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いまさら愛せと言われましても
もう、遅いんですよ
しおりを挟む私が混乱のあまり碌な動きを見せていないことで彼の態度が徐々に悪くなってきているのが見て取れました。
「おい、早くハイと返事をしろ。いつまで待たせる」
いつまで、と言われましてもまだ問われてから殆ど時間は経っていませんし、了承の返事で固定されているのもどうかと思います。
ですが、どうやら返事を急がせているということは何やら焦っている様子。
まあ、少し前に彼の家の噂で不祥事が発覚して大ごとになりそうだと聞きましたから、それが焦っている理由でしょう。
しかし、理由がどうであれ、すでに関係を絶っている我が家には直接関係のない話ですが、過去に関わりがあったと言うことで国からの監査が入るかもしれないのですよね。
今まで不正をしていた貴族が居たとしてもこのような捜査をしていなかったのですが、国としてはこの際に国政に関わっている不正貴族を一掃したいのでしょうね。
正直、こちらとしては迷惑を被っている側だと思うのですが、王宮の考えも理解できるのです。
「おい!」
特段、苛立ちを隠すようなこともなく彼が私に向かって怒鳴り声を上げてきますが、そんなことをしたからといって結果が変わるわけもないのですけれど。
「申し訳ありませんが、貴方との婚約はすでに破棄されていますし、いきなり来られても対応することができません」
「は? そんなことはないだろ」
何がそんなことがないのでしょうか。そちらから個人どころか家との繋がりを切っておいて、今更どころの話ではないのですけれど。
それとも、自分はまだ我が家との繋がりが残っていて、さらに貴族位が上位だからいつ来ても対応するのは当然、とでも思っているのでしょうか。
「それに、私は既にこの方と婚姻を結んでいますし、今更そんなことを言われましても遅いのですよ」
そちらが婚約を破棄して来たので遅いも何もないのですが。
「は? 何でだよ。俺が先にお前と婚約していたんだから、他の奴と婚姻を結ぶとかありえねぇだろ」
どうしましょう、理解の範疇を超えています。これは婚約を破棄された人は一生婚姻を結んではならない、ということなのでしょうか。とてもあんまりな暴論です。
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