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第25話 DT神から見放される
第24-11話 終結へ
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○終結なのか終戦なのか
「おや転移魔法で一瞬でいなくなりましたねえ。使ってもいいですか」私は彼が消えた事よりも転移魔法を使った事の方が気になりました。おっと、まだしなければならない事が。
「お疲れ様でした皆さん。茶番に付き合わせて申し訳ありませんでした」
私は部屋にいた勇者達全員に頭を下げる。
「どういうことか教えてもらえませんか」俺様勇者のところのライオットが言った。
「まあ、わしら全員、神の手のひらの上で踊らされただけじゃ。こいつひとりを殺すためにな」
「そんな。賢者様」王女が手を伸ばそうとする。
「ごめんなさいねえ皆さん。さきほど聞いたように、神は魔族が邪魔になって私を呼んだのですが、私は記憶もなく根がぐうたらな者ですから、神はあきれて、いい加減私を捨てようと思ったのです。でも、ただ捨てたらもったいないから人族が魔族に一丸となる時の生け贄にしようとしたのですよ。でもさすがに私もそれは嫌だったので他の勇者様達が団結して魔族に一丸となるように話を進めたのですが、それも面白くなかったみたいで、そのために私を殺すことにしたのですね」
「先ほどの光の柱は、どうなったのですか」フェイがそう聞いた。
「想定されていたので、防御の魔法を張っておいて、停戦記念になればと思って魔法を変換して、実際には花火に見えているはずですよ」
「そんなことまで出来るのなら、さっさと勇者になって魔族を討伐すれば良いじゃないですか」ライオットが怒って言った。
「いいですか?あなたは宣託を受けた身なのでしょうけど、私は記憶をなくしてこの世界に飛ばされ、その目的も告げられていないのですよ。別に記憶がなくても、再び私に「お前は勇者だ」って宣託しても良かったと思いませんか?」
「それは確かに。でも」ライオットは納得できていない。
「それに与えられた技術は重力系の魔法初期レベルと、分子レベルの解析ができることしか与えられていません。でも、そちらの2人も同じようなものでしょう?」
「ああ、俺は体に関する技量と剣術についてと攻撃魔法だよ」イシカリが言った
「私は、不死身の体と体術と攻撃魔法だ」とジャガーが言った
「そして2人とも言語はすぐ習得しているはずでし、物質を解析できましたよね。言葉も生えている草木も全部理解できたはずです」私は念のため確認しました。
「ああ、言語は習得できた。しかし草木は見えたが他に役に立つスキルが欲しかったよ」
「私も言語はありがたかったが、解析については、ああこの草は毒か食べられるかはわかったから便利だったくらいですね」
「そうでしょうね。でも、私が今持っているスキルのほとんどが、その解析から得た技術なのですよ」私はちょっと強めに言いました。
「どういうことだ」
「私が、最初に憶えたのは空気を練ることでした。手を握ったり開いたりしたら手の中に空気の球が出来ました。2人もやってみてください」私がそう言うと、2人は握り始める。
「おおできた」ユージは黒い塊を私に見せる。
「これは作ったことがある」ジャガーがそう言った。
「さらにどんどん圧縮していってください」私はまたそう言った。
「え?え?」2人はかなりの速度で握り始めドンドン圧縮されていき、その様子に驚いている。
「あぶないのでこの中に投げ入れてください」そう言って私は、目の前に四角い箱を作り、その中に大きな花瓶を入れる。
「あててください」
それぞれが投げた圧縮した空気は、軽く投げたのに花瓶は粉々に砕け散った。
「すごい」
「これはすごい」
「貴方たちは自分の能力にばかり注目して他の能力の事をおろそかにしすぎていたのです。わかりましたか。それだけの豊富な魔力量を持ちながらそれを有効活用していないのです。はっきり言って勉強不足です。慢心しています」
「すいません」ユージが頭を下げる。
「頑張ります」ジャガーも頭を下げる。どちらも実は素直な人なのですね。
「それから、神の敵は私ひとりです。皆さんには、決して手は出してきません。なぜなら、魔族と戦う人達を神と称する者である勇者を大事にするからです。皆さんはこれから起こるであろう魔族との戦いを意識して力をつけていってください。魔族は、人族を間引きあるいは全滅するために戦争を仕掛けてくるつもりですから。自分の力をより高めるように精進してくださいね」
「あんた本当に先生向きねえ」アンジーがあきれている。
「まったくじゃ。よいか2人の勇者達よ。こやつは研究者タイプなんじゃよ。じゃからのめりこみすぎてなあ。深く掘り下げてしまう悪い癖もある。ほどほどが肝心じゃ。わかるな。そして王女よ」
「はい」
「こやつに言いたいことがあるのであろう?今のうちじゃ言っておけ」
「あなたは、私を混乱させることしか言い残してはくれなかった。悩ませ混乱させることしか言わない。挙げ句頼りにしていた仲間を死なせ、父の威を借る魔法使いには騙され、さらには隣国から戦争を仕掛けられる始末。いったい私にどうしろと?賢王たれとそれと勇者たれと言いましたよね。どちらも出来ません私には」王女は、私に投げつけるように吐き捨てるように私に叫んだ。
「残念ですが、国の命運を変えるような指示を私はできませんよ。私には選択肢を示すくらいしかできません」
「むしろこちらへ進めと言って欲しかった。そうすれば彼女を死なせずに済んだのに」王女は両手で顔を覆っている。
「では再び問いましょう、気持ちとしてはどちらを選びたいのでしょうか。国王の病状、国のこれまでの成り立ち、そして自分自身の勇者としてのこれまでを一切考えずに気持ちをお答えください」
「答えられません」
「そうでしょうね。それが今のあなたの限界なのです。結局あなたは勇者たることも賢王たることもいずれも選べない優柔不断なのです。私に救いを求めても本心がないんですよ。だから私が示した方向に向かいたい。賢者が示した道ならきっと間違いないと」
「そう・・・なのかもしれません」王女は両手の力が抜けて腕をダランと下げた。
「あと、国を捨てられますか?」
「なにを言いますか」
「こちらの勇者様達はね、貧乏で碌な装備もなく、それでも勇者としての実績を積み上げようと頑張っていました。あなたにそれが出来るかと言うことですよ」
「それは・・わかりません」
「ですよね、ならば一度全てを捨てて一からやってみませんか?」
「全てを捨てて?」
「はい。冒険者になるのです。勇者ではなく」
「冒険者になってなにをすれば」
「旅をしてください。野宿をして料理を作って野獣や魔獣を倒し、生活の為のお金を得て。困っている人がいれば助け、集落の人と交流してください。もちろん名を隠してね」
「それでもだめならどうしたらよいですか」
「その時は国に戻って賢王になってください。その時には市井の暮らしも理解できる、きっと良い王様になっているでしょうから」
「しかし、父が」
「それはね、たぶんもう回復していると思うわ」アンジーがそう言った。
「もしかしてそれは、一連の騒ぎのために仕組まれていたと言うのですか」王女がアンジーを見て尋ねる。
「そうね、これまで国王を見たのかしら?」
「いいえ、心の病で何か傷つけてしまうことを言ってしまうからと会わせてもらえませんでした」
「そういうことよ」
「では王女様、先ほどの会議の続きを行ってください」
そこでフェイとライオットが近づいてきて、全員が頷く。
「今回の事は、全て謀略によるもの、関係者はそれぞれの国で処分。賠償金等については、当然支払わせる。ただしそれぞれの街の治安に関しては、双方の国が共同で行い、街の中立を図ろう」
「ロスティアとしては不満でしょうが、痛み分けとして欲しいところです。それで良いですか?」
「領土は保持し賠償金はもらう。それでよしとしよう。亡くなった者の家族や、傷ついた者達へと補償金として支払う事にする」
そのような話をしている間に私達は逃げるように帰ろうとした。
「お待ちください、名もなき辺境の賢者様」勇者達全員が一列に並ぶ。
「このたびのこと、いいえなにも言いますまい。ありがとうございました」
全員がならんで一礼する。長い長い一礼だ。その間に私達は姿を消す。
全員が頭を上げてお互いを見合う。少しの寂しさと笑いがこぼれる。
「どうしてあの方が勇者になってくれないのだろうなあ」
「さきほど王女が言ったではありませんか。勇者ではなく賢者様と」
「そうか、そうだな。では、これからも何かあったら相談することにしよう。そういえば家を知らぬなあ」
「あ、私が知っていますから。旅姿で言ったら歓待してくれますよ」
「そうだな」
