68 / 72
騒動の収束
再会 ※ロジー視点
しおりを挟む実家を出た翌日。私はグレシア辺境伯領に到着していました。辺境伯様のお屋敷がある場所にはまだ辿り着いてはいませんが、今日中には到着する見込みです。
ここまで来ておいて今更ですが、お嬢様に会ったとして、どのような反応をすればいいのでしょう。
あの後に聞いた話では、お嬢様はこちら、アレンシア王国へ亡命という形で移動してきているようです。その過程でグレシア辺境伯様のところで保護されたようですね。
しかし、私が解雇された後に亡命とは、私が居なくなった後に何があったのでしょうか。耐え性のお嬢様がすぐさま亡命を選ぶのは相当状況が悪かったとみえます。
まさか、それもオグラン侯爵様の策略の内なのでしょうか。私の時も手を回していましたし可能性は高そうです。
グレシア辺境伯様のお屋敷は周囲の土地よりも一番高い場所にあります。当然乗合場所では近くまで行きませんし、むしろ止まる場所が固定されているためやや離れた位置で降りることになります。
「なだらかとはいえ、この年で長く坂道を歩くのはなかなかに堪えますね」
馬車で移動出来れば気にならない程度の坂ですが、人が歩くとなれば平地を歩くよりも当然疲れます。ましてや普段あまりこのような環境に居ない山場を越えた女となれば当然のことでしょう。
「荷物が少なかったのは幸いでしたね」
疲れを誤魔化すために一人言を呟く。さすがに無言で歩き続けるのはつらいです。
乗合馬車を降りて1時間程歩いたところでようやくグレシア辺境伯様の屋敷の前に着きました。
屋敷の前とは言いましたが、正確には屋敷が立っている敷地の前ですね。そこの門の前に立つ騎士に話しかけます。
「すいません。本日、グレシア辺境伯様と面会を予定している者ですが、中へ入れては貰えませんか? 許可証はこちらになります」
許可証を騎士に見せている間、近くから伝書鳥が屋敷の方へ飛んでいくのが見えました。おそらく私が来たことを屋敷の中に居る使用人へ伝えるための物でしょう。
そして許可証が本物であることがわかると、門の中に入ることが出来ました。
さて、これで後はグレシア辺境伯様に会ってレミリアお嬢様との面会の許可を得なければなりませんね。
「ようこそ。中にお入りください」
屋敷の前に到着すると、屋敷の前に立っていた執事の方が屋敷のドアを開け中へ誘導してくださいました。そして屋敷の中に入るとすぐ視界に飛び込んで来た人物は――
「……ロジー? どうしてここに?」
薄らと驚いた表情をしているレミリアお嬢様でした。
まさかレミリア様が出迎えに出て来るとは。想定していませんでした。グレシア辺境伯様もなかなかの人物の様です。
ですが、レミリアお嬢様が驚いている表情を見るのはいつ以来でしょうね。少なくとも5年は見ていなかった気もします。
「お久ぶりですね。レミリアお嬢様。お元気でしたか?」
そう言うとレミリアお嬢様は表情を変え、安堵したような顔つきになりました。
何故でしょう。その表情を見ていると、とても嬉しい気持ちになりますね。
23
お気に入りに追加
846
あなたにおすすめの小説
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
妹に醜くなったと婚約者を押し付けられたのに、今さら返せと言われても
亜綺羅もも
恋愛
クリスティーナ・デロリアスは妹のエルリーン・デロリアスに辛い目に遭わされ続けてきた。
両親もエルリーンに同調し、クリスティーナをぞんざいな扱いをしてきた。
ある日、エルリーンの婚約者であるヴァンニール・ルズウェアーが大火傷を負い、醜い姿となってしまったらしく、エルリーンはその事実に彼を捨てることを決める。
代わりにクリスティーナを押し付ける形で婚約を無かったことにしようとする。
そしてクリスティーナとヴァンニールは出逢い、お互いに惹かれていくのであった。
せっかく家の借金を返したのに、妹に婚約者を奪われて追放されました。でも、気にしなくていいみたいです。私には頼れる公爵様がいらっしゃいますから
甘海そら
恋愛
ヤルス伯爵家の長女、セリアには商才があった。
であれば、ヤルス家の借金を見事に返済し、いよいよ婚礼を間近にする。
だが、
「セリア。君には悪いと思っているが、私は運命の人を見つけたのだよ」
婚約者であるはずのクワイフからそう告げられる。
そのクワイフの隣には、妹であるヨカが目を細めて笑っていた。
気がつけば、セリアは全てを失っていた。
今までの功績は何故か妹のものになり、婚約者もまた妹のものとなった。
さらには、あらぬ悪名を着せられ、屋敷から追放される憂き目にも会う。
失意のどん底に陥ることになる。
ただ、そんな時だった。
セリアの目の前に、かつての親友が現れた。
大国シュリナの雄。
ユーガルド公爵家が当主、ケネス・トルゴー。
彼が仏頂面で手を差し伸べてくれば、彼女の運命は大きく変化していく。
幼馴染みに婚約者を奪われ、妹や両親は私の財産を奪うつもりのようです。皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?
水上
恋愛
「僕は幼馴染みのベラと結婚して、幸せになるつもりだ」
結婚して幸せになる……、結構なことである。
祝福の言葉をかける場面なのだろうけれど、そんなことは不可能だった。
なぜなら、彼は幼馴染み以外の人物と婚約していて、その婚約者というのが、この私だからである。
伯爵令嬢である私、キャサリン・クローフォドは、婚約者であるジャック・ブリガムの言葉を、受け入れられなかった。
しかし、彼は勝手に話を進め、私は婚約破棄を言い渡された。
幼馴染みに婚約者を奪われ、私はショックを受けた。
そして、私の悲劇はそれだけではなかった。
なんと、私の妹であるジーナと両親が、私の財産を奪おうと動き始めたのである。
私の周りには、身勝手な人物が多すぎる。
しかし、私にも一人だけ味方がいた。
彼は、不適な笑みを浮かべる。
私から何もかも奪うなんて、あなたたちは少々やり過ぎました。
私は、やられたままで終わるつもりはないので、皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
婚約破棄ですか、すでに解消されたはずですが
ふじよし
恋愛
パトリツィアはティリシス王国ラインマイヤー公爵の令嬢だ。
隣国ルセアノ皇国との国交回復を祝う夜会の直前、パトリツィアは第一王子ヘルムート・ビシュケンスに婚約破棄を宣言される。そのかたわらに立つ見知らぬ少女を自らの結婚相手に選んだらしい。
けれど、破棄もなにもパトリツィアとヘルムートの婚約はすでに解消されていた。
※現在、小説家になろうにも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる