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第12話 襲撃と告白と会ってはイケない人達

第12-3話 黒幕現る

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○敵の親玉登場
 - デンデンデン、デッデデーンデッデデーン スコー スコー -
「たまたまですよ。アンジーの報告と実際に戦った者達との報告に大分ずれがあったので、今回は殺すつもりで当たるように話をして、死ぬなら死ぬで、最期くらいは看取ってやろうと思って監視していました。意外にあっけなく返り討ちにしたので、今度はアンジーおぬしがどう報告するのかと様子を見てたんだ。その転生者は、天使さえ籠絡し堕落させるのがうまいですねえ」声は笑っている。
「籠絡はしていませんよ。事実を述べているだけです。もっとも自分に都合の良い事実を並べてはいますけどね」
「まったく、わたしの信頼する部下を堕落させるとは」
「いや、私、堕落させられていませんし」アンジーさん魔王相手にため口ですか。
「魔王様。一つお聞きしたいのですが、あなたはなぜ勇者パーティーを育てようとしているのですか?そして、優秀でないものを排除しようとしているのですか」
「直球ですねえ。先ほどアンジーが話していたとおりですよ。勇者を育てるのは魔族が体勢を強化するまでの時間稼ぎ、強くするのは魔族も弱い者を相手にしたくないから、排除するのに手応えのある敵を作るため。そして、あなたのようなイレギュラーを排除するためだよ」
「私はイレギュラーですか」
「はい。あなたは他の勇者とは違って魔力量が桁外れに多い。なので転生直後から何が起こるかわからないから、とっさに私があなたの記憶を封印しました。あなたの存在は危険すぎるのですよ」
「もうその時期を過ぎたのではありませんか?」
「いいえ、記憶を封印してもなお、あなたの性格が見極められていません。同行しているアンジーとそこのドラゴンも危惧していると思いますよ。そうですよねえ。土のドラゴンさん?」
「ここでバラすか。まあ良い時期じゃしなあ」
「モーラ。今話すのかしら」
「すまんなDT。おぬしがこの世界に来て、わしの縄張りに降り立った時からわしは監視していた。結果的にはそうなる。じゃが怒らず、とりあえずわしの話を最後まで聞いてくれ」
「おぬしがわしの縄張りに来た時に里から連絡が入ってな。おぬしを監視しろと。しかし面倒なので放置していたのさ。しかし偶然とは言え、おぬし自らがわしの所にたどり着くのじゃ。それも何度もな。わしはこれも縁だろうと何も言わずに付き合っていた。おぬしの事はおぬしが話す事だけを信じてな。じゃから里にも一切報告していない」
「旅に出る時もそうじゃ。わしも旅をしたいと思っていたのも間違いないし、おぬしと一緒に旅をすれば言い訳も立つ。そう思っていた。逆にわしはお主を利用していたのかと言われればそうじゃな」
「水の縄張りに到着してあれよあれよという間に家族を作り、水のやつまで味方につけて魔法使いにまで恩を売る。おぬしはそれはすごい男なのじゃよ。里に名付けに行った時も始祖様からは、おぬしの事は何も聞かれない。始祖様がわしに監視を命じたのにな。だから今は監視をしているつもりもない。だが、わしはおぬしのそばにいていつも肝を冷やしていた。おぬしの礼儀に対する異常な執着。そして家族に対する異常なほどの庇護欲。かと思えば切り捨てるような言葉の端々。おぬしは冷静と激情のバランスがとても不安定なのじゃよ」
「一方でわしの感情が変化した。おぬしに対する感情がな。家族愛とでも言えば良いのか。わしもおぬしを守りたいと思うようになったのじゃ。じゃから今は監視もしておらんし、元々報告もしておらん。今後もするつもりもない。あと一つだけ、おぬしの記憶が戻る事をわしは危険じゃと思っておる。危険と言うより不安なのじゃ。記憶が戻る事で、おぬしの心が変化して極端な方に向かうのではないかと。向かった時にわしは果たして止められるのかが不安じゃ。わしが今話せる事はそれだけじゃ。のうルシフェルとやら。わしの意見は参考になったか?」
