」アンジーが私を見て言った。
「あまり遊びすぎるなよ。大事な門出ではないか」モーラからも言われてしまいました。
「旦那様~わかりますよ~おちゃらけないと泣きそうなんですよね~」
「ぬし様。こういう時は、感情が伝わるのも善し悪しですね」パムも笑っている。
「皆さん人が悪いですね。ご主人様が困っていらっしゃいます」
「メ、メアさんあれを」私はごまかすために話をそらしました。
「はい。お待ちください」メアは台所に用意していた物を持って居間に入ってきました。
「これは?」キャロルとエーネがそれを見て驚いています。
「魔族の匂いを軽減するローブです。あと荷馬車には匂いよけの魔法をかけてあります。多少は旅の危険を回避できるでしょう」
「そしてこれを」私は手に持っているネックレスを見せる。
「これは皆さんが首にかけているのと同じネックレスに見えますが」キャロルが嬉しそうに言いました。
「あ、本当です。いいのですか?」
「何か危ない事があったら。迷わず引っ張って鎖を引きちぎってくださいね。その場から逃げる事ができます。できれば馬か荷馬車も掴んでいてください。魔法でつながっていれば全部を転移できます」そう言いながら私は、キャロルとエーネそれぞれの首にネックレスをかけました。
「ありがとうございます。とても嬉しいです」かけられたネックレスについた小さな宝石を手に取って嬉しそうに見ています。
「私も嬉しいです」
「あんた転移先はどこにしたのかしら」
「ファーンの入り口です」
「家に私達がいなかったら入れないでしょうが」
「その時はあきらめて宿に泊まっていてくださいね」
「仕方が無いわね」
全員で見送りをして、カーブしている道を抜けて見えなくなってから、家の中に戻りました。ユーリとエルフィはちょっとだけ目が潤んでいます。
「旅に出してよかったのかのう」
「仕方ないでしょう。ここにいて隷属もしていないならあの子たちを保護する方法はないのよ」
「出発した事だけは伝えてもらおうかしら」
「風とミカに連絡しよう。あとエリスに頼んでビギナギルの領主にも入れておくか」
「そうね。本当に手のかかる子達だわ」
「まあ、子どもは手のかかるものですよ」私はそう言った。
「子どもねえ」アンジーが何か言いたげです。
「ふたりは女の子です。もう子どもではありません。恋を知ったとたん大人になりましたよ」ユーリがそう言いました。
「綺麗な言い回しだけど問題発言よねえ」アンジーがため息をついてそう呟いた。
家の外も中もしばらくは静かになりました。
Appendix
おう、でかけるのか。さみしなるなあ
そうやな、気をつけてな。自分の身と姫さん方の安全の両方に気をつけてな。
あんた達大概ね。私が心配なのはまぐさの質よ
ああ、そっちかいな
ここのは良い物だからねえ。しばらくお別れだわ
そうも言ってられへんで。もう一人の魔族のねーちゃんはトラブルメーカーっぽいからなあ
わかるんか
ああ、そう言う感じや
ああ、お迎えが来たわ。じゃあまたね
遊びに来る事もあるやろう。元気で頑張りや
続く
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