上 下
200 / 255
ハウジングと第3エリア

40:強化剤

しおりを挟む
 
 皮素材強化剤も作り終わった。こちらも先に作った方と同じQu:Dになっている。

 さて指定されたアイテムは作ったのだけど、この後はどうすればいいのだろう。たぶんガルスに見てもらってOKが出れば次へってことなのだろうけど、肝心のガルスはまだ帰って来ていないようだし。

「作り終わったんだ。【鑑定】しても良い?」
「あ、はい」

 どうしたものかと思っていたところで後ろからもちもっちが声をかけて来た。そして私が了承するとすぐに机の上に置いてあった強化剤を調べ始めた。

「…うん。問題ないね。やはり熟練度の差か。私が最初につくった強化剤よりQuが高い」
「そうですか」
「このまま次に、と言いたいところだけど、私はこれより先の指示を受けていません。それに大丈夫だと思いますが、ガルスさんの確認も必要でしょう」

 ガルスの確認は必要だよね。レシピを覚えるのも工房では修行の一環だろうし、次の段階に進むには工房主の確認は必須か。

「いつ頃帰って来るのか…わかりますか?」
「わからない。私も聞きたいことがあるから帰って来て欲しいんだけど。用事ついでに知り合いの工房へ行ってくると言っていたから、もう少し掛かるかも」

 まあガルスがお店を出てから2時間も経っていないからね。もちもっちからレシピを教えてもらって、それに必要な素材をギルド倉庫に取りに行って戻って来て、それから強化剤を作ってで、移動時間9の作業時間1くらいの割合だしなぁ。その前に生産はしていたけど、その段階だとガルスはいただろうし。
 もうちょっと作業していたら帰って来るかな?

「すまない。待たせた」

 そんなことを考えたところで工房にガルスが入ってきた。
 何か疲れた表情をしているような? 急いで帰って来たって感じでもないし、何かあったのだろうか。

「おかえりなさい。用事は済んだんですか?」
「ああ。それと、キリアの所に寄って来たんだが弟子入りの話をする前に逃げられた。すまん。あれだと、俺が紹介するよりも自分から行った方が良いかもしれない」
「そうですか。わかりました。近い内に行ってこようと思います」
「ああ」

 うん? キリアって【細工】メインの住民で、たしか弟子入りの条件が【細工】2次の熟練度50%ってところだったはず。
 ということはもちもっちの【細工】スキルの熟練度結構高め?
 それで話の流れからしてもちもっちはガルスの伝手を使って弟子入りしようとしている感じ? 逃げられたってことは話しすら出来なかったみたいだけど。

「それで、アユもすまなかったな。レシピを教えると言っておいてほったらかしにしてしまった」
「いえ」

 たしかに少し待たされたけど、レシピは教えてもらったから問題はない。それにレシピを教えてもらった後はほとんど待ってはいないし、むしろ図っていたのではってくらいにタイミングは良かった。もちもっちも一緒にいたからそんなことはないと思うけど。

「それで強化剤の方はどうなった? もちもっちにレシピを教えておくようにと指示を出しておいたんだが」

 ガルスが強化剤の製作について聞いてくた。もちもっちも聞きたいことがあったと言っていたので、こちらが先でいいのかと視線をやると、どうぞという感じで先を譲られた。

「これ」
「ああ、もう出来ていたのか。早いな。いや、アユの【調合】の熟練度ならそれほど難しくはないだろうし失敗はしないか。素材さえそろえば問題なく作れるだろう。……ああ、やはり問題ないな。Quも初めてにしては上出来だ」

 出来上がっていた強化剤2種をガルスの前に出す。それをガルスはそれを手に取りまじまじと瓶の中に詰まった液体を観察し、そう言いすぐに私にそれを返してきた。

「これなら次の段階に進めていいだろう」
「次?」
「その強化剤を使って強化した素材で装備かアクセサリーを1つ作れ。これは強化剤の使い方を知ることと効果がしっかり出ていることを確認するのが目的だからな。物は何でもいい」

