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第8話 宝石の罠
第8-3話 DTのぼせる
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○ モーラは・・・
「どうじゃった?デートは楽しかったか」モーラの表情はさえません。
「デート中の会話は秘密です。もっともユーリの声は皆さん聞いているのでしょうけど。」
ユーリの部屋でガタリと音がします。ああ、この近さだと会話を聞こうとすると聞けますねえ。
「まあなあ。確かにプライバシーというやつの侵害じゃからなあ。もっともわしらにそんなものあってない様なものなんだがなあ。」モーラはそう言って少し笑っている。
「頭の中の感情は、よほど冷静に対応しないと皆さんに伝わりますからねえ。」
「じゃからあえて聞くが、みんなとは何を話したんじゃ?」
「ユーリとは、私達と一緒になるまでの話しですし、メアさんも昔の話ですねえ。エルフィとは、まあ酔っぱらいの話ですね。」
これもガタリと音がしました。おや、エルフィはまだ寝ていなかったのですねえ。
「アンジーとは何を話したのじゃ」
おや、気になりますか。
「そうですねえ、みんなにはどんなアクセサリーが似合うかとか話しましたねえ。特にモーラには何が似合うのか」
またガタリと音がしました。今夜はネズミがいるのでしょうか。冷蔵庫は大丈夫でしょうか?
「なるほどなあ。さきほどデートで買ってきたアクセサリーの話しをしたのか。」
「ええそうです。あまりたいしたことは話してませんよ。なんせデートですからね」
「なるほどな。今日は風呂はどうするのじゃ」
メアがお茶を入れた後こう言いました。「皆さん一緒に入るのは恥ずかしいでしょうから、時間をずらして別々に入られたらよろしいのではないのでしょうか。」座ってお茶を飲み始める。
「別々に入るのが私の世界の常識なんですが、それが特別になるとは意外ですねえ。」私は感慨深げに言います。
「顔を合わせづらいじゃろうから。そうするか。」
「今までひとりずつ入ったのは、前の家で3週間くらい暮らした時ですかねえ。でもあの時も2人ずつとか入っていましたよねえ。」私の言葉に反応したのか、ユーリが部屋を出て脱衣所兼乾燥室にダッシュしていきました。どうやら一番はユーリのようです。
「ふむ、入ってしまうと誰かが入ってきたら逃げられんのではないか?」モーラはわざとユーリに聞こえるように話している。脱衣所で一瞬だけ動きが止まって静かになったようです。浴室の扉の音がしました。
「では、お風呂の扉に入浴中の札を下げる様にしますね。共同生活には欠かせないアイテムですから。」
メアさんがそう言って台所に向かい、少しして浴室まで行って戻って来ました。どうやら本当に作って扉に下げてきたようです。
「看板を作って扉にさげてきました。」メアさんは、ついでにお茶のおかわりを持って戻って来ました。
「いや、むしろ入浴中なら一緒に入ろうとするものも出てきそうじゃのう。」
「そうですね。うちの場合は意味ないかもしれません。」
私の言葉にメアさんががっかりしています。いや、もちろんあった方が良いのですよ。
「みんなにひとりで入りたいと宣言するしかないのでしょうか。」メアさんが困って言った。
「それもなあ。心配されるだけのような気もするが。」
「ですよねえ。まあ札を掛けた時はひとりで入りたいという意思表示で良いのではないですか。」
私達も解散してそれぞれの部屋に戻り、お風呂の順番を待つことになりました。ユーリの後にエルフィ、アンジー、モーラが入り、メアさんが入ったようです。ああ、メアさんにはあらかじめ私が最後に入って風呂の水を入れ替えるから最後と話しておきました。
「ふーっ」
私は久しぶりにタオルを頭の上に乗せて、のびのびと浴槽に入っています。さすがにいつも6人で入っていると狭く感じる浴室もひとりではいると少し寂しいですね。それでも浴槽内の伸び伸び感は、やっぱり良いですねえ。
そして、これまでのことを思い返してみます。この世界に来てからも、この街に来てからも本当にあっという間でした。この街にはまだ2ヶ月もいたわけでもないのに愛着があります。やはり家に住むということは、そういう気持ちになるのでしょうか。
そして、私の家族の皆さん。思えばユーリもメアさんもエルフィも一緒になってからそんなに経っていないのに私の中ではすっかり家族です。一緒に暮らし始めてから、あまりにも多くの事件にかかわりすぎたのかもしれません。
本当なら皆さんとここでの生活の中で少しずつ絆を作っていきたかったのですが、あっという間に絆ができてしまった様な気がします。もっともそれは、私だけが思っているのかもしれませんが。
ああ、今はそんなことを考えている場合ではないのですけれど、私は、皆さんとの絆が大事なのでしょう。もちろんこの街との絆も大事ではありますけれど、守るべきものを勘違いしてはいけませんね。あ、のぼせてきました。上がってさっさと寝ることにしましょう。水交換のマクロだけは発動しておかないと明日の朝入りたい人もいるでしょうから。
そうして、私は自分の部屋に戻り、寝間着に着替えてベッドに潜り込みました。
○モーラとお出かけ
「じゃあ行ってくる」
翌朝、朝食後にモーラと共に家を出ました。しばらくは会話もなく歩いていましたが、モーラが突然話し始めました。
「正直すまないと思っている」本当にすまなさそうにモーラが言いました。
「最近モーラは謝り続けていますね。気にすることではないのに。」
「いや、わしのせいじゃろう。」
「モーラは私たちより長く生きているのにどうしてこう幼いのでしょうか。」私はちょっと挑発してみます。
「聞き捨てならんことを言う。どういうことじゃ」ちょっとムキになってモーラが言いました。
「だって、こんなこと我々にはどうしようもないですよ。」
「事の発端はわしじゃろう」
「私とアンジーが旅に出ることにしたからですよ?巻き込まれたのはモーラの方じゃないですか。」
「ああそう言いたいのか。それはありがとうな。」モーラさんそう言いながら、なんか照れてますね。
「ありがとうも何も、私たちが一緒に行くことを決めた時点でモーラのせいではないのですよ。責任を感じているかもしれませんが、そんなことはこれっぽっちもないのです。むしろ興味本位で壺の話を受けたのは私ですしね。」
「そう思っているのか。」拍子抜けしたのかモーラの声が間抜けに聞こえます。
「ええ、少なくともこんな事まで想定しませんよ。もしあの国王がしていることなら執念深いというか、しつこいというか。もしかしたら誰かが裏で情報操作しているのかもしれないのではとまで勘ぐってしまうほどにね。」
「そう考えるよなあ。まあ、天使様という言葉だけが一人歩きしたということもあるのじゃろうが。」
「実際のところ、根本原因のカンウさんもこの話を聞きつけて飛んできそうですけど、なぜか来ませんし。」
「そういえばそうじゃな。あっちはあっちで何かあるのかのう。」
「それは後で聞いてもらえませんか。さて今日はデートという体裁は取っていますが、モーラと2人きりで話をしたかったのは本当です。」
「なんじゃそうだったか。にしてもいつも一緒に動いているじゃろう。今更何を話すのじゃ。」
「聞きたいことがあるのです。モーラの今の気持ちを。これからどうしたいのか、みんなとどうなりたいのか。さらにその先についてもです。まあ、今回の件についても一応聞ききますけどね。」
