上 下
151 / 365

第151話 新しいカリカリ

しおりを挟む
 オレの名前は『みたらし』。
 二歳の柴犬だ。

 カラカラカラカラ……。
 パパさんがオレのエサ入れ用の鍋にカリカリを入れる。

 オレはパパさんを見上げた。
 ――新しいドッグフードだ。美味しいぞ。

 匂いを嗅いでみる。
 オレは無言で、鍋を鼻先で遠くに押し出した。

 ――え? え? なんで? だってこれ、TopYouTuber犬の『くるみゆべし』クンが食べてるやつだぞ? 高級なんだぞ?
 
 なんだい、また『くるみゆべし』の動画見て感化されたのかい。
 高級だろうがお安かろうが、匂い嗅いだだけで分かるよ、美味しくないって。
 そんなの食べないよ。
 いいから、いつものやつに戻して。

 オレはその場で寝そべった。
 
 ――ウソだろ、大袋で買っちゃったのに! どうすんだよ、これ。

 あぁもぅ、泣くなよパパさん。
 そんなの知らないったら。
 オレは寝そべったまま、プイっと顔を横に向けた。
 ちゃんと飼い犬の好みを把握することだね、ニシシ。

 どんまい、パパさん。
 そして新しいカリカリは、大袋のまま部屋の隅に放置される。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

幸運を運ぶ猫は、雨の日に傘をさしてやってくる

石河 翠
児童書・童話
優しくて頑張り屋の奈々美さんは、年をとったお父さんのお世話をして過ごしています。 お父さんが亡くなったある日、奈々美さんは突然家を追い出されてしまいました。 奈々美さんに遺されていたのは、お父さんが大事にしていた黒猫だけ。 「お前が長靴をはいた猫なら、わたしも幸せになれるのにね」 黒猫に愚痴を言う奈々美さんの前に、不思議なふたり組が現れて……。 現代版長靴をはいた猫のお話です。 この作品は、小説家になろうにも投稿しております。 扉絵は、あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しております。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

処理中です...