その後、その会場では、お付きの人たちの意識が戻ってから、滞りなく勇者会議は進められて、ギクシャクした関係ではなく勇者同士が親しくなっていた。それを見てお付きの人たちは首をかしげていた。
風の逆巻く雲の中を何かが飛んでいる。もちろん不可視化したモーラですが。
『結局しゃしゃり出てしまいました。反省しないと』
『あと、ご主人様の演技は迫真過ぎて、みんなどんよりとなっていますよ』とメアが言った。確かにみんな元気がない。
『いや、話に入る前にここからは演技しますからって念を押しておいたのですが、それに会話中も心の中でちゃんと叫んでいたでしょう?』
『にしてもおぬしの言葉には力があるのう。おぬしの言う言霊という奴か』
『たしかにねえ、ちょっと意味は違うけどそんな感じよねえ』
『にしても、ぬし様それからモーラ様アンジー様。ご慧眼です。私の浅薄なる思考など及びもつきませんでした』
『これまでパムに色々な情報をもらっていたから導き出せた結論なのよ。だからあなたの調査がなければ成立しなかったの。感謝しているわ』
『しかし、操られていたとはうかつでした』
『あれは魔法ではなく話術ですからねえ。慣れるしかないのですよ』と私
『しかし、反対に操るとかおぬしもようやるわ』
『メアさん。あの男の言うことなんか気にしないでくださいね。あなたは正真正銘のホムンクルスですから』
『ええそうなんですけど、やはり気になります』
『まあ、あやつもあのような捨て台詞でもしないと格好がつかなかったのじゃろう』
『いるじゃない?同族に嫉妬する奴って。お前は本当のホムンクルスではないって』
『あ~私言われましたよ~本当のエルフじゃないって~あれってイライラしますよね~負け惜しみって言うか~』
『おうそうじゃな』
そうして、家に戻って大きいテーブルでくつろぐ。
「そういえば村にはこのまま行っても良いのよねえ」
「たぶん勇者会議の開催が宣伝されて使節団も間者もいなくなっているはずですが」
「なら、居酒屋行かない?」
「いきた~い」
「私も行きたいです」
「僕も~」
「メアさんどうしますか」
「ええ、食材がほとんどありませんので。誰がこんなに食い散らかしましたか」
そう言ってメアさんはため息をつく。
私とモーラとレイとエルフィがお互いに指を差し合いました。
「やれやれ。では居酒屋へ行きましょう」メアが号令をかける。
「「「「「「お~」」」」」」残る全員が手を上げる。どこぞの海賊団ですか。
夕暮れだからか村までの道もほとんど人通りがない。
「最近ゆっくり村まで行っていませんでしたねえ」
「そうね、女装したりね」アンジーが笑いながら言った。
「汚いローブの子どもは連れていませんでしたが」私の言葉に、すかさずスネを蹴りますか。
「やっぱり平和って良いですねえ」
「戦争は嫌よねえ」
「まったくじゃ」
そうして村に近づくと道がかなり、村から離れた方に曲げられていて、道のあったところに村の外壁を作る工事が始まっていた。
「今回の戦争の件で危機感が出てしまったのね」アンジーが寂しそうに言った。
「まあ、ここまで戦禍が伸びるとは思っていなかったでしょうけど、防衛策は必要ですからねえ」
「気持ちがすさんできているようで、少し寂しいわね」
工事中の入り口を抜けて中に入る。中は普段のままだが人は多い。
「さて、いつもの居酒屋に・・・」
居酒屋のある場所に行ってみると、居酒屋は閉鎖され、そこには「移転しました」と書かれた紙が貼られていて移転先の地図も描いてあった。その地図を頼りに行ってみると、一回り大きな居酒屋になっていた。
「久しぶりだねえ。あんた達の席は一番奥のテーブルだ。空けて待っていたよ」
「どうしてですか?」
「なんか村長が・・ああ町長がね。きっと顔出すだろうから空けておけってね」
「村長から町長に格上げですか」
「みんながねえ。外壁の工事をして、この村を大きくするのに村長じゃダメだろうと言って、今度から町長、町の長と呼ぶことにしたのさ」女将さんが嬉しそうにそう言った。
「なるほど。それでは私はちょっと町長に就任のお祝いの挨拶に行ってきますね」
「そうか、ではわしも・・・」とモーラが言いかけると全員が立ち上がった。
「おやおや、仲のよろしいことで。席はそのまま空けておくから、とっとと帰ってくるんだよ。みんな待ってるから」と居酒屋の女将が言った。
私達は全員で町長のところに向かう。なぜか無言だ。
そうして、町長の家に着く。いつもなら人がごった返しているはずなのに静かだ。ノックをして扉をあける。誰もいないように見えたが、奥の机に人影があった。
「町長さんですか」そう私が声をかけると部屋の中の壁に置かれた、たいまつに火がついた。
「おおあんたか。しかも全員でとは珍しい。何かあったかな」
いつもの口調だが顔は暗くて見えない。しかも炎のゆらぎのおかげで顔に影が出来てなにやら怪しい雰囲気だ。
「町長に就任されたそうで。お祝いは後日お持ちしますが、今日は挨拶だけと思いまして、就任おめでとうございます」私がそう言って、全員でお辞儀をする。
「そうか、やはりめでたいことなのかのう。ありがとう」表情が読めないが言葉からは心なしか寂しそうな気持ちが伝わってくる。
「孤児院の件は、いろいろと取り計らっていただきありがとうございます。いつも忙しくてこうして改まってお礼を言うのが遅くなってすいませんでした」
「それと~今回のエルフの件もお世話してくれてありがとうございました~」
「僕も獣人族の件ありがとうございました」
「傭兵団を僕の元に送り出してくれて、しかも物資も提供していただいたと聞いております。ありがとうございました」
「皆さん村長・・いえ町長さんにお世話になっていたんですね。私からもうちの家族がお世話になりありがとうございます」
「おぬしは良いのう。良い家族に恵まれてうらやましいぞ。さて、お祝いだけではなかろう。聞きたいのじゃろう?どうしてわしが居酒屋の席を予約したのか」
「はい、もしかして何かご存じなのでしょうか」パムが真っ先に尋ねた。
「なにも知らぬよ。大概、大事件があった時には、おぬしらが居酒屋に行くのでなあ、今回も勇者会議とやらがあったであろう?だからきっとそういう時に居酒屋を利用するのではないかと思っただけじゃ。最近食材を買っている風でもなかったのでなあ」町長は何でも無い事のようにスラスラと言った。
「そうでしたか。すいません変な勘ぐりをして」私は謝った。
「わしがそう思って女将に言ったのでなあ。それは申し訳ないことをした。しかし、この世界急ぎすぎじゃな」
「なにがでしょうか」
「おぬし達が悪いわけではないし、むしろしかたなく巻き込まれているだけなのじゃろうが、こうやっておぬし達の伝手で、エルフや獣人と共に暮らすようになり、町が一回り大きくなろうとしている。わしが思っていたよりもこの町の発展が早すぎるのじゃ。急な発展は終わりも早いようなそんな気がしてなあ。不安なのじゃよ」
「私としては、この町に迷惑をかけるつもりはありません。まして私が手助けしたのがまずかったのであれば・・」
「ああすまん。そう言う意味で言ったのではない。単なる老人の愚痴じゃ。歳を取るとどうしても時間の流れる早さや時代の流れについて行けなくてなあ不安になるのじゃ」
「・・・・」
「それと前にも言ったであろう。おぬし達を迷惑とは思っていないし、町の住民じゃ。何かあったら頼れと。じゃから何でも言うてくれ。頼られたら協力する。それでお互い助け合って暮らしていける。そうじゃな」
「ありがとうございます」
「この町が大きくなってもこれからもよろしく頼むよ」
「はい」
「ああ、この家も移すことになってなあ。最後くらいひとりで座っていたので不気味じゃったろう。それも悪かったのう」
「住み慣れた家ならなおのこと寂しいでしょうに。それでも引っ越されますか」
「ああ、この辺はみんな区画整理の対象になっておる。わしが移らねば、そのままみんな住んでいたいであろう。わしが動くと言ったからみんなは渋々でも動いてくれることになったのだよ」
「あの~移しましょうか~?」とエルフィがおずおずと手を上げる。
「そうじゃなあ。できるなら希望者の家だけでも移してもらえるかのう。費用はあまり出せないが」
「わかりました~では責任者の方と明日でも話しますね~」
「ああすまないなあ。またおぬしの家族に手伝ってもらって」
「ここの町の一員ですから」
「ああそうじゃったな」
「ではまた明日。ここにいらっしゃいますか」
「関係者は酒場にいるであろうから話しておいてくれ。明日はここで話をしよう」
「ラジャー」そう言って敬礼をする。
「ラジャー」そう言って町長は真似をして敬礼した。
そして、私達は町長の家を出る。異様に静かなモーラとアンジー。その雰囲気にみんな静かだ。唯一エルフィだけうれしそうだ。
『どうしましたかモーラ、アンジー』
『今、町長のさっきの言葉を思い出しながら検証しておる』
『でも、齟齬がないのよ。普通の人なのよね。考えすぎだったかしら』
『2人とも~考えすぎですよ~』
『確かになあ。たまたま勘が当たった程度なのじゃよ』
『そうなのよ。これまでも単に手際が良いだけなのよね。先回りがうまい・・ああ、先見の明があるというやつなのかしら』
『ですが、急すぎるとは』とパムが気にしている。
『その一言がこの疑念につながるのよねえ。違和感をわざと持たせられたと感じるのよ』
『まあ、わしらを騙せるほどの者ならわしらが考えても無駄じゃ』
『そうなんだけどねえ』
『おや、モーラ様もアンジー様もこの世界で1位2位を争う賢者様でしょう』メアがそう言った。
『わしらなんか子どもの浅知恵じゃ。もっと上がぎょうさんいるわ』モーラが笑っている。
『ぎょうさんって、変な言葉覚えましたね』私はちょっと複雑です。
『ああ、つい面白がって使っているが中途半端な言語じゃな』
『私、その地方の人じゃないので使いどころのニュアンスが微妙なんですよ』
「さあ着きましたよ」メアがドアを開ける。
店内は、さきほど違ってすでにごった返している。私達が入ると
「よう久しぶりユーリ。やっと戻ってこられたんだなあ。最近見なかったから、死んだんじゃないかと気になっていたよ」
「エルフィ、居酒屋にも来られないほど忙しかったものなあ」
「パム、旅はどうだった。何か面白い話を聞かせてくれよ」
そうやって私達のテーブルに残ったのはメアとモーラ、アンジーだけだった。レイでさえ獣人族のグループが来ていてそちらに拉致されている。
「なんかいいですねえ」私は、席が後ろ向きだったので後ろを振り返りながらそう言った。
「ああそうじゃな」
「本当にそう思うわ」
「はいそのとおりです」
そうして静かにノンアルコールの発泡酒を飲んでいると、扉が開いて、
「あーいたいた。センセー」4人の女の子が入ってくる。あっけにとられている男どもを無視して一目散にこちらに近づいてくる。
「おや君たち。子ども達の世話は大丈夫なんですか?」
「はい、代わりの人にお願いしてきました」
「ああそうですか、ではお座りなさい。何か飲み物でも」
「あたし麦の酒」明るい子は手を上げてそう言った。
「私ジュース」
「私も」
「ロックで」
「おやおや大人気ね」アンジーが冷やかしていくる
「先生、私炎の火力調節できるようになりました。見てください」
「あの・・・」私はちょっと引いています。
「水、凍らせますね~」
「重力制御します。見てください」
「あの~君たち私が魔法使いなのは皆さんに内緒なのですよ」
「なにを言っているんですか。皆さん知っていて黙っているだけなんですよ。あ、言っちゃった。これせんせーには秘密でした」
「はいはいそこまでね。魔法はここでは使ってはいけませんよ。それはこいつが来週教えに来た時に披露してね」アンジーナイスフォローです。
「は~い」
「それと、その両腕にしがみついている2人と背中にぶら下がっている人、今から逆襲されるわよ」
「え?」
「それは私達のです。渡しません」そう言ってユーリがその子を引き剥がしにかかる。
「なんでですか、私が隣にいてもいいじゃないですか」引き剥がされないように私の腕を必死に抱きしめて動こうとしない。私も腕にかかるふくよかな感触に動けないでいる。
「だからくっつかないでください」反対側の子にはレイが威嚇している。引き剥がしたら腕を折ってしまいそうで手を出せないでいるのでしょう。
「そうです~私達のものです~」そう言って背中にいた子を引き剥がそうとエルフィが引っ張る。その子の腕が私の首をロックしています。
「痛いです首が絞まります。モーラ助けて」
「ふん、どうせ鼻の下伸ばして先生しておったのじゃろう。想像できるわ」モーラが面白くなさそうにそっぽを向いた。
「そんなことないですよ。教えてくれる時は結構厳しかったんですよ。って、なにこの子。牙むき出しにして。怖い~」
その子を牙をむき出しにしてうなって威嚇しているレイ。さらにしがみつくその子。
「はいはいあんたたち静かにしようね。居酒屋はベタベタするところではなくて酒を飲むところだからね。楽しく飲もう・・・ね!」女将が気迫のこもった「ね」を言うと。すごすごと離れて、女将に促されてカウンターの方に移った。
「いつもは良い子達なんですけどねえ」私は首と腕をさすりながらため息をつくと、両腕にレイとユーリがしがみついている。あと肩に胸を乗せているエルフィ。
「あ~ラクチン~」エルフィはホッとした声を出して、首と肩に何かを乗せていて、しばらくそうしていると、またエルフィを呼ぶ声がした。
「さあ充填完了~」そう言ってまた他の席に向かう。ユーリもレイも安心したのか他の席に戻っていった。すかさず、モーラとアンジーが両脇を占領する。
「ご主人様大人気ですねえ」メアがそう言ってお酒を飲んでいる。
「前の世界ではもてなかった・・・と思うんですけどねえ」
「やはり記憶が戻っておるな。いつからじゃ」
「もういいですかねえ。一度死にかけた時ですね。ただ、そこからほころびが解け始めた感じでまだ全部じゃないんですよ」
「ルシフェル様はまだ外していなはずだけど、徐々にほころんでいるのね。だったらあとは本人次第のはずなんだけど。まだダメなのねえ」
「意識がなくなると解除して行くみたいですよ、ほら風呂場でエルフィがダイブしてきた時も少し戻りましたから」
「それなら、わしらの記憶を残したまま記憶が戻りそうじゃなあ」
「そう願いたいです」
そうして楽しい宴会は終わり、家路につく。相変わらずエルフィは私の背中を占領している。両手にはユーリとアンジーが腕にしがみついていて、レイが走って行っては戻ってくるを繰り返して私を見ます。だからそれでは犬ですって。
「良い町じゃなあ」先を歩いているモーラとパム
「そうですね」とパム
私の横、少し前の方にメアがいて私の方をたまに見ながら歩いています。
私は、ついうれしくなって、こう叫びました。
「みんな大好きで~す」
「だからそういうことは恥ずかしいから叫ぶなと言っておるじゃろう」
モーラは立ち止まって私が追いついた時に私のすねを蹴る。アンジーが殴ろうとしてきたのは、つないだ手でブロックしたのですが、モーラまでは無理でした。
「そこで首を絞めないでねエルフィ」
「恥ずかしいです~」
「だったら降りろ、わしが代わりに肩車してもらうから」
「あ、僕もお願いします」ユーリもですか。
「あんたは、私達のまったり空間発生装置なんだから諦めなさい」
「はいはい、おもちゃでしたねえ」
「帰ったら風呂に入って寝るか」
「モーラ様はお酒飲んだから隔離です」レイがそう言った
「なんでじゃ」
「いびきがひどいから」レイが耳を押さえてそう言った。エルフィが真似をしています。いつもと逆だ。
「そうなのか。まあ、飲んだまま寝るのは幸せなんじゃが、しようがない代謝を上げて・・・」
「お酒を飲んだままお風呂に入るとさらに幸せですよ」メアがモーラにささやく。
「おう、それは楽しみじゃ」
そうして歩いていると、以前あった家のクレーターが見え始める。
「やっぱり草くらい生やしておこうかのう」
「でも、生えてきていますよ。ほら」
この星明かりしかない夜にそれが見えますか、皆さんすごいですね。ああ、私とユーリは見えませんねえ。
「到着~」結局私の背中から降りなかったエルフィが声を上げ、私の背中から降りました。
そしてみんなで風呂に入ります。
「確かにほろ酔いで入る風呂はいいのう。眠くなってくる」モーラがそう言いながら船を漕いでいます。
「ドラゴンが居眠りして溺死するのは見たくないですねえ」私はあきれています。
「ニャンだと。わしがそんなことになるわけなかろう~ぐぅ」そう言ってブクブクと沈んでいきました。
「本当だ。溺死しそうですねえ」私は助けるべきか悩んでいると、モーラが出来損ないの水死体のように浮かんできました。ちょっと全裸で浮くのはねえ。マナー違反ですよ。周囲を見るとエルフィもメアもパムも眠そうです。
「さあ、ちょっと早いですけど風呂を上がって寝ますよ」
私はそう言って、眠そうなパムにはユーリが、エルフィにはレイがサポートして、ふらふらしているメアはアンジーがフォローしてモーラは私が抱えて風呂場から出て、バスタオルで拭き、寝間着に着替えさせて髪を乾かして、部屋に連れて行く。
私は、面倒を見ていたみんなの分の冷たい牛乳を用意して居間のテーブルに座った。
最初にアンジーが、そしてレイ、ユーリの順に居間に入ってくる。コップを渡していつもの席に座る。いつもの席にすわると、お互いが離れている感じがする。
「このメンバーは珍しいわね」
「もう少し近くに来ませんか?」私がそう言うと両脇にアンジーとユーリ私の股の所にレイが座る。そうブラッシングのブラシを咥えて。しかたなく獣化したレイのブラッシングをしながら私はこう聞いた。
「ユーリはどうでしたか。安心しましたか」
「はい、あそこにずーっといなければならなくなるのではと不安になりましたが帰ってこられて良かったです」
「アンジーはどうでした」
「ここまでになるとは思っていなかったけど良い経験だったわ」
「良い経験ですか」
「いろいろ持っている魔法も使えたし魔法も憶えたし、後から思い返すと結構楽しかったわ」
「レイはどうですか?おや、もう寝ている」
「レイなら最初から寝ていたわよ」
「そうでしたか。良い夢を見ているのでしょうか幸せそうですねえ」
「ねえ聞いて良い?」アンジーが真剣な顔で私に尋ねる。
「なんでしょうか」私はちょっとたじろいでいる。
「本当に隷属したままなのよね」
「はい本当です。現に脳内会話できていたでしょう?どうしたのですか」
「あの時、フェイクとは言え隷属を解除したじゃない。あの時に感じた喪失感はやけにリアルだったのよ」アンジーが両腕を抱きしめている。
「そうですよ。あれは本当に隷属が切れたかと錯覚しました」ユーリもちょっと不安げだ・
「ああ、それは本当ですよ。だって前に言ったじゃないですか。あなた達が操られて解除した時に後悔しないようにダミーを一枚かけてあるって」
「そういえばそう言っていましたね」安心したようにユーリが言った。
「と言うことは、今は一つ目の隷属だけなの?」
「いえ、申し訳ありませんが、かけ直してあります。今回みたいな魔法ではない術を使われるとやっかいなので、すぐにかけ直しました」
「でも、私とユーリは今知ってしまったわ。だから意味ないんじゃないの」
「それはちゃんと考えていますよ。安心してください」
「あの時の絶望感は二度と味わいたくないのよ。パムが正式の隷従の儀式をした時にそう言っていたけれど。こんなにも絶望的な感覚になるとは思わなくてね。正直怖いのよ、二度とごめんだわ」アンジーは本当につらそうです。
「僕もそう思います。でも、きっとあるじ様を嫌いになったり、嫌々隷属している人には違って感じるのかもしれませんね」ユーリはそう言いました。
「ああそうなのかもね。嫌いになれば良いんだ」アンジーがポソりとそう言った。
「今度は私がプレッシャーですねえ。では寝ましょうか」私は、そーっと立ち上がろうとすると、アンジーとユーリがコップを片付けてくれて、私はそのままレイの部屋にまさしく置きにいった。しかし、アンジーもユーリも自分の部屋に戻ろうとしない。
「一緒に寝ましょうか」2人は恥ずかしそうにうなずきその日は3人で眠った。とても心地よい眠りでした。両腕はしびれましたけどね。
翌日からは普通の生活に戻りました。ああ、一週間くらいあとにエリスから呼び出しはありましたけど。
○薬草の後始末
エリスから来るようにと式神が飛んできました。
「こんにちは。エリスさんどうしました?」
私はモーラとアンジーとメアと共に薬屋を訪ねました。そこには怒った顔のエリスがいました。
「どうしたもこうしたもないわよ。やってくれたわね」エリスが怒った口調で言いました。
「なにをですか?」
「薬草よ」
「何か問題でも?」
「薬草の有効期間、短すぎるでしょう」
「いや、最初から言っていましたよねえ。短いって」
「にしても最初の納品のものは、乾燥が不十分なだけって言っていたわよねえ」
「はい」
「なのに有効期間が1ヶ月ってどういうことなの」
「そうでしたか。でも、市民の皆さんのけがには十分だったでしょ?」
「確かに間に合ったわ。ほとんど必要がないくらいだったのね。だから結構残ったのよ」エリスがため息をつく。
「そうでしょうねえ。今回の戦争ではほとんどけが人が出ていませんでしたから。かなり大量に残ったでしょうねえ」
「予想していたのね、戦争終結時期が早まるって。だからあんな短期間に」
「そんなわけないでしょう。その2週間後にはちゃんと納めたじゃないですか」
「まだしらを切るのね」
「しらを切るもなにも効果はあまりない、保存期間もあまりないけど良いかってちゃんと確認しましたよね」あ私は何を言われているのかさっぱりわかりません。
「確かにそう言ったわ。でも、1年以上も保存可能な薬が期間を短縮しただけで1ヶ月くらいしか持たなくなるわけ」エリスが疑り深い目でそう尋ねる。
「普通の葉っぱだって乾燥期間が短ければ枯れてしまいますよ」
「まあそうね。そう言っておくわ」
「のうエリスや。おぬしも商売人じゃ、どうせ大量に買い付けて冒険者とかに売りつけようとしていたのではないのか?」モーラが笑いながら聞いた。
「今回は魔法使いの里からの依頼だからそれはないわね」あっさり答えるエリス。
「まあ、わしらからの買値が4倍とかいっておったから、市民に回した分の残りは10倍の値段をつけて冒険者に売って分け前は半々ってところかのう」モーラがそう言って笑っている。
「まあ、嘘をついてもバレバレね。そのつもりだったわ」テーブルに肘を立てて顎を乗せて言った。
「結局そんなに使わずに済んでウハウハと思ったらすぐに薬効が切れて売れなくなったという事じゃな」
「まあ、そう言うことなのだけれど。お願い。今回使った分は4倍で良いから使わなかった部分の料金は勘弁して」エリスが両手を合わせて拝むようにして言った。
「ずうずうしいのう。さておぬしどうする」モーラはズーッと笑っている。
「それって使わなかった分はどう判断するんですか。使えなかった分をちゃんと返してくれないと使った分なんてわからないじゃないですか。戻って来た分はお金いりませんよ」
「それでいいの?」エリスの顔がパッと明るくなる。
「本当はエリスさんが困っているのでしょう?」私はちょっと哀れに思ってそう聞いた。
「実はねえ、返品しろと里からは言ってきているのよ。使った分は5倍で里が買ってくれたから利益でたけど返品で丸損なのよ」
「仕方ありませんねえ。今回だけですよ」
「さっそく在庫分確認するわ。明日で良いかしら」
「大丈夫ですよ。では」
「ありがとう、ありがとう、恩に着るわ」
そうして私達は店を出た。
「あいつは相変わらずじゃのう。本当に目先の事しか見えん」モーラはチラリと薬屋の方を見て言った。
「そうなのねえ。今の話だけど、実は在庫は自分で管理して、魔法使いの里に小分けで渡していた感じよねえ」アンジーはメアを見て言った。メアが頷いているところを見るとそうなのだろう。
「ああ、その間にバレないと思って冒険者に売ってクレームつけられたのではないかな」モーラは両手を頭にあげて歩いている。
「だから儲からないのよ」アンジーが何か考えてそう言った。自分ならどうしたかきっと考えているのでしょうね。
「して、おぬしも細工していたじゃろう」少し先に歩いて行ったモーラが立ち止まって私を指さして言った。
「細工はしていませんよ。納期が短くて品質を保証できないのは本当でしたし。その辺のノウハウがなかったのでどう魔法で調整すれば良いかわからなかったのですよ。本当は3ヶ月くらい持つようにしたかったんですがねえ。効能の持続にばかり目が行って、そこにはあまり配慮しなかったんですよねえ」私は正直に答えました。だってそんな事まで考えていませんよ。
「なるほど結果オーライじゃな」
「でもそれって、作ろうと思えば有効期間1年の薬も作れるわけでしょ」アンジーが私を覗き込むように見て言った。
「常備薬をうたっているのに1年で交換とかあり得ませんよ。どこの薬販売業者ですか」私は怒ってアンジーを見て言いました。
「おぬしは本当にバカじゃなあ。主に褒め言葉としてだが」モーラがあきれている。
「そうね、これじゃあお金持ちになれないわねえ」アンジーは自分ならと思っていたのでしょうか。
「薬で悪評は立てたくないですよ。売れなくなったら困ります」
「はいはいそうね」
「そうじゃな」
そうして、この一件も無事終わった・・・はずです。
ああ、そうでした、勇者会議の開催が決まった時に子ども達は親が迎えに来まして、孤児院の人からたっぷりとお説教されて、受入期間の費用の請求書を持たされたそうです。
Appendix
「うふふふ。あっちの方が一枚上手でしたねえ。さすがこの世界の頭脳ナンバーワンとナンバーツーを擁する異世界の魔法使いだけのことはありますね。でも、考えたのは本人らしいですよ。え?こんな幼稚な案は、一度想定したけどすぐに捨てたっていうんですか。馬鹿すぎて頭の良い私では対応できないって。あなたが連れてきたんじゃないですか。世をはかなんで自殺したんだから恨みもすごいだろうと思ったって。ああ、人というのは扱いが難しいですね本当に」
Appendix
私には気になっていた約束があった。メアさんの前のご主人様の事だ。何も探すあてもなく。 ズルズルと時間だけが経過していた。ついにはこの土地に縛られる形になった。アンジーとの約束を果たして、この地に戻って来て、パムが家族になり、落ち着いたところでレイが家族になり、他国の動静を3人に探ってもらったら、今度は私の動きがとれなくなってしまっていた。本当は、パムが家族になったところで動き出していればここまでズルズルとは待たさなかったのにと悔やんでいる。
