(完結)婚約破棄ですか…いいでしょう!! おい国王! 聞いていましたね! 契約通り自由にさせてもらいます!!

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
上 下
47 / 66
これから貴方と過ごす場所

不意打ち

しおりを挟む
 
 こちらからも元王子の姿が確認できなくなったところで辺境伯が叫び出した。

「あああああああ! どうしてこうも、計画通りに進まない! この日までどれだけ計画を練ったというのに、あいつらも碌な事をする前に居なくなる! 私が何のためにあいつらを匿っていたと思っているんだああ!」

 辺境伯が怒りのあまり頭を掻き毟る。余程うっぷんが溜まっているのか、私が見ているにも関わらず、乱れる髪を気にしている様子はない。

「元はといえばお前がこんなものを作っていたからだ! これさえなければ既により多くの被害を広められたというのに! これではあの王を引き摺り下ろすには規模が小さ過ぎる!」

 こう、どうして貴族には気が短いと言うか、沸点が低いのが多いのだろうか。……いえ、馬鹿だからこそ、こうなのかしら?
 まぁただ、これで辺境伯がどうして人工的にスタンピードを引き起こしたのかがわかった。

 うん、これはあれね。国王に対しての逆恨みでしょうね。

 今までの言動からして、辺境伯はバリバリの貴族主義の人みたいだし、王宮から追放されてこんなことをしているのだから無駄に貴族としての誇りが高かったのでしょうね。
 ただ、元王子との繋がりを考えると結構前から王宮の乗っ取りくらいは考えていたのかもしれないけど、今こうなっているということは最初からあの国王にはバレていたみたいね。

「おい、私をあちらへ運べ!」

 辺境伯が一緒に来た大きい犬型の魔物に命令を出す。それを受けて、その魔物は辺境伯をくわえてこちら側に跳躍して来た。

 さすがに体長5メートル近くになればこの程度の堀は余裕で越えられるわよね。でも、くわえられながら堀を超えて来る光景って結構滑稽よね? 本人がほとんど気にしていないのもまたそれを助長しているし。

 でも、魔法を使ってこちらに来ないということは、アイリと同じように魔物から攻撃されないよう魔道具を使っていたようね。ただ、こちら側に来てしまえばその魔道具を使う必要はないし、これからは魔法による攻撃が来ると思って間違いないわ。

「死ねぇっ!」

 辺境伯は魔物に離して貰ってからすぐに私に向かって火球の魔法を放ってきた。

 魔法速度が遅い。あれだけアイリの事を見下していたのに、これが全力だというのならアイリの方が魔法の扱いは優れていたのだけど。
 あと、話に入って来ないから完全に空気に成りかけているけれど、ロイドが居ることに気付いているのかしら?

 とりあえず、火球を避ける。大して速度が速くないので避けるのは簡単だった。ただ、あっさり避けられたことが余程気に入れないのか、辺境伯はさらに魔法を放とうとしているようだ。

「避けるなぁ!」
「わざわざこんな攻撃当たるわけないだろう? 馬鹿か?」
「あ? ふごぇっ!?」

 少しずつ辺境伯の背後へ移動していたロイドの存在に今まで気付いていなかったのか、後ろから声を掛けられたことで辺境伯は後ろに振り向きつつ驚きの声を上げる。それと同時にロイドからの不意打ちを諸に受けて、辺境伯は受け身を取ることも出来ず顔面から地面に突っ伏した。
 すぐに起き上がって来ると思ったらどうもロイドの一撃だけで気絶してしまったらしく、一向に動く気配がない。

「え?! 弱っ。あ、ロイド。ご苦労様」

 別に思い切り攻撃したとかそんな感じでもなかったのに、あっさり辺境伯が倒れたことで拍子抜けなのだけど。まあ、とりあえずこれで元凶と思われる人物は確保できそうだからいいけど。
 後はその元凶と一緒にこちら側に来た魔物なのだけど、こいつはどうすればいいのかしらね? 辺境伯が気絶しても一切動く気配がないし、よく見れば目に生気がほとんど感じられない。

「そいつは」
「わからないわね」

 今は動く気配がないけれど、だからといって放っておくことも出来ない。殺してしまうのが一番楽で簡単で良いのだけど、こちらに攻撃を仕掛けて来ない相手を無駄に殺すのはあまり気持ちが進まない。 

「とりあえずロイドはその人を逃げられないようにしておいて」
「わかったけど、どうするんだ?」
「ロープか何かで拘束して、重要参考人として国王に受け渡す感じね。たぶん国王は元から犯人はわかっていたようだし」

 あの国王の事だから、この結末も何となく察して良そうなのよね。
 さすがに辺境伯が自白しているとは思っていないでしょうけれど、もう今回の証拠とかは集め終わっているでしょうし。

 辺境伯はこの後、一旦ギルド辺りに持っていくとして、この魔物はどうすればいいのかしらね?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...