「えらく改まったのう。」
「一度ファーンに戻った時に言葉を濁しましたでしょう。私があの家で一緒に暮らすことを匂わしたときに」
「気付いておったか」
「たぶん皆さんも気付いていますよ」
「そうか。そこまで気付いているか。」
「もしかして、私たちというより、この世界に入り込みすぎていますか?」
「踏み込むのう。ああそうじゃ。どうやら入り込みすぎた。このわしが今のこの状態に正直戸惑っているわ。」
「やはりそうですか。」
「そして恐い。おぬしに対してはそうでもないが、ユーリとアンジーについては特にな。わしとしては、あの時、あの言葉を決して軽い気持ちで言ったつもりはないが、それでもこれだけ問題が続くとな。わしとて恐くなる。」
「・・・」
「わしが天使の真似をさせ、魔法使いの願いを聞き、他のドラゴンと問題を起こしている。全部わしのせいじゃ。」私は思わず笑ってしまった。
「なにがおかしいのじゃ。笑う場面か?」
「いえ、みんながモーラを心配しているとおりにモーラが考えているなあと思いまして。つい」
「みんなが心配しているとおりじゃと?」
「ええ、皆さんから心配されていますよ。特にアンジーからは」
「あやつら何を言っているのじゃ」
「モーラのせいではない。モーラは悪くない。だからそんな顔をしないでとね。」
「じゃが、これが事実じゃろう」
「本当にこれまで独りぼっちで生きてきたのですねえ。」
「ああ確かにそうじゃ。」
「深入りしすぎと言いましたけど、これが仲間との普通の共同生活、普通の暮らし方なのですよ。うちの場合は、少し特殊で深すぎると感じるかもしれませんけど、家族みたいな仲間です。」
「そうなのか?」
「ええ、誰かが困ったら助ける。自分が困ったらみんなに助けを求める。そうしてみんなで一緒に生きていくのです。」
「じゃがわしのしたことは。」
「アンジーが言っていましたよ。了解したのはわたしだからとね」
「じゃが、了解せざるを得ない状況をわしが作ったではないか。」
「でもね、本当に嫌なら逃げられるのですよ。」
「ああ、そうかそう言ってくれるのか。」そう言ってモーラは急に立ち止まる。
「モーラ?」
「ああ、何かが頬を伝っている。」
「・・・」
「涙か・・そうかわしは泣いているのか」
「・・・」
「くやしいぞ。こんなことで泣くなんて。」モーラが腕で涙を拭っているようです。何度も何度も。
「どうしてですか?」
「こんなことで。たかが人間の、たかが天使の、たかがホムンクルスの、たかがエルフの、わしを想う気持ちで泣くとはな。」
「よかったですね」
「何が良いのじゃ。わしはドラゴンじゃぞこんな事で泣いてはいかんのじゃ。」
「うれしいことはだめですか。」
「ああダメじゃ。おぬしらに未練が残る。おぬしらよりずっと生きるわしらがこんなことで泣いては、この先どうするのじゃ」モーラはそう言いながらも涙を拭っている。
「この先もつらくなってください。そしてまた私たちのような者達と出会って仲間になってそして別れてください。それがモーラの生き方なんですから。」
「そんなのドラゴンの生き方では無いわ」そこでモーラは涙を止めようとなぜか腕に力を込める。
「ええ、でもそれが、土のドラゴンのモーラとしての生き方ですよ。」
「そうか、土のドラゴンのモーラとしてのか。」
「はい、少なくとも私たちと一緒に居るときには、私たちのモーラでいてください。」
「そういうてくれるか」
「皆さんとは個別に話してください。同じ事が聞けると思いますよ。ただし、すまないとか言うときっとみんなから怒られますよ。」
「ふふ、それでも最初は謝るところから入りたいのう」そうして再び歩き出す。
街に入り薬屋の前に立つ。
「さあ、薬屋さんに到着しましたよ」
「わしの出番じゃな。」
「お願いします。」
○薬屋さんの情報
「あら、早かったのね。おや、今日は一緒なの」店長さんが店の奥のカウンターに座ってけだるそうにこちらを見ながら言いました。
「気付いていたのじゃろう。」モーラはそう言いながら店のテーブルに座る。
「あなた達の気配は気にしなくても良いのよ。」店長はけだるそうに立ち上がるとテーブルに座った。
「そうなのか?」
「ええ、ノックなしで入れたでしょう」
「そういうことなのか。」モーラは扉の方を一度見た。
「お座りなさいな。お茶は出せないけど。」
「メアさんがいませんから私がやりましょうか?」私はそう言われてお茶を出そうかと店の奥に行こうとする。
「けっこうよ。裏の部屋はあまりいじられたくないので。ごめんなさいね。」店長さんが慌てる風でもなくそう言った。
「わかりました。」私はそう言われて座った。
「結果を聞かせてもらおうかのう」
「かなりまずいわよ」今までの関心のなさそうな表情が一変した。
「おや、教えてもらえたのか」
「はい、もう興味津々で教えてくれましたよ」嬉しそうに店長は言った。
「どのへんが興味津々なのじゃ?」
「まず壺が消えた件ね。どうやったのか知りたいとかね。あとは・・・」
「あとは?」
「どうやってドラゴンを使役していることとかいろいろね」店長はそう言いながらモーラに馬鹿にしたような微笑みを返す
「わしが使役されていると?」
「その辺は訂正しておいたわ」
「変な訂正はしておらんじゃろうな」
「大丈夫よ。間違って隷属されて幼女姿にされているとだけ」
「それは簡単すぎないか?」モーラはちょっと不機嫌そうだ。
「詳しく話してもどこかでねじ曲げられるからしようがないわよ。こういう噂は。」
「そうか。で、まずいというのは?」
「まずね。あの壺を欲しがったのは、国王自身なのだけれど、実際には王妃が国王をたきつけたのよ。」
「やはりあの時はうそをついておったか。」
「壺を取られて、国王はいたくご立腹みたいね。でも水神に対してではなくご宣託に来た天使様とその御一行に対して怒っているわね。」
「なんでじゃ」
「城下に現れても城に来なければ良かったのにとね。まあ、貴方たちから聞いた話では、連れ込んだのは国王側なんだけど。完全に逆恨みよね。」店長は相変わらず少し笑っている。
「なるほど。でも私達をよく探し出しましたね」私はその点が一番気になっていました。
「あの国王は結構執念深くてね。これまでずーっと探させてはいたみたいよ。そして、あなた達を見つけた。もっとも天使の噂を聞いたけど確信はない。しかも距離もあって盗むのは難しい。でも魔法使いならあるいはできるかもしれない。最後に顔を見てみたいから連れてこいとなったみたいね。表向きの用事を作り出して。」店長さんは言いながらあきれている。
「ふむ。どうしてそんなに詳しく知っている。」
「その城下町の魔法使いがあなたたちを探し出して殺すよう頼まれたからよ。事情を聞かされたけど無理だと断ったらしいのよ。」
「よく断れたな」
「そこは間に入った人がうまく取りなしたみたいよ。そのせいもあって、あなたたちを直接呼びつけることにしたみたい。」
「わしらを呼んで話を聞いたとしても証拠もないし、ましてや王城内では、外聞もあるから直接手は出せないじゃろう。どうするつもりなんじゃ?」
「宝石護衛の途中で盗賊に襲われた事にして殺すつもりみたいよ。ついでに積み荷の宝石もいただく。無事にたどり着いたら着いたで、献上品に傷があると因縁をつけるか護衛中に盗んだろうと因縁をつける。そんな感じの段取りみたいよ。」店長さんはあきれながらもちょっと面白そうな感じでそう言った。
「なるほど。そこまでよく調べられましたねえ」私はその情報が本当なのかかえって疑問に思ってそう言いました。