結局また待たせることになってしまいました。
続く
「おや転移魔法で一瞬でいなくなりましたねえ。使ってもいいですか」私は彼が消えた事よりも転移魔法を使った事の方が気になりました。おっと、まだしなければならない事が。
「お疲れ様でした皆さん。茶番に付き合わせて申し訳ありませんでした」
私は部屋にいた勇者達全員に頭を下げる。
「どういうことか教えてもらえませんか」俺様勇者のところのライオットが言った。
「まあ、わしら全員、神の手のひらの上で踊らされただけじゃ。こいつひとりを殺すためにな」
「そんな。賢者様」王女が手を伸ばそうとする。
「ごめんなさいねえ皆さん。さきほど聞いたように、神は魔族が邪魔になって私を呼んだのですが、私は記憶もなく根がぐうたらな者ですから、神はあきれて、いい加減私を捨てようと思ったのです。でも、ただ捨てたらもったいないから人族が魔族に一丸となる時の生け贄にしようとしたのですよ。でもさすがに私もそれは嫌だったので他の勇者様達が団結して魔族に一丸となるように話を進めたのですが、それも面白くなかったみたいで、そのために私を殺すことにしたのですね」
「先ほどの光の柱は、どうなったのですか」フェイがそう聞いた。
「想定されていたので、防御の魔法を張っておいて、停戦記念になればと思って魔法を変換して、実際には花火に見えているはずですよ」
「そんなことまで出来るのなら、さっさと勇者になって魔族を討伐すれば良いじゃないですか」ライオットが怒って言った。
「いいですか?あなたは宣託を受けた身なのでしょうけど、私は記憶をなくしてこの世界に飛ばされ、その目的も告げられていないのですよ。別に記憶がなくても、再び私に「お前は勇者だ」って宣託しても良かったと思いませんか?」
「それは確かに。でも」ライオットは納得できていない。
「それに与えられた技術は重力系の魔法初期レベルと、分子レベルの解析ができることしか与えられていません。でも、そちらの2人も同じようなものでしょう?」
「ああ、俺は体に関する技量と剣術についてと攻撃魔法だよ」イシカリが言った
「私は、不死身の体と体術と攻撃魔法だ」とジャガーが言った
「そして2人とも言語はすぐ習得しているはずでし、物質を解析できましたよね。言葉も生えている草木も全部理解できたはずです」私は念のため確認しました。
「ああ、言語は習得できた。しかし草木は見えたが他に役に立つスキルが欲しかったよ」
「私も言語はありがたかったが、解析については、ああこの草は毒か食べられるかはわかったから便利だったくらいですね」
「そうでしょうね。でも、私が今持っているスキルのほとんどが、その解析から得た技術なのですよ」私はちょっと強めに言いました。
「どういうことだ」
「私が、最初に憶えたのは空気を練ることでした。手を握ったり開いたりしたら手の中に空気の球が出来ました。2人もやってみてください」私がそう言うと、2人は握り始める。
「おおできた」ユージは黒い塊を私に見せる。
「これは作ったことがある」ジャガーがそう言った。
「さらにどんどん圧縮していってください」私はまたそう言った。
「え?え?」2人はかなりの速度で握り始めドンドン圧縮されていき、その様子に驚いている。
「あぶないのでこの中に投げ入れてください」そう言って私は、目の前に四角い箱を作り、その中に大きな花瓶を入れる。
「あててください」
それぞれが投げた圧縮した空気は、軽く投げたのに花瓶は粉々に砕け散った。
「すごい」
「これはすごい」
「貴方たちは自分の能力にばかり注目して他の能力の事をおろそかにしすぎていたのです。わかりましたか。それだけの豊富な魔力量を持ちながらそれを有効活用していないのです。はっきり言って勉強不足です。慢心しています」
「すいません」ユージが頭を下げる。
「頑張ります」ジャガーも頭を下げる。どちらも実は素直な人なのですね。
「それから、神の敵は私ひとりです。皆さんには、決して手は出してきません。なぜなら、魔族と戦う人達を神と称する者である勇者を大事にするからです。皆さんはこれから起こるであろう魔族との戦いを意識して力をつけていってください。魔族は、人族を間引きあるいは全滅するために戦争を仕掛けてくるつもりですから。自分の力をより高めるように精進してくださいね」
「あんた本当に先生向きねえ」アンジーがあきれている。
「まったくじゃ。よいか2人の勇者達よ。こやつは研究者タイプなんじゃよ。じゃからのめりこみすぎてなあ。深く掘り下げてしまう悪い癖もある。ほどほどが肝心じゃ。わかるな。そして王女よ」
「はい」
「こやつに言いたいことがあるのであろう?今のうちじゃ言っておけ」
「あなたは、私を混乱させることしか言い残してはくれなかった。悩ませ混乱させることしか言わない。挙げ句頼りにしていた仲間を死なせ、父の威を借る魔法使いには騙され、さらには隣国から戦争を仕掛けられる始末。いったい私にどうしろと?賢王たれとそれと勇者たれと言いましたよね。どちらも出来ません私には」王女は、私に投げつけるように吐き捨てるように私に叫んだ。
「残念ですが、国の命運を変えるような指示を私はできませんよ。私には選択肢を示すくらいしかできません」
「むしろこちらへ進めと言って欲しかった。そうすれば彼女を死なせずに済んだのに」王女は両手で顔を覆っている。
「では再び問いましょう、気持ちとしてはどちらを選びたいのでしょうか。国王の病状、国のこれまでの成り立ち、そして自分自身の勇者としてのこれまでを一切考えずに気持ちをお答えください」
「答えられません」
「そうでしょうね。それが今のあなたの限界なのです。結局あなたは勇者たることも賢王たることもいずれも選べない優柔不断なのです。私に救いを求めても本心がないんですよ。だから私が示した方向に向かいたい。賢者が示した道ならきっと間違いないと」
「そう・・・なのかもしれません」王女は両手の力が抜けて腕をダランと下げた。
「あと、国を捨てられますか?」
「なにを言いますか」
「こちらの勇者様達はね、貧乏で碌な装備もなく、それでも勇者としての実績を積み上げようと頑張っていました。あなたにそれが出来るかと言うことですよ」
「それは・・わかりません」
「ですよね、ならば一度全てを捨てて一からやってみませんか?」
「全てを捨てて?」
「はい。冒険者になるのです。勇者ではなく」
「冒険者になってなにをすれば」
「旅をしてください。野宿をして料理を作って野獣や魔獣を倒し、生活の為のお金を得て。困っている人がいれば助け、集落の人と交流してください。もちろん名を隠してね」
「それでもだめならどうしたらよいですか」
「その時は国に戻って賢王になってください。その時には市井の暮らしも理解できる、きっと良い王様になっているでしょうから」
「しかし、父が」
「それはね、たぶんもう回復していると思うわ」アンジーがそう言った。
「もしかしてそれは、一連の騒ぎのために仕組まれていたと言うのですか」王女がアンジーを見て尋ねる。
「そうね、これまで国王を見たのかしら?」
「いいえ、心の病で何か傷つけてしまうことを言ってしまうからと会わせてもらえませんでした」
「そういうことよ」
「では王女様、先ほどの会議の続きを行ってください」
そこでフェイとライオットが近づいてきて、全員が頷く。
「今回の事は、全て謀略によるもの、関係者はそれぞれの国で処分。賠償金等については、当然支払わせる。ただしそれぞれの街の治安に関しては、双方の国が共同で行い、街の中立を図ろう」
「ロスティアとしては不満でしょうが、痛み分けとして欲しいところです。それで良いですか?」
「領土は保持し賠償金はもらう。それでよしとしよう。亡くなった者の家族や、傷ついた者達へと補償金として支払う事にする」
そのような話をしている間に私達は逃げるように帰ろうとした。
「お待ちください、名もなき辺境の賢者様」勇者達全員が一列に並ぶ。
「このたびのこと、いいえなにも言いますまい。ありがとうございました」
全員がならんで一礼する。長い長い一礼だ。その間に私達は姿を消す。
全員が頭を上げてお互いを見合う。少しの寂しさと笑いがこぼれる。
「どうしてあの方が勇者になってくれないのだろうなあ」
「さきほど王女が言ったではありませんか。勇者ではなく賢者様と」
「そうか、そうだな。では、これからも何かあったら相談することにしよう。そういえば家を知らぬなあ」
「あ、私が知っていますから。旅姿で言ったら歓待してくれますよ」
「そうだな」
その後、その会場では、お付きの人たちの意識が戻ってから、滞りなく勇者会議は進められて、ギクシャクした関係ではなく勇者同士が親しくなっていた。それを見てお付きの人たちは首をかしげていた。
風の逆巻く雲の中を何かが飛んでいる。もちろん不可視化したモーラですが。