「あなたが勝手に余計な事まで話したのではありませんか」
「わしの事をバラしたという事は、そういうことなのじゃろう?どうせアンジーの報告にわしの事も触れていたのであろう。そしてその報告はドラゴンの里にも筒抜けだったと思うがどうじゃ」モーラがさらにツッコむ。
「それは考えすぎですよ。私はドラゴンの里には情報は流していないよ」
「そうか。邪推してすまなかったな」
「モーラ。話は終わりましたか?」
「おうおぬし、わしの事が嫌いになったろう?」
「最初から想像していましたよ。報告していないのが予想外でした」
「なるほどな。もっともお互い感情が筒抜けじゃ、今の話も嘘か本当かバレバレじゃしなあ」
「ええ、アンジーさんもパムさんが襲われた時に連絡員が来ていて追い返したのをメアさんが見ていましたし、襲撃前に事前にアドバイスみたいな事を言っていたのを覚えていますのでねえ」
「あらわかっちゃった?私もまだまだねえ」
「皆さん、そうやって会話で嘘を言い合っていますけど・・・」
「ユーリ。今はそれを言わないでね」
「あ、すみませんでした」
「そろいもそろって狸ばかりか」
「失礼ですね狐もいますよ」
「あなた達が隷属を糧にしてなんらかの絆を作っているのはわかりました。さて、話を戻しましょうか。DTさん。あなたはこれからどうするつもりなのでしょうか?」
「アンジーとの約束を果たしたら、みんなと一緒に田舎に帰って、薬草を育てて暮らしていきます。それが私の願いなので」
「それを妨げる者が現れたらどうするのですか?」
「もちろん排除します。できるだけ穏便にですけどね」
「土のドラゴンの言う激情に駆られる時は来ないのでしょうか?」
「それはわかりません。礼を尽くしてくれて、家族に危害が及ばないなら、起きる事はないと思いますけど」
「あなたの気持ちはわかりました」
「アンジーさん。今会話をしてみて現状では脅威では無いと判断しておきましょう」
「それはまあ、そうしてくれればうれしいですけど」
「でもねえ、空間を操る魔術を自分で構築したと報告がありましたから。心配ではありますね」
「空間をあやつるのはまずい事なのですか?」
「はい。この世界には不要な魔法なのです。そんなものを持ち始めたら戦闘が根本的に変わってしまい、敵陣にいきなり部隊を投入することもできでしまいます。そうなるとお互いに24時間監視し合わねばならなくなると思いませんか?」
「私は今のところ実際に行ったところにマーカー埋めないと無理ですけどね」
「奇襲して相手の陣地を奪って、そこに転移の魔法を地下に埋め込み、再度奪取されたときにそれを使うことも可能になりますよね」
「マーカーを潰されれば無理ですけどね」
「逆にマーカーを見つけたら、そこから奇襲をしようと考えて、そこを開けると全く違う空間につながっているとかできてしまいませんか?海の底とか高い空とか」
「そういえば最初に計算して空間に穴を開けたら海の底でしたねえ。あわてて術を解除しましたが、その時はドア一つ分でしたが水圧を押し戻すのに一苦労しましたねえ」
「さりげなく自慢するんじゃない」モーラがツッコミを入れてきました。ナイスです。
「いいえ、失敗ですよ」
「なるほどな。あなたは、バカなのか、本当の善人なのかもしれませんねえ。わたしは現状は脅威では無いと判断しました。アンジーはそばにいて気をつけて欲しいと思っていますよ」
「え?私ですか」
「はい。あなたを含めて仲間に何かあったら、この男は全てを捨てて反撃に出るのでしょう?たった一人でも欠けたら、そう最悪死んだら、たぶん復讐の鬼になるのでしょう?そう報告を受けているし、実際そうするのでしょうねえ」
「私ですか?自分でも想像できますね。たとえ相手にかなわなくても死んで相手の腕一本くらいは、少なくとも顔に治らない傷ぐらいはつけて死にたいとは思っていますね」以前言った事を繰り返しました。
「それが排除したい理由なのですよ。わたしに挑んできたなら当然わたしが勝つとは思いますが、たぶんとてつもない傷を負わされてしまい、そこを他の勇者達につけ込まれそうな気がします」
「なるほど。私の仲間を人間が殺して、魔王がやったと思い込ませ、私の矛先が魔王さんに向くよう仕向けられたらまずいと」
「そういうのもありますね」
「ってルシフェル様、話がころころ飛んでいますが。大丈夫ですか?」
「アンジーさんあなたは優秀です。そういうところを気に入って間者として使っていましたが、連絡係に降格させていただきます」
「え?どういうことですか?それもコロコロ話が変わっていますが」
「まず。今をもってわたしは、この人と協調路線を取ることにします。話をしてみて、この人は本当に人に対して懐疑的であり、人に加担するとは思えないからです。あくまで今の所はということですが、何も行動を起こさなければという前提になりますけどね」
「何もするつもりはありませんよ。家族に何もなければ」私は答えます、
「なので、これまでの監視係から連絡係となって、何か事態の変化があった時に連絡が欲しいのです」
「えええええ」
「あなたの報告は、他の者からの報告よりだいぶさじ加減が甘かったと思いませんか?つまり過小評価して報告していたような気がしますが」
「う、過大に報告する理由も無かったので」
「しかも、まだ時期尚早とかいって、襲撃とかをできるだけさせないようにしていませんでしたか?まったく肩入れしすぎだったと思いませんか」
「ばれてーら」
「潜在戦闘能力が高いチームなのに何も成長していないので、真っ先に殲滅させるグループでしたからねえ。今話してみると、平和主義過ぎてねえ。このままひっそり辺境で暮らしてもらっていた方は良さそうですねえ。もっとも定期的に報告をもらわないと心配ではありますが」
「ええ、報告の仕方によっては驚異としかとれません。しかし、弱腰の魔法使いを筆頭に、幽霊恐くて女の子にあこがれる女剣士とか、隷属で能力制限されてお菓子大好きなドラゴン、ご主人様にぞっこんでご奉仕に全精力をそそぐホムンクルスとか、今は別に行動してるドワーフはさすがによく知りませんが、自分を過小評価しすぎて弱気な胸がでかいだけのハイエルフとかですから」なにげに最後はコンプレックスだったのですね。
「独り抜けておらぬか?のう無能力の天使よ」モーラがツッコむ。
「ええ?私もですか。私はルシフェル様の下僕で能力限定されたただのか弱い少女ですよ」この期に及んでそう言う事を言いますか。
「アンジーさん。自分で自分に制限を掛けているだけで、いつでも天使になれますよねえ。それからあなたは先ほど私への恩とか話されていましたけど、これまでも別世界へ転生したりと命を賭けてもらっています。元々あなたが恩を感じることなど私は何もしていないのですよ。もう十分です。今後は必要ありませんよ。良いですか?」
「は・・い」おいてけぼりにされた子犬のようにしょぼんとしている。
「さてDTさん。あなたとの話はまだありますよ」
「はい」
「色々とお願いしたいことがあります。ひとは、アンジーさんを頼みますね。天使としての制限解除はアンジーさん自身が自分に掛けたものですので本人に任せますが、よろしくお願いします」
「はい頼まれました」
「あとですねえ。他の勇者パーティーと会っても何も話さないで欲しいのです。アンジーさんが話した事は、あなたが殺されるかもしれないと思い話したのだろうと思いますが、協調路線を取る上で、周囲に話されるとまずいのです。特に彼らの魔王討伐の気持ちがぶれるのは困ります。それにできるだけ協力もしないで欲しいのです」
「できる限りそうします。でも、残りの3つのパーティーが協力しあうのはかまわないのですか」
