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第20話 魔族の子
第20-6話 監視者
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○ 追跡
家の玄関から直線上にある小高い丘がある。そこに草に隠れて2人の人影があった。2人とも獣人のようだ。
「やはりあの家にかくまわれていましたか。監視を続けて今の今まで、本当にここにいるのか疑っていましたが、やはりあの方の言葉は間違いなかったのですね」豹のような顔立ちでボディスタイルが女性の方が、腕を組んで頷いています。
「これだけずーっと家の中にいることなんてできますか?子どもは外に出られないのは、かなり苦痛のはずですよ」もう一人の小柄な、黒豹のような感じの髪のこちらも女性のようですが、ちょっと気弱そうな感じの獣人が顔を見て言った。
「それは何かやり方があったのかも知れません」その豹の獣人の視線はその子を捉えたままです。
「相変わらずすごい家族です。人種のごった煮ですねえ」黒豹の獣人は面白そうに言いました。
「さて。確認できましたので、早々に撤収しましょうか」
「え?このまま継続して見張るんじゃないんですか?」
「そのつもりでしたが、どうやら気付かれたようです。見てください」豹の獣人がそう言うと、黒豹の獣人が視線を家の玄関の方に向ける。
「あ、本当だ。こちらをじっと見ていますねえ」
「これは早々に立ち去らないとかなりまずいですよ」それでも余裕があるのか周囲の持ち物を整理しようと動き始めます。
「はいその通りかなりまずいです」私はすでに到着して後ろにいました。
「おや、もうここまで来ましたか、速いですね。でも、あなたはひとり、私たちは二人ですよ。どちらかが逃げ切れば良いのです」豹の獣人は、落ち着いて荷物の片付けを続けながら話しかけてくる。もう一人はすでに荷物も持たず逃げようとしている。
「安心してください。2人とも逃げられません」
「ふっ」その2人は、何か合図を決めていたのか、同時にその場から消えた。しかし、消えたと思った瞬間2個の球体の中に捕らえられた。
「なるほど、2人とも捕まってしまいましたか。それにしても面白い球体に入れられてしまいました。土の薄い壁のようですねえ」豹の獣人は冷静に球体シールドを触ったり叩いたりしてどういうものなのか調べている。黒豹の獣人は、パニックになっているのか、ただドンドンとシールドを叩いて声を出している。
しかし、壊せるわけもなく、ついには座り込んだ。いつの間にか到着したメアは、その2個の球体を、小高い丘から家の方に向かって蹴り飛ばした。さすがに高低差がかなりあるので、しばらくは転がっていき、平地にかかる頃には停止しました。私とメアは、ゆっくりと丘から降りて球のところに到着する。球の中のふたりは、丘から転がり続けて、具合が悪そうだ。その後もメアと私で蹴り転がし続けて、ついに家の前まで到着する。
目を回してはいるものの気絶まではしていない2人に向かい、メアは、
「あなた達の行動は筒抜けでした。泳がせていたのです。しかもご主人様が罠を仕掛けておいてくれました」メアは淡々と状況を説明する。
「・・・・」しかし何も答えない。豹の獣人は腕を組んで立っていて、黒豹の獣人は座ったままだ。
「そうなのです。実は私たちの家を監視するには、あの位置しかないのです。森の中は結界が張ってあり、近づけば気付かれる。結界の範囲の外で一番近く家が見える位置があそこなのです」パムが近づいて来てそう言いました。
「・・・」座っていた黒豹の獣人は、立っている豹の獣人の顔を見るが、立っている方はただ目をつぶって私の言葉を聞いています。
「念のため言っておきますが、こちらでもあなた達を見張っていましたので、あなた達から連絡が途絶えたとしても、次の者が来るまでのしばらくの間、具体的には、5日間程度の余裕があるのはわかっています」座っていた方が、下を向いてがくりと肩を落とす。
「このシールドの中で生き延びてください。まあ、糞尿まみれにはなるとは思いますが、生きてはいられるでしょう?」それを聞くと座っていた方が、再びどんどんとシールドをたたき何かを叫んでいる。最後にはあきらめてまた座り込みました。もうひとりは、ようやく座り込んで、何かを考えているようだ。
玄関の騒ぎを聞きつけてみんなが出てくる。獣人も出てくる。
「ああすまない。そいつらは俺の仲間だ。出してやってくれないか」
「そうですか。ならばあなたもこの子を狙う人達の仲間だったのですね」
「いや違うんだ。俺たちは、その、なんだ。この子の敵ではないとしかいえないが」
球の中で、座り込んで考えていた豹の獣人が立ち上がり、
「ここで事情を隠してもしようがないでしょう。このままでもなんです。ここから出してはもらえませんか?ちゃんと話をさせてください」豹の獣人がそう言った。
「話をさせて欲しいと言われれば、あんたは断れないわよね」アンジーが笑って言う。
「そうですね。会話しないと嘘も見破れない」鳴らない指をパチリとしてシールドを解く。メアさんとパムがそれぞれの後ろに立ち、その気配で睨みをきかせている。
「私たちより速いってことなのかしら」一瞬で後ろに立たれ、豹の獣人は、動かそうとしていた手が中途半端な状態で止まっている。
「はいその通りです。申し訳ありませんが、妙な動きはしませんように」メアが丁寧に話した。
「同じく、自分の命を軽んじる行動はおやめください。無駄死になりますよ」パムが少しだけ圧をかける。
「はいい・・・」黒豹の獣人は、おびえてこくこくと頷いている。
「それでは皆さん中に入って座りましょうか」私は緊張の張り詰めた中そう言った。
いつものテーブルなのに狭く感じます。獣人達3人を扉側に座らせて、その後ろにはメアさんとパムさんが立っている。その反対側に私と魔族の子が座り、私の隣にモーラが魔族の子の隣にユーリ、めずらしくアンジーがモーラの隣に座っている。あと、お茶はエルフィが配膳している。レイは相変わらずその子の膝の上です。
「まずは、俺を魔族から助けてくれてありがとう。礼を言わせてくれ」男の獣人が頭を下げる。
「うちの領地で起きたことですから、助けないわけにはいきませんから」私は冷たく言った。
「この家を見張っていたのは悪かったわ。これはアドバイスがあったからなのよ」豹の獣人が弁解した。
「本当なら、違う場所に飛んでいるはずだったのに、そこに飛ばされていなかったので、たぶん、この子が飛ばされた土地は、土のドラゴンの縄張りだろうと。保護されるとすればきっとあなた達のところだろうと。その隠し方は巧妙で、見つからないようにしているから常時監視していないと見つからないだろうと言われていたのよ」その獣人は表情をかえずに淡々とそう言った。
「確かに予想の範囲内じゃなあ」モーラが言い、アンジーが頷く。
「俺は、追われていた時に、土のドラゴンのところならもしかしたら助けてもらえるかも知れないと期待したところもある」
「ここにいる私たちがあの時の一行だと知っていたのですか?」私は獣人にそう聞いた。
「いいや。あの時の一行があんた達だとは知らなかったよ。だからあの時は、俺がボスの言う事を聞かないで手を出していたらひどいことになっていたなあと、あとからその事を知ったときに思ったよ」
