126 / 261
廃村の復興と素材を探して
38:ファルキン視点より2 後
しおりを挟むほどなくして地面に落ちて来たワイバーンはその場に居たプレイヤーたちの総攻撃に寄ってポリゴンに変わっていった。
ワイバーンがポリゴンに変わる直前にアユの攻撃らしきものが見えたので、やはりあの離れた位置にいたプレイヤーはアユだったのだろうと確信した。
ワイバーンだったポリゴンが殆ど消えたあたりでワールドアナウンスが流れた。それを聞いた周囲に居るプレイヤーたちは歓喜の叫びをあげる。
そして直ぐに個別のアナウンスが目の前に現れた。
『アナウンス!
フィールドBOSSであるワイバーンの初討伐に成功しました!
―――――――――――――――
(フィールドBOSS)ワイバーン討伐 RESULT
最終戦闘参加プレイヤー数:37 パーティー数:8
討伐時間:01:57:43
総合MVP:秘匿
累計ダメージMVP:秘匿
戦闘貢献MVP:秘匿
ファーストアタック:なぷ
ラストアタック:ファルキン
―――――――――――――――
おめでとうございます!
討伐が成功したため報酬が発生します。
ラストアタックに成功しました。これにより報酬が発生します。
発生した報酬がインベントリへ送られました』
ラストアタックの欄に俺の名前があることに気付いて内心ガッツポーズをとる。
このアナウンスは討伐に参加したプレイヤー全員に表示されている物だろうし、ラストアタックは誰もが狙っていただろうから、大っぴらに喜べば反感を買うことになるだろう。
少し離れた位置に戻ってきてよかった、と叫んでいるプレイヤーが居るが、もしかしたらファーストアタックをしたプレイヤーかもしれないな。
「ラストアタックおめでとう、ファルキン」
「おお、ありがぐっ?!」
そう言って俺の肩に手を置いて来たふとももに言葉を返そうとしたところ、いきなり肩に痛みが走る。ダメージがあった訳ではないが痛いものは痛い。
「痛いのだが、ふともも」
「ははは」
ラストアタックを俺が取ったことによる嫉妬だとは思うが、ほとんど冗談だろうな。すでに手は肩から退かしているしな。
「ま、ここで騒いでいてもしょうがないから、セントリウスに戻ってから報酬の確認だな」
「そうだな。あ、そう言えばアユは……」
周囲を見渡すが、アユらしきプレイヤーは既に居なくなっていた。
「アユさんっぽいプレイヤーなら、すぐこの場を離れて行きましたよ?」
「マジか」
どうやらリラはアユがこの場から離れていくところを確認していたようだ。
まあ、RESULTの秘匿の部分。確実にアユだろうし、さっさとこの場を離れるのは正しい判断だよな。残っていたら囲まれるのは確実だろうし。
セントリウスのギルドに戻って報酬の確認を進める。
通常の討伐報酬はワイバーンの素材系だな。イベントの時に出たワイバーンと同じ素材が報酬としてインベントリに入っていた。あれだけ強かったのに同じ素材かよ、と思ったが、Quが2段階ほど上だったので、ここで差をつけたという事なのかもしれない。
「ラストアタック報酬って何だったんだ?」
「ちょっと待ってくれ、ログを見る」
インベントリにそれらしきアイテムが入っていなかったから、おかしいと思いつつログを見る。そこにはしっかりとラストアタック報酬としてワイバーンのヒレ肉を獲得しました。というログが残っていた。
「……え?」
ちょっと待て。ラストアタックの報酬だから有用なアイテムだと思っていたんだが、まさか肉? 嘘だろ?
もう一度ログを確認する。やはりラストアタックの報酬はヒレ肉だった。
「……」
無言でインベントリからワイバーンのヒレ肉を取り出す。取り出したその肉はヒレ肉というように美味しそうな肉ではある。しかし、肉。
「なんでそれ取り出した?」
「何故、肉?」
「見たこと無いお肉ですね?」
いきなり肉を取り出した俺の行動に、意味不明と言った様子でメンバーが声を掛けて来る。
「ファルキン、まさかそれがラストアタック報酬か?」
俺の意図を読み取ったのかエンカッセが気まずそうに声を掛けて来る。その言葉に俺は首を縦に小さく動かし肯定の意を示す。
「え? これが?」
「……ワイバーンのヒレ肉。初見の素材ね」
困惑した様子のリラと、すぐ俺が出した肉に対して【鑑定】を行ったプリネージャがそう言葉を発した。
「お前にはガッカリだよ!」
「いや、俺の所為じゃないだろ。これは」
わくわくしながら報酬を確認したら肉だった俺の気持ちを考えてくれ。それに、そう言いたいのは俺も同じだ。
「いや、でもこのお肉、Ra:Epだよ?」
「確かテールもEpだったからそこまでじゃないだろ」
「まあ、胸肉とかもも肉みたいに、すでに確認されている肉ではないのだからいいじゃないか」
「確かにな」
唯一の救いはそれだ。ただ、肉以外の素材であれば武器や防具の強化に使えたかもしれないのに、肉だと料理にしか使えない。
「しかし、何で肉になったんだ? 他のゲームだと結構いいアイテムしか出なかったりしてただろ」
「わからん」
「どうなのでしょうか? あ、でもラストアタックだけ狙っているプレイヤー対策と考えれば、変でもないかもしれませんね」
「んーあー、それはありそうかも」
ラスアタの対策か。在り得るな。UWWOってそういうギスギス案件になりそうなところ結構気を使っている感じがあるし。ただ、それを考えたらファーストアタック報酬があるのは逆効果な気がするんだがな。ファーストアタック報酬があるからって、後先考えず攻撃するプレイヤーが続出しそうだ。
まあ、その辺りは運営に何か考えがあるんだろう。
「そうだとすれば、貢献度が低いプレイヤーがラストアタックをするメリットは減るな。まあ、0になる訳ではないけどさ」
