俺は猫であり父である

佐倉さつき

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第3章 娘は難しいお年頃?

林間学校(2)

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カチャ。ガチャ。
「ただいまー。」
妻が帰ってきた!
「ニャー!(おかえり!)」
俺は、玄関まで出て妻を迎える。
家の中が明るくなった。
今までの不安な気持ちがやわらいだ気がする。
「あら、オト、お迎えありがとう。もしかして、一人で寂しかった?」
妻が笑いながら、リビングに入っていく。
そして、リビングの床にバックを置くと、そのままソファーにとびこんだ。

えっ⁉
いつもの妻ならしない行動に驚く。
いつもは、リビングにバックを置くと、さっと着替えてご飯を作るのに・・・
よほど、疲れているのかな・・・
俺は邪魔をしないように、リビングの床に横になり、静かに妻を見守ることにした。


「今頃、明莉、どうしてるかな?」
ソファーで横になったまま、妻が呟いた。
そして起き上がると、冷蔵庫の前まで行き、貼ってある林間学校の予定表を見た。
「今日は、夕食の後、星空観察があるのね。」
しばらくボーっと何か考え事をしているようだったが、振り返って俺を見ると、
「ごめん、オト!すぐにご飯をあげるからね。」
と言って、慌てて俺のご飯を用意してくれた。


「一人だとご飯を作る気になれないのよね。」
そう呟きながら、妻はコンビニで買ってきた弁当とサラダを食べている。
「明莉、一人で寝れるかしら?」
「ニャー。(大丈夫だよ。)」
と言いつつ、俺も明莉のことばかり考えている。



その日、俺は妻と一緒に寝た。
妻のベッドに上がり、妻の頭をなでる。
「ニャー。(お疲れさま。)」
「ありがとう、オト。慰めてくれてるの?」
「ニャー。(明莉は大丈夫だよ。)」
明莉のことばかり考えながら、夜が更けていった。



次の日も、明莉のことばかり考えていた。
明日になったら明莉が帰ってくるのに、なかなか明日にならない。
時間が経つのが遅く、一日が長い。
二日目も妻の夕食はコンビニ弁当で、部屋の静かさに我慢できず、二人でテレビを見て過ごした。
「明莉、どうしてるかな?」
「そろそろキャンプファイヤーが終わる頃かな?」
考えるのは、明莉のことばかり・・・



三日目、ついに明莉が帰ってきた。
「ただいま!」
明莉は元気いっぱいだ。
「ニャー!(おかえり!)」
俺は玄関でしっぽを振って、明莉を出迎えた。
「明莉、林間学校はどうだった?」
「めちゃくちゃ楽しかった!ママとオトは大丈夫だった?」
「もちろんよ!ねえ、オト。」
「・・・ニャー。(も、もちろん、へ、へ、平気だったよ・・・)」


その日の夕食は、明莉の好きなオムライスだった。
オムライスを食べながら、明莉が林間学校の思い出を楽しそうに話してくれた。
俺と妻は、明莉のことを心配して、気が気ではなかったのに・・・寂しくてたまらなかったのに・・・
明莉は友だちと一緒に楽しい時間を過ごすことができたらしい。
こどもは、たくましいな。
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