「ヒウマそれ以上無駄な話はしないで」豹の獣人がヒウマと呼ばれた獣人を見ながら言った。
「ああそうだな。すまなかった」
「この男を助けていただいたのも感謝していますし、この子を保護していてもらったのも感謝しています。でも、私たちが心配しているのは、これからどうするつもりなのかということです。それをお聞かせいただきたいのですが」豹の獣人が私を見て言った。
私はモーラを見た。モーラは頷いている。アンジーを見ても同じだ。本当の事を言っているのは間違いない。
「ところで、あなた達にアドバイスした人は一体誰なんです?」
「それは」隣の黒豹の獣人の表情が微妙に変わった。
「そ、それはちょっと」獣人の男も同様に言いよどむ。
3人とも話の流れから言わなければ話が進まないとは思うけど、話して良いものかどうか逡巡しているのがわかる。そう、ならば答えをこちらから提案しましょう。
「元魔王様ですね」
3人とも声にならない。3人とも頭をうなだれてしまい視線を合わせない。
「今更隠せることでもないでしょう。この子を転移させてその転移位置をほとんど知られていないはずの土のドラゴンの縄張りに置き、後催眠で動かし、騒動を起こさせ保護させて、そこに住んでいる魔法使いを監視しろなんて、誰が指示できますか。現魔王でさえ私たちの住んでいる正確な位置など知らないというのに」
「そうじゃな。わしがこの縄張りをここに持っているのは、ドラゴンの里しかしらないことじゃからなあ」
「ねえ、辺境の・・もとい田舎の賢者様」アンジーわざと間違えましたね。
「誰が田舎の賢者じゃ。アンジー失礼にもほどがあるぞ。確かにここは超絶田舎なのは間違いないが」
「いや聞きたかったのは、この子が現れたときから、ドラゴンの里が知っていたと思っていたのね」
「裏でなにやら取引しているとは思っていたが、こんな具合に、わしに全部おしつけようとしていたとは思わなかったわ」
「なるほど。話を戻しましょう。ドラゴンの里とコネクションがあり、ここの様子がわかっている。そんなの魔王とかそういうクラスの人達しかいないんですよ。あきらめてその人が誰なのか言ってください」
「俺からは言えないんだ」
「ええ、私たちの口からは言えません」
「何か言えない事情があるのはわかりました。アンジーさんモーラさん。どうですか」
「まあ間違いないな」
「そうね、ビジョンは不明確だけどそうみたい」
「では、直接口から聞くことはあきらめましょう。元魔王様がこの芝居を組んだことは間違いないですね。面識がないのに私たちを勝手に利用して、困りごとを持ち込んだ。直接会って文句を言いたいです」
「それはすまねえ。俺と俺のボスがあの人に話しちまったんだ」
「え?私たちが噂の魔法使い一行だと?あの時疑ってはいましたけど確定はしていませんよね」
「ああ。あの時うちのボスは、あんたと話した時に確定はしていない。でも、変な奴が通ったと俺らと晩飯を一緒に食べて話をしてみたが、悪い奴じゃなかったと上の者に話したのさ」
「それでもあの時は、私たちは別な街に住んでいたので、ここに住んでいることは知らないはずですが」
「ああそうだな。俺たちは変な家族が通っていった。もしかしたら噂の魔法使いじゃないかって話しただけだ」
「そこからですか」
「それで興味を持って情報収集したのだと思います」豹の獣人はそう言った。
「情報提供したのは、もしかしたらドラゴンの里でしょうかね」モーラを見る。
「もしかしなくてもあそこ以外にあるまい。おそらくは、なにか別の情報との取引はあったのだと思うが」モーラがちょっと嫌そうな顔をした。
「はあ・・・・」
「それで?この子を連れ戻しに来たのですか?」
「実は事態はもっと深刻です。あの方達は捕まっています」豹の獣人はそう言った。
「なんですって?」私はその子の顔を見る。青ざめている。
「あの方は、奥さんと共にその能力を制限され、どこかに幽閉されているらしいのです」豹の獣人はそう付け加えた。
「そうなんだよ。それと俺達の仲間も一緒にいるらしいんだ。それを助け出して欲しい。俺が追われていたのは、その場所を知っていると思われていたからなんだ」
「誰もその場所を知らないし、捕まっている理由も脅迫もないということですか?」私は念のため確認しました。
「誰かに対して脅迫しているかも知れないが、少なくとも俺は知らない」そう言って他の2人にも視線を向けるが、同様に首を振る。
「見つけてさらに助けて欲しいと」
「無茶なお願いだとは思っている。だが、この子をかくまってくれるような人なら、もしかして頼めるのではないかと」
「もうひとつ、あなた達は誰に連絡しようとしていましたか?」
「それは」肘でつつき、
「もう言っても良いでしょ」
「はい。あの里を抜け出した者達です」
「なるほど。真相を知っている方達ですね。ならばあなたたちも当事者なので大体のことがわかっているはずですよね。話してもらえませんか」
「どこからお話ししましょう」
「当日の人の動きがよくわからないのです」
「あの日は、朝から人間の荷馬車が入ってくる事になっていました。里に持ってくるのは、いつもの里では手に入らない輸入品と、今回は荷台に隠した油漬けにした死体3つです」
「油漬けにした死体ですか。死体がすぐできるのもなのですか?誰かの死体ですか?」
「実は、あなた達がエルフの森で殺した死体です。時間も経過していましたが、何体かを確保しました」
「それはおかしいぞ、あの時わしの脱皮ですべてが草木の肥やしになったはずじゃが」
「周辺で打ち落とされた死体が残っていました」
「ああ浄化の時には、その地域にしか影響させなかったからなあ」
「影響させなかったのはどうしてですか」私はモーラに聞いた。
「わしの皮の栄養で成長が促進されすぎて、植生が変わりそうだったのでなあ。無理しなかったのじゃ」
「なるほどねえ」
「話が横にそれているわよ」アンジーが私達を見て睨んだ。
「戻しましょう。死体は一度凍らせて、その上で油に漬けました。体型の似たような死体が手に入りました」
「そうして人間の荷馬車が来る予定でしたが、昼になった頃ようやく来たのです。しかも死体は乗せていませんでした。事情が変わったと。何かに怯えるようにその話をしてくるので、何かあったんだと察せられました」
「なるほど」
「とりあえず輸入品を下ろし、必要最低限の荷物を積み、第1陣が里を出発しました」
「交代するように荷馬車が入ってきて、第2陣も出発していきました。問題は第3陣だったのです」
「空のはずの荷馬車に魔族か獣人の気配がしていたのですが、荷台を開けて見ると誰もいなかったのです。そして元魔王様が殺されかけました」
「なるほど」
「その者達は、眠らせておいたスパイ達を殺し、さらに元魔王を殺そうとしていたのです」
「そこで」
「しかし傷を負った元魔王夫婦は、子どもを転移させて自分たちは傷の治療もせず里を出ました」
「第4陣の馬車が来て私達が出る時にはまだその事は知りませんでした」
「家が燃やされていなかったのでは?」
「第1陣が来た段階で死体の話はご破算になり、元魔王様は普通に脱出する手はずでした。その件はあきらめると。そうなった以上、ただ脱出するだけなので、お互い連絡を取らないようにすると連絡があり、それ以後の事は後から知りました」
「お互い連絡を取らないようにしたのがあだになったか」モーラがそう言った。
「はい。連絡を取り合うと誰かが捕まったときに話が漏れてしまうので」
「して合流地点はどこじゃ」
「合流地点はありません。私たちが泊まるところを数カ所指定していて、そこに連絡員が来ることになっています」
「周辺の様子を見て、危なそうなら連絡を入れないでしばらくは様子を見ることにしていたと?」パムがそこで聞きました。
「はい。最終的に定住する予定の場所は、先遣隊の数人しか知らないと思います。その場所を知っている人の名前も人数も知らされていません」
「もし先遣隊の人達が殺されていれば、行き先はなくなるのでしょうか」今度はメアが聞きました。
「誰に何を聞けば良いかの連絡符丁があって、数人の連絡員に会い、全ての情報を聞けば場所はわかるようになっています」
「それで、行方不明の里の者がいるというのはどこで知ったのじゃ」
「私達は連絡員と接触ができました。その時に連絡員から話がありました。他の者達とはすでに連絡がついている。数名の魔族と元魔王夫婦だけと連絡が取れないと」
「現段階でも、元魔王夫婦と捕らわれた仲間の行方は不明という事で良いか?」
「はい」
「ユーリ、レイ、あの子のそばにいてやってくれないか。わしらは話がある」モーラが2人を見てそう言った。2人は頷いて、その子と共に2階に向かおうとする。
「はい」
「私たちもその子と一緒にいて良いですか?」その3人もモーラに尋ねる。
「かまわぬよなあ」モーラが私を見て聞きました。
「ええ、その子と何かお話があるのなら、ユーリもレイもお邪魔でしょうか?」その子が悲しい顔をしたのを見て彼らは、「一緒にいてあげてください。その、そちらのお話に支障が無ければ」
「レイ、ユーリどうしますか?」レイとユーリは、頷きあい「僕がこの子と一緒にいます」とレイが言い、ユーリは切なそうに見上げるその子にしゃがんで目線を合わせ頭をなでる。そして、
「ごめんね。大事なお話しをしてくるよ。我慢できるかな?」仕方なく頷くその子の頭をくしゃくしゃになでて、ユーリは我々の方に来た。
『本当はこうして話ができるのですけど。一応けじめです』
『わかりました』
そうして、メアが2階の広い部屋を用意して4人と1匹を連れて行き、我々は客間テーブルに座る。
「さてどうしましょう」
「その前に客間にあの子と一緒に入れて大丈夫なんですか?襲われたりしないですか?」パムが私に心配そうに言ってきました。
「レイが、あの子の膝の上にいることを選んだのだと思いますし、あれだけあの子に慕われていて、さすがにそれはないでしょう。まあやれるならやってみろと言うところです」
「確かにあの男が来てから離れませんよね。ユーリがちょっとかわいそうです」メアがそう言った。
「いえ、むしろその方が良いと思います」意外に淡々としているユーリ。
「さて。ポイントは元魔王夫婦の監禁場所の特定、彼の仲間の監禁場所の特定というところですか」私は皆さんを見ながら言いました。
「そうじゃな。元魔王夫婦が拉致監禁されていると仮定して、監禁している者の目的が不明だが、救出しなければならないであろうな」全員頷く。
「そして、獣人さんの仲間達が拉致監禁されているのも救出しなければならないのですね」パムがそう言った。
「さらにその上で、全員を新しい土地から連絡が来るまでに保護しなければならないのですか」ユーリが言った。
「そんなところですかねえ」私は、すでにどうするかを考え始めていた。
「申し上げにくいことですが、あの子と元魔王夫婦を引き合わせ、獣人の仲間達を助けたところで、私たちの役目を終える方がよろしいのではないでしょうか」パムが告げる。
「そうね。私もそう思うのよ。元魔王は、魔族が束になってもかなわないくらいの実力の持ち主だから、追撃などするはずがないと思うのよ。まあ今は、殺したり傷つけたりしたくないと言っているから、どのくらいの反撃ができるかは、わからないけれど、私達は魔族や訳のわからない陰謀を企む者達と関わるべきでは無いと思うわ」アンジーが追撃する。
「しかしそれでは、・・・」私はどうも納得できずにいた。
「気持ちはわかるわ。でもね、正直そのまま守り続けると、今度は魔族と私たちの全面抗争が始まる可能性が限りなく高くなるのよ」アンジーは私を見つめながらそう言った。
「やはりそうなりますか」私もそこが一番心配です。
「そんなに高いのですか?」ユーリが尋ねる。
「最初に言っておけば良かったのだけれど、今回の話で問題なのは、誰がこの茶番劇を操っているのかわからないってことなのよ」アンジーが嫌そうに言った。
「茶番劇ですか」メアがビックリしたように言いました。
「そうよ。私たちが最近遊び始めたチェスを思い出してご覧なさい。その黒幕は、自分の思ったとおりに自分の手駒と相手の手駒を区別無く、盤面にあるすべての駒をいいように操っているのよ。まあ私たちもその中の手駒の一握りでしかないのだけれどね。しかも私たちは、敵の目的がわからないから、勝利条件はわからないし、この後、相手の目的がわかって阻止したとしても、たぶん引き分けが精一杯だと思うの。そうよ。喧嘩なら一方的に殴られて、最後に一発軽く殴って痛み分けというところね。今もこちら側は手詰まりで、相手の思うように動かざるを得ない、動きながら情報を集めて、逆転の一手を探るしか無い状態なのよ」アンジーはそこまで一気に言った。
「裏でこの状況を操っているのは一体誰なんでしょうか」パムが考えながら言った。
「少なくとも里の移転の件から今まで、私たちを巻き込んだ段階で、私たちがどう動くのか推測できていることから考えると、敵は絞れるのだけれど」アンジーはモーラを見てそう言った。
「ああ。あまり考えたくはないがな」
「どういうことですか?」パムが珍しくモーラに聞いた。
「まあ、執念深い火のやつかのう。それ位しか思いつかんがな。違うような気もするが」
「仮にそうだったとして、火のドラゴンさえも盤上の駒に過ぎないと思うのよ。そのドラゴンにこっそり入れ知恵している黒幕。チェスをプレイする棋士がいるのよ」アンジーが駒を動かす仕草をする。
「なるほど、盤上を俯瞰してみている棋士か」モーラが納得しています。
「そう考えると、すべての事柄を知りうる者。ドラゴンの里、魔法使いの里、現魔王というところか?」
「現魔王は、元魔王の存在を知らなかったのよ」アンジーが言った。
「それを隠していた可能性もあるじゃろう。今でもおぬしと直接連絡できないでいるんじゃろう?」
「ああ確かにそうね」
「あとは、神のみぞ知るというところですかね~」エルフィがお気楽に発言する。
「神ですか」顔色を変えるアンジー
「エルフィ相変わらずお主は鋭いのう。その可能性を失念していたわ」
「別にそういう意味で言ったつもりはありませんよ~」モーラとアンジーの顔色を見てアタフタするエルフィ。
「じゃが、わしらの持てる情報ではこれくらいじゃな。考えるだけ無駄かもしれん」
「そう思うわ。今しなければならない事にポイントを絞りましょう」2人とも話題を避けましたね。
「まず、元魔王の居場所を特定しないとだめじゃな」
「そうね、他の魔族達の事は後回しにしないとだめね」
「どちらも同じ所のような気がしますけどね~」エルフィが言いました。それは予言ですか?
「そうなのか?監禁する目的が違いそうじゃが」
「そもそも~元魔王なら殺してしまえば済むところなのに~殺さずにいるのはどうしてでしょう~きっと引っ越し先を知りたいという所じゃないですか~」
「確かにそうじゃな。それなら一緒で済むのじゃが」
「そんなに大げさに里の人達を拉致しても意味は無いような気がしますけど」メアさんが珍しく発言する。
「むしろ近づかなくなりそうな気もするなあ」
「命の危機があれば、早急に救いに来ますよね」パムも参加している
「ああ、でも新しい里の方はそれを知るすべはなかろう」
「拉致した側も拉致はしてみたものの連絡が取れないとかですかねえ」
「それなら一度解放して監視を続けた方が良さそうですけど」ユーリも頭をかしげている。
「その仲間の方が転居先を知っている。けれど、知らない振りをしている。いつかくる連絡を待っている振りをしている。なので、どっちかわからないから解放もできないというところですかね」
「それだって監視で済みますよ。でも、元魔王が転送魔法を使えるとなれば話は違ってきますが」私がちょっと目先を変えてみました。
「使えばすぐ逃げられるのに?」アンジーが私にツッコむ。
「使えることがばれるのがまずいということではないでしょうか」メアが気にしているところを指摘した。
「そういえば現魔王が言っていましたね、転送できれば戦況が一気に変わると」私はルシフェル様に言われた事を思い出しました。
「確かに、魔族はそれを手に入れたいということですか」パムが納得しかけています。
「現魔王は、転移魔法を知らないのか知っていながら使わないのかですかね」
「現魔王は使えると思います。でもこの世界では使わない。使うつもりがないと思います」アンジーが言った。
「人族、魔族どっちも、転移魔法が存在し、恒常的に使えることを知れば、研究にやっきになりそうじゃからなあ」
「元魔王は、里から逃げたときには転移魔法を使っていませんよね」
「どこからか逃げ出したとなっているな。あそこは出る者には干渉しないと言っていたよなあ」
「はい。入るのは結界が阻み、出る者は干渉されません。それは身をもって確認しました」パムが言った。
「誰も見ていないときに転移魔法を使ったかも知れませんねえ」
「それはそうじゃな。誰にも見られていなければ使ってもよかろう」
「遠隔地まで転移すると、移動距離から転移魔法を使ったことがばれますよ」
「また話が飛んだな」モーラが頭をかいています。まあ、仮定の話しか前提がないので、どうしてもそうなりますね。
「ポイントを絞りましょう。どこにいるかを探す。闇雲に探しても意味がありません。どこかから情報を取らないとなりません」
「やはり各都市の魔法使いから情報を取ることになるかのう」モーラがそう言った。
「都市にいるとすれば、異種族が歩き回っても問題ないくらいの大都市となりますね」パムが言いました。
「あとはど田舎かな」モーラが上を見て言った。
「まさか、うちの周りとかじゃないでしょうね」私はモーラを見て言いました。
「そんなわけあるか。わしの縄張りにそんな上級魔族が来たらすぐわかるわ」モーラが馬鹿にするなとちょっと声を荒げて言いました。
「でも、結界を張ったこの家の中にいましたよね。対魔族結界の中にいたらわからないんじゃ・・・」
「!!!まさか。」モーラが椅子から立ち上がり、扉を開けて外に出る。すぐに羽ばたく音が聞こえる。
「そんなことありますか?」メアがビックリしたように言いました。
「念のためにね。一番最初に潰しておかなければならない可能性だから」アンジーが頭を抱えている。
「どうしてですか?」ユーリが尋ねる。
「私たちに濡れ衣を着せるには一番じゃない?私たちが拉致していた。私たちなら気配を消すことも可能だった。とね。現に魔族の子はこの家の中にいて周囲からは気配を消しているのだから」アンジーが諭すように話している。エルフィまでうんうんと頷いている。
「そこまで知っているとなるとまた見方が違ってくるけどね」つぶやくようにアンジーが言った。
「でも、あの子が来て結界を強化してからもモーラ様は自分の洞窟へ何度も行っていますよ」メアが指摘する。
「そうよねえ。結界の中から何度も自分の巣に戻っているわ」
「それは今の洞窟ですよね」パムは確認のため尋ねたようだが、全員の頭の上にはてなマークが浮かび上がる。
「そういえば、昔モーラが住んでいた洞窟がありますね。その洞窟は、魔族や魔獣が寄ってこないようにモーラの匂いやらなんかで結界が張ってあったはずです」私は思い出してそう言った。
「それってもしかして、モーラの結界の中に入れば魔族からは逃れられるということではないですか」
「どういう結界かは聞いていませんので、どこまでのものかは知りませんけれど」
『やられたわ』モーラの叫びが頭に響く。
『どうしました?』
『洞窟を見に行くついでに、おぬしらが話していた前の洞窟を見に行ったら、誰か生活していた跡があったわ』
『それは、逃げられたということですか?』
『さすがに今のドラゴンの姿では入れなかったのでな、子供の姿になって洞窟の中の様子を見たが、直前まで誰かがいたようじゃ』
『数日前とかですかねえ』
『いや、火を使った痕跡が残っていてまだ熱かったからほんの数十分というところか』
『でもそんな気配はありませんでしたよね。モーラの探知外ってことですか?エルフィどうですか?』
『私もこの結界の中ですから、微細な気配はわかりませんよ~ちょっと外に行ってきますね~』
『お願いします。無理しないでくださいね』
『ラジャー』そうして、エルフィは玄関から外に出て森の中へ消えていったようだ。
Appendix
とりあえずあの子がいたようだ。しかし、気配が途絶えたから逃げるしかない。
大丈夫なのではありませんか?
いや、ここは一度身を隠す必要がある。話の辻褄が合わなくなってしまうから。
そこが問題ですか?
ああ、私達は彼らを騙しているのだから。
とりあえずこの場から逃げてドラゴンの縄張りからいなくなりましょう。
続く
家の玄関から直線上にある小高い丘がある。そこに草に隠れて2人の人影があった。2人とも獣人のようだ。
「やはりあの家にかくまわれていましたか。監視を続けて今の今まで、本当にここにいるのか疑っていましたが、やはりあの方の言葉は間違いなかったのですね」豹のような顔立ちでボディスタイルが女性の方が、腕を組んで頷いています。
「これだけずーっと家の中にいることなんてできますか?子どもは外に出られないのは、かなり苦痛のはずですよ」もう一人の小柄な、黒豹のような感じの髪のこちらも女性のようですが、ちょっと気弱そうな感じの獣人が顔を見て言った。
「それは何かやり方があったのかも知れません」その豹の獣人の視線はその子を捉えたままです。
「相変わらずすごい家族です。人種のごった煮ですねえ」黒豹の獣人は面白そうに言いました。
「さて。確認できましたので、早々に撤収しましょうか」
「え?このまま継続して見張るんじゃないんですか?」
「そのつもりでしたが、どうやら気付かれたようです。見てください」豹の獣人がそう言うと、黒豹の獣人が視線を家の玄関の方に向ける。
「あ、本当だ。こちらをじっと見ていますねえ」
「これは早々に立ち去らないとかなりまずいですよ」それでも余裕があるのか周囲の持ち物を整理しようと動き始めます。
「はいその通りかなりまずいです」私はすでに到着して後ろにいました。
「おや、もうここまで来ましたか、速いですね。でも、あなたはひとり、私たちは二人ですよ。どちらかが逃げ切れば良いのです」豹の獣人は、落ち着いて荷物の片付けを続けながら話しかけてくる。もう一人はすでに荷物も持たず逃げようとしている。
「安心してください。2人とも逃げられません」
「ふっ」その2人は、何か合図を決めていたのか、同時にその場から消えた。しかし、消えたと思った瞬間2個の球体の中に捕らえられた。
「なるほど、2人とも捕まってしまいましたか。それにしても面白い球体に入れられてしまいました。土の薄い壁のようですねえ」豹の獣人は冷静に球体シールドを触ったり叩いたりしてどういうものなのか調べている。黒豹の獣人は、パニックになっているのか、ただドンドンとシールドを叩いて声を出している。
しかし、壊せるわけもなく、ついには座り込んだ。いつの間にか到着したメアは、その2個の球体を、小高い丘から家の方に向かって蹴り飛ばした。さすがに高低差がかなりあるので、しばらくは転がっていき、平地にかかる頃には停止しました。私とメアは、ゆっくりと丘から降りて球のところに到着する。球の中のふたりは、丘から転がり続けて、具合が悪そうだ。その後もメアと私で蹴り転がし続けて、ついに家の前まで到着する。
目を回してはいるものの気絶まではしていない2人に向かい、メアは、
「あなた達の行動は筒抜けでした。泳がせていたのです。しかもご主人様が罠を仕掛けておいてくれました」メアは淡々と状況を説明する。
「・・・・」しかし何も答えない。豹の獣人は腕を組んで立っていて、黒豹の獣人は座ったままだ。
「そうなのです。実は私たちの家を監視するには、あの位置しかないのです。森の中は結界が張ってあり、近づけば気付かれる。結界の範囲の外で一番近く家が見える位置があそこなのです」パムが近づいて来てそう言いました。
「・・・」座っていた黒豹の獣人は、立っている豹の獣人の顔を見るが、立っている方はただ目をつぶって私の言葉を聞いています。
「念のため言っておきますが、こちらでもあなた達を見張っていましたので、あなた達から連絡が途絶えたとしても、次の者が来るまでのしばらくの間、具体的には、5日間程度の余裕があるのはわかっています」座っていた方が、下を向いてがくりと肩を落とす。
「このシールドの中で生き延びてください。まあ、糞尿まみれにはなるとは思いますが、生きてはいられるでしょう?」それを聞くと座っていた方が、再びどんどんとシールドをたたき何かを叫んでいる。最後にはあきらめてまた座り込みました。もうひとりは、ようやく座り込んで、何かを考えているようだ。
玄関の騒ぎを聞きつけてみんなが出てくる。獣人も出てくる。
「ああすまない。そいつらは俺の仲間だ。出してやってくれないか」
「そうですか。ならばあなたもこの子を狙う人達の仲間だったのですね」
「いや違うんだ。俺たちは、その、なんだ。この子の敵ではないとしかいえないが」
球の中で、座り込んで考えていた豹の獣人が立ち上がり、
「ここで事情を隠してもしようがないでしょう。このままでもなんです。ここから出してはもらえませんか?ちゃんと話をさせてください」豹の獣人がそう言った。
「話をさせて欲しいと言われれば、あんたは断れないわよね」アンジーが笑って言う。
「そうですね。会話しないと嘘も見破れない」鳴らない指をパチリとしてシールドを解く。メアさんとパムがそれぞれの後ろに立ち、その気配で睨みをきかせている。
「私たちより速いってことなのかしら」一瞬で後ろに立たれ、豹の獣人は、動かそうとしていた手が中途半端な状態で止まっている。
「はいその通りです。申し訳ありませんが、妙な動きはしませんように」メアが丁寧に話した。
「同じく、自分の命を軽んじる行動はおやめください。無駄死になりますよ」パムが少しだけ圧をかける。
「はいい・・・」黒豹の獣人は、おびえてこくこくと頷いている。
「それでは皆さん中に入って座りましょうか」私は緊張の張り詰めた中そう言った。
いつものテーブルなのに狭く感じます。獣人達3人を扉側に座らせて、その後ろにはメアさんとパムさんが立っている。その反対側に私と魔族の子が座り、私の隣にモーラが魔族の子の隣にユーリ、めずらしくアンジーがモーラの隣に座っている。あと、お茶はエルフィが配膳している。レイは相変わらずその子の膝の上です。
「まずは、俺を魔族から助けてくれてありがとう。礼を言わせてくれ」男の獣人が頭を下げる。
「うちの領地で起きたことですから、助けないわけにはいきませんから」私は冷たく言った。
「この家を見張っていたのは悪かったわ。これはアドバイスがあったからなのよ」豹の獣人が弁解した。
「本当なら、違う場所に飛んでいるはずだったのに、そこに飛ばされていなかったので、たぶん、この子が飛ばされた土地は、土のドラゴンの縄張りだろうと。保護されるとすればきっとあなた達のところだろうと。その隠し方は巧妙で、見つからないようにしているから常時監視していないと見つからないだろうと言われていたのよ」その獣人は表情をかえずに淡々とそう言った。
「確かに予想の範囲内じゃなあ」モーラが言い、アンジーが頷く。
「俺は、追われていた時に、土のドラゴンのところならもしかしたら助けてもらえるかも知れないと期待したところもある」
「ここにいる私たちがあの時の一行だと知っていたのですか?」私は獣人にそう聞いた。
「いいや。あの時の一行があんた達だとは知らなかったよ。だからあの時は、俺がボスの言う事を聞かないで手を出していたらひどいことになっていたなあと、あとからその事を知ったときに思ったよ」
「ヒウマそれ以上無駄な話はしないで」豹の獣人がヒウマと呼ばれた獣人を見ながら言った。
「ああそうだな。すまなかった」
「この男を助けていただいたのも感謝していますし、この子を保護していてもらったのも感謝しています。でも、私たちが心配しているのは、これからどうするつもりなのかということです。それをお聞かせいただきたいのですが」豹の獣人が私を見て言った。
私はモーラを見た。モーラは頷いている。アンジーを見ても同じだ。本当の事を言っているのは間違いない。
「ところで、あなた達にアドバイスした人は一体誰なんです?」
「それは」隣の黒豹の獣人の表情が微妙に変わった。
「そ、それはちょっと」獣人の男も同様に言いよどむ。
3人とも話の流れから言わなければ話が進まないとは思うけど、話して良いものかどうか逡巡しているのがわかる。そう、ならば答えをこちらから提案しましょう。
「元魔王様ですね」
3人とも声にならない。3人とも頭をうなだれてしまい視線を合わせない。
「今更隠せることでもないでしょう。この子を転移させてその転移位置をほとんど知られていないはずの土のドラゴンの縄張りに置き、後催眠で動かし、騒動を起こさせ保護させて、そこに住んでいる魔法使いを監視しろなんて、誰が指示できますか。現魔王でさえ私たちの住んでいる正確な位置など知らないというのに」
「そうじゃな。わしがこの縄張りをここに持っているのは、ドラゴンの里しかしらないことじゃからなあ」
「ねえ、辺境の・・もとい田舎の賢者様」アンジーわざと間違えましたね。
「誰が田舎の賢者じゃ。アンジー失礼にもほどがあるぞ。確かにここは超絶田舎なのは間違いないが」
「いや聞きたかったのは、この子が現れたときから、ドラゴンの里が知っていたと思っていたのね」
「裏でなにやら取引しているとは思っていたが、こんな具合に、わしに全部おしつけようとしていたとは思わなかったわ」
「なるほど。話を戻しましょう。ドラゴンの里とコネクションがあり、ここの様子がわかっている。そんなの魔王とかそういうクラスの人達しかいないんですよ。あきらめてその人が誰なのか言ってください」
「俺からは言えないんだ」
「ええ、私たちの口からは言えません」
「何か言えない事情があるのはわかりました。アンジーさんモーラさん。どうですか」
「まあ間違いないな」
「そうね、ビジョンは不明確だけどそうみたい」
「では、直接口から聞くことはあきらめましょう。元魔王様がこの芝居を組んだことは間違いないですね。面識がないのに私たちを勝手に利用して、困りごとを持ち込んだ。直接会って文句を言いたいです」
「それはすまねえ。俺と俺のボスがあの人に話しちまったんだ」
「え?私たちが噂の魔法使い一行だと?あの時疑ってはいましたけど確定はしていませんよね」
「ああ。あの時うちのボスは、あんたと話した時に確定はしていない。でも、変な奴が通ったと俺らと晩飯を一緒に食べて話をしてみたが、悪い奴じゃなかったと上の者に話したのさ」
「それでもあの時は、私たちは別な街に住んでいたので、ここに住んでいることは知らないはずですが」
「ああそうだな。俺たちは変な家族が通っていった。もしかしたら噂の魔法使いじゃないかって話しただけだ」
「そこからですか」
「それで興味を持って情報収集したのだと思います」豹の獣人はそう言った。
「情報提供したのは、もしかしたらドラゴンの里でしょうかね」モーラを見る。
「もしかしなくてもあそこ以外にあるまい。おそらくは、なにか別の情報との取引はあったのだと思うが」モーラがちょっと嫌そうな顔をした。
「はあ・・・・」
「それで?この子を連れ戻しに来たのですか?」
「実は事態はもっと深刻です。あの方達は捕まっています」豹の獣人はそう言った。
「なんですって?」私はその子の顔を見る。青ざめている。
「あの方は、奥さんと共にその能力を制限され、どこかに幽閉されているらしいのです」豹の獣人はそう付け加えた。
「そうなんだよ。それと俺達の仲間も一緒にいるらしいんだ。それを助け出して欲しい。俺が追われていたのは、その場所を知っていると思われていたからなんだ」
「誰もその場所を知らないし、捕まっている理由も脅迫もないということですか?」私は念のため確認しました。
「誰かに対して脅迫しているかも知れないが、少なくとも俺は知らない」そう言って他の2人にも視線を向けるが、同様に首を振る。
「見つけてさらに助けて欲しいと」
「無茶なお願いだとは思っている。だが、この子をかくまってくれるような人なら、もしかして頼めるのではないかと」
「もうひとつ、あなた達は誰に連絡しようとしていましたか?」
「それは」肘でつつき、
「もう言っても良いでしょ」
「はい。あの里を抜け出した者達です」
「なるほど。真相を知っている方達ですね。ならばあなたたちも当事者なので大体のことがわかっているはずですよね。話してもらえませんか」
「どこからお話ししましょう」
「当日の人の動きがよくわからないのです」
「あの日は、朝から人間の荷馬車が入ってくる事になっていました。里に持ってくるのは、いつもの里では手に入らない輸入品と、今回は荷台に隠した油漬けにした死体3つです」
「油漬けにした死体ですか。死体がすぐできるのもなのですか?誰かの死体ですか?」
「実は、あなた達がエルフの森で殺した死体です。時間も経過していましたが、何体かを確保しました」
「それはおかしいぞ、あの時わしの脱皮ですべてが草木の肥やしになったはずじゃが」
「周辺で打ち落とされた死体が残っていました」
「ああ浄化の時には、その地域にしか影響させなかったからなあ」
「影響させなかったのはどうしてですか」私はモーラに聞いた。
「わしの皮の栄養で成長が促進されすぎて、植生が変わりそうだったのでなあ。無理しなかったのじゃ」
「なるほどねえ」
「話が横にそれているわよ」アンジーが私達を見て睨んだ。
「戻しましょう。死体は一度凍らせて、その上で油に漬けました。体型の似たような死体が手に入りました」
「そうして人間の荷馬車が来る予定でしたが、昼になった頃ようやく来たのです。しかも死体は乗せていませんでした。事情が変わったと。何かに怯えるようにその話をしてくるので、何かあったんだと察せられました」
「なるほど」
「とりあえず輸入品を下ろし、必要最低限の荷物を積み、第1陣が里を出発しました」
「交代するように荷馬車が入ってきて、第2陣も出発していきました。問題は第3陣だったのです」
「空のはずの荷馬車に魔族か獣人の気配がしていたのですが、荷台を開けて見ると誰もいなかったのです。そして元魔王様が殺されかけました」
「なるほど」
「その者達は、眠らせておいたスパイ達を殺し、さらに元魔王を殺そうとしていたのです」
「そこで」
「しかし傷を負った元魔王夫婦は、子どもを転移させて自分たちは傷の治療もせず里を出ました」
「第4陣の馬車が来て私達が出る時にはまだその事は知りませんでした」
「家が燃やされていなかったのでは?」
「第1陣が来た段階で死体の話はご破算になり、元魔王様は普通に脱出する手はずでした。その件はあきらめると。そうなった以上、ただ脱出するだけなので、お互い連絡を取らないようにすると連絡があり、それ以後の事は後から知りました」
「お互い連絡を取らないようにしたのがあだになったか」モーラがそう言った。