『結局しゃしゃり出てしまいました。反省しないと』
『あと、ご主人様の演技は迫真過ぎて、みんなどんよりとなっていますよ』とメアが言った。確かにみんな元気がない。
『いや、話に入る前にここからは演技しますからって念を押しておいたのですが、それに会話中も心の中でちゃんと叫んでいたでしょう?』
『にしてもおぬしの言葉には力があるのう。おぬしの言う言霊という奴か』
『たしかにねえ、ちょっと意味は違うけどそんな感じよねえ』
『にしても、ぬし様それからモーラ様アンジー様。ご慧眼です。私の浅薄なる思考など及びもつきませんでした』
『これまでパムに色々な情報をもらっていたから導き出せた結論なのよ。だからあなたの調査がなければ成立しなかったの。感謝しているわ』
『しかし、操られていたとはうかつでした』
『あれは魔法ではなく話術ですからねえ。慣れるしかないのですよ』と私
『しかし、反対に操るとかおぬしもようやるわ』
『メアさん。あの男の言うことなんか気にしないでくださいね。あなたは正真正銘のホムンクルスですから』
『ええそうなんですけど、やはり気になります』
『まあ、あやつもあのような捨て台詞でもしないと格好がつかなかったのじゃろう』
『いるじゃない?同族に嫉妬する奴って。お前は本当のホムンクルスではないって』
『あ~私言われましたよ~本当のエルフじゃないって~あれってイライラしますよね~負け惜しみって言うか~』
『おうそうじゃな』
そうして、家に戻って大きいテーブルでくつろぐ。
「そういえば村にはこのまま行っても良いのよねえ」
「たぶん勇者会議の開催が宣伝されて使節団も間者もいなくなっているはずですが」
「なら、居酒屋行かない?」
「いきた~い」
「私も行きたいです」
「僕も~」
「メアさんどうしますか」
「ええ、食材がほとんどありませんので。誰がこんなに食い散らかしましたか」
そう言ってメアさんはため息をつく。
私とモーラとレイとエルフィがお互いに指を差し合いました。
「やれやれ。では居酒屋へ行きましょう」メアが号令をかける。
「「「「「「お~」」」」」」残る全員が手を上げる。どこぞの海賊団ですか。
夕暮れだからか村までの道もほとんど人通りがない。
「最近ゆっくり村まで行っていませんでしたねえ」
「そうね、女装したりね」アンジーが笑いながら言った。
「汚いローブの子どもは連れていませんでしたが」私の言葉に、すかさずスネを蹴りますか。
「やっぱり平和って良いですねえ」
「戦争は嫌よねえ」
「まったくじゃ」
そうして村に近づくと道がかなり、村から離れた方に曲げられていて、道のあったところに村の外壁を作る工事が始まっていた。
「今回の戦争の件で危機感が出てしまったのね」アンジーが寂しそうに言った。
「まあ、ここまで戦禍が伸びるとは思っていなかったでしょうけど、防衛策は必要ですからねえ」
「気持ちがすさんできているようで、少し寂しいわね」
工事中の入り口を抜けて中に入る。中は普段のままだが人は多い。
「さて、いつもの居酒屋に・・・」
居酒屋のある場所に行ってみると、居酒屋は閉鎖され、そこには「移転しました」と書かれた紙が貼られていて移転先の地図も描いてあった。その地図を頼りに行ってみると、一回り大きな居酒屋になっていた。
「久しぶりだねえ。あんた達の席は一番奥のテーブルだ。空けて待っていたよ」
「どうしてですか?」
「なんか村長が・・ああ町長がね。きっと顔出すだろうから空けておけってね」
「村長から町長に格上げですか」
「みんながねえ。外壁の工事をして、この村を大きくするのに村長じゃダメだろうと言って、今度から町長、町の長と呼ぶことにしたのさ」女将さんが嬉しそうにそう言った。
「なるほど。それでは私はちょっと町長に就任のお祝いの挨拶に行ってきますね」
「そうか、ではわしも・・・」とモーラが言いかけると全員が立ち上がった。
「おやおや、仲のよろしいことで。席はそのまま空けておくから、とっとと帰ってくるんだよ。みんな待ってるから」と居酒屋の女将が言った。
私達は全員で町長のところに向かう。なぜか無言だ。
そうして、町長の家に着く。いつもなら人がごった返しているはずなのに静かだ。ノックをして扉をあける。誰もいないように見えたが、奥の机に人影があった。
「町長さんですか」そう私が声をかけると部屋の中の壁に置かれた、たいまつに火がついた。
「おおあんたか。しかも全員でとは珍しい。何かあったかな」
いつもの口調だが顔は暗くて見えない。しかも炎のゆらぎのおかげで顔に影が出来てなにやら怪しい雰囲気だ。
「町長に就任されたそうで。お祝いは後日お持ちしますが、今日は挨拶だけと思いまして、就任おめでとうございます」私がそう言って、全員でお辞儀をする。
「そうか、やはりめでたいことなのかのう。ありがとう」表情が読めないが言葉からは心なしか寂しそうな気持ちが伝わってくる。
「孤児院の件は、いろいろと取り計らっていただきありがとうございます。いつも忙しくてこうして改まってお礼を言うのが遅くなってすいませんでした」
「それと~今回のエルフの件もお世話してくれてありがとうございました~」
「僕も獣人族の件ありがとうございました」
「傭兵団を僕の元に送り出してくれて、しかも物資も提供していただいたと聞いております。ありがとうございました」
「皆さん村長・・いえ町長さんにお世話になっていたんですね。私からもうちの家族がお世話になりありがとうございます」
「おぬしは良いのう。良い家族に恵まれてうらやましいぞ。さて、お祝いだけではなかろう。聞きたいのじゃろう?どうしてわしが居酒屋の席を予約したのか」
「はい、もしかして何かご存じなのでしょうか」パムが真っ先に尋ねた。
「なにも知らぬよ。大概、大事件があった時には、おぬしらが居酒屋に行くのでなあ、今回も勇者会議とやらがあったであろう?だからきっとそういう時に居酒屋を利用するのではないかと思っただけじゃ。最近食材を買っている風でもなかったのでなあ」町長は何でも無い事のようにスラスラと言った。
「そうでしたか。すいません変な勘ぐりをして」私は謝った。
「わしがそう思って女将に言ったのでなあ。それは申し訳ないことをした。しかし、この世界急ぎすぎじゃな」
「なにがでしょうか」
「おぬし達が悪いわけではないし、むしろしかたなく巻き込まれているだけなのじゃろうが、こうやっておぬし達の伝手で、エルフや獣人と共に暮らすようになり、町が一回り大きくなろうとしている。わしが思っていたよりもこの町の発展が早すぎるのじゃ。急な発展は終わりも早いようなそんな気がしてなあ。不安なのじゃよ」
「私としては、この町に迷惑をかけるつもりはありません。まして私が手助けしたのがまずかったのであれば・・」
「ああすまん。そう言う意味で言ったのではない。単なる老人の愚痴じゃ。歳を取るとどうしても時間の流れる早さや時代の流れについて行けなくてなあ不安になるのじゃ」
「・・・・」
「それと前にも言ったであろう。おぬし達を迷惑とは思っていないし、町の住民じゃ。何かあったら頼れと。じゃから何でも言うてくれ。頼られたら協力する。それでお互い助け合って暮らしていける。そうじゃな」
「ありがとうございます」
「この町が大きくなってもこれからもよろしく頼むよ」
「はい」
「ああ、この家も移すことになってなあ。最後くらいひとりで座っていたので不気味じゃったろう。それも悪かったのう」
「住み慣れた家ならなおのこと寂しいでしょうに。それでも引っ越されますか」
「ああ、この辺はみんな区画整理の対象になっておる。わしが移らねば、そのままみんな住んでいたいであろう。わしが動くと言ったからみんなは渋々でも動いてくれることになったのだよ」
「あの~移しましょうか~?」とエルフィがおずおずと手を上げる。
「そうじゃなあ。できるなら希望者の家だけでも移してもらえるかのう。費用はあまり出せないが」
「わかりました~では責任者の方と明日でも話しますね~」
「ああすまないなあ。またおぬしの家族に手伝ってもらって」
「ここの町の一員ですから」
「ああそうじゃったな」
「ではまた明日。ここにいらっしゃいますか」
「関係者は酒場にいるであろうから話しておいてくれ。明日はここで話をしよう」
「ラジャー」そう言って敬礼をする。
「ラジャー」そう言って町長は真似をして敬礼した。
そして、私達は町長の家を出る。異様に静かなモーラとアンジー。その雰囲気にみんな静かだ。唯一エルフィだけうれしそうだ。
『どうしましたかモーラ、アンジー』
『今、町長のさっきの言葉を思い出しながら検証しておる』
『でも、齟齬がないのよ。普通の人なのよね。考えすぎだったかしら』
『2人とも~考えすぎですよ~』
『確かになあ。たまたま勘が当たった程度なのじゃよ』
『そうなのよ。これまでも単に手際が良いだけなのよね。先回りがうまい・・ああ、先見の明があるというやつなのかしら』