 とりあえず使ってみて効果を確かめろってことか。
 なら、何を作ろかな。適当にウエストポーチとかでも良いのだけど、使うとなると【錬金】で容量を増やさないとまともに使えないし、使えるようにするなら必要な分だけ強化剤も必要だよね。強化剤は素材に使うアイテムだから合成するうちの1つにだけ使ったら最終的に効果は無くなるか薄まりそう。
 まあ、作った後に売りに出せば気にしなくても良いのだろうけど。うーん。

「強化剤って、どれくらい使えばいい…のですか?」

 素材1つに強化剤1つ使うとかだとコストパフォーマンス悪すぎるのだけど、さすがにそんなことはないよね? ガルスに作ってもらった装備の値段からして複数使うなんてことは無いと思うけど、装備、アクセサリー1個当たり何個使えばいいのかわからない。

「強化剤は1部位1つで足りる。胴と腰がセットになっているような2部位使う装備だと2つ必要になるが」
「なるほど」

 上下セットの装備で強化剤をケチることは出来ないのか。まあ、出来たとしても効果が弱まりそうだから止めた方がよさそうだけど。
 とりあえず今は布・皮どちらも一部位分しかないからやっぱり鞄とかウエストポーチを適当に作る感じでいいかな。試しに作る物だからどうせ使わないし。

「作る物が思いつかなかったらそこに基本レシピだがあるぞ。ギルド書庫にあるものとほとんど変わらないが」
「あ、はい」

 何を作ろうか悩んでいる私を見てガルドはそう言って近くの棚を指す。そこにはいろいろな素材や道具に紛れて数冊の本が入っていた。

 そういえばチケットを使った後ギルド書庫には行っていないなぁ。【木工】以外は2次スキルになっているから新しいレシピも見られるようになっているはずだよね。後で行かないと。

「それじゃあ、期限とかはないからゆっくりでも構わない出来上がったら声を掛けてくれ」
「はい」

 ガルスはそう言うともちもっちの所へ向かっていった。
 ふーむ、とりあえず2次スキルの物があるかもしれないしレシピ集の方を確認してみよう。
 えっと、あるのは【裁縫】と【鍛冶】あとは【調合】の本か。まあ、ガルスの工房にあるレシピ集だからそうだよね。ここで【料理】のレシピ本とかがあったら困惑する自信があるよ。

 内容は……おお! 2次スキルのレシピ本だ。【裁縫】と【鍛冶】、調合の方はないみたいだけど調合はもう覚えているから無くても大丈夫。

『【裁縫】の基礎レシピ2を獲得しました』
『【鍛冶】の基礎レシピ2を獲得しました』

 さっそく棚から2冊取り出し、時間が惜しいのでところどころ読み飛ばしながら読み切るとレシピ取得のアナウンスが流れた。

 これで良し。
 後はもう1冊。薄い冊子の物だ。紙のよれ方と文字の感じから手書き、おそらくガルスが書いたと思われる物。内容は……うん。読めない。場所によっては読めるけど、メイン部分がほとんど読めない。スキルの熟練度なのか修行の進行度なのか、今の私には読む資格がないようだ。
 なので、これは一旦放置ということで。

 それじゃあ何を作るか、とりあえず今覚えたレシピの中で良さそうなものがあったらそれにする感じでいいかな。

 本を棚に戻した後、【裁縫】のレシピ群の中からNEWと表示されているレシピを物色していく。
 大半は基礎レシピ1の上位版、基本的な皮系布系装備だね。他だと素材製作とか中間素材になる感じ。っと、お? 採取師のツナギ。これも上位版があったのか。
 ふむ。そういえばなんだかんだ採掘用のツナギは作ったけど、採取用の服は作っていなかったね。
 この装備だと上下セットだから強化剤が2つ必要だけど、足りなければもう1つ作ればいいだけだよね? それに最初から簡易エンチャントを使った素材を製作に使えば、今後も使える装備になるし問題ないしむしろいいくらい。

 他に候補もないしこれでいいかな。素材は森熊あたりでVITを高める感じで……。よし。それじゃあ、素材を強化しつつ採取用の装備を作っていくことにしよう。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。 書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。 【第七部開始】 召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。 一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。 だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった! 突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか! 魔物に襲われた主人公の運命やいかに! ※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。 ※カクヨムにて先行公開中

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

処理中です...