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第1話 始まりはいつも晴れ

第1-2話 DT子持ちになる

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○村の日常の一コマ
 その日私は森の中を走っていました。はい。イノシシを二回りくらい大きくしたような獣に追いかけられながらですが、ほぼ全力疾走しています。
「よーし良いぞ、そのまま罠に向かって走れ」と遠くから声がかかる。
「はぃぃぃぃ」
 私はゼイゼイ息をしながら、後ろの獣の足音が徐々に近づいてくるのを感じながら走っている。
 まだ距離があると知っていながらも不安で後ろを向きそうになる。しかし、
「後ろを振り向いたら、瞬く間に追いつかれるから後ろを振り向くな。俺たちを信じろ」
 と言われていたことを思い出し、とにかく闇雲に走っていた。
「あの旗までだ。頑張れー」
 前を見ると木の枝に赤い旗がかけてある。私はもう少しだと思い、旗を目指して少しだけ速度を上げた。
 旗の場所を越えた時に左腕を引っ張られ、グイッと体が持ち上がる感覚が私を襲う。どうやら体に縄をかけられて、持ち上げられたようです。
 その獣は、目の前から消えた私を探すために、止まろうとして速度を落としてつんのめる。
「かかれー」
 どうやって用意していたのか。獣に網をかけて捕まえ、槍を使って周囲からつきまくる。
 網から逃れようともがきながらも、その獣は、次第に動きを止める。
「初めてにしては上出来だ。途中で追いつかれるかと思ったが、意外に足が速いんだな」
 私を木の上から縄を使って持ち上げた男がそう言った。
「必死でしたからね」
 私は、肩にかけられた縄を握りしめながら息を弾ませている。しかも宙ぶらりんな状態のためなんとも情けない格好だ。
「あの走り方では、途中で転ぶのではないかと思っていたが、よく頑張った」
「途中で転んでいたらどうなっていましたか?」
「まあ大丈夫だったじゃないか。ガハハハハ」
 その男は、縄をゆっくり下ろして私が地面に足がついたのを見て自分も飛び降りた。
「もしかして私のことを試しましたか?」
「そうだな。体力がなさそうだから転ぶようなら最初からいなかったものとして片付けていたかもしれんなあ」
 そう言ってさらにガハハハハと笑う。
 その男は、村の狩猟班のリーダーのひとりだ。名をグスベリ。最初からあまり好かれていないとは思いましたが、ここまでしますか。
「なあに、怪我してもちゃんと薬も用意していたんだ。そこは安心してくれ。これであんたもこの村の狩猟班の一員さ」
 その後も狩猟班として参加した時にわかったのだが、狩猟の時には、探索役、追い立て役、誘導役、誘導役の回収役、投網役、屠殺役と分担されていて、その人の体力、力量などから配置しているそうで、それも各班リーダーが指名して編成を変えたりするそうです。
 しかも、この村の食糧供給の要で頻繁に狩猟を行っています。魔物や魔獣のせいで、飼育するスペースがとれないのです。乳牛や鶏は飼っていても、肉牛を飼うだけのスペースがとれないからのようです。
「さて、あと10匹がノルマだ。次の獲物を見つけるぞ」リーダーがそう言うと、周囲の男達は、バラバラに森の中に消えていった。
 取り残された私は、周囲をキョロキョロと見回した後、
「獲物は、このまま置いていくのでしょうか?」とつぶやいた後その場を離れた。
 実はその匂いに誘われて他の獣が寄ってくる事があるのだそうです。
 そうしてその日は、5頭ほどを捕獲してから村に戻った。
「ノルマ10匹は厳しすぎませんか」
 帰り道に私は、一緒に歩いていた私と同じ誘導役をしていた痩せた男の人に尋ねた。
「一応建前ではそうなっていますが、今まで10匹も捕まえられたことはあまりないですからね。あくまで目標です」
「そうなのですか」
「特に宿屋の女将さんが参加しなくなってからは、ほとんど達成できていませんね」