「このへんの事情は、魔法使いの彼女が会話を盗み聞きしたみたいよ。殺しの依頼を断った事で自分に何か報復があるのではと感じて、城の中に潜り込んで国王の周辺を探っていたみたい。」
「よくわかりました。ありがとうございます。」
「さて、この情報に対する対価が欲しいと相手は言っていますがどうしますか?」店長さんが何か嬉しそうです。
「何をお望みですか?」
「壺を消したからくりを教えて欲しいと言っていましたけど、そもそも教えられるものなの?」首をかしげながら店長さんは言った。
「水神様のお力ですからねえ。私にはなんとも」私は答えて良いものかどうか首をかしげる。
「そうなの?本来水神は、いやドラゴンは、人界に干渉しないものだと思っていたけど。」店長さんはびっくりしてそう言いました。
「直接は手を出していませんよ。私がドラゴンさんの魔法を覚えて行使しただけですからねえ。」
「ああそういうことなの。」
「魔法の中身は水のドラゴンさんのものなので、他人の魔法を教えても良いのかどうか。たぶん水神様なら直接尋ねて行けば教えてくれると思いますが。」
「なるほどねえ。それは伝えておくわ。」店長は面白がってそう言った。
「他に何か私にできることがあればお手伝いしますとお伝えください。」
「おぬしも律儀よのう。」モーラは私を見てあきれた顔をして言った。
「そうよ。その回答だけでも十分価値があるのよ。」店長さんまであきれています。
「そういうものなんですか?」私はよくわかりませんので聞き返しました。
「ええ。その魔法は、ドラゴンの竜族の領域の魔法とわかるだけでも成果なのよ。」店長さんがまるで子どもに諭すように言いました。
「はあ?私ならドラゴンさんのところにすぐにでも聞きに行きますけどね」
「さすが転生者。物怖じしないのね。一応この世界では、本人が作った魔法を教えてもらうのは難しいことなのよ。魔法使いが自分で手に入れた独自の技術なのだから、教えたがらないものなのよ」
「そうなんですか。でも、習ったわけじゃないのに私が使っても怒られませんでしたし、文句は言われませんでしたけど。」
「え?教えてもらったんじゃないの?」身を乗り出して私を見て店長さんは言いました。
「はい。間近に見ていてそれを真似しただけですよ。」びっくりするような事でも無いような気はしますが。
「はあ?本当に転生者って・・・あなた自分がやっていることがどんなにすごいかわかっていないわね。」なんか先ほどから馬鹿にされてばかりのような気がします。
「え?」
「普通は師匠とか兄弟子とかから魔法を習うのよ。高度な魔法になればなるほど制御が難しいから、魔方陣の構築から魔法の発動、制御、収束までを何度でも繰り返し真似をして憶えるのよ。」その諭すような言い方はやめてください。
「なるほど。見よう見まねってやつですねえ。」
「だから実際に使った魔法を見ただけで使えるのなら。それは習ったのと同じなの。」
「そうなんですか。」著作権的なものはこの世界にはないのですねえ。
「そうよ。何回か見せてもらったの?」
「いえ一回だけです。でも1時間近くずーっと使っていましたのでずーっと見させていただきましたから。」
「相変わらず研究熱心ね。」店長はため息をつきながら言った。
「ありがとうございます。」私は褒められたと思い謝辞を言いました。
「皮肉もつうじないわね。」ため息をつかれました。
「そういじめるな。こやつは解析とか分析とかが得意らしいからのう。」モーラも私を見ながらあきれている。
「そうだったのね。あなたが世界征服とか考えていなくてよかったと改めて思うわ。」
「そうですか?」
「そうよ。私たちがあなたの行動に危険を感じて攻撃したらそれを解析して反撃してくるって事でしょう?」
「そうなりますかね?でも24時間365日続けられたら疲弊していつか倒れると言っていませんでしたか?」
「あなたはその攻撃を見て、たぶん反撃どころか倍返しか10倍返し位はしてくるわよねきっと。」店長さん嬉しそうですねえ。私を攻撃したいのでしょうか。
「ああそういうことですか。魔法を見せてもらえて、その解析が楽しくて、たぶん攻撃相乗効果とか考えて魔法を構築して使ってみたくなりますね。」私は天井を見ながら想像してそう言いました。
「そうなれば、こちら側が攻撃にさらされて人的被害が増えることになりそうよね。攻撃準備も必要だから防御魔法だってそうそう厚くは張れないし、あなたの魔力量なら簡単に破られそうだし。」そんな汚い虫を見るような目で見ないでください。
「戦い方はそちらの方がノウハウを持っていそうですが。」
「確かにね。でもこちらからの1撃目をしのがれた段階でこちらは不利になりそうよね。」一体何をシミュレーションしているのでしょうか。
「一撃目を食らうようなことにはなりたくないですよ。」
「私もよ。」
「何を話しておるのじゃ。話をもどさんか。わしらはどうしたらよいと思う?」
「簡単よ。逃げればいいじゃない。」店長さんはアッケラカンとそう言った。
「やはりそう答えるわなあ。しかし逃げるとなるとこの街に迷惑がかかるじゃろう。この街にも未練があるのじゃ。しばらくは暮らしたいので何とか解決して戻ってきたいと思っておる。」
「あなた達がそう思うなら、身の潔白を証明するしかないし、あとは旅の途中で殺されたことにするくらいしか思いつかないわよ。」
「身の潔白か。」
「あとは、その壺みたいに人間の偽物を作って2組同時に現われれば、さすがに別人だと認めざるを得ないんじゃない?まあその偽物は殺されると思うけど。」
「ああ、それなら同じ時間に別の場所で目撃されれば良いというのもありますね。」
「本当は2組同時に国王の前に現れたほうが良いと思うわ。相手もさすがに理解できるでしょう。」
「それは無理じゃろう。だれか動かす者が必要じゃし偽物は死なねばならんのじゃから。」
「ああそれは良いですね。良い案です。」
「なんじゃと。」
「死んで欲しいのでしょうから死にましょう。良いことを教えてもらいました。では帰りましょうか。」私は、自分のひらめいたアイデアにいてもたってもいられず、モーラを置いてその店を後にした。
「おい!どうするつもりじゃ。おい!待つのじゃ。ああすまんのう。あやつはこういうところがあってなあ。情報ありがとうな。」
「どういたしまして。再びこの街で笑って会えることを祈っているわ」店長はテーブルに座ったままモーラに手を振った。
「すまんな。待たんかこら。」モーラが扉を閉めて私を追いかけました。
そうして街を出て家に戻りました。
○家で待っている皆さんの元へ戻る。
皆さんに簡単に状況を説明してから解決策を話しました。
「とりあえずこんな感じで進めようと思いますがどうですかね」
「なるほどのう。」
「うまくいきますかね。そんなに多く操作できますか?」メアが不安そうです。
「国王の前にダミーを出現させて、それを消せば良いのですから。その時に水神様の声を私が代わりに出せば良いだけですので。それでも納得しなければ、私ひとりが死にましょう。」
「死ぬって簡単に言いますか?」
「みんなが驚いているじゃろう。死んだふりといってやれ。」
「そうですね。知っているのは、モーラとアンジーだけですものね」
「そんなことができるんですか?」ユーリがびっくりしている。
「仮死状態というものですね。でもそんな長時間はできませんよ、脳が死んでしまいますから。」
「脳って何ですか~」エルフィが尋ねますが、知らないのですか?
