上 下
244 / 255
ハウジングとイベント

73:呼び出し

しおりを挟む
 

 アルス鉱石って私が前にガチャチケで手に入れた鉱石セットの中に入っていたものだよね?
 もう一種類あるけど、どちらも手に入る場所がわからなかったから一切手を出していない鉱石素材だったのだけど、アルス鉱石の方はこいつから採取できるわけか。

 説明を読んだ限り、このオーレスワイバーンからしか採取できないってことはなさそうだけど、特定の特性っていうのはこいつみたいに体に鉱石を纏っていることを指すのかな。いや、生成されるってことだからもしかしてこいつ鉱物食?
 いや、まあそのあたりはどうでもいいか。
 
 よく確認してみれば鉱石と思われる石がオーレスワイバーンの付近にちらほら落ちているのが見えた。
 今私の足元に転がってきたものと同じように体に付いていた物が衝撃で外れたのだろう。

 拾いに行きたいところだけど、オーレスワイバーンが倒れてもがいているから雑に近づくと巻き込まれるかもしれない。
 ダウン状態になっているとはいえ、ぐったりしているわけではないからね。某狩ゲーみたいな感覚で近づくと体の一部が当たってダメージどころか吹っ飛ばされかねないのだ。というかサイズからして下手すれば死にかねない。
  
 ちょっと遠くに飛んだものは回収できそうだからするとして、どれくらいでダウンから復帰するのだろうか。
 体が重そうだから少し長め……あ、ダウン状態から復帰したみたいだ。

 のっそりと、しかし今までよりも少し機敏に動いているような気配がするオーレスワイバーンが立ち上がる。

「グギャオオオアアアアアァア!」

 怒り心頭、といった咆哮を放つとすぐにこちらに向かって突進を開始した。

 ダウン状態から復帰するまで30秒といったところかな。正確には計っていなかったからちゃんとした数値ではないけれど、ざっくりそのくらいだと思う。

 数字にするとかなり長く思えるけど、勝ちにつなげられる長さか、ってなると微妙な時間。
 コントローラーを使ってプレイするゲームだといろいろできる時間ではあるのだ。ただ、自分が実際に動いてするゲームだと体感時間って全く違う。
 ポーションを飲みながら次に使うアイテムをインベントリの中からピックアップするとか、できる人もいるらしいけど私にはできないし。

 今までよりも速い速度で突っ込んできたオーレスワイバーンを、これまでよりも大きく横へ回避する。

「ガアアァア!」

 オーレスワイバーンの状態が『怒』から『激怒』状態に変わっていたから、何かしら行動パターンに変化があると踏んでいたのだけど、案の定、今までの突進とは異なり、私が回避した方向へほんの少しだけ進路を変えてきた。

 【看破】スキルを使っていなかったらこの辺りは気づけていたか微妙なところだよね。
 咆哮した時の様子からして、今までよりも怒っていることはわかるのだけど、状態が変化している部分はわからないし。
 
 気づきやすい部類ではあるけれど、たぶんこの変化は初見殺しとかその類の変化だよね。ギリギリで回避して攻撃をするタイプの近接職プレイヤーだと、気づいて回避できなかったら致命傷になりかねないし。

 思い返せば最初のオルグリッチ戦。途中で翼での攻撃を躱しきれなかったのも今みたいに状態が変化していたからだろうし、あの時から【看破】スキルを使っていたらギリギリ躱せたかもしれないのだよね。

 そんなことを思い返しながらオーレスワイバーンの動きを見てもう1つ、先ほど足元に転がってきたものと同じ鉱石らしきものを拾い上げる。
 【鑑定】を使って確認してみれば先ほどと同じアルス鉱石が表示された。

 こうなると見た目も同じだし他のやつもアルス鉱石っぽいね。また同じように爆破したとして同じように鉱石が取れるかはわからないけど、これはもう少し欲しい。

 少量とはいえ魔力を含むと説明されている鉱石だ。武器などに使えば良い効果がのる可能性は高い。

 魔力云々の説明がされている鉱石は今のところ他に存在しない。魔石は石とついているだけで鉱石ではないし、一般的な素材とは違うのかそのまま使うと微妙な結果にしかならない。おそらくちゃんとした使い方があるのだろうけど、今のところそれは知らない。

 差し当たって、再度怒り心頭といった咆哮上げながら、突っ込んできているオーレスワイバーンからさらに鉱石を手に入れる方法を考えなければ。

 倒せるなら倒したい。そうした方が手に入る素材が多いのだから当然。しかし、現状易々と倒し切れるほどの火力もないし、さらには時間もない。

 残りの爆弾を使ってアルス鉱石を手に入れる。
 まあこれが一番妥当なところ。ただ、2回目はともかく3回目が当たるかどうかはわからないし、同じようにアルス鉱石が手に入るかも不明。
 先ほど右足だったから、今度は左足に当てれば同じようになるとは思うけど。

 ただそれだけだと物足りないというか、絶対足りなくなると思うのだよね。見まわした限りさっきので落ちた数は10もいっていないのだから。

 エンチャントしないとしても最初の一回でいいものが作れるとは思えないし、ある程度試行できるだけの数は確保しておきたい。
 次に遭遇するのがいつになるのかもわからないし、今より状況がいいとも限らない。
 やっぱり今こいつを倒した方がいいよね。となれば、あまり使いたくはないのだけどあれを使うか。

 そう判断して鉱石拾いとちまちま攻撃していた手を止め、ウィンドウのチャット画面を開く。
 それと同時にある機能をオンにした。


アユ:ヘルプ
アユ:手伝って


 チャット画面にそう書き込んで返事を待ちながら怒り狂っているオーレスワイバーンの相手を続けることにする。

 ログインする前にこれからの予定は聞いていたから、急遽予定が変わっていない限りどうにかなるはず。

 うまくいけば倒せる可能性は上がるし、場合によってはより多くの素材を手に入れることもできるかもしれない。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...