『ですが、急すぎるとは』とパムが気にしている。
『その一言がこの疑念につながるのよねえ。違和感をわざと持たせられたと感じるのよ』
『まあ、わしらを騙せるほどの者ならわしらが考えても無駄じゃ』
『そうなんだけどねえ』
『おや、モーラ様もアンジー様もこの世界で1位2位を争う賢者様でしょう』メアがそう言った。
『わしらなんか子どもの浅知恵じゃ。もっと上がぎょうさんいるわ』モーラが笑っている。
『ぎょうさんって、変な言葉覚えましたね』私はちょっと複雑です。
『ああ、つい面白がって使っているが中途半端な言語じゃな』
『私、その地方の人じゃないので使いどころのニュアンスが微妙なんですよ』
「さあ着きましたよ」メアがドアを開ける。
店内は、さきほど違ってすでにごった返している。私達が入ると
「よう久しぶりユーリ。やっと戻ってこられたんだなあ。最近見なかったから、死んだんじゃないかと気になっていたよ」
「エルフィ、居酒屋にも来られないほど忙しかったものなあ」
「パム、旅はどうだった。何か面白い話を聞かせてくれよ」
そうやって私達のテーブルに残ったのはメアとモーラ、アンジーだけだった。レイでさえ獣人族のグループが来ていてそちらに拉致されている。
「なんかいいですねえ」私は、席が後ろ向きだったので後ろを振り返りながらそう言った。
「ああそうじゃな」
「本当にそう思うわ」
「はいそのとおりです」
そうして静かにノンアルコールの発泡酒を飲んでいると、扉が開いて、
「あーいたいた。センセー」4人の女の子が入ってくる。あっけにとられている男どもを無視して一目散にこちらに近づいてくる。
「おや君たち。子ども達の世話は大丈夫なんですか?」
「はい、代わりの人にお願いしてきました」
「ああそうですか、ではお座りなさい。何か飲み物でも」
「あたし麦の酒」明るい子は手を上げてそう言った。
「私ジュース」
「私も」
「ロックで」
「おやおや大人気ね」アンジーが冷やかしていくる
「先生、私炎の火力調節できるようになりました。見てください」
「あの・・・」私はちょっと引いています。
「水、凍らせますね~」
「重力制御します。見てください」
「あの~君たち私が魔法使いなのは皆さんに内緒なのですよ」
「なにを言っているんですか。皆さん知っていて黙っているだけなんですよ。あ、言っちゃった。これせんせーには秘密でした」
「はいはいそこまでね。魔法はここでは使ってはいけませんよ。それはこいつが来週教えに来た時に披露してね」アンジーナイスフォローです。
「は~い」
「それと、その両腕にしがみついている2人と背中にぶら下がっている人、今から逆襲されるわよ」
「え?」
「それは私達のです。渡しません」そう言ってユーリがその子を引き剥がしにかかる。
「なんでですか、私が隣にいてもいいじゃないですか」引き剥がされないように私の腕を必死に抱きしめて動こうとしない。私も腕にかかるふくよかな感触に動けないでいる。
「だからくっつかないでください」反対側の子にはレイが威嚇している。引き剥がしたら腕を折ってしまいそうで手を出せないでいるのでしょう。
「そうです~私達のものです~」そう言って背中にいた子を引き剥がそうとエルフィが引っ張る。その子の腕が私の首をロックしています。
「痛いです首が絞まります。モーラ助けて」
「ふん、どうせ鼻の下伸ばして先生しておったのじゃろう。想像できるわ」モーラが面白くなさそうにそっぽを向いた。
「そんなことないですよ。教えてくれる時は結構厳しかったんですよ。って、なにこの子。牙むき出しにして。怖い~」
その子を牙をむき出しにしてうなって威嚇しているレイ。さらにしがみつくその子。
「はいはいあんたたち静かにしようね。居酒屋はベタベタするところではなくて酒を飲むところだからね。楽しく飲もう・・・ね!」女将が気迫のこもった「ね」を言うと。すごすごと離れて、女将に促されてカウンターの方に移った。
「いつもは良い子達なんですけどねえ」私は首と腕をさすりながらため息をつくと、両腕にレイとユーリがしがみついている。あと肩に胸を乗せているエルフィ。
「あ~ラクチン~」エルフィはホッとした声を出して、首と肩に何かを乗せていて、しばらくそうしていると、またエルフィを呼ぶ声がした。
「さあ充填完了~」そう言ってまた他の席に向かう。ユーリもレイも安心したのか他の席に戻っていった。すかさず、モーラとアンジーが両脇を占領する。
「ご主人様大人気ですねえ」メアがそう言ってお酒を飲んでいる。
「前の世界ではもてなかった・・・と思うんですけどねえ」
「やはり記憶が戻っておるな。いつからじゃ」
「もういいですかねえ。一度死にかけた時ですね。ただ、そこからほころびが解け始めた感じでまだ全部じゃないんですよ」
「ルシフェル様はまだ外していなはずだけど、徐々にほころんでいるのね。だったらあとは本人次第のはずなんだけど。まだダメなのねえ」
「意識がなくなると解除して行くみたいですよ、ほら風呂場でエルフィがダイブしてきた時も少し戻りましたから」
「それなら、わしらの記憶を残したまま記憶が戻りそうじゃなあ」
「そう願いたいです」
そうして楽しい宴会は終わり、家路につく。相変わらずエルフィは私の背中を占領している。両手にはユーリとアンジーが腕にしがみついていて、レイが走って行っては戻ってくるを繰り返して私を見ます。だからそれでは犬ですって。
「良い町じゃなあ」先を歩いているモーラとパム
「そうですね」とパム
私の横、少し前の方にメアがいて私の方をたまに見ながら歩いています。
私は、ついうれしくなって、こう叫びました。
「みんな大好きで~す」
「だからそういうことは恥ずかしいから叫ぶなと言っておるじゃろう」
モーラは立ち止まって私が追いついた時に私のすねを蹴る。アンジーが殴ろうとしてきたのは、つないだ手でブロックしたのですが、モーラまでは無理でした。
「そこで首を絞めないでねエルフィ」
「恥ずかしいです~」
「だったら降りろ、わしが代わりに肩車してもらうから」
「あ、僕もお願いします」ユーリもですか。
「あんたは、私達のまったり空間発生装置なんだから諦めなさい」
「はいはい、おもちゃでしたねえ」
「帰ったら風呂に入って寝るか」
「モーラ様はお酒飲んだから隔離です」レイがそう言った
「なんでじゃ」
「いびきがひどいから」レイが耳を押さえてそう言った。エルフィが真似をしています。いつもと逆だ。
「そうなのか。まあ、飲んだまま寝るのは幸せなんじゃが、しようがない代謝を上げて・・・」
「お酒を飲んだままお風呂に入るとさらに幸せですよ」メアがモーラにささやく。
「おう、それは楽しみじゃ」
そうして歩いていると、以前あった家のクレーターが見え始める。
「やっぱり草くらい生やしておこうかのう」
「でも、生えてきていますよ。ほら」
この星明かりしかない夜にそれが見えますか、皆さんすごいですね。ああ、私とユーリは見えませんねえ。
「到着~」結局私の背中から降りなかったエルフィが声を上げ、私の背中から降りました。
そしてみんなで風呂に入ります。
「確かにほろ酔いで入る風呂はいいのう。眠くなってくる」モーラがそう言いながら船を漕いでいます。
「ドラゴンが居眠りして溺死するのは見たくないですねえ」私はあきれています。
「ニャンだと。わしがそんなことになるわけなかろう~ぐぅ」そう言ってブクブクと沈んでいきました。
「本当だ。溺死しそうですねえ」私は助けるべきか悩んでいると、モーラが出来損ないの水死体のように浮かんできました。ちょっと全裸で浮くのはねえ。マナー違反ですよ。周囲を見るとエルフィもメアもパムも眠そうです。
「さあ、ちょっと早いですけど風呂を上がって寝ますよ」
私はそう言って、眠そうなパムにはユーリが、エルフィにはレイがサポートして、ふらふらしているメアはアンジーがフォローしてモーラは私が抱えて風呂場から出て、バスタオルで拭き、寝間着に着替えさせて髪を乾かして、部屋に連れて行く。
私は、面倒を見ていたみんなの分の冷たい牛乳を用意して居間のテーブルに座った。
最初にアンジーが、そしてレイ、ユーリの順に居間に入ってくる。コップを渡していつもの席に座る。いつもの席にすわると、お互いが離れている感じがする。
「このメンバーは珍しいわね」
「もう少し近くに来ませんか?」私がそう言うと両脇にアンジーとユーリ私の股の所にレイが座る。そうブラッシングのブラシを咥えて。しかたなく獣化したレイのブラッシングをしながら私はこう聞いた。
「ユーリはどうでしたか。安心しましたか」
「はい、あそこにずーっといなければならなくなるのではと不安になりましたが帰ってこられて良かったです」
「アンジーはどうでした」
「ここまでになるとは思っていなかったけど良い経験だったわ」
「良い経験ですか」
「いろいろ持っている魔法も使えたし魔法も憶えたし、後から思い返すと結構楽しかったわ」
