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第15話 帰還

第15-5話 パムさんと色々

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○パムとお休み
 全員の魔力が回復して、村に顔を出す前に私が一人で部屋で寝ようとした時にモーラが言いました。 
「それからなあ、パムとも一緒に寝るんじゃぞ、一人だけのけものになっておったからなあ」モーラの言葉に私は、いや、護衛とか言って、エルフィと寝ている所をズーッと見ていましたけどねえ。
「私は別に一緒になる必要はないと思います。そんな・・・」いや、確かに恥ずかしがっていますねえ。嫌がるのを無理強いするのは本意ではありません。
「何を言っている。声の雰囲気で期待しているのを感じているじゃろう」モーラが言いました。
「まあそれはわかりますが。ねえ?」私も妙に気恥ずかしくなりました。
「おいおいでかまいませんので」パムが明らかに動揺している。
「良いから一度隣に寝ておけ。もちろんいつもどおり2人ずつ交代にしておけば良いのじゃから」
「2人ずつ寝ているのですか?」パムが驚いています。
「そうじゃ。魔力回復の必要がない時でもなあ、2人ずつ交代で順番にこの男の隣で寝ているのじゃ」
「そうなんですか?」パムがびっくりしています。確かに今回は魔力回復という事でエルフィを除いて、皆さんをとっかえひっかえ一緒に寝ていましたからねえ。
「私が嫌がる時はしないという約束ですが、ほとんど毎日です」私も一人で寝るのが寂しくなっていますから。
「では今日は私と一緒にご主人様と寝ましょう」メアが言い出しました。
「そんな心の準備が」
「大丈夫です。これも慣れですから」
「はあ」メアに手を引かれて、私と一緒に部屋に行きましたが、問題が一つありました。ベッドが狭い!!
「新しく作る部屋には広いベッドが必要ですね」メアが言いました。
「そうですね」ホッとした感じのパムの声です。しかし・・・
「ではベッドを起こして床に毛布を敷いて寝ましょう」
「ああ!そうですね・・・」パムの言葉の語尾が小さく聞こえました。
 そうして、3人で毛布をかぶって寝ました。新築するまでは、慣れない感じでしたが、広いベッドになってからはパムも慣れたようです。

○パムと勉強
 村に挨拶をしてから、何かと村の用事を押しつけられるようになり、頻繁に村に行っていましたが、久しぶりに家でまったりしていた時の事です。
「ぬし様お願いがあります」
「なんでしょうか?」
「恥ずかしい話ですが、勉強を教えて欲しいのです」
「おや?パムさんは博識ですよねえ。私が教える事など無いと思いますが」
「勉強というよりは、文字が書けないのです」
「おや?読み書きは万能なイメージでしたが」
「里との暗号文は得意ですが、人間の文字には慣れていません」
「ああ成程。そういう事ですか」
「ユーリとエルフィからは、ぬし様の教え方が上手だからすぐ覚えられると聞いております。よろしくお願いします」
 そう言って数日教えたのですが、私が逆に教えてもらう羽目になりました。
「エルフの言葉とドワーフの言語の相違点はですね」とか「そうです。発音が少し違います。ちょっと違う場所に行くと、言葉の使い方が違ったりします。若干使い方に方言というか訛りがあります」
 と言う具合に初日で文字の書き取りを終了して、他種族言語の話題になった時から立場が逆転しました。
 私としては有り難かったのですが、不出来の生徒だったと思います。特に発音が。
「ぬし様。その発音だと違う物の名前になってしまいます。そして礼儀知らずと言われてしまいますから注意してください。ですからこの発音だけは、ちゃんと発音できるまで頑張りましょう」
「とほほ」

○武器を作りましょう
「ドワーフのパムさんに武器を作りたいと言ったら怒りますかねえ」
「いえ、私は革細工専門なので武器は作れません」
「やはりドワーフでも得手不得手があるのですか」
「ドワーフがすべて武器職人のような目で見られるのは仕方がないのですが、実際は、人によって持っている加工技術が違います。私は革細工がメインですので」
「そうなんですか。そちらは今度教えてください」
「わかりました。それと武器ですが、ドワーフには大剣のイメージがあると思いますが、実は隠密行動に大剣は相性が悪いのです」
「なるほど。そうなると脇差クラスですかねえ」
「得意なのは長剣なのですが、隠密行動には、長剣は邪魔になりますので短刀を主に装備していました」パムのわくわく感が伝わってきます。
「ああなるほど。ちょっと思いついたので試作してみますね」
 しばらくして私は、鞭のようなベルトを持ってパムの所に行った。
「これをどうぞ」持って来たベルトを渡す。
「金属の鞭ですか?」グリップを握って持つとグリップからワイヤーが伸びていて、そこに細かい刃がついていて、ムチのように見える。だが、皮の鞘に入っていてムチと言うよりベルトに見える。
「ベルトになります。腰に巻いてみてください」私が言うと、パムはそのベルトを腰に巻き付けてみる。
「ああ、少し太めのベルトですか。これは携帯性に優れていますね。でも鞭は私も使ったことがありません。これから憶えろとおっしゃいますか?」パムはそう言って困った顔をしている。
「ふふん。外してください」私はドヤ顔で言った。
「はい」パムはベルトを外しました。
「剣の握りに見えるバックルを握って、ベルトから剣を抜いてみてください。剣を抜いたら、魔力を少し込めて振ってみてください」言われたとおりパムが手に持って軽く振ると。鞭は一直線になり長剣になる。しかし、振り回すと微妙グニャグニャと不安定に揺れてしまう。
「はい。って。おお!これは!剣になるのですね。でもこれでは強度が足りませんね」パムは振り回してみてそのユラユラするのを見てちょっとがっかりする。
「さらに少し魔力を込めてください」グッと握ると今度は、薄皮のような表側が少しずれて、継ぎ目を覆い隠し、一本の剣になり不安定な揺れはなくなった。
「ああなるほど。 魔力を通すと一体化するのですか」パムが一本になったその剣を振り回している。
「どうでしょう。持ち運びには便利になりましたよねえ」
「解除はどうするのですか?」
「今のところ、一枚一枚、手で解除するしかありません。そこはもう少し考えます」
「魔法を解除すればよいだけではないのですか」
「パムのパワーに負けないように硬質化を進めたところ。どうにも戻りが悪くなりまして、手で解除するしかないのです」
「そこまで考えていただいていましたか」そう言いながら剣を手で直接解除していくパム。
「このまましばらく使わせてください。改善したいところも出てきそうですので、とりあえずは、ベルトの幅を少し狭められるか検討いただければと。外側の一枚だけでなく幅も広げるようにできませんでしょうか」
「わかりました。やはり使う方に聞くのが一番ですね。さっそく作ってみますね」
 数時間後
「とりあえず簡単に解除する方法ができました」私は同じ作りの違う物を持って来ました。さすがに剣のカバーまでは作れませんでした。
「早やすぎませんか」パムは渡された剣を手に取って眺める。すでに硬質化してあるので長剣になっている。
「習作になります。どうですかねえ」
「解除するにはどうすれば」
「剣をまっすぐ上に向けて柄を膝にポンとぶつけてください」
「なるほど。振って伸ばす、つついて戻すというところですか」
「とりあえず先ほどの件は、これから調整していきます」
「わかりました」
 ベルトにして腰に回す
「何かを切った時に壊れたら、その破片を拾ってきてください。強度の確認をします」
「わかりました」
 その後私はパムに使い心地を尋ねる。
「しばらく使ってもらっていますがどうですか?」
「かなり厳しい使い方をしてみましたけれど、一向に壊れませんが」
「そうですか。握りはどうでしょう。 握りづらくはないですか?」
「どうしてもグリップが滑るので、包帯を巻いています。これはいつものことなので」
「検討します」

○パムと共同作業
 今日はパムと新しく作った作業場で作業しています。はいパムが革の加工が得意と聞いて革製品を作ります。
「よろしくお願いします」
「すでに教えることはあまりありませんが、基礎からということですので皮のなめし方から説明します」
「よろしくお願いします」そう言って皮をなめすところから教えてもらっています。そもそも道具の扱いからなので私はうまく道具を使えていません。
「そこのところは・・・」そう言いながらパムが私の手を取ります。少しだけ覆い被さるようにパムが私の手をぎゅっと包み込みました。作業に集中しているので、その作業が終わった時に気付くと顔が急接近していました。思わず手を離して少しだけ離れました。お互い妙に意識してしまい照れてしまいました。
「ちょっとお互い恥ずかしかったですね」
「はい」
「続けましょうか」
「はい」そう言って作業を見せてもらいながらパムは話題を振ってきた。
「そういえば、私はDT様をぬし様とお呼びしていますが、よろしかったしょうか」
「かまいませんよ。エルフィの旦那様だけはあまりいただけませんが」
「それでも呼ばせていらっしゃいますよね」
「彼女は最初からそんな感じでしたし、呼び方も態度もべったりではありませんから、皆さんあきらめたようです」
「ああ、皆さん心がつながっていますからそれがわかるのですね」
「そうなのです。皆さん旦那様と呼ぶのにあまり気にしていません。それにアンジーなんか私の事を「あんた」としか呼びませんから」
「モーラ様も誰に対しても「おぬし」ですしね」
「だから家族であればどう呼ばれても気にしませんね」
「では私はぬし様でかまいませんか?」
「かまいませんけど、どうしてそれを選びましたか?」
「ユーリのあるじ様が一番なじみそうだったのですが、誰かと一緒というのもちょっと・・・」
「私を呼ぶ、呼び方はあまり多くはありませんねえ」
「はい。ぬし様はあるじ様とほとんど同じですので」
「名前を呼んでもいいのですよ?」
「それは皆さんに睨まれそうです」
「そうなんでしょうか?他の皆さんと同じに私の名前を呼んでも・・・ああそういえば、私の名前は仮の名前ですからねえ。皆さん私の正式な名前がわかった時に違和感が出るかもしれないから呼んでいないのかもしれません」
「記憶が封印されているのでしたね」
「そうなのですよ。でももうほとんど戻ってきているのです」
「そうなのですか?」
「前の世界の名前はもう捨てたような物なので」
「ではDT様とお呼びしてもよろしいですか?」
「まあ、2人きりの時に呼ぶようにしませんか?秘密にして」
「そうですか。2人だけの秘密ですか。なにか嬉しいですねえ」
「なんという話をしているのよ2人でコソコソと」
「いいタイミングで入ってきますねえ。さすがアンジーです。様子を伺っていましたか」
「あんたたち脳内通信でダダ洩れよ」
「「あ」」
「少しは制御を覚えなさい。それはマナーよ」ああ真っ赤な顔で必死に叫んでいるアンジーも可愛いですねえ。
「だからそういうの禁止!!」さらにアンジーが顔を赤くして叫びました。うんグッジョブ。
「では、2人きりにならないようにアンジー様に一緒に皮をなめしていただきましょう」
「ああ!しまった!そういう流れか!」アンジーはそう言って肩を落とす。
「ぬし様うまくいきました」
「パムさすがです」


続く

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