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母国の騒動
返事
しおりを挟む少しだけ思考するかのようにアレスは眼を閉じました。そして、眼を開いた時には覚悟を決めたかのような眼で私をじっと見つめてきました。
「お……俺は……、レミリア。お前と婚姻、結婚したいと思っている」
「はい」
予想していたよりもあっさり言葉にしましたね。最初は言い淀んでいましたが、その後はすんなりでした。
「正直なところ、この前婚約をした時、一気に婚姻しても良かったと思っていたからな。父上の勧めもあったことによりそのようなことは言わなかったが」
「そうなのですね。まあ、そもそもアレスが私に対して最初にしてきた告白は“結婚してくれ“でしたしね」
「あー、まあ、あれはあの場の勢いと言うか、気持ちが逸ってしまったからだしなぁ」
「なら本音ではなかったと?」
「いや、むしろ、あの状況だったから不意に本音が出てしまっただけだな」
今までのアレスの話を聞いていた限り、小さい頃から私のことを好きだったらしいですし、そうなのかもしれません。今思えば、私が国境門を越える際の両乗りもその延長だったのかもしれませんね。
何やら少しだけ吹っ切れたような態度のアレスを見ます。表情は笑っていますが、少しだけ真剣な視線で私を見ていることがわかりました。
「それで、俺の意見は言った訳だが、レミリアの方はどうしたいんだ? 逃げ出すというのなら考えがあるが」
アレスのいう考え、というのが気になりますが、私はアレスとの婚約を受け入れた段階で色々と覚悟はできているのです。
まあ、私の答えを言う前にグレシア辺境伯の意見を確認してみましょう。私がこの場で了承の意を伝えれば、すぐにでもアレスは報告に行くでしょうし。
「私の返答を言う前に、グレシア辺境伯様はどのように言っていたのですか?」
「え、あー。『婚姻自体は婚約しているなら遅かれ早かれそうなることだし、お前たちはすでに結婚できる年齢だ。最終的な判断はお前たちに任せるが、悔いの残らないようにな。特にアレス。暴走しないように』だそうだ」
「ふふっ」
「笑うなよ……」
おそらく覚えている限りそのままを言ってくれたのでしょう。別にアレスに対する苦言まで言って欲しかったわけではないのですけれどね。
「ごめんなさい。でもそこまで正確に言う必要はなかったと思いますよ?」
「え、あ」
しかし、グレシア辺境伯様はしたければすればいい、といった意見、いえ、おそらく上から意見を言って命令にならないようにと気を遣っているのでしょう。ただし、私の気持ちを配慮してというよりは国の関係を考えてでしょうけれど。無理矢理婚約させたとみられないように避けたということですね。
「それでレミリアの答えは何なんだ? 父上の意見を聞いた上で、だ」
「まあ、私は最初から……いえ、アレスと婚約した時からその先に進むつもりでしたからね」
「それで?」
私の言葉を聞いて結論を察したのかアレスの表情が少しだけ華やぎました。
「ただ、最初に言っておきますけれど、私はまだアレスほどの気持ちはありません。アレスのことを好意的に見ているのは間違いはないのですが、まだ恋とは呼べないでしょう。それでもいいのですか?」
「ああ!」
「わかりました。アレス、いえ、アレクシス・グレシア様。私と婚姻……結婚しましょう。少しだけ政略的な部分が絡みますが、よろしくお願いしますね?」
「ああ、任せろ。というか、その言葉って俺がいうべき言葉ではないか?」
「ふふっ」
いつも押され気味ですからこういった場くらい立場が逆でもいいと思うのです。
「あーもう、先に考えてきた言葉が台無しだ。くそ。とりあえずレミリア。俺からも言うが、俺と結婚してくれ。必ず幸せにするから末長く俺の隣にいてくれると嬉しい」
「はい」
そうして婚約期間1週間で私とアレスは婚約者から夫婦になることになりました。
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