「はい。連絡を取り合うと誰かが捕まったときに話が漏れてしまうので」
「して合流地点はどこじゃ」
「合流地点はありません。私たちが泊まるところを数カ所指定していて、そこに連絡員が来ることになっています」
「周辺の様子を見て、危なそうなら連絡を入れないでしばらくは様子を見ることにしていたと?」パムがそこで聞きました。
「はい。最終的に定住する予定の場所は、先遣隊の数人しか知らないと思います。その場所を知っている人の名前も人数も知らされていません」
「もし先遣隊の人達が殺されていれば、行き先はなくなるのでしょうか」今度はメアが聞きました。
「誰に何を聞けば良いかの連絡符丁があって、数人の連絡員に会い、全ての情報を聞けば場所はわかるようになっています」
「それで、行方不明の里の者がいるというのはどこで知ったのじゃ」
「私達は連絡員と接触ができました。その時に連絡員から話がありました。他の者達とはすでに連絡がついている。数名の魔族と元魔王夫婦だけと連絡が取れないと」
「現段階でも、元魔王夫婦と捕らわれた仲間の行方は不明という事で良いか?」
「はい」
「ユーリ、レイ、あの子のそばにいてやってくれないか。わしらは話がある」モーラが2人を見てそう言った。2人は頷いて、その子と共に2階に向かおうとする。
「はい」
「私たちもその子と一緒にいて良いですか?」その3人もモーラに尋ねる。
「かまわぬよなあ」モーラが私を見て聞きました。
「ええ、その子と何かお話があるのなら、ユーリもレイもお邪魔でしょうか?」その子が悲しい顔をしたのを見て彼らは、「一緒にいてあげてください。その、そちらのお話に支障が無ければ」
「レイ、ユーリどうしますか?」レイとユーリは、頷きあい「僕がこの子と一緒にいます」とレイが言い、ユーリは切なそうに見上げるその子にしゃがんで目線を合わせ頭をなでる。そして、
「ごめんね。大事なお話しをしてくるよ。我慢できるかな?」仕方なく頷くその子の頭をくしゃくしゃになでて、ユーリは我々の方に来た。
『本当はこうして話ができるのですけど。一応けじめです』
『わかりました』
そうして、メアが2階の広い部屋を用意して4人と1匹を連れて行き、我々は客間テーブルに座る。
「さてどうしましょう」
「その前に客間にあの子と一緒に入れて大丈夫なんですか?襲われたりしないですか?」パムが私に心配そうに言ってきました。
「レイが、あの子の膝の上にいることを選んだのだと思いますし、あれだけあの子に慕われていて、さすがにそれはないでしょう。まあやれるならやってみろと言うところです」
「確かにあの男が来てから離れませんよね。ユーリがちょっとかわいそうです」メアがそう言った。
「いえ、むしろその方が良いと思います」意外に淡々としているユーリ。
「さて。ポイントは元魔王夫婦の監禁場所の特定、彼の仲間の監禁場所の特定というところですか」私は皆さんを見ながら言いました。
「そうじゃな。元魔王夫婦が拉致監禁されていると仮定して、監禁している者の目的が不明だが、救出しなければならないであろうな」全員頷く。
「そして、獣人さんの仲間達が拉致監禁されているのも救出しなければならないのですね」パムがそう言った。
「さらにその上で、全員を新しい土地から連絡が来るまでに保護しなければならないのですか」ユーリが言った。
「そんなところですかねえ」私は、すでにどうするかを考え始めていた。
「申し上げにくいことですが、あの子と元魔王夫婦を引き合わせ、獣人の仲間達を助けたところで、私たちの役目を終える方がよろしいのではないでしょうか」パムが告げる。
「そうね。私もそう思うのよ。元魔王は、魔族が束になってもかなわないくらいの実力の持ち主だから、追撃などするはずがないと思うのよ。まあ今は、殺したり傷つけたりしたくないと言っているから、どのくらいの反撃ができるかは、わからないけれど、私達は魔族や訳のわからない陰謀を企む者達と関わるべきでは無いと思うわ」アンジーが追撃する。
「しかしそれでは、・・・」私はどうも納得できずにいた。
「気持ちはわかるわ。でもね、正直そのまま守り続けると、今度は魔族と私たちの全面抗争が始まる可能性が限りなく高くなるのよ」アンジーは私を見つめながらそう言った。
「やはりそうなりますか」私もそこが一番心配です。
「そんなに高いのですか?」ユーリが尋ねる。
「最初に言っておけば良かったのだけれど、今回の話で問題なのは、誰がこの茶番劇を操っているのかわからないってことなのよ」アンジーが嫌そうに言った。
「茶番劇ですか」メアがビックリしたように言いました。
「そうよ。私たちが最近遊び始めたチェスを思い出してご覧なさい。その黒幕は、自分の思ったとおりに自分の手駒と相手の手駒を区別無く、盤面にあるすべての駒をいいように操っているのよ。まあ私たちもその中の手駒の一握りでしかないのだけれどね。しかも私たちは、敵の目的がわからないから、勝利条件はわからないし、この後、相手の目的がわかって阻止したとしても、たぶん引き分けが精一杯だと思うの。そうよ。喧嘩なら一方的に殴られて、最後に一発軽く殴って痛み分けというところね。今もこちら側は手詰まりで、相手の思うように動かざるを得ない、動きながら情報を集めて、逆転の一手を探るしか無い状態なのよ」アンジーはそこまで一気に言った。
「裏でこの状況を操っているのは一体誰なんでしょうか」パムが考えながら言った。
「少なくとも里の移転の件から今まで、私たちを巻き込んだ段階で、私たちがどう動くのか推測できていることから考えると、敵は絞れるのだけれど」アンジーはモーラを見てそう言った。
「ああ。あまり考えたくはないがな」
「どういうことですか?」パムが珍しくモーラに聞いた。
「まあ、執念深い火のやつかのう。それ位しか思いつかんがな。違うような気もするが」
「仮にそうだったとして、火のドラゴンさえも盤上の駒に過ぎないと思うのよ。そのドラゴンにこっそり入れ知恵している黒幕。チェスをプレイする棋士がいるのよ」アンジーが駒を動かす仕草をする。
「なるほど、盤上を俯瞰してみている棋士か」モーラが納得しています。
「そう考えると、すべての事柄を知りうる者。ドラゴンの里、魔法使いの里、現魔王というところか?」
「現魔王は、元魔王の存在を知らなかったのよ」アンジーが言った。
「それを隠していた可能性もあるじゃろう。今でもおぬしと直接連絡できないでいるんじゃろう?」
「ああ確かにそうね」
「あとは、神のみぞ知るというところですかね~」エルフィがお気楽に発言する。
「神ですか」顔色を変えるアンジー
「エルフィ相変わらずお主は鋭いのう。その可能性を失念していたわ」
「別にそういう意味で言ったつもりはありませんよ~」モーラとアンジーの顔色を見てアタフタするエルフィ。
「じゃが、わしらの持てる情報ではこれくらいじゃな。考えるだけ無駄かもしれん」
「そう思うわ。今しなければならない事にポイントを絞りましょう」2人とも話題を避けましたね。
「まず、元魔王の居場所を特定しないとだめじゃな」
「そうね、他の魔族達の事は後回しにしないとだめね」
「どちらも同じ所のような気がしますけどね~」エルフィが言いました。それは予言ですか?
