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ハウジングと第3エリア

52:どーん!

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 ※今後の更新間隔の調整のため、こちらでは分割での投稿になります
 後半は明日の夜21.10に公開します
 ――――― 



 ガーディアントレントドールの枝から落ちて行ったそれは、元から酷くひび割れていたドールの表面。それが動くたびにガーディアントレントドールの表皮が砕け、剥がれ落ちているのだ。いや、枝から落ちてきている物の量から、表面の物だけでなく中の部分も崩れてきているのかもしれない。

『……鍵の存在を確認。日記の現所有者と補充された魔力の一致を把握』

 多分、というかほぼ確実にハウスに掛かっている幻影魔法が解かれると同時にこのドールは崩れるということなのだろう。

『一部機能の破損、また低下していることを確認。…………これからの動作には影響はないと判断』

 何というか機械的な言動が多いね。やっぱりそこまで良いAIは積んでいないみたいだ。まあ、人の手で作られた存在に一般的なNPC以上のAIが積まれていたら、さすがにどうかと思うし妥当なところなのかもしれない。

 動くたびにボロボロと崩れていく様を見ていると出来れば壊れないように動かないでほしい、と言いたくなるのだけどこの様子からして私の話を聞くとは思えないし、聞いてくれたとしてもまともに会話が成り立つとは思えない。下手に止めようとして触ると余計に崩れそうだし、強引に止めることは出来ない。それに止めたところで直す手立てもないのだからそれをする意味もない。

 もう少し攻略が進んだ状態でこの依頼を進めていたら何か結果は変わっていたのだろうか。

 そんなことを考えている間にも、ガーディアントレントドールは作業を進めていく。

『魔法の解除を開始。魔力による所有者の書き換えを開始…………終了』
『解除の際に障害となる物は周囲にはなし。これより魔法の解除を実行。…………あなたの名前は?』
「ん?」

 事務的というか機械的に作業を進めていたガーディアントレントドールから話しかけられたような? ぼんやり聞いていたせいではっきりと聞き取れたわけじゃないから聞き間違いかもいしれないけど。

『あなたの名前はなんでしょうか?』
「え、あ、アユです」

 えぇ……普通に話しかけてきたのだけど。

 今までの機械的な言動じゃなくて自分の意思で話しかけてきた感じだから、AIの性能が低いとかではなかったのか。
 あれか、今までのは作業だったから確認ついでに復唱していただけで、ちゃんとNPCと同じように自分の意思を持っているタイプだったと。だから普通に話しかけられたと?

 このゲームでのNPCの扱いがよくわからなくなるよ。

 NPCが作ったドールとはいえ、NPCと同じようなAI知能を持っているとか。もしかしてプレイヤーでも同じようなことができるのだろうか。
 この感じだと錬金術でホムンクルスとか作れそうな気がするし、現にゴーレムを修復したプレイヤーもいて、そのゴーレムがちゃんと戦闘で使えたって報告もあるのだよね。
 そういえばインベントリの中に入っているゴーレムの躰とコアも直さないとだね。

『ではアユ。今から魔法の解除を行うので、その場から動かないように……いや、そこから後ろに1歩、いえ、あなたのサイズからだと2歩下がって頂いてもよろしいでしょうか』
「あ、はい」
 
 指示された通りに2歩後ろに下がる。

『ありがとうございます。ではそこから動かないようにお願いしますね』

 これ、イベントキャラ扱いだからある程度しっかりしたAIが積まれている感じなのかも。もしくはそれっぽく見えているだけでテンプレートに当てはめただけの可能性もあるけど、指示の出し方とか自然な感じがするから多分前者かな。ちゃんと自律して言葉を選んでいる気がする。
 
「え?」

 幻影魔法の解除が始まったのか、ガーディアントレントドールのまとっている光が強くなると同時に地面が大きく揺れ始める。
 前触れなく揺れ始めたことに驚いて声をあげてしまったけれど、驚いている間にもその揺れは徐々に大きくなっていく。

 あれ、これ結構危険な感じ?
 障害物がないって言っていた後に動かないようにって指示されたから、単に今の場所から動くと障害物になって魔法が解除できなくなるだけだと思っていたのだけど、もしかしてハウスの出てくる場所に立っていると何かしらの影響を受けるパターンだった?
 最悪弾き飛ばされて死ぬとか?

 それと魔法の解除しかしていないはずなのに揺れが発生するということは、幻影魔法というのはそれだけ強力な魔法ということなのだろう。
 まあ、スタンピードが発生してもそのまま家を封印し続けられるだけのものだったから、それだけ強固に魔法をかけていたとのだろうね。
 あの日記の内容からしてここは何があっても壊したくなかったみたいだから当然か。

 そんなことを考えている間にも揺れが強くなっていく。立っていられない程ではないが動いたら足を取られて転びそうなくらいの揺れだ。

 これ他のプレイヤーにも同じように感じ取れるようになっているのかな。感じ取れるようになっているのなら、何かあったということが知られてしまうのだけど。
 幻影魔法がこの場所だけにかかっていたから外部にまでこの揺れが漏れていないはず。……そう思いたいなぁ。

 他のプレイヤーのことを気にしていたところで、突然揺れが収まる。

 そこからほんの少し遅れて、突如ガーディアントレントの向こうに巨大な何かが下から生えてくるように出現した。


 どーーーーーーん!!


 そんな感じの効果音がつきそうな感じで目の前にいきなり家が生えてきた。
 そう生えてきた。下から筍が生えてくるような感じで。勢いよく。音はほとんどしなかったけどさ。
 
 幻影魔法っていうから何か徐々にハウスの全貌が明らかに! みたいな感じに出てくるかと思ったのに、まさか地面の中に埋まっていたかのように出てくるとは思わないよね。
 まあ、地面が揺れ始めた段階で徐々にっていうのは無さそうだな、とは思ってはいたのだけど。

 ともかく、幻影魔法が解除されたことで目の前に大きな家が出現した。それに伴い今まで草原だった周りの景色も様相を変え、ハウスに付属する庭、家庭菜園や花壇、中にはガゼボらしき物も見える。

 この場所全体がハウスの一部だったのか。幻視魔法の蛇とかギミックもこの中にあったのだから、別に変なことではないしちゃんと考えれば先に気付けたことなんだよね。

 見た感じイングリッシュガーデンみたいかな? カントリーガーデンより自然が多い感じだから多分そっちよりな感じ。私も詳しくはないから絶対ではないけど。
 でも何か現実にあるおしゃれな洋風の家をモチーフにしたようなかなりおしゃれな感じでかなりいい。
 こういうのってテンション上がるよね。
 
 ……あれ? でも100年放置されていたにしては庭が整いすぎている気がするのだけど、どういうことなのだろう。


 ―――――

どうでも良い設定ですが、ガーディアントレントドールさんは女性人格です。性格設定的には騎士風です。騎士風です。それだけです。
陶器のような物で作られたガーディアントレントドールの体が100年程度で崩れた理由は、動けるように作られたのが主な理由ですが、幻影魔法の核となっていたのも大きく影響しています。
オートリペアが機能していたとしても今回の状況は回避できません。
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