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9:リアルで兄と会話2

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 翌日、朝起きてから朝食を食べて少し食休みをした後、直ぐにUWWOにログインした。

 ログインして前日の続きをしようと棺桶から出ようとしたとき視界の端に、お知らせを知らせるマークがあることに気づいて、ウィンドウを出してそれを確認する。

 お知らせ一覧
『 アナウンス
 ステータスウィンドウを出した状態で移動できない不具合を修正しました。
 アナウンス
 一部スキルにおいて熟練度が一定値に達したにもかかわらず、ステータスアップボーナスが発生していなかった不具合を修正しました。修正により発生していなかったステータスアップボーナスは修正と同時にステータスに反映されています。
 不具合のあったスキルの一覧はUWWO公式ホームページにて公開されます 』

 見る限り、お知らせはこの2件だけのようだ。アナウンスがあったのは朝の5時らしい。昨日、動けなかったのは仕様じゃなくて不具合だったのか。いや、それよりもスキル熟練度でのボーナスはSKPだけじゃなかったの? とりあえずステータスを確認しよう。

 ええと、INTが4,MNDとDEXが2ずつ上がっている。【血魔術】と【闇魔術】の分かな。他のスキルはほとんど熟練度上がっていないし、上がっているのはINTとMNDは2つだから間違いないだろう。何でDEXが上がったかは分からないけど。

 そういえば、昨日の段階で使ってなかった【闇魔術】と【血統魔術】の熟練度が少しだけ上がっていた。やはり常時発動している[夜目]の影響で暗い部屋とかにいると熟練度が上がるようだ。

 今日もこの初期地点の部屋でスキルの熟練度を上げて行こう。あ、いや今、ゲーム内は16時くらいだから2時間くらいは【日光脆弱】の熟練度を下げる方がいいかな。18時以降はそこまで日差しも強くないししダメージも少なるからそれまでは【闇魔術】の熟練度あげて、その後にこの部屋に戻ってきて【血魔術】の熟練度上げって感じでいこう。

 そうして2時間日差しに当りつつリスポーンしながら【闇魔術】の熟練度を上げ、その後はリスポーンしたまま部屋で【血魔術】の熟練度を昼食のログアウトの時間まで上げていった。


 ログアウトして昼食を食べる前に洗面所で簡単に支度してからリビングに行く。
 昼食はまだ出来ていないようだが兄はすでにリビングにいた。いつも新しいゲームが出てしばらくは、予定の時間ギリギリに出てくることが多いはずなのに何故今回は早いのだろうか。

「お、やっと出てきたか、あゆ」

 やっとと言われてログアウトの時間を間違えたかと思い、リビングの壁にかかっている時計を見ると、まだ12時半にはなっていなかった。

「いや、遅かったって意味で言ったんじゃないんだけど。ただ俺が出てきたのが早かったからその分遅いって感じて言っただけだ」
「そう。いつもより出て来るの早いのは?」
「……今組んでるメンバーの1人が午後に予定があるらしくて、早めに抜けるって言ったから、じゃあ俺たちもそのタイミングでログアウトして昼食にしようってなったからだな」

 兄が先にいた理由はわかったけど、一瞬動きが止まったのはどうしてだろう。私はさらに首を傾げた。


「昨日の夕飯からのログイン時間から考えて、UWWOで半日経ったけど進捗はどうだ?」

 昼食後の食休み中、お昼のニュースを見ていると兄が話しかけてきた。まだ部屋に戻っていなかったのか。

「まだ初期地点」
「大丈夫なのかそれ」
「たぶん。今、スキル上げてるから」
「大丈夫ならいいけど。ああ、あれか初期地点の敵が強くて動けないパターンか」
「ん。そう」
「掲示板でもそういう奴いたからなぁ。そいつは他のやつに手伝ってもらってイスタットに行ったらしいけど」

