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辺境伯家での日常
アグルス様からの話 前
しおりを挟む昼食を終え、アグルス様と一緒に歓談用に設えてある部屋にやってきました。
後ろにはランも控えていますし、アグルス様付きの使用人もいますので、やはり重要な話ではないようです。
「すまないな、トーア。いきなり時間を取らせてしまって」
「いえ、大丈夫ですよ。もともとこの時間は他の予定は入っていませんでしたから」
「それならよかったが、いきなり予定を入れてしまったのには変わらないだろう」
「気にしなくてよいのですけれど」
表情は何時もとそれほど変わらないのですけど、申し訳なさそうな声色ですね。本当に気にしなくてもよろしいのですが、これはアグルス様が感じている事なの私が何を言っても駄目なのでしょうね。
それにアグルス様と婚姻して、この屋敷に来てからそれほどやる事が無いのですよね。アグルス様の妻として必要なマナーや知識を学ぶことはあっても、ずっとそればかりという事はないですし、執事長のことがあったのでそれも最低限の量しかしていません。
ああ、もしかしたら、これに関する話なのかもしれませんね。ようやくお屋敷の中も落ち着いて来ましたし、本格的に学ぶことになるのでしょうか。
「それで、話とは何でしょうか?」
場の雰囲気がアグルス様から話し始め辛くなってしまったので、私から話しを始めることにしましょう。
「ああ、すまない。話はトーアの教育と夜会についてだな」
「教育は分かりますけど、夜会……ですか?」
「そうだ」
夜会ですか。貴族である以上、参加したことはありますけど、それは貴族家の令息や令嬢が集まるものでしたから、アグルス様が言った夜会とは少し違うのでしょうね。
「先に教育に関する話をするがいいか?」
「はい」
夜会の話を後回しにするのは何か理由があるのでしょうか? 教育についての話は短く済むから先に、という事なのかもしれませんけれど。
「今まで少しずつやっていたことを本格的に始めることになった。マナーの方はそこまで問題はないと聞いているので心配していないが、知識面は早めに進めてくれると助かる」
「わかりました」
知識の方は急務なのですね。もしかして夜会に関係する事なのでしょうか? そうなのでしたら確かに知識がないと拙いかもしれませんね。
「教育の方はそれくらいだな。詳しい話は担当の者が説明することになっている」
アグルス様はそう言うと私の後ろに控えているランの方へ視線を向けました。おそらく私だけでなくランも学ぶ必要があるという事でしょう。
「夜会に関してだが、昨日、トーアに参加の打診があった」
「そう、なのですか?」
今後、打診があった時の対応についての話しだと思っていたのですが、まさかすでに打診があったなんて思っていませんでした。
「すでに断りの返事を出しているから出席の必要は無い。しかし、今後、同じように打診があるだろうからそれについての話しを近い内にすることになるだろう」
「え? 今から話し合う訳ではないのですか?」
どういう事なのでしょう。断りを入れて頂いたのは有り難いですけれど、次の打診がいつ来るかはわからないのですから、早い内に話し合っていた方が良いと思うのですけれど。
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