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第9話 DT同居人が増える

第9-2話 ゴッドファーザーと同居人

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○ドラゴンルール
 人間の子は、置いて行かれるのではないかとカンウさんから離れようとしないので、簡単な食事を持たせて一度ドラゴンの巣じゃなくて例の祭壇に戻ってもらった。ドラゴンの子も同様について帰った。家に残りたそうでしたが。
「さて新築物件作りますか。」
「まておぬし。増築ですまさんか。」
「ああそうですね、それが一番簡単です。」
「うむ、子どもたちには申し訳ないが、って名前付け忘れておるなあやつ。」
「ああ、カンウさんに名付けてもらったら、即真名になってしまいますね。」
「さすがにドラゴンの子の方は名前がついているじゃろうが」
「まだつけてもらってないそうですよ」ユーリがさらりと言いました。しかし、ちょっとぎこちない言い方です。
「なんじゃと。あの体格だと生まれて結構経っているではないか。」モーラがびっくりしています。
「なんでも・名付け親は・若い・真祖でなければならないとかで、現在はまだ・保留だそうです。」ユーリ良く覚えていましたね。
「若い真祖って~・・・」エルフィの言葉に全員がモーラを見る。
「そうですよモーラ、あなたよ」アンジーがいつものジト目でモーラを見ます。
「まて、そんなしきたり聞いていないぞ。」モーラが慌てています。
「その子は、カンウさんから・ルールブロークンは、そういうのにこ・こだわらないから・つけてくれないかも、と言われていると言っていました。」ユーリが一生懸命思い出しながら話している。
「くっ、そんな重大なことをなぜわしに言わん。」モーラがちょっと悔しそうです。
「だって言ったって・従わない可能性も・あるから・とため息をついていたと言っていました。」後半棒読みですが、ユーリの記憶力では演技する余裕はないのですね。
「ユーリ。後半棒読みですよ」メアが悲しそうに言う。
「無理です。憶えるだけで精一杯で」こんなことで涙目になってはいけません。そんなことでは、紅天女は目指せませんよ。
「さて~土のドラゴンとしては~どうするんですか~?」おおエルフィ言うようになりましたね。しかし、モーラのひとにらみでシュンとなるようではまだまだですが。
「さすがカンウさんね。自分が言えば、モーラがすねて絶対断ると思ったのでしょうねえ」アンジーがいじわるそうな顔でモーラを見ながら言いました。
「あんな可愛い子の名付けをするのが嫌なわけじゃあないわよね」さらに悪役顔になってアンジーが言いました。可愛い顔が台無しです。
「アンジーお主もそっち側についたか」モーラが恨めしそうにアンジーを見ながら言った。
「あきらめなさい。しきたりが嫌いなのはわかるけど、あの子のために名付け親になってあげなさい」今度は真面目な顔になってアンジーが言った。
「なあおぬしは」と言ったモーラですが、私にすがるような目を向けてきてもねえ。
「嫌なら断れば良いですけど。もったいないですね。」私は感慨深げに言ってみます。
「なにがもったいないのじゃ。確かにドラゴンの子は稀少じゃ」
「いや、儀式を見てみたいので。」私の言葉に全員がずっこける。そうそうそのリアクションですよ。
「おぬしに聞いたのが間違いじゃった。」モーラは顔に手を当て失敗したーという声で言いました。
「冗談ですよ。お話しでは、その子はこれまでかなりの間名前がない生活をしてきたわけですよね。それは悲しいことです。私はあなたの真名は知りません。でもモーラという名前を贈りました。そしてその事で私とモーラは深くつながったような気がしましたよ。ですから」
「ああ、名前をつけることはわかった。じゃがどんな名前が良いのかのう。それがプレッシャーじゃ」