「そうでしたか」女将さんは、すごい人だったのですね。

○この世界の事
 いつまでも記憶をなくしているという理由(言い訳)で甘えている訳にはいきません。
 とりあえず、先立つものは生活するためのお金です。
 宿屋に暮らしているとなかなかお金が貯まらないので、女将さんに相談すると、家を建てることをすすめられました。
「あんたは、素性はわからないし、しばらく経っても誰も探しに来ないようだし、ひとりで生きて行くしかないようだね。まあ、金を貯めて旅に出るのも良いけど、もしも探しに来た人達がいたら入れ違いになるかもしれないし、どうだいここで暮らしてみたら。家を建ててさ」女将さんはあっさりとそう言った。
「そうですね。考えてみます」
「まあ、急がなくて良いからじっくり考えなよ」
「はい」
 私はそう答えてから部屋に戻ると、これまで一ヶ月ほど暮らしてみて知ったことを整理してみた。
 まず、この世界には魔法が存在している。
 人間の他にも色々な種族がいる。
 人間の中には魔法を使える人が一部存在していて、魔法使いと呼ばれている。
 魔法使いの中には、人間に迷惑を掛ける人が一定数いて、国や魔法使いがそれを討伐することもしばしばあって、魔法使いに対する悪い印象の方があるそうです。
 それでも、どこの町でも、魔獣や獣よけの結界を張ってもらったり、日常生活に便利な魔法を定期的に分けてもらったりしているそうで、魔法は必要と感じるけど、魔法使いにはそばで暮らして欲しくないということらしいのです。
 特に田舎に行くほどその傾向は強くなり、ここは辺境らしいので特に敏感なのだそうです。特にこの村には、迷惑な魔法使いに町を焼かれて逃げてきた人が多く暮らしていて、特に魔法使いを嫌っているようです。
 私は、潜在的に魔法が使えるので魔法使いに分類されてしまうみたいです。ですが、魔法を全く使わなければ、魔法使いである事も隠せてしまうのが田舎なのです。なんせ、魔法を使うところを見たことがないのですから。
 そして、記憶の無い私をうさんくさいと思いながらも、追い出さずに受け入れてくれたこの村が好きになったので、魔法使いだとバレないようにここに家を建てて住むことにしました。
 まあ、バレたら逃げ出せば良いのですからね。
 それともう一つ。自分が魔法使いらしいので、家を建てる作業を通じて魔法を操る能力を訓練してみようと思ったのです。
 この村に暮らして1ヶ月の間に、魔法で直接木を切断したり削ったりできるようになったのです。
 もちろん普通の人のように刃物を使って切るフリはしますが、鉄製の大型の斧やノコは高額で、メンテナンス費用もかかります。できるだけ使わないで安く済ませないと土木作業や狩猟の手伝いで日銭を稼いでいる今の私には厳しいのです。
 それに、人手を雇うにもお金がかかります。もっとも村の皆さんは良い人達なので、家を建てるとなったらきっと無料で手伝ってくれるとは思います。でも申し訳ないので。
 なので、魔法の訓練と費用を安く上げるために、石壁の外のちょっと道を外れた森の中に家を建てることにしました。
 相談していた女将さんには、家を建てる事を報告しましたが、どこに建てるかまでは話しませんでした。
「そうかい家を建てるのかい。それはよかった。人手が要るならちゃんと言うんだよ。変な遠慮はしたら駄目だからね」
 そう言ってカラカラと笑ってくれました。その日は、お客の入りがいつもより多くて、女将さんが忙しそうにしていたので、そこで話は終わってしまったのです。
 土木作業の仲間にも聞かれれば話をしていて、皆さんは手伝おうかと言ってくれましたが、自分一人で建ててみたいと話して、ひとりで作り始めました。
 もっとも魔法を使えば、すぐに建てられそうなのですが、あまりすぐ完成してしまうと魔法使いだと怪しまれそうなので、ゆっくりと作っています。
 その日は、他に仕事もなく、森で家を作る作業をして宿に戻り、居酒屋で晩ご飯を食べていました。すると女将さんが声をかけてきました。
「ねえDT。あんた家を作り始めているんだって」ちょっと怒った感じで女将さんが聞いてきました。
「はい、作り始めています。何かまずかったですか?」
「それにしても、すぐに建て始めたみたいじゃないか。行動が早いねえ」
 そう言って私に笑いかけました。怒っている訳ではなさそうで良かったです。きっと心配してくれているのでしょう。
「ええ、間を置くとやらないかもしれないので」
「確かにね。で、どこに作っているんだい?」
 そうか、建てますとは言ったものの、どこにいつからとか、詳しい話はしていませんでした。とはいえ事情通のおかみさんが知らなかった方がびっくりです。
「この村から少し外れた森の中に作っています」
「やっぱり噂通りだったのかい。確かにこの村の中は、手狭になって土地が高いからねえ。でも外壁のそばには作ろうと思わなかったのかい?」
「ええ、獣は恐いですが、外壁の所に広い建物は建てられそうな余地もありませんし、新しく作ると目立ちますので」
「確かにねえ。あんたの場合は、近所の人たちから悪さをされそうだ」なぜかうんうんと頷いている。
 この村は周囲を高い石壁で囲い、その中で暮らしている。そのため、壁の中に家を建てる時は、借地代がかかり、木材を中に運び入れて作業をするために建てる費用も高くつく。戦争に追われてきた人とかケガでそんなに働けない人達が、外壁の外に小屋を作って生活しているから、そこに建てるとなると色々ありそうなのです。
 もっとも、魔獣が襲ってきたり、災害が起こった時などの緊急時には壁の中に避難できるし、中に入る門だって普段は開いたままなので、外の家と中の家に、違いはあまりないのです。
「はあ、そうですねえ」
「でも、森の中だろう?魔獣とか襲ってきたら逃げられないだろう」
「魔法使いさんが定期的にこの村に来て、結界を張っていると聞きました。その時にでも相談しようかと思いまして」
「そうかい、それならいいけど。前にも聞いたけどあんたは魔法使いじゃないよね」
 女将さんは、少し険しい顔で私に言った。
「前にも話したじゃないですか」
 女将さんは、私に顔を近づけて話を続ける。
「いや、前にも話したとおり、この村に住んでいる人の中には、魔法使いが起こした災害に遭って逃げてきた人も多いから。あまり好ましく思っていない人もいるのさ。そう言った輩がよそ者が入ってくると魔法使いじゃないかと勘ぐって私とかに尋ねてくるからねえ、だから念のため聞いたのさ」
 そんなに聞かれたくない話なのですか。顔が近いです。
「そうでしたか。女将さんは魔法使いの事をどう思っているのですか?」
「私かい?ああ、私はねえ、ここに戻ってくる前は旅をしていて、その時に魔法使いが仲間だったこともあるから気にしちゃあいないさ。だって魔法使いだって人それぞれとしか言えないんだ。それにここに結界を張りに来る魔法使いはうちに泊まっていくしねえ。客を選んでいたら商売あがったりだろう?」
「そうなんですか」
「まあ、あんたみたいな人が魔法使いだったとしても害はなさそうだ。おっと、そんな話をするつもりじゃなかったんだ」
 そこで女将さんは、一息入れてから真面目な顔でこう言った。
「家を作るなら一度村長のところに話をしてきて欲しいんだ。村としてお願いすることがあるからね」
 またまた、そんな険しい顔されたら恐いじゃないですか。
「わかりました。行ってきます」
 その迫力はまるで鬼教官のようで思わず敬礼をしたくなりました。
「今すぐとは言わないけれど、必ず行くんだよ」
 そう言って女将さんは他の客のところに行った。
「はい」
 私は心の中で敬礼し続けた。女将さんはたまにですが妙に迫力のある時があります。さきほどの話にあった旅をしていたときに何かあったのでしょうか。
 外を見るとすでに日も暮れていましたので、これから村長のところに伺うのは確かにマナー違反でしょう、翌朝、村長のところに行きました。