「頭の中にあるみんなのことを憶えているために必要なものです。」
「ああ、味噌ですね」メアがそう言いました。ユーリは余計混乱しています。
「蟹味噌のように言うんじゃないわよ」
「蟹ってなんですか?」ユーリがすでにはてなマークに取り囲まれています。
「そこからですよねえ。」
話の腰が折れましたが、とりあえず皆さんを納得させられたようです。
「とりあえず領主様には依頼を受けること。途中襲撃される可能性があることをお伝えしましょう。」
「おぬしが行ってこい。して、お宝の護衛の対策はどうするのじゃ。そっちがやられたら元も子もないぞ。」
「それについては案がありますので領主様に提案してきます。」
そして街に向かい領主様の館につきました。アポなし突撃ですが応接間に通してもらえました。
「失礼します。」
メイドさんが開けてくれた応接間には、すでに領主様が応接セットに座って待っていました。
「よくいらっしゃいました。お考えいただきましたか?」私の表情を見て安心したように尋ねてきました。
「はい。ですがいろいろと問題もありまして相談に伺いました。」
「どのような問題ですか」
「実は此度の輸送の件がすでに色々なところに広まっております。」
「なんですと?」
「薬屋の方に聞いてみましたが、すでに輸送する宝石の話はかなり広まっていると言っておりました。」魔法使いさんが掴んでいるくらいですから知られているでしょう。
「そうなのですか?」
「はい。ですので、旅の途中の盗賊の対策をしなければならないと思います。」
「確かに必要ですね。」
「それで一つ提案があるのですが。」
「どんな提案でしょう。」領主様が座ったまま少しだけ私の方に体を近付けました。
「まず襲撃への対応ですが。おとりを作ります。そちらは速い馬に軽い馬車をつけて通常ルートを走らせて襲撃させます。襲われたら馬に乗った人が殺されないよう逃げます。本命の馬車は出発予定日より早く出て違うルートで目的地に向かいます。」
「なるほど。盗賊を欺くわけですね。」
「はい。当然相手の国にも嘘の情報を流しておきます。ここで問題なのはこの事を知る人間です。疑うわけではありませんが、誰がこの情報をリークしたかを突き止めなければなりません。」
「裏切り者のあぶり出しですね。」
「というよりは、こちら側に敵はいないことの確認です。」
「はあ。」
「つまり、相手国側から情報が流れているということを確認するのです。」
「そんな。相手側は宝石を欲しいのですよ。」
「だとしても、盗ませてそれを手に入れても良いわけです。」
「そんなことまで相手は考えていますか。」
「色々な事を想定したいのです。もちろん相手にも気付かれないように進めなければなりません。」
「盗賊対策はそれで良いのかもしれませんが、魔物対策はどうしますか。違うルートだとそれなりに危険になりますよ。」
「それは、私の家族が何とかします。」
「大丈夫ですか?」
「はい。その方が秘密に動けます。」
「ならばひとりだけ私の懐刀をおつけしましょう。いかがですか。」
「それはありがたいです。中身をすり替えていない証明になりますし。」
「ならば、品物の確保と細かい日程などの検討に入りますので、数日後にまた連絡します。」
「その辺はよろしくお願いします。あと申し訳ありませんが、馬をもう一頭お貸しいただけませんか。」
「ああそうですね。どうぞ見て言ってください。何頭かを除かせていただきますが、それ以外でしたらどの馬でもかまいません。」
「ありがとうございます。今お預けしている馬のように優秀な馬が良いのですが。もちろん手を余している馬でとなりますが。」
「そういえば調教もお得意でしたね。わかりました。言っておきます。」
Appendix 馬
「ほらなこういうことになるんや。」
「危険な橋を渡る感じやなあ。」
「それでもわしは頑張るわ。こんな人たちと一緒に動き回ったら面白そうや」
「なら精進せい。あんたはスピードとスタミナのバランスが悪いからもう少しスタミナをつけんとあかんわ」
「しかしどうやって、選んでもらったらええんやろか。わしは、評判悪いんやで」
「大丈夫やあのエルフの嬢ちゃんがうまくやってくれるで」
「ああ、そういやあそうやなあ。」
Appendix 荷馬車
「さて馬車も改造しますか。乗員数も増えましたし、今回は高速仕様にしないとなりませんからねえ。」
「いつもどおりはしゃいでるわねえ。」アンジーが馬車の所に寄ってきた。みんなも興味津々です。
「メアさんとエルフィに、お願いがあります。」
「なんでしょうか」メアが近付いてくる。エルフィも呼ばれて近付いてくる。
「2頭引きにするのに荷馬車を一回り大きくしますので、この荷馬車に荷台をベースにして上物の製作をお願いします。」
「どうするんですか~」
「とりあえず、このくらいの幅になるように荷台を作ってください。やり方はこの荷台を見ればわかります。」
「あ~意外と簡単そうですね~」エルフィが外から中から見回してそう言いました。
引っ張り出して来た荷馬車の周囲の地面に一回り大きな線を書きます。
「このぐらいでお願いします。できたら台車の上に載せますので、車輪がこの辺に来るようになりますので、16カ所ほど取り付け穴をお願いします。」
私は、荷馬車を移動した後、地面に書かれた四角の中に車輪の位置を描いて×印を16カ所描いた。
「私とメアさんで~堅い木を取ってきますね~」
「お願いします」
私は荷馬車に直接取り付けた懸架装置を取り外しにかかり、アンジーとユーリに木くずをまとめてもらい、モーラには、車軸を載せておく台を作ってもらいました。
「今回はどうするつもりじゃ。」
「今回は、高速走行仕様に変更するので、車高を下げトレッドと広げホイールベースをやや長くして、コーナーバランスに優れた仕様としました。残念な事にかなり揺れますので勘弁してください。あとブレーキ代わりに馬との距離が詰まったら自動的に減速するようにしないとなりませんねえ。」
「独り言になってきているぞ。まあ、頑張れ」モーラがそう言ってため息をついている。
そうして”荷馬車君1号改”は完成した。
続く
「どうじゃった?デートは楽しかったか」モーラの表情はさえません。
「デート中の会話は秘密です。もっともユーリの声は皆さん聞いているのでしょうけど。」
ユーリの部屋でガタリと音がします。ああ、この近さだと会話を聞こうとすると聞けますねえ。
「まあなあ。確かにプライバシーというやつの侵害じゃからなあ。もっともわしらにそんなものあってない様なものなんだがなあ。」モーラはそう言って少し笑っている。
「頭の中の感情は、よほど冷静に対応しないと皆さんに伝わりますからねえ。」
「じゃからあえて聞くが、みんなとは何を話したんじゃ?」
「ユーリとは、私達と一緒になるまでの話しですし、メアさんも昔の話ですねえ。エルフィとは、まあ酔っぱらいの話ですね。」
これもガタリと音がしました。おや、エルフィはまだ寝ていなかったのですねえ。
「アンジーとは何を話したのじゃ」
おや、気になりますか。
「そうですねえ、みんなにはどんなアクセサリーが似合うかとか話しましたねえ。特にモーラには何が似合うのか」
またガタリと音がしました。今夜はネズミがいるのでしょうか。冷蔵庫は大丈夫でしょうか?
「なるほどなあ。さきほどデートで買ってきたアクセサリーの話しをしたのか。」
「ええそうです。あまりたいしたことは話してませんよ。なんせデートですからね」
「なるほどな。今日は風呂はどうするのじゃ」
メアがお茶を入れた後こう言いました。「皆さん一緒に入るのは恥ずかしいでしょうから、時間をずらして別々に入られたらよろしいのではないのでしょうか。」座ってお茶を飲み始める。
「別々に入るのが私の世界の常識なんですが、それが特別になるとは意外ですねえ。」私は感慨深げに言います。
「顔を合わせづらいじゃろうから。そうするか。」
「今までひとりずつ入ったのは、前の家で3週間くらい暮らした時ですかねえ。でもあの時も2人ずつとか入っていましたよねえ。」私の言葉に反応したのか、ユーリが部屋を出て脱衣所兼乾燥室にダッシュしていきました。どうやら一番はユーリのようです。
「ふむ、入ってしまうと誰かが入ってきたら逃げられんのではないか?」モーラはわざとユーリに聞こえるように話している。脱衣所で一瞬だけ動きが止まって静かになったようです。浴室の扉の音がしました。
「では、お風呂の扉に入浴中の札を下げる様にしますね。共同生活には欠かせないアイテムですから。」
メアさんがそう言って台所に向かい、少しして浴室まで行って戻って来ました。どうやら本当に作って扉に下げてきたようです。
「看板を作って扉にさげてきました。」メアさんは、ついでにお茶のおかわりを持って戻って来ました。
「いや、むしろ入浴中なら一緒に入ろうとするものも出てきそうじゃのう。」
「そうですね。うちの場合は意味ないかもしれません。」
私の言葉にメアさんががっかりしています。いや、もちろんあった方が良いのですよ。
「みんなにひとりで入りたいと宣言するしかないのでしょうか。」メアさんが困って言った。
「それもなあ。心配されるだけのような気もするが。」
「ですよねえ。まあ札を掛けた時はひとりで入りたいという意思表示で良いのではないですか。」
私達も解散してそれぞれの部屋に戻り、お風呂の順番を待つことになりました。ユーリの後にエルフィ、アンジー、モーラが入り、メアさんが入ったようです。ああ、メアさんにはあらかじめ私が最後に入って風呂の水を入れ替えるから最後と話しておきました。
「ふーっ」
私は久しぶりにタオルを頭の上に乗せて、のびのびと浴槽に入っています。さすがにいつも6人で入っていると狭く感じる浴室もひとりではいると少し寂しいですね。それでも浴槽内の伸び伸び感は、やっぱり良いですねえ。
そして、これまでのことを思い返してみます。この世界に来てからも、この街に来てからも本当にあっという間でした。この街にはまだ2ヶ月もいたわけでもないのに愛着があります。やはり家に住むということは、そういう気持ちになるのでしょうか。
そして、私の家族の皆さん。思えばユーリもメアさんもエルフィも一緒になってからそんなに経っていないのに私の中ではすっかり家族です。一緒に暮らし始めてから、あまりにも多くの事件にかかわりすぎたのかもしれません。
本当なら皆さんとここでの生活の中で少しずつ絆を作っていきたかったのですが、あっという間に絆ができてしまった様な気がします。もっともそれは、私だけが思っているのかもしれませんが。
ああ、今はそんなことを考えている場合ではないのですけれど、私は、皆さんとの絆が大事なのでしょう。もちろんこの街との絆も大事ではありますけれど、守るべきものを勘違いしてはいけませんね。あ、のぼせてきました。上がってさっさと寝ることにしましょう。水交換のマクロだけは発動しておかないと明日の朝入りたい人もいるでしょうから。
そうして、私は自分の部屋に戻り、寝間着に着替えてベッドに潜り込みました。
○モーラとお出かけ
「じゃあ行ってくる」
翌朝、朝食後にモーラと共に家を出ました。しばらくは会話もなく歩いていましたが、モーラが突然話し始めました。
「正直すまないと思っている」本当にすまなさそうにモーラが言いました。
「最近モーラは謝り続けていますね。気にすることではないのに。」
「いや、わしのせいじゃろう。」
「モーラは私たちより長く生きているのにどうしてこう幼いのでしょうか。」私はちょっと挑発してみます。
「聞き捨てならんことを言う。どういうことじゃ」ちょっとムキになってモーラが言いました。
「だって、こんなこと我々にはどうしようもないですよ。」
「事の発端はわしじゃろう」
「私とアンジーが旅に出ることにしたからですよ?巻き込まれたのはモーラの方じゃないですか。」
「ああそう言いたいのか。それはありがとうな。」モーラさんそう言いながら、なんか照れてますね。
「ありがとうも何も、私たちが一緒に行くことを決めた時点でモーラのせいではないのですよ。責任を感じているかもしれませんが、そんなことはこれっぽっちもないのです。むしろ興味本位で壺の話を受けたのは私ですしね。」
「そう思っているのか。」拍子抜けしたのかモーラの声が間抜けに聞こえます。
「ええ、少なくともこんな事まで想定しませんよ。もしあの国王がしていることなら執念深いというか、しつこいというか。もしかしたら誰かが裏で情報操作しているのかもしれないのではとまで勘ぐってしまうほどにね。」
「そう考えるよなあ。まあ、天使様という言葉だけが一人歩きしたということもあるのじゃろうが。」
「実際のところ、根本原因のカンウさんもこの話を聞きつけて飛んできそうですけど、なぜか来ませんし。」
「そういえばそうじゃな。あっちはあっちで何かあるのかのう。」
「それは後で聞いてもらえませんか。さて今日はデートという体裁は取っていますが、モーラと2人きりで話をしたかったのは本当です。」
「なんじゃそうだったか。にしてもいつも一緒に動いているじゃろう。今更何を話すのじゃ。」
「聞きたいことがあるのです。モーラの今の気持ちを。これからどうしたいのか、みんなとどうなりたいのか。さらにその先についてもです。まあ、今回の件についても一応聞ききますけどね。」
「えらく改まったのう。」
「一度ファーンに戻った時に言葉を濁しましたでしょう。私があの家で一緒に暮らすことを匂わしたときに」
「気付いておったか」
「たぶん皆さんも気付いていますよ」
「そうか。そこまで気付いているか。」
「もしかして、私たちというより、この世界に入り込みすぎていますか?」
「踏み込むのう。ああそうじゃ。どうやら入り込みすぎた。このわしが今のこの状態に正直戸惑っているわ。」
「やはりそうですか。」
「そして恐い。おぬしに対してはそうでもないが、ユーリとアンジーについては特にな。わしとしては、あの時、あの言葉を決して軽い気持ちで言ったつもりはないが、それでもこれだけ問題が続くとな。わしとて恐くなる。」
「・・・」
「わしが天使の真似をさせ、魔法使いの願いを聞き、他のドラゴンと問題を起こしている。全部わしのせいじゃ。」私は思わず笑ってしまった。
「なにがおかしいのじゃ。笑う場面か?」
「いえ、みんながモーラを心配しているとおりにモーラが考えているなあと思いまして。つい」
「みんなが心配しているとおりじゃと?」
「ええ、皆さんから心配されていますよ。特にアンジーからは」
「あやつら何を言っているのじゃ」
「モーラのせいではない。モーラは悪くない。だからそんな顔をしないでとね。」
「じゃが、これが事実じゃろう」
「本当にこれまで独りぼっちで生きてきたのですねえ。」
「ああ確かにそうじゃ。」
「深入りしすぎと言いましたけど、これが仲間との普通の共同生活、普通の暮らし方なのですよ。うちの場合は、少し特殊で深すぎると感じるかもしれませんけど、家族みたいな仲間です。」
「そうなのか?」
「ええ、誰かが困ったら助ける。自分が困ったらみんなに助けを求める。そうしてみんなで一緒に生きていくのです。」
「じゃがわしのしたことは。」
「アンジーが言っていましたよ。了解したのはわたしだからとね」
「じゃが、了解せざるを得ない状況をわしが作ったではないか。」
「でもね、本当に嫌なら逃げられるのですよ。」
「ああ、そうかそう言ってくれるのか。」そう言ってモーラは急に立ち止まる。
「モーラ?」
「ああ、何かが頬を伝っている。」
「・・・」
「涙か・・そうかわしは泣いているのか」
「・・・」
「くやしいぞ。こんなことで泣くなんて。」モーラが腕で涙を拭っているようです。何度も何度も。
「どうしてですか?」
「こんなことで。たかが人間の、たかが天使の、たかがホムンクルスの、たかがエルフの、わしを想う気持ちで泣くとはな。」
「よかったですね」
「何が良いのじゃ。わしはドラゴンじゃぞこんな事で泣いてはいかんのじゃ。」
「うれしいことはだめですか。」
「ああダメじゃ。おぬしらに未練が残る。おぬしらよりずっと生きるわしらがこんなことで泣いては、この先どうするのじゃ」モーラはそう言いながらも涙を拭っている。
「この先もつらくなってください。そしてまた私たちのような者達と出会って仲間になってそして別れてください。それがモーラの生き方なんですから。」
「そんなのドラゴンの生き方では無いわ」そこでモーラは涙を止めようとなぜか腕に力を込める。
「ええ、でもそれが、土のドラゴンのモーラとしての生き方ですよ。」
「そうか、土のドラゴンのモーラとしてのか。」
「はい、少なくとも私たちと一緒に居るときには、私たちのモーラでいてください。」
「そういうてくれるか」
「皆さんとは個別に話してください。同じ事が聞けると思いますよ。ただし、すまないとか言うときっとみんなから怒られますよ。」
「ふふ、それでも最初は謝るところから入りたいのう」そうして再び歩き出す。
街に入り薬屋の前に立つ。
「さあ、薬屋さんに到着しましたよ」
「わしの出番じゃな。」
「お願いします。」
○薬屋さんの情報
「あら、早かったのね。おや、今日は一緒なの」店長さんが店の奥のカウンターに座ってけだるそうにこちらを見ながら言いました。
「気付いていたのじゃろう。」モーラはそう言いながら店のテーブルに座る。
「あなた達の気配は気にしなくても良いのよ。」店長はけだるそうに立ち上がるとテーブルに座った。
「そうなのか?」
「ええ、ノックなしで入れたでしょう」
「そういうことなのか。」モーラは扉の方を一度見た。
「お座りなさいな。お茶は出せないけど。」
「メアさんがいませんから私がやりましょうか?」私はそう言われてお茶を出そうかと店の奥に行こうとする。
「けっこうよ。裏の部屋はあまりいじられたくないので。ごめんなさいね。」店長さんが慌てる風でもなくそう言った。
「わかりました。」私はそう言われて座った。
「結果を聞かせてもらおうかのう」
「かなりまずいわよ」今までの関心のなさそうな表情が一変した。
「おや、教えてもらえたのか」
「はい、もう興味津々で教えてくれましたよ」嬉しそうに店長は言った。
「どのへんが興味津々なのじゃ?」
「まず壺が消えた件ね。どうやったのか知りたいとかね。あとは・・・」
「あとは?」
「どうやってドラゴンを使役していることとかいろいろね」店長はそう言いながらモーラに馬鹿にしたような微笑みを返す
「わしが使役されていると?」
「その辺は訂正しておいたわ」
「変な訂正はしておらんじゃろうな」
「大丈夫よ。間違って隷属されて幼女姿にされているとだけ」
「それは簡単すぎないか?」モーラはちょっと不機嫌そうだ。
「詳しく話してもどこかでねじ曲げられるからしようがないわよ。こういう噂は。」
「そうか。で、まずいというのは?」
「まずね。あの壺を欲しがったのは、国王自身なのだけれど、実際には王妃が国王をたきつけたのよ。」
「やはりあの時はうそをついておったか。」
「壺を取られて、国王はいたくご立腹みたいね。でも水神に対してではなくご宣託に来た天使様とその御一行に対して怒っているわね。」
「なんでじゃ」
「城下に現れても城に来なければ良かったのにとね。まあ、貴方たちから聞いた話では、連れ込んだのは国王側なんだけど。完全に逆恨みよね。」店長は相変わらず少し笑っている。
「なるほど。でも私達をよく探し出しましたね」私はその点が一番気になっていました。
「あの国王は結構執念深くてね。これまでずーっと探させてはいたみたいよ。そして、あなた達を見つけた。もっとも天使の噂を聞いたけど確信はない。しかも距離もあって盗むのは難しい。でも魔法使いならあるいはできるかもしれない。最後に顔を見てみたいから連れてこいとなったみたいね。表向きの用事を作り出して。」店長さんは言いながらあきれている。
「ふむ。どうしてそんなに詳しく知っている。」
「その城下町の魔法使いがあなたたちを探し出して殺すよう頼まれたからよ。事情を聞かされたけど無理だと断ったらしいのよ。」
「よく断れたな」
「そこは間に入った人がうまく取りなしたみたいよ。そのせいもあって、あなたたちを直接呼びつけることにしたみたい。」
「わしらを呼んで話を聞いたとしても証拠もないし、ましてや王城内では、外聞もあるから直接手は出せないじゃろう。どうするつもりなんじゃ?」
「宝石護衛の途中で盗賊に襲われた事にして殺すつもりみたいよ。ついでに積み荷の宝石もいただく。無事にたどり着いたら着いたで、献上品に傷があると因縁をつけるか護衛中に盗んだろうと因縁をつける。そんな感じの段取りみたいよ。」店長さんはあきれながらもちょっと面白そうな感じでそう言った。
「なるほど。そこまでよく調べられましたねえ」私はその情報が本当なのかかえって疑問に思ってそう言いました。
「このへんの事情は、魔法使いの彼女が会話を盗み聞きしたみたいよ。殺しの依頼を断った事で自分に何か報復があるのではと感じて、城の中に潜り込んで国王の周辺を探っていたみたい。」
「よくわかりました。ありがとうございます。」
「さて、この情報に対する対価が欲しいと相手は言っていますがどうしますか?」店長さんが何か嬉しそうです。
「何をお望みですか?」
