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ハウジングと第3エリア

36:生産スキルは繋がっている

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『アナウンス
 条件を満たしたため、LV上限が一段階緩和されます』

 【上級錬金】を3次スキルである【錬金術】にした翌日。オルグリッチと連戦し、途中に出て来たグラングリッチを多少苦戦しながらも倒していたところで、【身体能力向上(小)】の熟練度が100%に到達。BOSSエリアを出たところで上位スキルである【身体能力向上(中)】を取得し、それと同時にLVキャップ解放のアナウンスが流れた。

 これでLVの上限50になった。オルグリッチとグラングリッチを倒してようやくLVが1つ上がって29になったくらいだから、次の上限に到達するのにどれくらい時間が掛かるかわからないけど、とりあえず目的は達成ということで。

 あとは各エリアに居るBOSSのレアを倒してネームドを倒す予定なのだけど、その前に装備の更新でもしようかな。本当に今の装備でフィールドに居ると見て来るプレイヤーがちらほら居るし、中にはついて来ようとしているプレイヤーも居た。まあ、そういうのはBOSSエリアに入ったりシャドウダイブを使って振り切ったりしたのだけど、さすがに一々そうしなければいけないのは面倒だ。

 私=このコートみたいになっているから、先に新調すべきなのは今付けているコートなのだけど……うん。裁縫も2次スキルになったし、そろそろ自分で作って新調しようかな。
 元々は皮素材を消費するためと鞄を作るため、それにいずれ自分の装備を作るために取得したスキルだから、いつまでもガルスの所に行って新調してもらっていたら【裁縫】スキルを取得した意味はない。

 前に採取スキル用の装備を作ったとはいえ、普段使う装備も自分で作れないと意味はないよね。

 そう言えば、生産用の装備って初心者用の装備は総合ギルドで買うことが出来たけど、それ以上の物はどこで買えばいいのだろうか? 錬金板はガチャチケットで手に入れたものだからどこで買えばいいのかわからない。
 生産施設の受付で売っていた物は初心者用の物だけだったから、他の所で買うことになるのだろうけど……、聞いてみればわかるかな。

 そう考えて総合ギルドに戻って生産施設の受付に立っていた受付の人に聞いてみたところ、

「初心者用以外の装備ですとここでの販売はしていませんね。通常の生産装備であれば総合委託掲示板で売られていたかと。それか、ここではないギルドと関りのある工房であれば販売していたかと思います」

 という返事が返ってきた。

 その言葉に従って総合委託で生産装備を探したところ普通に売っていた。基本的に総合委託の方では素材や圧縮用の鞄ばかり買っていたから気付かなかったけど、初心者用の生産装備も普通に売っていたようだ。しかもこっちの方が本の少しだけど安く、ちょっと損をしていたらしい。

 でも初心者用以外の生産装備は微妙? 装備条件が1次スキルの熟練度50%からだし、2次スキル向けではないような。それとも買うのが遅かっただけで今の段階でこれを装備しているのが普通なのかな。通常の、って言っていたからこれを使うのが普通なのだろうし。

 ちょっとすぐに買うのは悩むね。そもそも常に生産設備を使えば必要ないと言えば必要ないし。いや、【裁縫】と【細工】は他と違って生産装備に付属している物を使うから要らないってことにはならないか。

 うーん。あとはここではないギルド、と言うのは生産ギルドのことかな。それでそこに関わっている工房……ガルスの所も裏に工房を持っているって聞いたことがあるし、おそらくそれかな? 少なくとも紹介先の工房として挙げられるという事は総合ギルドと関りを持っているのだろうし、生産ギルドと関りを持っていてもおかしくはないよね。

 これは一回ガルスの店に行って生産装備の事を聞いた方が良いのかな。よくよく考えてみればコートをあのまま新調する方法とか知らないし、その辺りも聞いた方が良いのかもしれない。

 そう思ってガルスの店に行ったのだけど……

「このコートの強化はこれ以上無理だな。もう強化できる部分はいじってあるし、元は確かマントだったよな? マントからコートにリメイクしている関係で強化枠を使っちまってる。マントのままだったら……いや、それでも後1回が限界だったろうな」

 ガルスの店に着いて生産装備とコートの強化方法について聞くと、ガルスが申し訳なさそうな表情で強化について説明してくれた。

 装備の強化については最初にマントをリメイクする際に説明する予定だったらしいのだけど、ゴフテス云々の所為でそれを忘れていたとのこと。
 ただ、最初からあの元となったマントを装備するつもりはなかったから、その説明があったとしてもたぶんあの時の私はコートへの改造を選んだと思う。
 まあ、とりあえずこのコートがこれ以上強く出来ないことはわかった。