 以前お伺いして場所は知っていましたので、道はよくわかっています。到着してみると、本当に村長の家なのかと思うくらいにお屋敷ではなく普通の家です。それでも他の家と比べれば一回りくらい大きく庭もあり門があります。
私は、門から入って小道から玄関までゆっくりと歩いて行きます。玄関に到着するとそこからでも村長さんが座っているのが見えます。今日は、他に事務をしている人はいないようで、村長さんが応接セットの椅子に座ってお茶を飲んでいるのが見えました。
「村長さんお久しぶりです」
 私は、部屋に入る時に声をかけて、ぺこりとお辞儀をしました。
「おう、DTじゃないか。元気にやっておるか」
 相変わらず優しい口調です。そして、相変わらずふさふさの眉毛とふさふさの髭のおかげで表情どころか顔も見えません。
 以前、村の広場で見かけたときには、会う人々に声をかけていました。村長さんは、きっと村の皆さんの名前を全員フルネームで言えるのでしょう。
「はい、皆さん優しい人ばかりなので」
「そうかそうか、それはよかった。それにしても、わざわざわしの所に来るとは、何か心配事かな」
 逆に私の表情から何かを読み取っているのでしょうか。
「実は森の中に家を建てることにしまして、宿の女将さんから家を建てるなら村長さんのところに行ってきなさいと言われまして」
「そうかこの村に住むことにしたのか。それは良かった。まあ座りなさい」
 ほっほっほっと、村長が笑う。眉毛が多すぎて目が隠れて見えませんねえ。本当に笑っているのでしょうか。
「はい、何とか暮らしていけそうですので」
「そうか、そうか。仕事ぶりも真面目だと聞いておる。村の人の噂もそんなに悪くはない。居着いてくれればと思っていた所でな。それはよかった。」
 うんうんと頷きながら村長はさらに続ける。
「そうだなあ。あんたなら大丈夫そうだ。実は、うちの村で暮らすにあたってお願いしたいことがあるんだよ。身寄りのない子をひとりだけ面倒見て欲しいんだ」
 そこで村長の隠れた目がキラリと光ったような気がした。いや見間違いでしょう。
「私のような者でもですか」
「まあ、こんな事は変な人には頼めないが、あんたは周囲の評判も良いしな。あと子どもと暮らすことでここでのあんたを見る周囲の目も変わり、株も上がると思うからな」
「そういうものですか?」
「ああ、今のところあんたは魔法使いではないかと疑われているんだよ。ここに初めて来た時の事を憶えているかな?あの時、女の子が襲われていたのを助けただろう。あの時あんたが魔獣を一撃で倒したという話になっていてな。その話がどんどん大きくなっているんだ。魔法を使って倒したのではないかとね。
 まあ、今まで魔法を使う気配もないし、たまに間抜けなことをやらかしていて。それは、この村に慣れていないせいだったし。魔法使いの噂もほとんど言う者もいなくなってはいるのだがなあ」
 あの時の獣が魔獣だったことを後から聞かされました。翌日死体を確認に行ったらしいのです。確かに首のちぎれた死体を見ればそう思わざるを得ないですね。
 魔獣の話が出たので少しだけその話をしましょう。
 この世界の種族は様々で、人間、エルフ、ドワーフなどの異世界物ではテンプレな種族と、当然のように獣人族と魔族が存在します。獣人族、獣、魔獣については、魔族と境界が曖昧なところもありますが、少なくとも知性を持って集団で活動でき、かつ、種族間で意思の疎通が図れる者達を獣人族、魔族としていて、それ以外の本能で行動している者達を獣、魔獣と呼んでいるようです。
『境界が曖昧な』と言ったのは、知能が高く集団行動しているけれど、理性が無い種族も存在しているかららしいのです。例えば、ゴブリンやオークなども存在していて、その境界線を曖昧にしているようなのです。どれだけファンタジーな世界なのでしょうか、ここは。
「そうですか」