「今のところ、どこのパーティーも接触をしていないし、知っていても噂程度なのです。ロスティアの王女のパーティーはエリートだし、転生者のうちのひとつのパーティーは、辺境をさまよっていて、転生した勇者が意外とわがままで、お金に困るくらい貧しい旅をしているようです。環境が違いすぎてソリがあわなさそうです。当面こちらの体勢ができるまでは分裂していて欲しいと思っていますので」
「俺様パーティーなら王女の下にはつきたくないでしょうしね」
「ルシフェル様。3つありますよねえ?もう一つはどうなのですか?」アンジーが尋ねました。
「これはパーティーではなくなった」
「はあ?」
「最初は、その転生者にわしのつけた監視者を含めて数人集まったのだが、この転生者が猜疑心の強いやつでな。疑わしきは殺すと言い始めて、監視者の不審な行動からすぐばれたのでな。そこからの足取りがつかめない」
「その監視者はどうしました」
「間者である事がバレて、拷問の末、あらいざらい白状させられて、何も話す事が無くなったのに尋問を続けるので、他の仲間が止めたらしいのですが、そこで仲間割れを起こしたようなのです。その結果、間者の生死は不明です」
「なるほど。捕虜の扱いに問題がありますね。人権、いや魔族だから魔人権侵害ですね」
「面白いことを言いますねえ。でも間者は人でした。連絡が取れなくなって、パーティーがいた場所に見に行かせましたが誰もおらず、床には血がびっしりとこびりついてそうですよ」
「間者や他の仲間はどうなったのでしょうか?」
「死体はなかったのですが、そこからは、その男の行方がわからないのです。一番不気味なので、捜索はしているが発見できていません。もっとも転生者ひとりで、私に向かってきてもどうなるものでもないので、捜索を打ち切って放置するかもしれません」
「それも少し恐いですね」
「能力的には魔法も使える剣士らしいので万能なはずです。しかし、その付近で魔獣との戦闘の話も野生動物が死んだ話も聞かないので、別の場所に移っているのかも知れませんが、見つからないのです」
「どのくらいまで能力を伸ばしているかわかりませんね」
「単独で能力を伸ばしたとしても、脅威になりませんよ」
「そうなんですか」
「能力を伸ばすにはただ動物を狩れば良いというものではないのです。むしろ自分の身の丈以上の敵と戦わねば能力は伸びません。強い相手と戦って戦闘のノウハウなどを得なければ成長はないのです。でも独りで戦うと死亡するリスクが常に伴って満足に成長できないのです。やはりパーティーでないと」
「死んでも良いと思ったらできるかもしれませんね」
「生き残るつもりで戦わねば無理だ」
「そうですけど、自暴自棄になっても転生者は転生者です。幸運ももっていると思います」
「ひとりで倒せるほどわしは弱くないぞ」
「そうですね」
「気をつけたほうがいいですよ、そういう方達が一番嫌いなのがあなたのような人ですからねえ」
「え?」
「やる気も無くて、のほほんとハーレムに暮らしているように見えるでしょう?」
「あ、まあ、気を使ってはいますけど、基本脳天気ですね。周りはいい人達ばかりですし」
「まったり空間発生装置・・・」ユーリがつぶやいた。全員失笑だ。声だけのルシフェルも笑っているようだ。
「それよ。この雰囲気がそうさせるのか。お主の人徳か」
「それを人徳と言ってしまうのはどうかと思いますけど」私がそれは違うと断言します。
「ちがうじゃろ。単にへたれなだけじゃろう」モーラが笑う
「それは否定しませんね~でも旦那様は~そんなところが可愛いので~」エルフィまで笑います
「そうではありません。ご主人様はかっこいいのです。そんなところも含めて」メアが真面目な顔で言いましたが最後には失笑しています。
「そうです。あるじ様は、かっこいいのです。すべてにおいて」ユーリはいつも通り真剣に言っています。やめてーはずかしいからやめてー
「はー、愛されておるのう」そんな魔王様ため息つかないでくださいよ。
「ですよねー」アンジーが最後にため息をつく
「ごほん。あなたの考えは再確認しました。私達からは今後は手出しはしないつもりです。しかし、魔族も一枚岩ではありません。私の考えに賛同していない者、魔族至上者や強硬派などいろいろいますからね。勝手な事をしでかす者達がでると思います。私が全て押さえ込める訳ではありませんから」
「そうですよねえ。私は今後、あなたと敵対する事になったら連絡係を通して事前通告をします。そちらでも何か怪しい動きがあったら連絡ください」私はそうお願いしました。
「わかった。そういうところもどうかと思うがな」
「アンジーをお預かりします」
「頼んだ。ではまた」
「はい、ありがとうございます」
 そうしてその辺の雰囲気が少し落ち着いた。

「皆さん聞こえていましたかね」
「ああ、頭にガンガン響いたわ」アンジーが複雑そうな顔です。
「ユーリ、あの突っ込みはグッドでした」私は親指を立てて見せる。
「思わず口からこぼれました。すいません」そう言いながら親指立てないでください。
「アンジーさん良かったですね、自由になれて」
「別にそういうつもりで言ったわけじゃないんだからね。あんたは、ここで心を折っておかないとどっちに向かうかわからないからよ」アンジーはそう言って横を向いた。
「可愛いのう」モーラが楽しそうですねえ。
「どうですか、一度限定解除してみませんか。一度だけ見ましたけど、あのとこは見ていられませんでしたから。すぐ元に戻っても良いですから。ぜひ見てみたいです」私は強い願いを込めて言いました。
「ええ、恥ずかしいです。みんなに見られるのはちょっと」そこで下を向いて恥ずかしそうにしないでください。
「姿も変わるんじゃったか。まあ、懺悔の続きと思ってやってみせよ」
「わかりました。でも一瞬ですよ」ちょっとうれしそうに立ったまま祈り始める。体が光り始める、輝きはじめて姿が見えなくなり光が和らぐと宙に浮いて、背の高いナイスバディな天使に変わった。天使の輪が頭の上にあって、もちろん羽根も豪華な羽根が背中から生えている。
「おお!すごいな」
「すごいです」
「信じられない~」
「はい終わり」ぽんっと言う音が聞こえそうな感じで一瞬で小さくなり、ストンと降りてくる。
「もったいないのう」
「あれはあれで疲れるのよ。しばらく戻ってないと力の調節の感じがつかめなくてね」言い訳っぽいですねえ。
「でしたら、慣れるまであの姿でお願いします」私はつい両手を合わせてお願いしてしまいます。ええドストライクなのですよ。貧乳な所を除けば。
「いやです」アンジーはそう言ってちょっとだけ目を閉じました。すると羽根と天使の輪が現れましたよ。子どものままなのに。
「あー天使の輪は邪魔ね」頭の上に手をかざして天使の輪を消す。羽根の具合を見るように脇から背中を見ている。
「服は破いていないわね。OK出力調整はできているわ。しばらくはこの状態を維持しましょう。リハビリね」
「その原理は?」
「ああ、あなたの魔法と同じよ、空間に切れ目を入れて生やしている感じ。意識はしていないけどね」
「なんだ、この世界にも空間を曲げる法則があるんじゃないですか」私はモーラを見て言いました。
「バカを言うな。そもそも今のこの世界には神も天使も存在していないのじゃ。天使が現れただけでも驚きなのにそんな天使の羽根が空間を曲げて服から生えているなんて知っている訳ないじゃろう」モーラがあきれています。
「あ、そうですねえ」
「そもそもここ数百年天使は人の前に降臨しておらん」
「ユーリ。頭を上げてください。あなたは神を信じているのですか」アンジーの前に膝ざまずいているユーリ。
「祖父代わりだった人が一度天使に会ってみたかったと言っていました。代わりに私が会えるとは。奇跡です」なんか涙ぐんでいますよね。うれし涙ですか? 