「しっかり統率の取れたメンバーだけであのワイバーンを討伐出来たら、相当いい結果になるんじゃないか? 1人でも馬鹿が居た段階で破綻するけど」
「ラストアタックがそうなら、ファーストアタック報酬も同じ感じだろうな」
色々と話し合ったがラストアタックの報酬が肉だった理由は、俺の戦闘における貢献度が低かった所為、という理由に落ち着いた。
それと他のメンバーの報酬の中に、ヒレ肉の他に初見のアイテムあった。アイテム名は、魔石(小)だ。完全に初見のアイテムだし、似たようなアイテムもない。まあ、宝石が近いかもしれないけど、【鑑定】して出て来る魔石の説明を読んだ限り、使い方は違いそうだ。
魔石と言えば、ファンタジー系の世界観のゲームであれば高確率で存在する物だ。大体は武器や防具を強化したり、スキルの強化に当てたりするものだが、UWWOではサービス開始から今まで一切存在が見つからなかったアイテムである。
今まで見つかっていなかったのに掲示板などで、何故か、絶対にあると断言していたプレイヤーも居たが、根拠を示すことがなかったためその場ではそう思っているだけ、無駄な時間を使ったなどと扱下ろされていたが、そいつの発言は間違っていなかったことが証明されたわけだ。
まあ、手に入ったことは良かったが、使い道はまだよくわからないので魔石については使い道がわかった時に、どうするのかを話し合うことになった。
「ああ、そうだ。エンカッセ」
「なんだ?」
「掲示板の方で情報を出して欲しい、みたいな流れになっているけど、どうする」
まあそうなるよな。俺も戦闘に参加していなかったら掲示板の奴らと同じように情報を欲しがっていただろう。
「そうだな、どうするか。最低限の情報を出すのはいいが、俺たちもそれほど情報を持っている訳でもない」
「ついでに言うと、掲示板への書き込みはファルキンが良いらしいよ」
「なん……だと? 俺が求められている……だと?」
まあ、俺が指名されている理由の見当は付くけどな。
「いや、お前に書き込ませることは無いからな?」
「さすがにわかっているさ。と言うか、掲示板の書き込み設定はオフにしているし、思考入力も音声入力も出来ないように設定しているから、どうあっても今すぐ書き込むのは無理だ」
掲示板の書き込みの入力制限や入力方法の変更は、一旦ログアウトしなければ設定を弄れないからすぐに変更は出来ないし、するつもりもない。さすがに俺の発言で迷惑をかけている以上、もうするつもりもないからな。
「ならいいが」
「まあ、ファルキンはあれだよな。思考入力でバグりやすいタイプ。ある意味、フルダイブ適正が高いってことなんだけど、限度があるからなぁ」
ふとももが軽く笑いながら言うが、俺の意思で調整が出来ないのは結構面倒なんだぞ。まあ、そのやらかしの後の修正なりごまかしが下手なのは否定しないし、考えの浅さは直さないといけないとは思っているが。
「掲示板へは今まで通り俺が書き込む。ただ、出す情報は少し調整しないとな」
「まあ、その辺はエンカッセに任せる」
他のメンバーも掲示板への書き込みはエンカッセに一任するようだ。
「ああ、それと、あの戦闘をちょっと遠い場所からだけど、ライブで撮影していたプレイヤーが居たみたいなんだよね」
「そうなんだ」
そう言えば最近ライブ配信しているプレイヤーが増えたって聞いたな。俺もそれで有名なプレイヤーは何人か知っているし。
「ライブ配信していたのは、いつもと同じくぱぱらっちょんだったんだけど、途中ちょっと問題の場面があってねぇ。みんなは今すぐじゃなくてログアウトした後で確認してくれ。ここで騒ぐのは良くないし、特にファルキンは観覧注意で。あと掲示板も」
「よくわからないけど、わかりました」
俺だけ観覧注意と言われたことにそこはかとない不安を感じたが、ふとももの言うとおりにこの場では誰もその映像や掲示板を確認することは無かった。
報酬の確認が終わった後、エンカッセは掲示板へ書き込む内容の整理を始め、ふとももとプリネージャはワイバーンと戦ったことで消費した道具の補充に、ぎーんはもう少しでログアウトを予定していた時間になるため、先にログアウトしていき、リラはステータスを上げるためにスキルの熟練度を上げると言ってフィールドに出て行った。
俺は一回アユに連絡を取ろうとフレンド一覧を開いたところで、アユが既にログアウト済みなことに気付いて少し落ち込みながらも、リラと同じくスキルの熟練度を上げるために生産活動に勤しんだ。
暫く生産活動をしたあと、ログアウトする予定の時間よりも少し早くはあるが、ふとももの言っていた映像と掲示板が気になっていたのでさっさとログアウトした。
そして、ふとももの言っていたと思われる場面を見て、俺の怒りは天元突破した。
どうして俺はあの時、あのオレンジNAME共に攻撃しなかったのか。あの時の俺を殴りたい。
それにあいつらは既に死に戻りしているから、オレンジNAMEではなくなっているだろう。こちらにペナルティが無い状態で殺せないのは面倒だ。それにNAMEも碌に確認していないし、映像からもその辺りはわからないから、仮にもう1度あった際にオレンジもしくはレッドNAMEだったとしてもわからない可能性が高いな。クソが。
本当に何で俺はあの時、警戒するだけで攻撃しなかったのか。後悔しかないな。
そして翌日の朝。問題の映像であったことであゆを心配して声を掛け続けていたら、すごく嫌がられたことをここに記載しておく。
22
お気に入りに追加
1,222
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。


家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる