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インスタントダンジョンとアンゴーラ

さくさく第4エリア

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 ギルドポイントを稼いで、エリアボスを倒してすぐに第4エリアに入ったわけなんだけど、他のエリアとそう変わらない光景が続いている。まあ、フィールドの構造的に地続きなわけだし、ボスエリア付近だから前のエリアとそう環境が変わる訳はないよね。

 さらに進んで行くと周囲の景色が徐々に変わって来た。
 今までの第1エリアから第3エリアは草原だったり森が多かったりしたけれど、第4エリアは草原ではあるもののやや荒野よりと言うか、地面の土がむき出しのところが目立つフィールドになっていた。

 移動している最中に出て来るモンスターも今までは草原で出て来るような小型の草食系が多かったけれど、ここでは中型で雑食、しかも積極的にプレイヤーに襲い掛かるタイプのモンスターが増えているようだ。

「そう言えば、依頼を熟進めている時に【テイム】スキルのレベルが上がって4匹目をテイムできるようになったんだよね」
「4匹目です?」

 私の呟きを聞いていたのか、シュラは興味がありそうな表情で私の事を見上げて来た。

「スキルのレベルが上がって仲間を1人増やせるようになったから、どうしようかなって」
「なかまーです?」

 シュラが仲間という言葉を理解しているのかはわからないけれど、その言い方と反応が可愛かったので無言でなでておいた。

 ぷらてあと朱鞠は2人で仲良く……と言うか、朱鞠の上にぷらてあが乗っていて落ちないように蔓で自分の体を固定しているから、何と言うか若干騎乗しているような見た目になっているんだけど、どう反応していいのかわからないから無視することにする。
 まあ、朱鞠も嫌がっている様子がないから、別に気にしていないんだろうね。


 第4エリアに入ってから1時間程移動したところで、第4エリアにある街に到着した。

 この街は今までのエリアにあった街よりも大分大きいみたい。明らかに今までの街と外から見る町のサイズが違う。まあ、エリア間の移動に制限が掛かっていたってことは、今までのエリアとは明確に違うということだろうから、街の外見が違うのはそこまで予想外ってことはないけど。

 このエリアに移動する条件にギルドポイントが入っていたところから、第3エリアまでは初心者エリアで、第4エリアからは中級者、とまでは言わないけど初心者を脱したプレイヤー用のエリアということなのかもね。その関係で、今までとは施設とかがあったりするのかもしれない。

 街に入ってすぐにギルドに寄って登録しておく。依頼は昨日今日と受け続けていたからあまりやる気にはなれないけれど、どこかしらで同じように条件として出てくるだろうから、現状受けられるもの、且つ、完了期限のない依頼を受けておいた。

 ギルドを出て次はリスポーンポイントを更新するために噴水広場に移動する。
 そして、噴水の近くにある石像に触り、リスポーンポイントの更新が終わったところで、ふと気になっていたことを思い出した。

「そう言えば、今までも街の名前の事なんて気にしていなかったけど、何だったんだろう? 街の名前が書かれていた物が無かったから、もしかして名前なかったとか?」
「ふほほ、しっかり街の名は付いておりましたぞい。それに、街の入り口や噴水広場にも街の名前が記載されていた大き目のプレートが設置されておるのじゃが」
「ん?」

 独り言のつもりだったのだけど、後ろから話しかけられた。まあ、聞き覚えのある声だったから驚くことは無かったし、元よりこの辺りで会う予定だったから誰なのかは見当がついている。

「いきなり後ろから話しかけるのはマナー違反だと思うな。イケシルバー」

 振り返りながら声を掛けてきたプレイヤーを確認する。そこには前に見た時とは違う装備を着けているイケシルバーの姿があった。

「ふほほ、すまぬの。だかの、まさか街の名前を一切把握していないとは思っていなかったですぞ」
「今まであんまり気にしていなかったからねぇ。知らなくても何の問題もなかったし」
「確かに知らなくとも問題はないじゃろうがの。しかし、街の名前が書かれておるプレートなら、噴水の中央にあるモニュメントに掲げられておるぞい」
「え? そうなの?」

 イケシルバーに指摘されて噴水の真ん中にある石像を確認してみる。確かにイケシルバーが言った通り金属製っぽいプレートが石像の土台に掲げられていた。

「へー。ここの街の名前はフミタっていうんだ」
「そうですぞ。それと、第1エリアの主要都市はフェレス、第2エリアはスレミア、第3エリアはゾーク、となっておるぞい」
「へぇ」

 教えてもらったところ申し訳ないけど、正直、あんまり興味ない事なんだよね。別に知らなくても問題ないし、知っていたところでいいことがある訳でもない。
 まあ、教えてもらった以上、忘れないようにはしておこう。
 
 イケシルバーと情報を交換するために近くのショップの中に移動する。

 今回入ったショップは前に情報交換した時に利用したカフェのような店に似ているショップだった。ただ、前のショップとは雰囲気が少し違う。と言うか、初めて来たはずのショップなんだけど、どこか見覚えがあるような気が?

 とりあえず、話をする前に注文をしていくんだけど、やっぱり見覚えのある商品名だよね。現実の物とそっくりそのままと言うことは無いんだけど、商品名の付け方があの有名チェーン店にそっくりだ。

 商品を注文しながらイケシルバーの顔を見る。しかし、驚いた様子はないし、これが当たり前と言った表情をしていた。

「うん? どうしたのかの?」
「ここの商品って……」
「うぬ? 何か変な物でもあったかの?」
「えっと、これってあのチェーン店のものだよね?」
「そうですぞ? おや、ミヨさんはこの事を知らなかったのですかな?」

 知らなかった、という事はこれは割と周知なことなの? こんな話は一切聞いたことは無い……と言うか、他のプレイヤーとの交流がないから、何かあったとしても掲示板からしか情報を仕入れていないんだよね。それも攻略スレばかりだし。
 そう言えば大会の時にあったアプデの情報もほとんど調べなかったんだよね。もしかしてそれに関係している感じなのかな?

「アップデートの情報で、このショップがチェーン店監修の商品になるという情報があったんじゃが、その様子からして知らなかったようじゃな」
「うん」

 なるほどね。そういうのがあったんだ。しかし、うーむ。このままだと情報を見逃したせいで損することになるかもしれない。さすがにそれは拙い。これが終わった後、前回のアプデ情報は一度見ておかないと駄目だろうね。

 注文した商品を受け取り、空いていたテラス席に移動する。

 今回の情報交換にはイケシルバー側と言うかウロボロスからはイケシルバーの他にもう一人来る予定になっているんだよね。まだここには来ていないみたいだけど、現在こちらに向かって来ているらしいので、そう時間がかからない内にここへ到着するとのこと。

 うーん。やっぱ飲んだことがあるような味だね。飲んだのはだいぶ前の話だけど。
 ゲームの中だからとちょっと変なネーミングの商品もあったんだけど、さすがにこの場で冒険する気にはなれなかったので普通のカフェラテを注文したわけなんだけど、あの店の味、とまでは行かないまでもかなり近い味になっているね。すごい。

「それで、話はもう一人が来てから?」
「そうですなぁ。ミヨさんの時間を無駄に取る訳にもいかぬ故、良ければ新しく手に入れた情報を聞いても良いですかな? 気になる部分があれば、後から来るメンバーに確認を取ってから詳しく聞く、という形になるのじゃが」
「私はそれでも構わないけど、大丈夫なの?」
「問題ないですぞ。元より後から来るメンバーはテイマーでの、その関係でテイマー関連の情報を扱っているんじゃよ」
「そうなんだ」

 まあ、今回出す情報はテイマー関連は少なめだから、それでも問題はないかな。全くないというわけでもないから二度手間になる可能性はあるけど。

 まあいいか、と思いイケシルバーにまだ話していないことについて話すことにした。



「ふむ、スモールスパイダー系についてはこちらにも情報はありますな。ただ、デススパイダーの情報はあまりないので買い取らせていただきますぞい」

 前に情報交換をした後にテイムした朱鞠の事を話した。まあ、朱鞠はシュラやぷらてあとは違ってレア個体ではないから新しいと言える情報はなかったらしい。

「それは良かった」
「それと、サファイアスライムにアルラウネのぅ。全く知らない情報だの。まあ、その進化前のモンスター自体、ミヨさん経由でしか確認が取れていないのじゃから、当然と言えば当然なのじゃが」

 まあ、そうだよね。前の段階でレアスライムはテイム出来たとは言っていたけれど、その後何故か進化できない、なんて話を聞いたし、プレンテのレア個体に関しては見つかってすらいないらしいから。

「現着ッです! 遅れてすいません」

 テイムモンスについての話がちょうど終わったタイミングで、そう声を上げながら、かなりゴツイ装備を身に着けているプレイヤーが目の前に滑り込んで来た。

 えっと、なんか変わった人が来たね? ちょっと前に会ったエティテプといい、何というかイケシルバーの周りって変わったプレイヤーが集まってくる何かがあるのかな?

 というか、今さっきイケシルバーから遅れてくるプレイヤーはテイマーって聞いていたんだけど、どうしてこの人は重装備なんだろう? 
 おかしいな。テイマーって装備制限のせいで重装備とか身に着けられないはずなんだけど。
 
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