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ハウジングとイベント

62:まさかの回収

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 川を越え、森を越えて、戻ってきました初期地点。

 私がいなくなった後も特に変化がないようで、私が知っている見た目とほぼ同じ姿の廃屋は森の中の少し開けた場所に静かに鎮座していた。

 まあ、あれからゲーム内で2月くらいしか経っていないしいきなり壊れたりするわけないよね。木造の初期地点とかはそこを拠点にしていたプレイヤーがいなくなったら崩れることもあるらしいけど、石で作られたこの廃屋があっさり崩れるとは思えないよね。

 周囲を見渡してみるがパッと見た感じ他のプレイヤーがこの場所にいる様子はない。ネズミの王国の中で戦っていたら流石に気付けないだろうけど、少なくとも【感知】で表示されるマップにはこの周辺に私以外のプレイヤーがいるとは示していない。

 他の人が居ないのは好都合だね。でもさっきの白いプレイヤーは別の場所にいったのかな? それとももう用事が済んで別の場所に移動したとか? 前者の方が可能性としては高いかな。

 そんなことを考えながら廃屋に近づいていく。

『簡易セーフティエリアに入りました』

 臨時から簡易に変化しているものの、まだセーフティエリアとしての機能はあるようだ。しかし……

「なるほど、こうなるのか」

 遠目からは変化がなかったように見えた廃屋だったけど、近づいてみれば私が居た時に比べてかなり傷んでいる様子が見て取れた。
 さらに廃屋の中に入ってみれば以前との違いが一目瞭然な状態になっていた。

「これは、大分荒れたね」
 
 もとは普通に歩く分には問題ない程度の荒れ具合だった廊下は、今では足下を気にしながら歩かないといけないくらいに荒れ果てていた。
 それに残っていた2階部分も手前の部分はかなり崩れてしまっている。

 外壁に変化がなかったからわからなかったけど、結構な範囲が落ちてしまっているな。

 うーん。奥の方は元と同じように見えるけど上の階が崩れている部分の廊下は本当にひどいね。高いところだと50センチくらい瓦礫が積もっているかも。

 あとから来たプレイヤーが家探しで荒らして周ったにしては荒れすぎなので、私が新しくリスポーンポイントを決めたことでこうなったのだろう。

 というか、これが本来の状態ということなのかもしれない。
 それにこの分だと私が最初にいた部屋は瓦礫で埋まっていて存在しないかも。ネズミの王国は一番奥の部屋だったし変化があるとは思えないけど、ここまで荒れているとなるとあり得そうだ。

 瓦礫の上を進みながら私が寝床? として使っていた部屋に向かう。足場がぐらついて安定していないので慎重に廊下を進んで出入りができる場所から一番近い所にあった部屋に入る。

 案の定、入り口は結構瓦礫で埋まっていた。奥の方は床が見える程度ではあるけど、私がいた時とは全く違う状態だ。
 
 最初ログインした時に入っていた棺桶は瓦礫で半分近く埋まっていた。ただ、出て行く時に閉めていったはずなのに半開きになっているところを見るに、他のプレイヤーが中を確認するために開けたのかもしれない。

「中身は入っていないはずなのだけどね」

 確認したくなる気持ちは理解できるけども。

 どうでもいい話だけど、廃屋とか廃墟に残っている宝箱の中身ってどうして残っているのだろうか。

 この辺りなり人がほとんど来ないから残っていてもおなしくはないのだけど、他のゲームとかだと街の近くにあるはずなのに誰にも荒らされていないというのが普通にあったりするからね。そうじゃないゲームも沢山あるけど。
 ファンタジーの世界観なんて浮浪者や盗賊が当たり前にいるはずだから、あからさまに価値のありそうな宝箱とか残っているはずないのだよね。
 そもそも廃屋とかの中に綺麗な状態の宝箱とかが残っている自体おかしいのだけどさ。

「……」

 棺桶の上に乗っていた瓦礫が動かせる状態になっていたので、なんとなくどかしてみる。
 別に何があるわけでもない意味のない行為ではあるのだけど、自分が使っていたものが瓦礫に埋まっているというのがちょっとだけ嫌だった。

 あ、地味にこの瓦礫って投擲アイテムとして使えるみたいだ。インベントリにしまえるみたいだし、【投擲】スキルの熟練度上げに使えそうだから取れるだけ取っていこうかな。RaもQuもないから適当に拾ってもインベントリ1枠しか使わないしありかもしれない。
 エネミーに当てたところで爆弾石以上にダメージは微々たるものだろうけど、熟練度上げ目的なら問題はないね。投げたら爆発して消滅する爆弾石と違って使い回しできそうだし。

 持ち上げられる瓦礫をインベントリの中にしまっていく。

 動かせないやつも結構あるけど、ここにある半分くらいは動かせるみたいだね。これなら結構な数が手に入りそうだ。

 せっせとインベントリの中に瓦礫を入れていると突然足元が不安定になり、咄嗟に瓦礫のない床の部分に足を移動させる。

 ん? あれ? 棺桶無くなった!?

 そろそろ瓦礫を退け終え全体が見えるところまで来ていた棺桶が忽然とその場所から姿を消していた。
 そして、私が今足を置いたところはさっきまで棺桶が置かれていた場所である。本来なら棺桶が置かれているはずの場所に自分の足が置かれていることでプチパニック状態である。

 え、なんで?

 どういうことなのか理解できず辺りを見回す。しかし当然ながら棺桶の姿は一切見当たらない。
 もしかしたら作業中に棺桶のDu耐久値が0になったとも考えたが、最初に【鑑定】した際にDuの項目が表示されていなかったことを思い出す。

 破損した可能性はまだあるけど、アイテムが破損した時のエフェクトは見えなかったし、壊れたという可能性は低いよね。

 ちょっと混乱している頭と気持ちを落ち着かせるためにインベントリの中を表示しているウィンドウを見て、驚きから目を見開いた。

 ウィンドウには今まで瓦礫の中から掘り返していた[吸血鬼の古い棺桶]がインベントリの中にあると表示されていた。

「…え?」

 インベントリって手に触れている物をしまうことができるのだけど、もしかして棺桶を触っている状態で[しまう]を選択してたということ?
 ずっと同じ動作だったから少し適当にやっていたのはあるけど、そんなことある?

 え、いやちょっと待って。それより、この棺桶って持ち出せたの? 固定オブジェクトだと思っていたからインベントリの中にしまうって発想なかったのだけど。
 ああでも、確かに棺桶にRaとQuの設定があった。ランタンは持ち出せたわけだし、この棺桶も最初から持ち出せる状態だったってことか。

 ……というかこれ、使うあてあるの?
 どう見ても寝床として使うくらいしか用途はなさそうだけど、あったところで……うーん。

 でも、持っていけるということは何かしら使い道があるということだろうし、寝床としてしか使い道がなかったらハウスの寝室にでも置いておけばいいか。
 


 
 ―――――
 UWWOでは一部固定の物もあるが宝箱も持っていくことが可能。ただしフィールドに落ちていることはほとんどない。
 持っていってもハウスオブジェクトくらいしか使い道はないけど、いじり方次第では別の用途も……?
 
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