「とりあえず私はアンジーです。天使ではありますが、堕天使ですし、至って普通ですよ」
「毒舌じゃしのう」
「そうでした。正論をはく常識人でしたね」とはユーリです
「エロには興味津々ですけどね」メアが冷静に分析をして言った。
「ああ、そうじゃのう」
「確かに。天使ってエロいんですか~?それが常識なんですか~?」なんかエルフィがエッチい目をして言いました。
「もう!実体化が久しぶりだって言っているでしょう。これまで何人のそういう行為を黙って見せられたと思っているんですか」そう言ってアンジーが皆さんに向かって声をあげる。
「怒っても可愛いだけじゃなあ」モーラが言いました。確かに羽が揺れていると可愛さが倍になりますねえ。
「ですね」私は頷きながらそう言いました。眼福眼福。
「やっぱり羽もたたむわ」あきれたようにアンジーが言って羽を消す。
「さて、方針は決まったな」モーラが皆さんを見て言いました。
「え?方針ですか」突然何を言い出しますかモーラ。
「ああ、他の勇者パーティーを見に行こうではないか」なんか嬉しそうに言いますね。
「えええ、関わり合いになりたくないのですが」会ってしまったらまずいのではありませんか?
「どんなものか見に行こうではないか。少なくとも当初の旅の目的は、アンジーの守護していた転生者を探し出すことだったじゃろう。とりあえずとはいえ目的は達成せねばなるまい?」
「それでパーティー見物ですか。確かにルシフェル様からは会ってはいけないとは言われていませんけど。大丈夫ですかねえ」私は不安の方が大きいです。
「本当に発見したほうがよいのは最後のパーティー、じゃない転生者を見つけることじゃろうがな」
「そうですね。魔王の手先として動くのはどうかとは思いますが気になりますね。どうもこの世界のこの時代のジョーカーでしょうから」
「ジョーカー?」ユーリが首をかしげる。
「ああ、紙札を使うゲームの特殊な札のことです。手札として持っていれば有利、相手が持っていたら危険。どちらにもないとさらに危険というやっかいな札のことです。今度作って遊びましょう」
「わーい」ユーリがうれしそうだ。みんなじゃんけんやあみだくじであれだけ盛り上がるのです。カードゲームだったらなおさらですね。
 そして、魔族さん達を残したまま私達はその場所を離れて道を走り出しました。

Appendix
実は奴隷商人が異種族の女性達を隷属して旅をしているらしいですよ。
なんだとそのような不埒な事をしている輩がいるのか。それはうらやましい。いや許せんな。
その男の居場所を教えてあげるからあとは好きにしなさい。
情報をありがとう。しかし、どこからそんな情報を手に入れたのだ。
色々噂が立っているからよ。
そうか情報提供を感謝する。
どういたしまして。


Appendix
よいのですか?
あの男を殺さない事か?
はい、冷静に考えてあの男は殺しておくべきと考えますが。
そうかな。あの札は強力な手札だよ。
お得意のカードゲームの話ですか。
そうさ、強力なカードには一発逆転のチャンスを生む。
こちらが危険な状態になると言いますか。
勇者が急に成長して3パーティー共同で私達を攻撃してきたとしたらどうだい?
なるほど先ほどのお話の逆をするのですね。
そうさ。人間にあいつの家族を殺させる。
簡単にいくでしょうか。
簡単だよ。人間なんて自分の欲のために大局なんて気にしないで勝手に殺してくれるから。
なるほど。魔族に殺させるよりも簡単かも知れませんね

続く

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