「壺を消したからくりを教えて欲しいと言っていましたけど、そもそも教えられるものなの?」首をかしげながら店長さんは言った。
「水神様のお力ですからねえ。私にはなんとも」私は答えて良いものかどうか首をかしげる。
「そうなの?本来水神は、いやドラゴンは、人界に干渉しないものだと思っていたけど。」店長さんはびっくりしてそう言いました。
「直接は手を出していませんよ。私がドラゴンさんの魔法を覚えて行使しただけですからねえ。」
「ああそういうことなの。」
「魔法の中身は水のドラゴンさんのものなので、他人の魔法を教えても良いのかどうか。たぶん水神様なら直接尋ねて行けば教えてくれると思いますが。」
「なるほどねえ。それは伝えておくわ。」店長は面白がってそう言った。
「他に何か私にできることがあればお手伝いしますとお伝えください。」
「おぬしも律儀よのう。」モーラは私を見てあきれた顔をして言った。
「そうよ。その回答だけでも十分価値があるのよ。」店長さんまであきれています。
「そういうものなんですか?」私はよくわかりませんので聞き返しました。
「ええ。その魔法は、ドラゴンの竜族の領域の魔法とわかるだけでも成果なのよ。」店長さんがまるで子どもに諭すように言いました。
「はあ?私ならドラゴンさんのところにすぐにでも聞きに行きますけどね」
「さすが転生者。物怖じしないのね。一応この世界では、本人が作った魔法を教えてもらうのは難しいことなのよ。魔法使いが自分で手に入れた独自の技術なのだから、教えたがらないものなのよ」
「そうなんですか。でも、習ったわけじゃないのに私が使っても怒られませんでしたし、文句は言われませんでしたけど。」
「え?教えてもらったんじゃないの?」身を乗り出して私を見て店長さんは言いました。
「はい。間近に見ていてそれを真似しただけですよ。」びっくりするような事でも無いような気はしますが。
「はあ?本当に転生者って・・・あなた自分がやっていることがどんなにすごいかわかっていないわね。」なんか先ほどから馬鹿にされてばかりのような気がします。
「え?」
「普通は師匠とか兄弟子とかから魔法を習うのよ。高度な魔法になればなるほど制御が難しいから、魔方陣の構築から魔法の発動、制御、収束までを何度でも繰り返し真似をして憶えるのよ。」その諭すような言い方はやめてください。
「なるほど。見よう見まねってやつですねえ。」
「だから実際に使った魔法を見ただけで使えるのなら。それは習ったのと同じなの。」
「そうなんですか。」著作権的なものはこの世界にはないのですねえ。
「そうよ。何回か見せてもらったの?」
「いえ一回だけです。でも1時間近くずーっと使っていましたのでずーっと見させていただきましたから。」
「相変わらず研究熱心ね。」店長はため息をつきながら言った。
「ありがとうございます。」私は褒められたと思い謝辞を言いました。
「皮肉もつうじないわね。」ため息をつかれました。
「そういじめるな。こやつは解析とか分析とかが得意らしいからのう。」モーラも私を見ながらあきれている。
「そうだったのね。あなたが世界征服とか考えていなくてよかったと改めて思うわ。」
「そうですか?」
「そうよ。私たちがあなたの行動に危険を感じて攻撃したらそれを解析して反撃してくるって事でしょう?」
「そうなりますかね?でも24時間365日続けられたら疲弊していつか倒れると言っていませんでしたか?」
「あなたはその攻撃を見て、たぶん反撃どころか倍返しか10倍返し位はしてくるわよねきっと。」店長さん嬉しそうですねえ。私を攻撃したいのでしょうか。
「ああそういうことですか。魔法を見せてもらえて、その解析が楽しくて、たぶん攻撃相乗効果とか考えて魔法を構築して使ってみたくなりますね。」私は天井を見ながら想像してそう言いました。
「そうなれば、こちら側が攻撃にさらされて人的被害が増えることになりそうよね。攻撃準備も必要だから防御魔法だってそうそう厚くは張れないし、あなたの魔力量なら簡単に破られそうだし。」そんな汚い虫を見るような目で見ないでください。
「戦い方はそちらの方がノウハウを持っていそうですが。」
「確かにね。でもこちらからの1撃目をしのがれた段階でこちらは不利になりそうよね。」一体何をシミュレーションしているのでしょうか。
「一撃目を食らうようなことにはなりたくないですよ。」
「私もよ。」
「何を話しておるのじゃ。話をもどさんか。わしらはどうしたらよいと思う?」
「簡単よ。逃げればいいじゃない。」店長さんはアッケラカンとそう言った。
「やはりそう答えるわなあ。しかし逃げるとなるとこの街に迷惑がかかるじゃろう。この街にも未練があるのじゃ。しばらくは暮らしたいので何とか解決して戻ってきたいと思っておる。」
「あなた達がそう思うなら、身の潔白を証明するしかないし、あとは旅の途中で殺されたことにするくらいしか思いつかないわよ。」
「身の潔白か。」
「あとは、その壺みたいに人間の偽物を作って2組同時に現われれば、さすがに別人だと認めざるを得ないんじゃない?まあその偽物は殺されると思うけど。」
「ああ、それなら同じ時間に別の場所で目撃されれば良いというのもありますね。」
「本当は2組同時に国王の前に現れたほうが良いと思うわ。相手もさすがに理解できるでしょう。」
「それは無理じゃろう。だれか動かす者が必要じゃし偽物は死なねばならんのじゃから。」
「ああそれは良いですね。良い案です。」
「なんじゃと。」
「死んで欲しいのでしょうから死にましょう。良いことを教えてもらいました。では帰りましょうか。」私は、自分のひらめいたアイデアにいてもたってもいられず、モーラを置いてその店を後にした。
「おい!どうするつもりじゃ。おい!待つのじゃ。ああすまんのう。あやつはこういうところがあってなあ。情報ありがとうな。」
「どういたしまして。再びこの街で笑って会えることを祈っているわ」店長はテーブルに座ったままモーラに手を振った。
「すまんな。待たんかこら。」モーラが扉を閉めて私を追いかけました。
そうして街を出て家に戻りました。
○家で待っている皆さんの元へ戻る。
皆さんに簡単に状況を説明してから解決策を話しました。
「とりあえずこんな感じで進めようと思いますがどうですかね」
「なるほどのう。」
「うまくいきますかね。そんなに多く操作できますか?」メアが不安そうです。
「国王の前にダミーを出現させて、それを消せば良いのですから。その時に水神様の声を私が代わりに出せば良いだけですので。それでも納得しなければ、私ひとりが死にましょう。」
「死ぬって簡単に言いますか?」
「みんなが驚いているじゃろう。死んだふりといってやれ。」
「そうですね。知っているのは、モーラとアンジーだけですものね」
「そんなことができるんですか?」ユーリがびっくりしている。
「仮死状態というものですね。でもそんな長時間はできませんよ、脳が死んでしまいますから。」
「脳って何ですか~」エルフィが尋ねますが、知らないのですか?