「そうなのか?監禁する目的が違いそうじゃが」
「そもそも~元魔王なら殺してしまえば済むところなのに~殺さずにいるのはどうしてでしょう~きっと引っ越し先を知りたいという所じゃないですか~」
「確かにそうじゃな。それなら一緒で済むのじゃが」
「そんなに大げさに里の人達を拉致しても意味は無いような気がしますけど」メアさんが珍しく発言する。
「むしろ近づかなくなりそうな気もするなあ」
「命の危機があれば、早急に救いに来ますよね」パムも参加している
「ああ、でも新しい里の方はそれを知るすべはなかろう」
「拉致した側も拉致はしてみたものの連絡が取れないとかですかねえ」
「それなら一度解放して監視を続けた方が良さそうですけど」ユーリも頭をかしげている。
「その仲間の方が転居先を知っている。けれど、知らない振りをしている。いつかくる連絡を待っている振りをしている。なので、どっちかわからないから解放もできないというところですかね」
「それだって監視で済みますよ。でも、元魔王が転送魔法を使えるとなれば話は違ってきますが」私がちょっと目先を変えてみました。
「使えばすぐ逃げられるのに?」アンジーが私にツッコむ。
「使えることがばれるのがまずいということではないでしょうか」メアが気にしているところを指摘した。
「そういえば現魔王が言っていましたね、転送できれば戦況が一気に変わると」私はルシフェル様に言われた事を思い出しました。
「確かに、魔族はそれを手に入れたいということですか」パムが納得しかけています。
「現魔王は、転移魔法を知らないのか知っていながら使わないのかですかね」
「現魔王は使えると思います。でもこの世界では使わない。使うつもりがないと思います」アンジーが言った。
「人族、魔族どっちも、転移魔法が存在し、恒常的に使えることを知れば、研究にやっきになりそうじゃからなあ」
「元魔王は、里から逃げたときには転移魔法を使っていませんよね」
「どこからか逃げ出したとなっているな。あそこは出る者には干渉しないと言っていたよなあ」
「はい。入るのは結界が阻み、出る者は干渉されません。それは身をもって確認しました」パムが言った。
「誰も見ていないときに転移魔法を使ったかも知れませんねえ」
「それはそうじゃな。誰にも見られていなければ使ってもよかろう」
「遠隔地まで転移すると、移動距離から転移魔法を使ったことがばれますよ」
「また話が飛んだな」モーラが頭をかいています。まあ、仮定の話しか前提がないので、どうしてもそうなりますね。
「ポイントを絞りましょう。どこにいるかを探す。闇雲に探しても意味がありません。どこかから情報を取らないとなりません」
「やはり各都市の魔法使いから情報を取ることになるかのう」モーラがそう言った。
「都市にいるとすれば、異種族が歩き回っても問題ないくらいの大都市となりますね」パムが言いました。
「あとはど田舎かな」モーラが上を見て言った。
「まさか、うちの周りとかじゃないでしょうね」私はモーラを見て言いました。
「そんなわけあるか。わしの縄張りにそんな上級魔族が来たらすぐわかるわ」モーラが馬鹿にするなとちょっと声を荒げて言いました。
「でも、結界を張ったこの家の中にいましたよね。対魔族結界の中にいたらわからないんじゃ・・・」
「!!!まさか。」モーラが椅子から立ち上がり、扉を開けて外に出る。すぐに羽ばたく音が聞こえる。
「そんなことありますか?」メアがビックリしたように言いました。
「念のためにね。一番最初に潰しておかなければならない可能性だから」アンジーが頭を抱えている。
「どうしてですか?」ユーリが尋ねる。
「私たちに濡れ衣を着せるには一番じゃない?私たちが拉致していた。私たちなら気配を消すことも可能だった。とね。現に魔族の子はこの家の中にいて周囲からは気配を消しているのだから」アンジーが諭すように話している。エルフィまでうんうんと頷いている。
「そこまで知っているとなるとまた見方が違ってくるけどね」つぶやくようにアンジーが言った。
「でも、あの子が来て結界を強化してからもモーラ様は自分の洞窟へ何度も行っていますよ」メアが指摘する。
「そうよねえ。結界の中から何度も自分の巣に戻っているわ」
「それは今の洞窟ですよね」パムは確認のため尋ねたようだが、全員の頭の上にはてなマークが浮かび上がる。
「そういえば、昔モーラが住んでいた洞窟がありますね。その洞窟は、魔族や魔獣が寄ってこないようにモーラの匂いやらなんかで結界が張ってあったはずです」私は思い出してそう言った。
「それってもしかして、モーラの結界の中に入れば魔族からは逃れられるということではないですか」
「どういう結界かは聞いていませんので、どこまでのものかは知りませんけれど」
『やられたわ』モーラの叫びが頭に響く。
『どうしました?』
『洞窟を見に行くついでに、おぬしらが話していた前の洞窟を見に行ったら、誰か生活していた跡があったわ』
『それは、逃げられたということですか?』
『さすがに今のドラゴンの姿では入れなかったのでな、子供の姿になって洞窟の中の様子を見たが、直前まで誰かがいたようじゃ』
『数日前とかですかねえ』
『いや、火を使った痕跡が残っていてまだ熱かったからほんの数十分というところか』
『でもそんな気配はありませんでしたよね。モーラの探知外ってことですか?エルフィどうですか?』
『私もこの結界の中ですから、微細な気配はわかりませんよ~ちょっと外に行ってきますね~』
『お願いします。無理しないでくださいね』
『ラジャー』そうして、エルフィは玄関から外に出て森の中へ消えていったようだ。
Appendix
とりあえずあの子がいたようだ。しかし、気配が途絶えたから逃げるしかない。
大丈夫なのではありませんか?
いや、ここは一度身を隠す必要がある。話の辻褄が合わなくなってしまうから。
そこが問題ですか?
ああ、私達は彼らを騙しているのだから。
とりあえずこの場から逃げてドラゴンの縄張りからいなくなりましょう。
続く
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