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生産したい、色々作りたい
25:セントリウスに帰る
しおりを挟むゴフテスを倒したことでエリアBOSSとの戦闘フィールドから出された。今回はセントリウス側に出ることにしたのだけれど、第3エリアに入る前に気になった事は正しかったようで、セントリウスの防壁が近い場所に飛ばされた。
「これでようやく別のエリアに行けます。って、結構遠くに飛ばされましたね」
「うん」
廃村から見えた防壁に比べて、より近くに見える防壁を見てリラが驚いたように声を上げる。私も同じように驚いてはいるので相槌を打っておく。
それに、ここまで近くに出て来られたのなら、後30分程走れば防壁の所まで着けるはずだから大分楽が出来そう。
次に第3エリアに行く時は多少の手間ではあるけど、ゴフテスを倒して行くことにしよう。
「後はあの防壁の所まで行けばいいのですよね?」
「そう」
そうしてゴフテスを倒した時に得たアイテムを軽く確認した後、私たちは防壁に向かって移動を開始した。
30分程走り、防壁の前に着いたところで第3エリアに行く前に軍人に言われた通り、ノッカーを使って駐在している軍人を呼び、防壁の向こう側に移動した。
リラはまだギルドカードを持っていないので少し時間が掛かったけど、私が最初にここを通った時のようにインベントリを軍人に見せて異邦人であることを証明したことで、防壁を通過することが出来た。
「うん? あれ、何で向こうからアユが? しかも知らないプレイヤーと一緒に居る?」
防壁を通過してセントリウスに向かおうとしたところでセントリウス側から兄のパーティー、正確に言えばエンカッセのパーティーがこちらに向かって来ていた。
そう言えば兄たちは第3エリアに行くために依頼を熟していたんだっけ。夕飯の時にはそろそろその依頼も終わりそうだとも言っていたから、おそらくその依頼を終えて今から第3エリアへ行くところなのかもしれない。
「知り合いのプレイヤーですか?」
「うん、まあ」
リラが驚いている兄の顔と私に視線を移してそう聞いて来た。知り合いには違いないので肯定はしておくけど、兄が驚いているのは私が第3エリア側から来た事なのか、見たことのないプレイヤーと一緒に居たことなのか。まあ、たぶん後者だろうけど。
「アユさん。そちらは?」
「第3エリアであったプレイヤー」
エンカッセが私に一緒に居たリラのことを聞いて来たので要所だけ答える。リラが近くに居るのだから詳しいことはリラに直接聞くべきだ。
「…なるほど」
私の言葉を聞いてエンカッセはリラの方に向いた。おそらく先ほど流れたゴフテスをパーティー討伐したアナウンスが、私たち2人によるものだと気付いているのだろう。
「すいません。ちょっといいですか?」
「ええ、いいですよ?」
エンカッセがリラに話し掛けたので、話に加わるつもりが無い私は一旦そこから離れて兄の元に近付く。
「アユさん? もしかしてさっきの討伐アナウンスはあのプレイヤーと?」
「そう」
「そうか。前のこともあるから知らないプレイヤーとは一緒にプレイしないと思っていたんだけど」
「…そうでもない」
確かに、元から私は知り合いのプレイヤー以外とパーティーを組んでプレイすることは殆どない。でも、全くないわけでもない。
それに、前のゲームでの出来事で知らないプレイヤーとプレイするどころか、関わりたくないと思っているのは否定しない。だけど、問題ないと判断できるプレイヤーならちょっと一緒にプレイする程度なら、絶対に嫌というわけでもない。
まあ、あの事の後のことを知っている兄が驚くのは無理はないと思うけど。
「いや、うん…まあ。アユが問題ないと判断しているならいいか」
「うん」
「ファルキン、ちょっと」
「ん?」
リラとの話が終わったのかエンカッセが兄のことを呼んだ。他のメンバーも近くに居るところからして、リラとフレンド登録をしているのだろう。
兄がエンカッセに呼ばれてそちらに移動したので、私はステータスウィンドウを開いて現在の時間を確認する。
現在は、リアル時間で22時過ぎ。UWWO内の時間で言うと20時半前と言ったところ。
確か、リラはそろそろログアウトする時間だと話していたので、今日はセントリウスに行かずに近くの廃墟でログアウトすることになるだろう。
一応、この防壁の門付近も簡易セーフティーエリアとしての機能はあるみたいだけど、前に私がログアウトしようとした時にすすめられなかったから、ここでログアウトするのはあまりよろしくないのかもしれない。
なので、リラがどこでログアウトするのかにもよるけど、ここでパーティーを解消した方がいいかもしれない。
「ふぅ、またフレンドが増えました。嬉しいですね」
「そう」
やっぱり、兄たちはリラとフレンド登録をしていたようだ。
そして、兄たちは第3エリアに向かうために、これからゴフテスの討伐に向かうらしいのでそのまま見送る。
「私もここでログアウトですねぇ」
「ん? 大丈夫なの?」
「ああ、そこはログアウト用のテントを譲っていただきましたので問題ないです」
「そう」
なるほどテントか。前にPK対策に安全にログアウトするためのテントがあるって聞いたきがする。
「今回は本当にありがとうございました。アユさんが居なかったらここに来るまでに何日かかっていたことか」
「別にそう言うのは」
「いえ、感謝はちゃんと言葉にしないと駄目なので」
「…そう」
「もし、また一緒にプレイできる機会がありましたら、一緒にプレイしてくれると嬉しいです」
「うん」
そうして私はリラと別れ、1人でセントリウスに向かった。
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