「私はアンジーで真名をモーラはこいつがつけてるわよね。メアもユーリも短縮形なだけ、エルフィは、逆にこいつに暗示を掛けてつけさせたじゃない。意外に安易なのよ。だからちゃんと考えてあげてね。」アンジーが優しく言った。
「うむ、ちょっとカンウのところに言って来るわ」
「はい行ってらっしゃい。」
 玄関の扉を開けてモーラがとぼとぼと歩いて出て行く。ほどなく羽ばたきが聞こえて飛んでいった。ああ、ここはカンウさんの縄張りだからいいのですね。
「はーっ。ユーリの棒読みで一時はどうなるかと思いました。」メアがため息をつく。
「え?」私はよくわかりません。
「まったく大根役者ねえ。」アンジーが同じようにため息をつく。
「大根ですか?」ユーリがとぼけている。やはり天然です。いや、確かに意味を知らないとわかりません。こちらでは、大根はなくてカブですからねえ。
「ああ、何にでもあうけど味がないから無個性な役者を言うんだけどね。実際に使われるときは、演技の下手な役者の事を言うのよ。」
「でも~すごいしょげっぷりでしたよ~ちょっとやり過ぎたんじゃないですか~?」とエルフィは言った。
「ということは、あれは嘘ですか?皆さんでだましたんですか?」
「カンウさんと話した時にその話が出て、正式な名前が決まるまでは、仮の名で呼んでいるのも本当です。話の流れで、カンウさんがモーラ直接話したら、「それでいいじゃろう」とか言い出すに決まっているとカンウさんが私に愚痴を言ったので一芝居うたせていただきました。」メアさん策士です。
「たまにだまされる側に回るのも良い薬よ。」アンジーが言った。
「それでも、儀式はしなければなりませんね。」
「はい、ドラゴンの里に帰らなければならないみたいですよ。」メアが言った。
「それは嫌がりますねえ。」
「なので、仮名があるのは秘密です。」
「どんな名前がつけられるのでしょうか」ユーリが楽しそうに言った。
「一応ルールがあるとモーラからは聞いていますよ」私は、思い出してそう言いました。
「へえ、どんなルールなのですか」メアさんの方が興味津々です。
「まあ、憶えているのは、生まれた月日と天候、水・風などの系統によって含める単語があるそうです。光はソル、土はアツ、水はツキとかですね。もっとも闇とかはルールがないそうですけど。」
「モーラの真名は当てたのですか。」
「当てっこする前に終わりましたよ。ヒントはそれだけでしたから。」
「なるほど~おもしろそうですね~」
「あくまで真名の一部で略称に当たる部分ですから。真名が何文字になるのかはわかりませんからね。」
「その、あるじ様の頭の中に現れた、じゅげむじゅげむってなんですか?」
「霊験あらたかな言葉ですね。」
「まったく、くだらない言葉しか覚えていないのね。」アンジーがため息をつく。
 しばらくしてから「帰ってきたぞ」そう言って扉を開けてモーラが入ってくる。表情は固い。
 どっかり椅子に座ってため息をつく。
「名付けをしたいが名前を考えねばならん。何か良い案がないか。特におぬし。」そう言って意味ありげな目で私を見ます。ああ、モーラも前の話を憶えていたのですね。
「さて、生年月日とか、生まれた由来とか、水の何の属性なのかとかいろいろ教えてくれないと考えられませんよ。」
「そうじゃな。生まれは米の収穫期で月が上弦を迎える頃、時刻は月が中空にある頃じゃな。属性は水それも純水じゃ」わざとでしょうけど、丁寧に教えてくれます。でもあの子は純水ってイメージではありませんでしたねえ。
「空は曇っていましたか?」
「ほうよく憶えていたのう。晴天じゃ。雲ひとつ無く月明かりが白くまぶしかったそうじゃ。大層きれいな月だったそうじゃ。」
「そうですか。では、ヒメツキなどどうでしょう。」
「ははっ、おぬしは本当にすごいのう。よく当てたわ。」
「え?当てたってどういうことですか?」
「やれやれ私の負けね。でも名付けはしてもらうわよ。」そう言ってカンウさんが現れる。おや、一緒にいたんですか。
「ああ、それはさせてもらう。じゃが里に戻るのは勘弁せい。」
「あなた本当に有能ね。もしかしてモーラとリンクしていた?」疑いのまなざしで私を見るカンウさん。
「だから私にそんな能力はありません。できるわけがないですよ。」
「確かにね、私も見ていたからわかるわ。ごめんなさい。」
「それって、もしかしてカンウさんの真名ですか」何を察したのかアンジーがあわあわしながら尋ねる。
「はーっ。そうよ。里に帰るのを嫌がって決闘することにしたの。でも、決闘方法はモーラがね。」
「ああわしが提案した。カンウの真名の一部でもおぬしが当てられたら里にはいかんとな。」
「しかも生まれた月日、時刻、そして質問は1つだけ。なのにどうして当てられるのよ。まあ、真名の一部ですからまだ良いのですが。」
「はえ~旦那様よくわかりましたね~」驚いて口を開けているのはバカに見えますよエルフィ
「どうもモーラの発言があやしかったんですよ。」
「ほう、わしの発言とな」
「新しい名前を考えるというよりは、知っている名前をあてろと言っているように聞こえました。以前にモーラの真名について聞いた時に簡単にですが真名の名付け方を教えてもらっていましたので。」
「なるほど、基礎知識があったのね。」
「だからといってその名前が出てきますか?」アンジーが言った。
「月がまぶしくてきれいという話をやけに強調されていましたから」
「ヒメツキとはどういう意味ですか?」ユーリが興味津々だ。
「ええ、私の元いた世界では、赤い月を不浄の月と呼ぶように月は女性のイメージなんですね。ですから白く輝く月は、お姫様の月かなあと。」
「ふ、おぬしの世界ではお姫様の月か、なるほどな。ってそこで顔を赤らめるなカンウ。」
「でもうれしいじゃないですか。名前を当てられたんですよ。しかもお姫様の月ですか。私の名前は他の世界では言い名前だったんですねえ。」
「いや、お主の真名の一部じゃろう。」
「そうですけど。うふふ」いや、キャラクターに合いませんよその笑い。
「まあ、おぬしを賭けの道具に使ったことは謝る。しかし、本当にあてるとは正直思わなかったわ。」
「本当は当てて欲しくなかったのでしょう?行きたいなら素直に行けば良いじゃないですか。」私は、真面目な顔でモーラに言いました。
「どうしてそうなる。わしは勝負に勝ったのじゃぞ。」
「でも、勝負に勝ったって、さらに里に行っても別にいいんですよね?」
「うっ」
「モーラ自身結構残念そうに見えますよ。せっかくのこの機会です。里の様子をみてきてください。」
「おぬしのいうタイミングという奴か」
「そうです。別に石投げられて里を追われたわけではないのでしょう?ならば堂々と帰っても問題ないじゃないですか」
「わかった行って来る。じゃが、その子の名前じゃが。おぬしに考えて欲しい。」
「それはできません。名付け親の意味は、きっと卵から孵るドラゴンの子にとって親を作るということなんだと思いますよ。今まで放棄していたんですからここからはちゃんとしないと。」
「放棄していたわけではない知らなかったのじゃ。」
「知ってしまったのですからちゃんとしましょう。」
「そうじゃな。わかった。カンウ、儀式をするとすればいつになる。」
「そうね、私がこれから連絡をとれば、次の満月の時になるわね。」
「とすれば、7日後くらいか。」
「そのくらいね。」
「儀式の準備は、いつからじゃ」
「前日には、里に行って準備しないとならないわね」
「ならばそれまでに考えよう。」
「お願いするわ。では、私は里に行ってきますから。」
 家に居たカンウさんは、ふっと消えた。もしかして今の残像だったのですか?それならば前回より格段に進歩しています。さすがですねえ。
「さて。おぬしら謀ったな。」
「たまにね。意趣返しをしないと思って」ペロッと舌を出すアンジー。やっぱり可愛いですね。
「すまんな。みんなありがとう。」モーラがそう言って頭を下げる。
「え?どうしたの?そこは怒るところでしょ」アンジーがあたふたしている。その答えは想定外でしたか。
「まあ騙されと思った時には、怒りたくなったがなあ。会話をしている時のおぬしらの言葉には全く悪意を感じなかったのを思い出したのでなあ。逆に心配されていたんだと・・・気がついたというか。なあ、」
「割と里の話をするときには、こだわりがあったように感じましたので」メアがそっけなく言う。
「こういう感情は~脳内会話していると~わかりますからね~」
「はい。寂しさを感じているのがわかりました。」ユーリ、ナイスです。
「ふふ、互いの気持ちがわかるのも善し悪しじゃなあ。自分では割り切ったつもりでもおぬしらにはわかってしまうのじゃな」モーラがなぜかすっきりした表情で言いました。
「だからこそ私たちの絆は強いのだと思います。」
「そうじゃな。さて、少し自分で考えてみることにするわ」
「はい。こちらでも考えて見ます。まあ、意図しない名前がたくさん出そうですが。」
「凝るつもりはないが良い名前を考えよう」

○それからの一週間
 さすがにカンウさんから離れないあの子をこの家になじませるために毎日私たちの所に人間の子を連れてきて、なじまて、しばらくいなくなっても大丈夫なようになりました。賢い子で名前をカンウさんにつけていただいてキャロルと呼ばれています。真名はまあ推測できますね。
 キャロルは聡明です。少し遠慮がちなところはあるけれど新しい名にすぐなじんで、そして、どんどん知識を吸収していきました。最初の頃は、家にいる時にカンウさんを探すそぶりを見せましたが、数日で安心したようです。
「最初からドラゴンになって連れて歩いているのか?」
「いいえこの人の姿で連れて歩いていますよ。でも、巣ではさすがにそれはできませんから。」
「まあ、ドラゴン姿のお主にも慣れているのであろうなあ。」
「内緒にしてとは言ってあるわ」
「子どもじゃからのう」
「そこは少し心配なのよねえ。」
 カンウさんが帰った後には、家での仕事が待っています。
「では~家の増築をしますか~」エルフィが自分の出番とばかりに元気が良い。
「3部屋作りますか。」
「いいえ。人間の子は私の部屋で寝起きしてもらい私がお世話をします。」
「メアさんがですか。」
「はい、メイドとしてのなんたるかを教えます。」
「とりあえず、最初は何もできませんから怒らないでくださいね」
「それはもちろんです。」
「少し慣れたら領主様に相談しますから、できれば礼儀作法を中心にして、きれいな言葉使いを優先して教えてください。家事などはお手伝い程度でお願いします。なのでお手柔らかに。」
「残念です。完璧なメイドに鍛え上げようと思っていました。」メアがしょんぼりしています。ずいぶん感情表現が豊かになりましたね。
「メアさんのレベルまで鍛え上げるためにはきっと何十年もかかります。その子がおばあちゃんになってしまいますよ。」
「わかりました自重します。でも部屋は一緒でなくてもいいので、そばにしてください。」
「わかりました。よろしくお願いしますよ」

 そうして、3部屋の増築が必要となったので、ついでにゲストルームを1部屋つくることとして、計4部屋を増やすことにしました。前回の経験のおかげで、たった一日で完成し、受入れの準備はできました。基本的に前回と同じに釘をほとんど使わない方法で作りました。もっともカンナや釘、などは自作していますので、ベッドなどの製作には使ったりもしています。
 部屋の並びは、メアの部屋はそのままにその向かいにキャロルをその隣にカンウさんそしてミカさん間に客間を置いてエルフィが角部屋です。反対側はメアの隣に私ユーリアンジーそしてモーラです。
「わしが最奥とはなあ。」
「イビキよ。」
「あれから酒はのんでおらんぞ」
「これから飲む機会も多いでしょ」
「わかった。」
「簡単にできすぎ~もっと作りたい~」エルフィがじたばたしています。
「今度、彫刻刀などを作ってあげますから、細かい彫刻とかやってみます?」
「え、いいんですか?」
「かまいませんよ。趣味というのは心を豊かにしますから。」
「やります~旦那様やさしい~」

○久しぶりの日常
 時計があるわけではないが、夜更かししなければ、朝日とともに目が覚めます。まあ、私の場合、誰かの寝返りで起きることもあります。今日は、アンジーとエルフィがそばにいます。魔力補充もしないので、ちゃんと寝間着を着ています。眠り方も横向きに3人がくの字になって、漢字の巡るのようになっています。なので、エルフィの問題点は、背中とはいえ、強烈なボリュームの胸をおしつけてくるので、どうにも大変です。あの居酒屋でのことがあってから、妙にくっつきたがるようになりました。普段、生活している時も特に背中に胸をぶつけてきます。さすがに背負うのは、体格的に難しいのですが、よく背中からぶつかってきます。これは、距離感をつかみかねている子どもの一種の試し行為に近いのかもしれません。
ベッドで背中にくっついてぐいぐい押しつけてくるので、私の前にアンジーが寝ているので押し出されてしまいそうになり、押し戻すと。さらに押してきたりします。まあ、エルフィ自身は、それを楽しんでいるのでしょうけど。

「おはようアンジー」
「DTおはよう」アンジーと私が起きて挨拶をしてもまだ、エルフィは寝ています。やはり寝るのが胸の成長と長寿の秘訣なのでしょうか。
「ほらエルフィ起きて。」アンジーが揺すってもエルフィは毛布を抱きしめてベッドから動こうとしません。にやけた顔をして、「旦那様~もっと~」とか言っています。はて、夢の中の私は何をもっと~しているのでしょうか。
「起こしますね。」アンジーが少し怒っています。夢の中で独り占めしているのが嫌なのでしょうか。まぶたをむりやり見開いて、光を注入しています。おお!それってビームじゃないですか、目からビーム。
「そんなわけないでしょ。単に朝日が反射しているだけ。」とてもそうは見えませんねえ。
「まぶしくないんですか?」アンジーがエルフィにビームしている横から聞きます。
「元が光の私に聞きますか」一向に起きないエルフィに怒りのビームです
「失礼しました。」なんで私は謝っているのでしょうか。
「さて起きないようですので、光量をあげますかね」おお、増幅している。そのやりかた是非教えてください。というか解析開始。
「あんたにはできないわよ。元が光じゃ無いんですから。」一理あります。アンジーは、まったく答えにブレがありません。
「うぎゃあああああ、痛い~、網膜が焼ける~~」いや、視神経に痛覚はありませんよ。痛いわけありません。
「いつもひ~ど~い~」エルフィが涙目です。
「早く治療しないと目が見えなくなりますよ」アンジーが言いました。いや、本当に焼いているんですか。やばいですね。
「とほほ~もっと優しく起こしてよ~」エルフィは必死に目に回復魔法をかけています。あれ?回復魔法が上手にかけられないのではなかったですかねえ。そういえば自分の回復魔法は大丈夫でしたか。でもね、起こしてもらう前提なのですか?子どもじゃ無いんだから自分で起きてください。
「今度は”ちゃんと”起こしてあげますね。」アンジーがギロリと睨む。
「それも~なんか恐い~」泣いたフリしながら上目遣いはやめなさい。まあ、可愛いですけど。
「ええい、ちゃんと起きなさい。」ついに毛布を剥ぎ取るアンジー。アンジーさんいつもどおり委員長ポストですねえ。
「どうしてエルフィの夢を覗かなかったんですか?」
「それは・・・プライバシーだからよ」真っ赤になってうつむくアンジー。
「この前覗かれたんですけど~、なんか~今みたいなリアクションして~黙っちゃいました~」
「ああ、以前にそういう事があったんですねえ。何を夢でしていたのですかねえ。」
「簡単ですよ~ベッドでプロレ・・・」アンジーが手元にあった枕でエルフィの口を塞ぐ。
「まあ想像はついていましたが。」どうせそんなことだろうと思いましたよ。
「そろそろ起きてください。ご飯の用意ができましたよ。」メアさんがナイスなタイミングで声を掛けに来ました。いつも間が良いのですがそこの柱の陰でいつも見ていますね?「メイドさんは見た」ですね?
「空気を読んで行動するのもメイドです。」そうですね。見えていると言うよりは、私の頭を覗いているようですが。
 食卓テーブルにはすでに朝食が用意されていてモーラとユーリが待っていた。
「おぬしら遅いぞ。」お腹がすいているのか、ご立腹のモーラです。
「すいませんでした。エルフィがなかなか起きなくて。」
「どうせまたエロい夢でも見てニタニタしておったのじゃろう。」まるで見てきたようなことを言いますね。いや聞いていましたか。
 そうそう、私が一番中央の席です。いつもながら何か恐縮しています。
「ご主人様揃いました。」
「では、いただきます。」私は頭を下げる。
「いただきま~す」皆さんが声をそろえて復唱します。
「これから、3人ほど増えるのじゃなあ」食事をしながらモーラがしみじみと言いました。視線の先にはテーブルの空いた席があります。ここに3人増えてにぎやかになりますね。


○3名様ご案内~
 そうして、カンウさんミカさんキャロルが到着しました
「こんにちは」
「こんにちはカンウさん。これからは、お帰りなさいになりますよ。」
「では、ただいま。」
「はいお帰りなさい」
「いいわね~。あとカンウはやめてもいいかしら。」
「ええと大丈夫なんですか?」
「カンウは水神としての名前なのよ。ヒメツキと呼んで欲しいわ。」なんか嬉しそうです。
「ではその。ヒメツキさん」やっぱり初めて名前で呼ぶのは恥ずかしいですねえ。
「はい、あ・な・た」ヒメツキさんの言葉に一瞬皆さんの殺意が漏れ出します。
「うわ、きもちわるいわ、やめんか。カンウ・・・じゃなかったヒメツキ。」
「ええ?いいじゃない。いつもね神様とかしているとね、結婚の儀式をうちの祭壇でしていく夫婦とかがいるのよ。」
「それはめずらしいな。あんな遠いところにわざわざ」
「そうなのよ。そこまで行くまでにお互いを知り、互いに助け合ってあの祭壇まで行き着ければ永遠に幸せになれるんだそうよ。」
「なるほどな。あそこまでの道のりがお互いを知ることになるのか。でも、魔獣や獣もでるのであろう?」
「一応私の縄張りなので、道をそれなければ大丈夫にしてあるのよ。」
「そういえばあそこの管理をしている者もいるのであろう?」
「ええ、月に一度だけ数日間掃除をして帰って行くわ」
「その時だけ行くのか?」
「気配がしたら行っているわよ。でも、あの壺が盗まれたときは、盗賊達の気配に気付かなかったわ。そういえば。不思議ね」
「まあ、そんな話は良いわ。あなた呼びはやめい。」
「ええ、どう呼べばいいのかしら?名前?」
「いや、それはやめよ。周囲の目が殺意のある目にかわっているであろう。名前を呼ぶのは、これまでのここの家族を崩壊させることになりかねん。」
「そうなの。皆さんどうしているの?」
「こいつとかこれとかあんたとかですね」アンジー相変わらず辛辣です。
「おぬしじゃな、わしは誰に対してもそうじゃ」そうです下僕ですから
「ご主人様です」メイドさん的にそうですよね
「あるじ様です」ユーリのはまあ、主君と剣士っぽいですね。
「旦那様~」ああ、そういえばやっかいなのがいましたねえ。
「旦那様はいいの?どうなの。」ヒメツキさんがちょっと怒っています。
「一度定着してしまうとねえ。」
「あんまりじゃないの?あなたはそう思わないの?」
「まあ、皆さん親しみを込めていますからねえ」
「わかるの?」
「ああ、さすがにヒメツキは知しらんじゃろうなあ。わしらは、こやつに隷属した形になっていてな、魔力で脳内で話ができるのじゃ。」
「え?そうなの?」ヒメツキさんがびっくりしています。