「魔法使いについては、この辺にはまだ偏見も根強く残っていて、偏見からくる恐怖から追い出せと言いだしかねんやつらもいる。しかし、家を建てて子連れになると逆にそういう者達も表だって何も言わなくなる。村に暮らす者として責任を果たしていて、村に危害をもたらす可能性も低くなったということになるからな」
「はあ」
「それと、今の話だともう建てているような口ぶりだ、もしかして森の中に家を建てているのかな?」
「はい、まだ建て始めたばかりです。何か不都合でもありますか?」
「そうか、村の外に家か・・・申し訳ないのだが、それならなおさら預かって欲しい子がひとりいるのだが、一度会ってもらえないか。会ってもらってダメならそれでもいいのだけども」
「かまいません」
「では、さっそくですまないが、これからその子に会ってもらっても良いかな」
「はい」
 そうして村長さんと2人で村長の家を出ました。道すがら村長さんは、行き交う人達にできる限り声をかけている。簡単な用事ならその場で聞いているようですし、こうやって気軽に話せることがこの村を良くしていっているのでしょう。
「そういえば例の水路を作る話だが、村の人達も賛成してくれている。手伝ってもらえるかな」
「はい、この村のためです。喜んで」
「ありがとうな」
 水路を作る話は、女将さんが私に愚痴を言ったところから始まっているのです。

○横道 水路の話
「あーしんどい」
 女将さんは、そう言って私の座っている席の向かい側に座りました。
 ここは女将さんの居酒屋で、その時間は、私はまだ客でした。この後、客がいなくなったら店の片付けをするのが日課になっていました。
「ここ最近、井戸の水量が減ってきてね、洗い物に使う水を確保するのが大変なのさ」
「水量が減ってきたのですか?」
「ああ、村の共同の水槽が溜まらなくなってきて使える水を制限されているのさ」
「居酒屋としては問題ですね」
「この時期には、毎年同じように水が減るのだけれど、村に人が増えてきて使う量が増えたのが原因らしくて、もうしばらくしたら水量が増えるからそれまでの辛抱なんだけど、今後人が増え続ければ、水の多い時期でも制限されるかもしれないねえ」
「なるほど。それは通年で潤沢な水を確保したいですね」
「そういうことさね。まあ・・・」
「変ですね。これだけ森に囲まれていて水量が減るなんて」
「使う人が増えれば仕方のないことじゃないのかい?」
「そうなのかもしれませんが、今のうちに対策をしないとまずいですねえ。水を争って諍いが起きそうです」
「そうなんだよ。水の取り合いは、他の地方でもよく聞く話だから心配なんだ」
「そういえば、少し遠いですが、山の方に川が流れていたのを見ましたが」
「ああ、結構な距離があるよ。一度あそこから川の流れを変える話も出たが難しかったのさ」
「今なら出来るのではありませんかねえ」
「何か策があるのかい」
「戻りかけている記憶の中にいくつか策があるのです。もっともすでに試されているかもしれませんが」
「そうなのかい。まあ、ダメでもいいから村長に話してもらえないかねえ。村長からは、何か良い案を持っている者はいないかと私に言ってくるくらいだから。ふふ、もしかしたら、あんたならと思っていたのかもしれないねえ。ぜひ相談に乗っておくれよ」
「わかりました」
 そうして私は村長と話をして、山をよく知っている人に案内してもらい、地下水の分岐点を探しに山に入りました。
「あんたにわかるのかい」
 案内してくれた人は、最初に私にこう言った。もちろん怪訝そうな顔で。
「わからないかもしれません。でも、何もしないではいられませんので」
「そうだな。水の確保は最重要課題だ」
 山を歩いていて谷になっている地点に近づいた。そこに湧き水によって小さな池が出来ていた。
「ここから村までは、ほとんどまっすぐになっていますよね」
 私は、歩いてきた山道を思い出して、村とここまでの位置関係をイメージしながら言った。
「たぶんそうじゃないかな」
 イメージがわかないのか頭をひねりながら案内してくれた人は答えてくれた。
「ここから石で水路を作りましょう」
「何を言っているんだ。こんな小さな湧き水がどれだけの量になるというのだ。それにここまで小山を2つくらい越えているんだぞ、水が流れないだろう」
「確かにそう思います。ですから、一度ここに小さい規模の貯水池を作って土に水が逃げないようにします。どれくらいの水量がここにあるのか確認できますよね。その後、小さな水路を試しに作ってみて十分な水量ならそれから水路の幅を広げましょう」
「二度手間になるのではないか?」
「ええ、でも失敗したときのリスクは少なくなります」
 そうして、村の人が交代で貯水池を作りはじめたところなのです。
「これは、今の水不足のためじゃないんだね」
 女将さんにはこう聞かれた。
「ええ、将来的に水不足にならないための対策です。それと、村までの水路と村から出た水路の両側には、小石や砂利や砂を使って多少は綺麗な水を確保できるようにしましょう」
「あんたが何を言っているか判らないが、上手くやっておくれよ」
 この世界の衛生管理は結構ずさんなのです。まあ、人間自体が頑強に作られていて、あまり下痢をしたり食中毒になったりしないのです。
 驚くべきなのは、村には薬屋がないのです。理由は薬は高額だから。もっとも村長が一元管理していて、必要に応じてもらえる仕組みになっています。それでも使う者はほとんどいません。寝ていれば治るという風習だからなのです。

-横道終わり

 そんな事を思い出しながら村長さんと歩いている。村長さんが挨拶をしてきた人を見て、何か話したそうな気配を感じると、村長の方から近付いて行って話を引き出したりもしています。
 結構な時間をかけてやっと石壁の外に出て、外壁に建ち並ぶ小屋に沿って歩き出します。
 しばらく行くと立ち並ぶ建物の中でも、さらにみすぼらしい小屋に着きました。ああ、最初に出会ったあの子のいた小屋だ。そこに村長と一緒に入っていきます。
「こんにちは。みんな元気にしているかい」
 そう言って村長が入って行くと、そこには大人の女の人と数人の子ども達がいました。
「こんにちは~って村長さんじゃないですか。突然どうしたんですか?それとお連れの方は・・ああ、そうですか」
 世話をしていた女の人は、村長とその後ろにいる私を見て、何かを察したのか子ども達を見回す。数人の子ども達が座って小石を使って何かゲームのようなことをしています。その中にひとりだけ大きい子がいました。
「この子達は?」
 私は、小声で改めて村長に尋ねました。
「ここにいるのは身寄りの無い子ども達だよ。他国の戦争で両親からはぐれたり、両親を失ったりしている子どもや魔獣や魔族に親を殺された子どもとかでな。この村に来る途中の商隊に拾われて来た子達をここで一時的に預かり、もらい手を探しているのだよ。でも、親を待つと言ってかたくなにここに居続ける子や引き取り手のない子もここで預かり続けているのだよ」
「そうですか」
 世話をしていた女の人が大きい子に何か話すとその大きい子は立ち上がってこちらに来た。そう、あの時に私が助け、私をこの村まで連れてきてくれた子だ。金髪碧眼ロングストレート、整った顔立ち。どこかの絵画から出てきたような子だ。その時のことを思い出しながら、私は久しぶりに会ったその子を眺めていました。
 するとその子がぺこりとお辞儀をして私のそばに来て服の裾をぎゅっとつかみました。
 そういえば、私と彼女が最初に出会った時に彼女がそれをして、この村まで来ることができて、そこからこの村で生活を始められたのです。あれから1ヶ月以上も経っているのですねえ。
「ほう、気に入ったのかな。これまで紹介した人には、こんな風に近づくことさえなかったのだが」
 私と目を合わせることもなく、下を向いたまま動かないその子。私もどうして良いかわからず村長を見る。村長は、一度首を斜めにかしげてからこう言った。
「あんたが預かるかどうかは、これから見せるものを見てから決めて欲しい。背中を見せてあげなさい」
