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辺境伯領での生活
杞憂
しおりを挟む私の言葉を聞いてグレシア辺境伯様は少し考え込むようにやや下に視線をずらして黙り込みました。そして数秒そうしていたところでスッと視線を上げました。
「アレスの事を嫌っている訳ではないのはわかった。まあ、レミリアがアレスの事を嫌っていないのは、周囲の話を聞いている中で凡そわかってはいたのだが」
「そうですか」
「ああ、それでアレスの提案を受け入れない理由は何だ? いや、安易に受け入れられる物ではないのはわかっている。ただ、一考もせずに断りを入れているのが腑に落ちないのだ」
ああ、そういうことですか。好き合っているかどうかはさておき、嫌がっている様子は無いのに一切受け入れる気配が無いのが疑問だったという事ですか。
あれ? でもこの質問って、アレスの事を後押ししているのと同じなのでは?
いえ、辺境伯様の考えがどうあれ、受け入れられない理由を隠す必要もありませんから、そのままを伝えても問題はないでしょう。
「なるほど、それが理由か。ふむ」
私が理由を話し終わると、辺境伯様は納得したような安堵したような表情をうっすらと浮かべました。
「レミリアが気にしていることはわかった。確かに君はガーレット国が簡単に手放すような存在ではない。君は瀕死の怪我をも容易く治せるほどの回復魔法を使えるし、もと第1・2王子の婚約者でもあった。安易に他国の貴族の婚約者になるのは問題になりかねないのも事実だな。
しかし、君自身が他国に逃げ出すくらいには国の状況が悪い上、ガーレット国側は君を軽んじているのは見て取れる。それに君は自分の意志で国を出ている。また、一貴族が他国の貴族と婚約及び婚約を結ぶのに、国が口を出すものではない」
「あの、どういう事でしょうか?」
何となく、気にしすぎているといった感じに聞き取れたのですが、そのままの意味で受け取っていいのかわりませんね。
「要するに、君が気にしていることはどうとでもなるので気にしなくていいという事だ。それにガーレット国での君の立場は現状白紙状態だ。故に、一般的な貴族と同じように婚姻については自由にしても問題はないはずだ。さすがに敵対国に嫁ぐのは駄目だろうが、隣国且つ友好国であるアレンシア王国の貴族が相手なら問題はないだろう」
「そうですか」
言われてみれば確かに私は役職に就いていた訳ではありませんし、国を出る直前まで第2王子の婚約者というだけでしたね。
私に求められていたのは王子と婚姻して国内に留まる事でしたから、王子と婚姻できなくなった以上、国内に留まる必要もないのです。まあ、私を国内に留めるために王子と婚約させていたようでしたので、今の状態は私と王子の婚約を決めた当時のガーレット国にとっては想定外なのでしょうけど。
「まあ、アレスと婚約するのであれば、問題が起きてもこちらで対処することは出来る」
ああ、婚約して身内扱いできる状態ならまだしも、保護されているだけの状態だと対処は難しいという事ですか。
「とりあえず、アレスの事はこれから少しでも考えてくれると嬉しい。これは父親としての気持ちだ」
辺境伯としてはしないけれど、父親としては後押しする気があるということですか。
さて、アレスと婚約する分には問題がないとの事ですが、どうしましょうか。
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