 どうやら私と同じように初期地点から動けなかったプレイヤーが居たらしい。まあ、私はほとんどRACEの所為で動けなかっただけだから理由は違うけど。

「そういや、あゆは今マップ上のどこにいるんだ。マップに所属国の名前とか出てるだろ」
「所属国?」
「いや、マップの右上に何とか国領って載ってるだろ」

 マップにそんなもの載っていただろうか。いや、周辺の状況を確認したときにマップ全体をしっかり見た記憶があるから、その時に見ていないからおそらく載ってはいなかったはず。

「なかった…はず」
「なかったってそんなはずない…いや、もしかして第1エリアじゃないのか? そう言えば掲示板のやつもギリギリ第1エリアとか言ってたからあり得なくはない…のか?」
「わかんない。ただ、たぶん北の方だと思う」
「なんで北の方」
「チュートリアルの矢印が南に長く伸びてるから」
「ああ、なるほど。いやしかし、第1エリアじゃないなら、移動手伝えないじゃん」

 今のところ、別に手伝ってもらってまで進めたいわけではないのだけど。まあ、UWWOは兄が誘ってきたから現状を聞いてどうにかしたいと思ったのかもしれない。

「自力でどうにかする」
「そうか。まあ何かあったらフレンドチャットか飯の時にでも聞いてくれ。わかる範囲なら答えるぞ」
「わかった。そういえばそっちはどんな感じ?」

 私の進捗は最初からほとんど変化はないけど、兄が私の進捗を聞くのだから、私が兄の進捗を聞いても良いだろう。それに他の人の進捗も多少は気になるし。

「進捗なぁ。正直芳しくない」
「なぜ」

 私の進捗を聞いてくるくらいだから大分進んでいると思っていたのだけど、どうやら違うらしい。

「ベータの時と比べてレベルの上りが遅い。正直、倍かそれ以上倒さないとレベルが上がらない。その所為で第1エリアのエリアBOSSが倒せなくて、国間の移動もできない状況。しかもそのBOSSもベータの時より強くなってる」

 まあ、UWWOのサービスが始まって2日目なのだからBOSSが倒せていないのは問題ないのでは? レベルが上がり難いって言うのはわからないけど、簡単に上がりすぎるのも問題だから変という訳ではないと思う。
 簡単に進められるゲームは飽きられやすいからちょっと難しいくらいがちょうどいいと思う。まあ、過度に難しとか面倒なことが多過ぎてもユーザーは離れていくけど。

「いや、これぐらいがゲームとしてのバランスが良いのはわかっているけど、ベータの時との差が大分ある所為で、俺を含めたベータ組はかなり戸惑ってる」
「そう」
「それにレベルが上がりにくくなってるから街から近い狩場で渋滞が起きてる。その所為で正直雰囲気があまりよくない。俺らが早めにログアウトしたのもこれが理由の1つだし」

 MMOのサービス開始直後によくある問題だ。レベルが低いから行ける狩場が制限されるし、サービス開始直後だとプレイヤーのレベルが横並びだから行ける狩場は大体一緒になる。結果敵のリポップが間に合わなくて、出たら出たで直ぐに倒される。思うようにレベルが上げられなくて周囲のプレイヤーとギスギスし始める。おそらく敵のリポップは通常より多くなっているはずだけど、それ以上の混雑と言うことなのか。

「それに、初期地点に選べる国で偏りが出たのがなぁ。プレイヤーが少ないサウリスタだと問題なく狩れてるらしいから」
「そういえば、兄さんはウエストリアだよね?」
「ああ、そうだな。他に比べて事前情報で一番無難な国だったからプレイヤーが1番多くて大分雰囲気悪くなってる。イスタットも似たような感じらしい」

 なるほど、と言うことは今の私の状況はそんなに悪いという訳
わけではないのかも? プレイヤーがたくさんいる環境でプレイするよりも、1人でプレイしている方が気は楽でいいし。まあ、先に進めないという状況を考慮するとどっちもどっちな気はするけどね。

「あ、やべっ。集合の時間じゃん」

 どうやら一緒にプレイしている人たちとログインする時間を決めていたらしく、兄は慌てて部屋に戻っていった。
 それから少しして私も部屋に戻り、UWWOにログインした。
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