「頭の中にあるみんなのことを憶えているために必要なものです。」
「ああ、味噌ですね」メアがそう言いました。ユーリは余計混乱しています。
「蟹味噌のように言うんじゃないわよ」
「蟹ってなんですか?」ユーリがすでにはてなマークに取り囲まれています。
「そこからですよねえ。」
話の腰が折れましたが、とりあえず皆さんを納得させられたようです。
「とりあえず領主様には依頼を受けること。途中襲撃される可能性があることをお伝えしましょう。」
「おぬしが行ってこい。して、お宝の護衛の対策はどうするのじゃ。そっちがやられたら元も子もないぞ。」
「それについては案がありますので領主様に提案してきます。」
そして街に向かい領主様の館につきました。アポなし突撃ですが応接間に通してもらえました。
「失礼します。」
メイドさんが開けてくれた応接間には、すでに領主様が応接セットに座って待っていました。
「よくいらっしゃいました。お考えいただきましたか?」私の表情を見て安心したように尋ねてきました。
「はい。ですがいろいろと問題もありまして相談に伺いました。」
「どのような問題ですか」
「実は此度の輸送の件がすでに色々なところに広まっております。」
「なんですと?」
「薬屋の方に聞いてみましたが、すでに輸送する宝石の話はかなり広まっていると言っておりました。」魔法使いさんが掴んでいるくらいですから知られているでしょう。
「そうなのですか?」
「はい。ですので、旅の途中の盗賊の対策をしなければならないと思います。」
「確かに必要ですね。」
「それで一つ提案があるのですが。」
「どんな提案でしょう。」領主様が座ったまま少しだけ私の方に体を近付けました。
「まず襲撃への対応ですが。おとりを作ります。そちらは速い馬に軽い馬車をつけて通常ルートを走らせて襲撃させます。襲われたら馬に乗った人が殺されないよう逃げます。本命の馬車は出発予定日より早く出て違うルートで目的地に向かいます。」
「なるほど。盗賊を欺くわけですね。」
「はい。当然相手の国にも嘘の情報を流しておきます。ここで問題なのはこの事を知る人間です。疑うわけではありませんが、誰がこの情報をリークしたかを突き止めなければなりません。」
「裏切り者のあぶり出しですね。」
「というよりは、こちら側に敵はいないことの確認です。」
「はあ。」
「つまり、相手国側から情報が流れているということを確認するのです。」
「そんな。相手側は宝石を欲しいのですよ。」
「だとしても、盗ませてそれを手に入れても良いわけです。」
「そんなことまで相手は考えていますか。」
「色々な事を想定したいのです。もちろん相手にも気付かれないように進めなければなりません。」
「盗賊対策はそれで良いのかもしれませんが、魔物対策はどうしますか。違うルートだとそれなりに危険になりますよ。」
「それは、私の家族が何とかします。」
「大丈夫ですか?」
「はい。その方が秘密に動けます。」
「ならばひとりだけ私の懐刀をおつけしましょう。いかがですか。」
「それはありがたいです。中身をすり替えていない証明になりますし。」
「ならば、品物の確保と細かい日程などの検討に入りますので、数日後にまた連絡します。」
「その辺はよろしくお願いします。あと申し訳ありませんが、馬をもう一頭お貸しいただけませんか。」
「ああそうですね。どうぞ見て言ってください。何頭かを除かせていただきますが、それ以外でしたらどの馬でもかまいません。」
「ありがとうございます。今お預けしている馬のように優秀な馬が良いのですが。もちろん手を余している馬でとなりますが。」
「そういえば調教もお得意でしたね。わかりました。言っておきます。」
Appendix 馬
「ほらなこういうことになるんや。」
「危険な橋を渡る感じやなあ。」
「それでもわしは頑張るわ。こんな人たちと一緒に動き回ったら面白そうや」
「なら精進せい。あんたはスピードとスタミナのバランスが悪いからもう少しスタミナをつけんとあかんわ」
「しかしどうやって、選んでもらったらええんやろか。わしは、評判悪いんやで」
「大丈夫やあのエルフの嬢ちゃんがうまくやってくれるで」
「ああ、そういやあそうやなあ。」
Appendix 荷馬車
「さて馬車も改造しますか。乗員数も増えましたし、今回は高速仕様にしないとなりませんからねえ。」
「いつもどおりはしゃいでるわねえ。」アンジーが馬車の所に寄ってきた。みんなも興味津々です。
「メアさんとエルフィに、お願いがあります。」
「なんでしょうか」メアが近付いてくる。エルフィも呼ばれて近付いてくる。
「2頭引きにするのに荷馬車を一回り大きくしますので、この荷馬車に荷台をベースにして上物の製作をお願いします。」
「どうするんですか~」
「とりあえず、このくらいの幅になるように荷台を作ってください。やり方はこの荷台を見ればわかります。」
「あ~意外と簡単そうですね~」エルフィが外から中から見回してそう言いました。
引っ張り出して来た荷馬車の周囲の地面に一回り大きな線を書きます。
「このぐらいでお願いします。できたら台車の上に載せますので、車輪がこの辺に来るようになりますので、16カ所ほど取り付け穴をお願いします。」
私は、荷馬車を移動した後、地面に書かれた四角の中に車輪の位置を描いて×印を16カ所描いた。
「私とメアさんで~堅い木を取ってきますね~」
「お願いします」
私は荷馬車に直接取り付けた懸架装置を取り外しにかかり、アンジーとユーリに木くずをまとめてもらい、モーラには、車軸を載せておく台を作ってもらいました。
「今回はどうするつもりじゃ。」
「今回は、高速走行仕様に変更するので、車高を下げトレッドと広げホイールベースをやや長くして、コーナーバランスに優れた仕様としました。残念な事にかなり揺れますので勘弁してください。あとブレーキ代わりに馬との距離が詰まったら自動的に減速するようにしないとなりませんねえ。」
「独り言になってきているぞ。まあ、頑張れ」モーラがそう言ってため息をついている。
そうして”荷馬車君1号改”は完成した。
続く
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