63 / 68
転生ガチャでSランクの転生チケットを当てて聖女に転生! って、は? いやちょっと待て、この状態は求めていなかったんだが!?
シェケルの独白
しおりを挟むちょっと暗くて支離滅裂な部分がありますが、若干病んでいるシェケルの内情なのでそういうものだと思ってください。
―――――
「ふはぁ」
聖女さ……いえ、あの人が婆さまに連れられて聖堂から住居区へ移動していったのを見送った僕は、聞かれないようある程度時間を置いてから大きく息を吐いた。
まさか、また聖女様に会えるとは思っていなかった。中の人は違うみたいだけど見た目は完全に聖女様だ。仕草も話し方も本当にそっくりで、聖女さま本人なんじゃないかと疑ってしまうほどに似ているけれど。
……でも、聖女様が生き返ったわけではない。それは理解している。あの時本当の聖女様は亡くなった。
聖女様によって住居区にある自分の私室に閉じ込められていたからその場を直接見たわけではないけれど、部屋の中にまで聞こえて来た悲鳴は今も覚えているし、未だにその悲鳴が聞こえている気がしてならない。
聖女さまが亡くなってまだ数日。……もう数日が経っている。
僕はこの教会の司祭として、いつまでも引きずっているわけにもいかないのはわかっている。理解している。
これが他の人だったならばすぐに切り替えることもできたはずだ。
だけど、亡くなったのは聖女さまだ。そう簡単には切り替えられない。
どうして聖女さまは亡くなったんだろう。
この時を納める領主が悪どい人物だったからか? 教会の運営に領主の助けが必要だったからか? 教会本部の対応が遅かったからか?
……違う。僕に力がなかったからだ。
領主がああいう人物だったのは最初からわかっていたことだ。教会の運営だって地域のお金を使っているのはどこだって同じだ。教会本部の対応だって別に遅くはなかった。ただただこの地が地位すぎただけだ。
少しでもあの領主の行動を止めるだけの力が僕にあれば聖女さまは自ら死にに行く必要はなかったんだ。
無力は罪だ。
だから全部僕のせいなんだ。
この教会で一番力があったのは僕で、聖女さまを庇わないといけなかったのも僕なんだ。
あの時もっと強く聖女さまを制止出来ていれば、少し前に届いた教会本部からの制止命令が間に合ったかもしれない。
僕がもっとしっかりしていれば……
違う。聖女さまは僕がこんなことを考えることを望んでいないはず。
……駄目だ。
1人になった途端、こんなことを考えてしまうのは良くない。あの人に会う前だって、余計なことを考えないように必要のない夜の見回りをしていたんだ。
もうこんなことを考えるのはやめないと。
「はは」
乾いた笑うが口から漏れる。
そう思って簡単に切り替えられればここまで苦労していない。
実はあの人は聖女さま本人なのでは? 僕のことを驚かせるために知らないふりをしているだけで……
そんなことがないのはわかっているんだ。
聖女さまが亡くなっているのを確認したのは僕だし、その弔いを主導したのも僕だ。
どんな状態であれ、僕が聖女さまを見間違うことは絶対にない。
絶対にあり得ないんだ。
聖女様の笑顔が好きだった。
楽しそうに僕の名前を呼んでくれることが好きだった。
僕が話しかけると嬉しそうにしてくれた聖女様が本当に好きだった。
でも、それを見ることはもうできない。2度とあの聖女さまに会うことはできないんだ。
10
お気に入りに追加
146
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。
しかし、ある日――
「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」
父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。
「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」
ライルは必死にそうすがりつく。
「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」
弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。
失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。
「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」
ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。
だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる