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そして影は立ち伸びる
鎖烈獣術
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「さて、じゃあ改めて……礼を言わせてもらおうか!」
その瞬間、シェドが振り向き様に、爪を立て、サンのことを切り裂こうとする。するとサンは咄嗟に、刀を胸の前に構え、シェドの攻撃を防ぐのだった。
――はやい! もし、刀をしまっていたら、今確実にやられてた。
「ほぉ、よく反応したな? 殺すつもりで振りかざしたんだが」
「そんなに、殺気ダダ漏れなら流石に気づくさ。なんだよ。カニバル国には、爪を立てて礼をする風習でもあるのか」
「なるほど、ある程度死線をくぐってきているようだな。じゃあお前はそんな風習があると言ったら、俺の攻撃を喰らってくれるのかよ?」
「ごめんだね。あんたの感謝の気持ちは、他の奴より重そうだ」
なんでこの獅子の男が自分に対して殺意をいだいているのか、サンには分からない。ただ、対話をするため相手の攻撃を捌き続けるほど、サンとこの男の実力は離れているわけではない。サンは刀を向け、シェドに向かって斬りかかる。
――ガキィィィィン。
拳の裏側でサンの攻撃を捌くシェド。そんな彼に、サンは質問をぶつける。
「しかしなんで初対面のあんたにそんなに殺意を向けられなきゃならないんだよ。俺、あんたに何かしたか?」
「お前に何かされたわけじゃないさ。俺が憎む男はお前よりも背がずっと高かった。だがな、あいにく俺はあいつの仲間である神は全員殺すと決めているんだ。なんの気まぐれでジャックを助けたのか知らないが、それはお前とて例外じゃない」
互いに攻撃を払い合い、距離を取る両者。サンは、相手の動きに警戒をしながらも、意外な一言を述べた彼に、言葉を発する。
「神を知ってるのか? なんで? みんな記憶を奪われたはずなんだろ?」
「なにをとぼけてるんだ? 毛皮も鱗も耳に特徴もない。そんな種族は神以外にいないだろう。たしかに、ほとんどのやつが神の存在を覚えてないが、俺の記憶にはちゃんとあるんだよ!」
再び激しく攻撃を重ねるシェド。しかし、サンは驚きのあまり戦いどころではない。彼の攻撃を必死で受けながらも、なんとか頭の中の言葉を声にして、シェドにぶつける。
「待て待て待てよ。待ってくれ。たしかに俺は神と関係があるのかもしれない。でも、俺には分からないんだ! 俺にはさ、生まれてきた時の記憶がないんだよ」
「はっ、つまらない言い訳で逃げようとするなよ。詳しいことはお前の死体に聞いてやる」
「本当なんだって! それに俺が神かどうかも怪しいんだよ。実際俺はほんとはフェニックスの獣人で……」
「フェニックの獣人だと? 話には聞いたことがあるが、だったらお前の背中には翼があるはずだろ? それについてはどう説明するつもりだ?」
――くそ、そこを突かれると弱いんだよな。そんなこと一番聴きたいのは俺だし。
ため息をつき、再び距離を取るサン。仕方ない。一度こいつを倒して、わかってもらうしかない。そう覚悟を固め、サンは、突きの構えを取る。
そして、そんなサンに対して、シェドもまた自身の爪先を向け、彼と大きく間合いを詰める。
切迫する両者はほぼ同時に声を上げる。
「陽天流一照型、木洩れ日!」
「鎖裂獣術、牙槍(されつじゅうじゅつ、がそう)!」
――え?
その瞬間、微かに刀の勢いを緩めてしまったのは、サンだった。
鎖裂獣術。サンはこの名前に聞き覚えがあった。フォンが言っていた、母と旅をしていた獣人の1人、狼のヴォルファ、確か彼の獣術だったはず。自身の素手を様々な武器に変えることのできる、陽天流に並ぶとも劣らない強者の流派。
しかし、そんなことを、頭に本来よぎらせる余裕など、サンにはなかったのだ。
わずかに、緩まるサンの刀。シェドは、そんな彼の突きなど難なくかわし、彼の体を自らの手で刺す。
――グッシャァァァ。
深々と刺さる彼の手。ドクドクと流れる血液。
――あ、やばい、力が抜ける。でも、ここで倒れたら、殺される。
――ドサッ。
そして、サンはそのまま気を失ってしまうのだった。
その瞬間、シェドが振り向き様に、爪を立て、サンのことを切り裂こうとする。するとサンは咄嗟に、刀を胸の前に構え、シェドの攻撃を防ぐのだった。
――はやい! もし、刀をしまっていたら、今確実にやられてた。
「ほぉ、よく反応したな? 殺すつもりで振りかざしたんだが」
「そんなに、殺気ダダ漏れなら流石に気づくさ。なんだよ。カニバル国には、爪を立てて礼をする風習でもあるのか」
「なるほど、ある程度死線をくぐってきているようだな。じゃあお前はそんな風習があると言ったら、俺の攻撃を喰らってくれるのかよ?」
「ごめんだね。あんたの感謝の気持ちは、他の奴より重そうだ」
なんでこの獅子の男が自分に対して殺意をいだいているのか、サンには分からない。ただ、対話をするため相手の攻撃を捌き続けるほど、サンとこの男の実力は離れているわけではない。サンは刀を向け、シェドに向かって斬りかかる。
――ガキィィィィン。
拳の裏側でサンの攻撃を捌くシェド。そんな彼に、サンは質問をぶつける。
「しかしなんで初対面のあんたにそんなに殺意を向けられなきゃならないんだよ。俺、あんたに何かしたか?」
「お前に何かされたわけじゃないさ。俺が憎む男はお前よりも背がずっと高かった。だがな、あいにく俺はあいつの仲間である神は全員殺すと決めているんだ。なんの気まぐれでジャックを助けたのか知らないが、それはお前とて例外じゃない」
互いに攻撃を払い合い、距離を取る両者。サンは、相手の動きに警戒をしながらも、意外な一言を述べた彼に、言葉を発する。
「神を知ってるのか? なんで? みんな記憶を奪われたはずなんだろ?」
「なにをとぼけてるんだ? 毛皮も鱗も耳に特徴もない。そんな種族は神以外にいないだろう。たしかに、ほとんどのやつが神の存在を覚えてないが、俺の記憶にはちゃんとあるんだよ!」
再び激しく攻撃を重ねるシェド。しかし、サンは驚きのあまり戦いどころではない。彼の攻撃を必死で受けながらも、なんとか頭の中の言葉を声にして、シェドにぶつける。
「待て待て待てよ。待ってくれ。たしかに俺は神と関係があるのかもしれない。でも、俺には分からないんだ! 俺にはさ、生まれてきた時の記憶がないんだよ」
「はっ、つまらない言い訳で逃げようとするなよ。詳しいことはお前の死体に聞いてやる」
「本当なんだって! それに俺が神かどうかも怪しいんだよ。実際俺はほんとはフェニックスの獣人で……」
「フェニックの獣人だと? 話には聞いたことがあるが、だったらお前の背中には翼があるはずだろ? それについてはどう説明するつもりだ?」
――くそ、そこを突かれると弱いんだよな。そんなこと一番聴きたいのは俺だし。
ため息をつき、再び距離を取るサン。仕方ない。一度こいつを倒して、わかってもらうしかない。そう覚悟を固め、サンは、突きの構えを取る。
そして、そんなサンに対して、シェドもまた自身の爪先を向け、彼と大きく間合いを詰める。
切迫する両者はほぼ同時に声を上げる。
「陽天流一照型、木洩れ日!」
「鎖裂獣術、牙槍(されつじゅうじゅつ、がそう)!」
――え?
その瞬間、微かに刀の勢いを緩めてしまったのは、サンだった。
鎖裂獣術。サンはこの名前に聞き覚えがあった。フォンが言っていた、母と旅をしていた獣人の1人、狼のヴォルファ、確か彼の獣術だったはず。自身の素手を様々な武器に変えることのできる、陽天流に並ぶとも劣らない強者の流派。
しかし、そんなことを、頭に本来よぎらせる余裕など、サンにはなかったのだ。
わずかに、緩まるサンの刀。シェドは、そんな彼の突きなど難なくかわし、彼の体を自らの手で刺す。
――グッシャァァァ。
深々と刺さる彼の手。ドクドクと流れる血液。
――あ、やばい、力が抜ける。でも、ここで倒れたら、殺される。
――ドサッ。
そして、サンはそのまま気を失ってしまうのだった。
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