「レイはどうですか?おや、もう寝ている」
「レイなら最初から寝ていたわよ」
「そうでしたか。良い夢を見ているのでしょうか幸せそうですねえ」
「ねえ聞いて良い?」アンジーが真剣な顔で私に尋ねる。
「なんでしょうか」私はちょっとたじろいでいる。
「本当に隷属したままなのよね」
「はい本当です。現に脳内会話できていたでしょう?どうしたのですか」
「あの時、フェイクとは言え隷属を解除したじゃない。あの時に感じた喪失感はやけにリアルだったのよ」アンジーが両腕を抱きしめている。
「そうですよ。あれは本当に隷属が切れたかと錯覚しました」ユーリもちょっと不安げだ・
「ああ、それは本当ですよ。だって前に言ったじゃないですか。あなた達が操られて解除した時に後悔しないようにダミーを一枚かけてあるって」
「そういえばそう言っていましたね」安心したようにユーリが言った。
「と言うことは、今は一つ目の隷属だけなの?」
「いえ、申し訳ありませんが、かけ直してあります。今回みたいな魔法ではない術を使われるとやっかいなので、すぐにかけ直しました」
「でも、私とユーリは今知ってしまったわ。だから意味ないんじゃないの」
「それはちゃんと考えていますよ。安心してください」
「あの時の絶望感は二度と味わいたくないのよ。パムが正式の隷従の儀式をした時にそう言っていたけれど。こんなにも絶望的な感覚になるとは思わなくてね。正直怖いのよ、二度とごめんだわ」アンジーは本当につらそうです。
「僕もそう思います。でも、きっとあるじ様を嫌いになったり、嫌々隷属している人には違って感じるのかもしれませんね」ユーリはそう言いました。
「ああそうなのかもね。嫌いになれば良いんだ」アンジーがポソりとそう言った。
「今度は私がプレッシャーですねえ。では寝ましょうか」私は、そーっと立ち上がろうとすると、アンジーとユーリがコップを片付けてくれて、私はそのままレイの部屋にまさしく置きにいった。しかし、アンジーもユーリも自分の部屋に戻ろうとしない。
「一緒に寝ましょうか」2人は恥ずかしそうにうなずきその日は3人で眠った。とても心地よい眠りでした。両腕はしびれましたけどね。
翌日からは普通の生活に戻りました。ああ、一週間くらいあとにエリスから呼び出しはありましたけど。
○薬草の後始末
エリスから来るようにと式神が飛んできました。
「こんにちは。エリスさんどうしました?」
私はモーラとアンジーとメアと共に薬屋を訪ねました。そこには怒った顔のエリスがいました。
「どうしたもこうしたもないわよ。やってくれたわね」エリスが怒った口調で言いました。
「なにをですか?」
「薬草よ」
「何か問題でも?」
「薬草の有効期間、短すぎるでしょう」
「いや、最初から言っていましたよねえ。短いって」
「にしても最初の納品のものは、乾燥が不十分なだけって言っていたわよねえ」
「はい」
「なのに有効期間が1ヶ月ってどういうことなの」
「そうでしたか。でも、市民の皆さんのけがには十分だったでしょ?」
「確かに間に合ったわ。ほとんど必要がないくらいだったのね。だから結構残ったのよ」エリスがため息をつく。
「そうでしょうねえ。今回の戦争ではほとんどけが人が出ていませんでしたから。かなり大量に残ったでしょうねえ」
「予想していたのね、戦争終結時期が早まるって。だからあんな短期間に」
「そんなわけないでしょう。その2週間後にはちゃんと納めたじゃないですか」
「まだしらを切るのね」
「しらを切るもなにも効果はあまりない、保存期間もあまりないけど良いかってちゃんと確認しましたよね」あ私は何を言われているのかさっぱりわかりません。
「確かにそう言ったわ。でも、1年以上も保存可能な薬が期間を短縮しただけで1ヶ月くらいしか持たなくなるわけ」エリスが疑り深い目でそう尋ねる。
「普通の葉っぱだって乾燥期間が短ければ枯れてしまいますよ」
「まあそうね。そう言っておくわ」
「のうエリスや。おぬしも商売人じゃ、どうせ大量に買い付けて冒険者とかに売りつけようとしていたのではないのか?」モーラが笑いながら聞いた。
「今回は魔法使いの里からの依頼だからそれはないわね」あっさり答えるエリス。
「まあ、わしらからの買値が4倍とかいっておったから、市民に回した分の残りは10倍の値段をつけて冒険者に売って分け前は半々ってところかのう」モーラがそう言って笑っている。
「まあ、嘘をついてもバレバレね。そのつもりだったわ」テーブルに肘を立てて顎を乗せて言った。
「結局そんなに使わずに済んでウハウハと思ったらすぐに薬効が切れて売れなくなったという事じゃな」
「まあ、そう言うことなのだけれど。お願い。今回使った分は4倍で良いから使わなかった部分の料金は勘弁して」エリスが両手を合わせて拝むようにして言った。
「ずうずうしいのう。さておぬしどうする」モーラはズーッと笑っている。
「それって使わなかった分はどう判断するんですか。使えなかった分をちゃんと返してくれないと使った分なんてわからないじゃないですか。戻って来た分はお金いりませんよ」
「それでいいの?」エリスの顔がパッと明るくなる。
「本当はエリスさんが困っているのでしょう?」私はちょっと哀れに思ってそう聞いた。
「実はねえ、返品しろと里からは言ってきているのよ。使った分は5倍で里が買ってくれたから利益でたけど返品で丸損なのよ」
「仕方ありませんねえ。今回だけですよ」
「さっそく在庫分確認するわ。明日で良いかしら」
「大丈夫ですよ。では」
「ありがとう、ありがとう、恩に着るわ」
そうして私達は店を出た。
「あいつは相変わらずじゃのう。本当に目先の事しか見えん」モーラはチラリと薬屋の方を見て言った。
「そうなのねえ。今の話だけど、実は在庫は自分で管理して、魔法使いの里に小分けで渡していた感じよねえ」アンジーはメアを見て言った。メアが頷いているところを見るとそうなのだろう。
「ああ、その間にバレないと思って冒険者に売ってクレームつけられたのではないかな」モーラは両手を頭にあげて歩いている。
「だから儲からないのよ」アンジーが何か考えてそう言った。自分ならどうしたかきっと考えているのでしょうね。
「して、おぬしも細工していたじゃろう」少し先に歩いて行ったモーラが立ち止まって私を指さして言った。
「細工はしていませんよ。納期が短くて品質を保証できないのは本当でしたし。その辺のノウハウがなかったのでどう魔法で調整すれば良いかわからなかったのですよ。本当は3ヶ月くらい持つようにしたかったんですがねえ。効能の持続にばかり目が行って、そこにはあまり配慮しなかったんですよねえ」私は正直に答えました。だってそんな事まで考えていませんよ。
「なるほど結果オーライじゃな」
「でもそれって、作ろうと思えば有効期間1年の薬も作れるわけでしょ」アンジーが私を覗き込むように見て言った。
「常備薬をうたっているのに1年で交換とかあり得ませんよ。どこの薬販売業者ですか」私は怒ってアンジーを見て言いました。
「おぬしは本当にバカじゃなあ。主に褒め言葉としてだが」モーラがあきれている。
「そうね、これじゃあお金持ちになれないわねえ」アンジーは自分ならと思っていたのでしょうか。
「薬で悪評は立てたくないですよ。売れなくなったら困ります」
「はいはいそうね」
「そうじゃな」
そうして、この一件も無事終わった・・・はずです。
ああ、そうでした、勇者会議の開催が決まった時に子ども達は親が迎えに来まして、孤児院の人からたっぷりとお説教されて、受入期間の費用の請求書を持たされたそうです。
Appendix
「うふふふ。あっちの方が一枚上手でしたねえ。さすがこの世界の頭脳ナンバーワンとナンバーツーを擁する異世界の魔法使いだけのことはありますね。でも、考えたのは本人らしいですよ。え?こんな幼稚な案は、一度想定したけどすぐに捨てたっていうんですか。馬鹿すぎて頭の良い私では対応できないって。あなたが連れてきたんじゃないですか。世をはかなんで自殺したんだから恨みもすごいだろうと思ったって。ああ、人というのは扱いが難しいですね本当に」
Appendix
私には気になっていた約束があった。メアさんの前のご主人様の事だ。何も探すあてもなく。 ズルズルと時間だけが経過していた。ついにはこの土地に縛られる形になった。アンジーとの約束を果たして、この地に戻って来て、パムが家族になり、落ち着いたところでレイが家族になり、他国の動静を3人に探ってもらったら、今度は私の動きがとれなくなってしまっていた。本当は、パムが家族になったところで動き出していればここまでズルズルとは待たさなかったのにと悔やんでいる。
結局また待たせることになってしまいました。
続く
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