 装備を強化できる回数と言うのはどうやら装備のRaによって変わるらしく、Ra:Cでは強化できず、Ra:Ucなら1回、Ra:Epで2回とRaが1つ上がるごとに1回ずつ増えていくらしい。
 今私が装備しているコートも最初のリメイクで1回、その後にフォレストシャドウウルフの素材で強化しているので、これ以上強化できないということになる。

「これよりも強くするなら、新しく作る必要がある?」
「そういうことだ。他に方法はないな」

 なるほど。ならどうしようかな。それなりに愛着が湧いているから使い続けられたらって思っていたのだけど、さすがにずっと使い続けるのは無理だし、仕方ないよね。ずっと使い続けられる装備なんて特殊な物以外は存在しないし。

「どうする。新しく作るなら依頼を受けるが。そういや、最近はよくワイバーンの素材が持ち込まれるから嬢ちゃんも持っているんじゃないか?」
「持ってはいるけど」
「うん? ああ、何かに使う予定でもあるのか。なら他の素材を使うことになるが」

 ガルスの言葉に私は小さく首を横に振る。そしてその後に今回は自分で作ることを伝えた。

「なるほど。いつの間に【裁縫】スキルを取得したのかはわからんが、既に2次スキルになっているなら、ワイバーンの素材もギリギリ扱える範囲か。十全に性能を引き出すには熟練度が微妙だが、まあ失敗も糧になるからな」

 最後の一言、暗に失敗するみたいなことを言われた気がするけど、間違いでもないのだよね。少なくても作り始めてから何度も失敗、と言うかQuが下がって微妙な性能になるだろうし、求めているような性能の物を作り出すには結構な数を作り続けないといけない。
 アクセサリー枠に入るコートだけなら難易度も低いだろうし、それほど数を作らなくても良いはずだけど、装備枠に入る胴装備は結構手間がかかる物だから相当な回数失敗すると思う。

 でも、実のところワイバーンの素材は結構な数があるから、失敗しても素材の数の心配はいらないのだよね。

 フィールドBOSSのワイバーンを倒したのは1回だけなのだけど、たまに委託で売られているワイバーンの素材を買っているので、自分で作る際に何度か失敗してもいいくらい十分な数を確保している。

「それで生産装備はここに置いてあるのですか?」
「おっと、すまん。装備製作の方の話を優先させちまったな。生産装備ならここでも扱ってるぞ。鍛冶、裁縫、調合の3種類しかないけどな」
「……調合?」

 鍛冶と裁縫ときたからその工房に対応した生産スキルの装備が買えるのだと思うけど、調合の装備まで扱っている理由がわからない。

「おう、調合の生産装備は扱っているぞ」
「どうして?」
「どうしてって、俺が扱える生産スキルだからだが?」

 私の疑問を別の意味に取ったのかガルスはズレた回答を寄こした。そして再度私が言葉足らずの問いを投げかけると、多少ましになってはいるものの完全な答えにならない言葉が返ってきた。
 それを聞いて私は首を傾げる。

 ガルスが使えるから売っている、それはわかった。でもどうして防具製作専門のガルスが調合スキルを使えるのかがわからない。

 私の態度を見たガルスが同じように理解できないと言った表情をしたが、すぐにその理由を理解したのか表情を変えた。

「ああ、どうして俺が調合スキルを使うのか理解できなかったのか」

 その言葉に私は首を縦に振って肯定する。

「装備を作る際に耐久値を上げるのや染色のために色々薬品を使うからな。物によっては属性耐性も付けられたりするからな。それのために調合スキルを取得したんだよ。装備に使う素材には1つだけで作れない奴もあるだろ。そういうのはそのままだと耐久がいまいちになるから、製作途中で薬品を使って強化するんだ。嬢ちゃんが使っている装備にも使っているんだぞ?」
「そう…なんですか」

 それは知らなかった。でも、確かにその辺りで遭遇する小型エネミーから取れる素材だと、そのままだと継ぎ接ぎの多い壊れやすい装備になる。それを補うための素材を作るために【調合】を取得していたのか。納得。
 そういう薬品系のアイテムって装備を作った後に使用する物だと思っていたから、その考えには至らなかったな。
 私の使っている装備も複数の素材を使っているから必要だったという事なんだろうね。

「まあ、そんな感じで長く使っていたから、ギルドから調合の方も販売許可が下りたって感じだな。本職には及ばんから調合はある程度の指導しかできないがな」

 指導、と聞いて一瞬首を傾げかけたが、生産プレイヤーと工房持ちの生産NPCの間で子弟システムがあったことを思い出した。

 掲示板で知った情報だから詳しくは知らないけれど、たしか結構早い時期から弟子入りしている生産プレイヤーが居たよね? となるとガルスの工房にも弟子入りすることが出来ると。
 ……JOBが違っても弟子入り出来るのかな?


―――――
いいサブタイが思いつかなかった。

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