「そうか、ちょっとわしと額をあわしてみるがいい」モーラがヒメツキさんのそばに行って額をつけています。おや意外に絵柄が良いですねえ。尊いです。思わず拝みそうになりました。
「??」
『どうじゃ聞こえるか?』
「何か違う言語で話しているみたいよ。」
「なんじゃと」
「私とではどうですか」メアが額を当てる。
『どうですか』
「だめよ。さっきと同じ。」
「ふむ、おぬしはどうじゃ」
「おもしろそうですねえ。では」私はヒメツキさんのおでこの髪を少しよけて額を付けます。ちょっとそこで頬染めないでくださいかわいいじゃないですか。横ではなぜかキャロルが怒っています。いや獲らないから。
『どうですか?』
『ああ、これはなんとかわかります。あなたの国の言葉なんですね』
「どうじゃ?」
「うーん。どうやらバイパスされた人の言語で翻訳されていますね。」
「どういうことじゃ、」
「隷属している人達は、私の言語を使って連絡を取っているみたいですね。」
「は?」
「まあ、ニホン語という言語なんですが、それを皆さん共有しているのですよ。」
「つまり?」
「ええ、私たちの脳内会話は、他の人にはほとんど理解できないのですね。」
「じゃが、あのエースのジョーは理解していたぞ。」
「たぶん転生者でしかもニホン人だったんですねきっと。」
「それでは他の人には雑音にしか聞こえませんね。」
「そんな話より食事にしましょう。ミカさんとキャロルがおなかを空かせているようですので。」
 そして、到着してすぐ食事会になりました。


Appendix

「ねえDTさん。この子の名前をつけてもらっていいかしら。人の名前なんて初めてだし。」カンウさんが言いました。
「カンウさんがつけるべきでしょう。それならこちらで候補は出してあげますから。」
「見てのとおり容姿がねえ。可愛いし、目が茶色なのに肌は透き通るような白、金髪でくせっ毛なのよ。ショートにしているからわかりづらいけどね。」
「では、候補を何個か言いますね。ア・は、アンジーとかぶりますね、・・イリヤ・・・ウェンディ・・・エ・・はエルフィとかぶるし、カはカンウさんと紛らわしいですねえ。「カ」の次の「キ」で探しますか。」
「それってあなたの国の言語体系よね。」
「ええ、私の国の言語の順番ですね」
「ああ、そうなの。なにか良い候補がありますか?」
「え~とキウィ、キュウリ、キャロット、キタロウ、キャロルとかですかねえ。
「あんたキャロル以外まともなの思いついていないじゃない。」
「どうもだめみたいです。」
「そのキャロルというのが良いわね。それってそのまま真名になるのかしら。」カンウさんは心配そうだ。
「キャロルでそのまま名前になるのですが、略称でもあるんです。キxxxというのの略称がキャロルなんですよ。」
「ああ、それね、それにするわ。ねえ、どうかしらキャロルちゃん」言われた子は嬉しそうに頷いています。
「私たちはキャロルと呼びましょう。」メアがなぜか嬉しそうです。
「あんたねえ、まともな名前が一つしか無いなんて、結局あんたがつけたのとかわらないじゃない。なにがカンウさんがつけるべきでしょうなのよ」
「ああしまった!!」
「こやつはそう言うところがあるからのう。もっともあの子は嬉しそうじゃからそれで良いじゃろう。」
「本当にあんた間が抜けているわねえ」
「とほほ」

Appendix
私は、この子に自分のメイドとしての技術を教えて成長してもらうこを期待してる。
ああそうだ、この子の未来とその成長に期待しているのだ。
自分の中の何かがカチリと音を立てた。


 続く

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