 その子は手を離し、私に背中を向け、長い髪をかきあげ髪の毛を胸の方に垂らしてうなじを見せる。ワンピースの胸のボタンを外して、スルリと肩から脱ごうとする。慌てて側にいた女の人が、服が落ちるのをおさえて、肩と背中だけを見えるようにした。その子の背中には羽が生えていた。そう、白い小さな羽が1対。肩甲骨の横から生えていました。
「エンジェル」
 私は思わず口にしていました。私は驚くよりも、その子の美しい容貌に似合ったその羽を美しいと思い、思わずつぶやいていました。まるで天使のようだと。
 その子が服を着直したところで、女の人は他の子達の所に行ってしまいました。残されたその子は、私の方を向き直し、所在なげにしている。私は、ただその子を見ていました。
「見ての通りこの子は、普通の子とは違うのだ。もしかしたら獣人か何かとのあいの子なのかもしれなくてね。数回他の人達にも面通しを行ったが、この容貌だから第一印象はいいのだけれど、背中のあれを見ると難色を示してしまう。もちろん、この子も最初から誰に対しても無反応だったのだよ。さすがにこの子の意思を尊重しないで預けてもろくな事にはならないから、しばらくはここにいてもらったのだよ。どうやら、この子もあんたが気に入ったようだし、あんたもこの子を見ても怖がらなかったから一緒に暮らしても大丈夫そうだ。どうかこの子を預かってくれないだろうか。
 それに、こんな話をして申し訳ないが、外に家を建てるというし、この子が村の中で好奇の目にさらされることもなくなるだろうとも思うから、この子にとっても、わしにとっても都合が良いのだが、どうかな」
 なるほど体の良い厄介払いですか。しかもうさんくさい異邦人と人外の子どもの2人揃ってですからねえ。村長さんは意外にシビアですね。
「まあ、家を作り、実際にこの村で暮らしていけば、みんなも慣れてきて、こんな田舎でも次第に受け入れてくれるものだよ。ただし普通より少し時間がかかると思って欲しい」
「そうですね、そう思うことにします」
 私はその子の前に膝をつき、下から見上げるようにその顔を見る。表情は硬いままだ。
「私と一緒に暮らしてくれますか?」
 そう尋ねると。うれしそうに笑い、私の頭に手を回しぎゅっと抱きしめてくれた。びっくりして倒れそうになるところをかろうじて踏みとどまり。しばらくそうしている。
「ずいぶん気に入られたものじゃのう」
 ほっほっほと笑う村長さん。私も確かにそう感じていました。
「そうみたいですね」
 しばらくは、抱きしめられて動けずにいた。ようやく手をほどいて離れてくれたので立ち上がり、私はこう言った。
「それでは、お互い準備もあるでしょうから、次は家ができた頃にきますね」
 そうしてその子から離れようとすると、服の裾をつかんで離さない。
「そうかそうか。その子も着の身着のままでここに流れ着いたのでその子の荷物はまったくないんだよ。すまないがそのまま宿屋でしばらく暮らしてくれないか」
「ええ?いいですけど、それでいいかい?」
 私は、裾をつかんだ彼女の前に手を差しのべてしばらく待つ。ゆっくりとその子は、服の裾から手を離し、恐る恐る私の手を握った。私は少しだけその子の手を握ってみるとその子もぎゅっと握り返してきたので、承諾と受け止めて、そのままその小屋を出ることにする。
「では、このまま失礼します」
「よろしく頼むよ」
 その小屋を出る時にその子はちらっと残された子ども達に振り返ったが、子ども達は、声をかけるでもなく座ったまま見送っていた。
 残された村長に世話役の女の人が近づいてきて、
「これでよかったのですか?」
「ああ、うまくいってよかった。なにもかもな」
 ほっほっほと笑う村長。相変わらず蓄えたヒゲと長い眉毛でその表情は見えない。
「あの子がいてくれたおかげで子ども達のお世話は楽だったんですけどね。でも先ほどの子ども達の様子を見ていると、意外に好かれていなかったんですかね」
「子どもながらに出て行くことは当たり前と思っていたのかも知れんのう。それともあの子と約束していたのかもしれないなあ。そうか、これで他の子ども達も徐々に巣立っていくような気がするがどうだろうか」
「そうだといいのですが」

○はい、今日から子持ちです。
 子ども達の住んでいた小屋を出て、私はその子と手をつないで歩いている。会話はしていない。そういえば最初に会ったときから単語を教えてくれたくらいで、ほとんど会話をしていませんでした。話すことが苦手なのかもしれませんね。
「さて、その古着もどうかと思いますので、新しい服やら下着やら寝間着やらが必要になりますね」
 手をつないで歩きながら私はその子の顔をチラチラと見ながら話す。少しだけ微笑んだような気がしました。
 古着屋に到着したので、店員さんに下着から洋服まで多少はましな服を選んでもらい、着替えてもらうことにしました。ついでに何着か見繕ってくれるように話しをしていたら、その子が最初の服に着替えて出てきました。
「あら~、可愛い子は何を着ても様になるのねえ」
 店員さんは、着替えの時に背中の羽を見たはずなのに普通に接してくれている。村長が気にしすぎているのかと思いましたが、きっと店員さんの性格なのでしょう。店員さんの方が妙にテンションを上げているのが見てとれます。
 その子は、着ている服を見るために首を斜めにしながらくるくると回っています。店員さんが察して鏡の前に連れて行きました。最初から使わせて欲しいものです。
 遠くからその様子を見ていてふと思いました。その子が着ているのは、古着のはずなのに、妙に目立って見えます。まるでぼんやりと光を放っているかのように。この子、本当に光っていませんか?
 数着試着をした後、着てきた古着を処分してもらうことにして店を出ました。店員さんからは、この服は処分されずに古着屋で仕立て直して、あの小屋に戻すことになると言っていましたが、けっこうボロボロでしたよ。
 古着屋を出たところでお昼時になったので、服などを置きに一度宿屋に戻ることにしました。食堂の方に顔を出し、女将さんに子どもを養うことになった事と今日から預かることになったので、宿泊と食事が1人増える事を話しました。
「そうかい、もう一緒に暮らすのかい。わかったよ。とりあえず小さい寝床は部屋に用意しておくよ」
「もう一部屋でなくても良いのですか?」
「家が建つまでだろう?そんなにかからないじゃないか?」
「はい、出来るだけ早く作るつもりです」
「なら構わないよ。これからこの村で一緒に暮らしていくんだしね」
「ありがとうございます」
 そうして、宿屋での天使様との生活が始まりました。名前を聞いたのですけど、首を左右に振り答えなかったので、最初に呼んでいた天使様と呼んでいます。あ、私は自己紹介でDTと言いましたが、残念ながら名前を呼んでくれません。それに会話は、簡単な会話しかできていません。嫌われている訳ではないはずなのですが、会話したくないのでしょうか。

 そうして、私と天使様との生活が始まった。

Appendix 1-4

 その女の子は、薄暗い路地裏の壁に向かって何かブツブツと独り言を言っています。
「はい、無事同居することになりました。まだ、宿屋で暮らしていますが、家が完成次第、2人だけになります。
記憶が戻った様子はありません。ええ、魔力量がかなり多いので、思考がダダ漏れなのです。
時折、前世の記憶で何か考えていますが、自分自身のことや転生の理由などは、封印されたままのようです。
はい、このまま監視を継続します」
「・・・・」
「はあ?襲われていないか?多分何もしてこないと思いますよ。宿屋で一緒の部屋で寝ていますけれど、一切手を出してきません。本人が心の中で幼すぎるからと叫んでいますので」
「・・・・」
「ええ、もちろん充分気をつけます。それでは」
 独り言を終えて、壁から離れるときにこうつぶやいた。
「はあ、ヘタレなのは相変わらずよね」

続く


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