401 / 429
不動ベイシン
せいちエレジー4
しおりを挟む
「僕は御弓さんが生まれた地域を理由に苦労された話を読んで同情していました。辛かったんだろうな。悲しかったんだろうな。悔しいこともあったんだろうなって」
僕には想像できない苦労があったんだろう。
「でも、それは御弓さんだけじゃない。そういう境遇でも真っ当に生きる人はたくさんいるんですよね」
御弓さんと同じ地域出身でも犯罪行為をしない人のほうが多い。
「圭介さんだって同じアパートに違法就労していた外国人や誘拐犯がいるような治安の悪い地域の出身だし。そもそも地域どころか家庭内に問題山積だし」
犯罪者っていうカテゴリーなら圭介さんも同じ。
物心ついた頃から数え切れないくらいに悪いことをしてきた。
「圭介さんも犯罪行為はします。そういうのが普通の環境に育ったから。今もインターネットのいろんな物を盗み見てます。圭介さんにとってハッキングすることは、僕がYouTubeで新しい知識を増やそうとするのと同じ感覚なんです。そこにあるから見る」
悪いことだと分かったうえで、逮捕されなければいいと思ってる。
そして、自分は知り過ぎた人間だから逮捕されないとも思ってる。
ずるい人。
「でも、圭介さんや御弓さんの犯罪行為は育ちのせいで本人達は悪くない。被害者だというのは、ちょっと乱暴な考え方で無理があります」
不当な扱いを受けたことや生育環境の問題があったとしても。
それと彼らが犯した罪の問題は別なんだ。
「圭介さんには僕が悪いことだと教えて反省させます。本当は圭介さんも逮捕してもらって、正しく司法の手で裁かれてほしいんですけど。圭介さんが知ってることを詳らかにしちゃうと困る人も多いみたいだから。それは我慢します」
圭介さんが違法に集めた情報は衣笠総理にも渡している。
つまり圭介さんの罪は国家元首にあたる衣笠総理の罪になる。
さすがにふたり続けて総理が緊急時任してしまう事態は避けたい。
国家転覆を図るテロ組織ではないけれど。
このまま放置していたら日本の治安が悪化しそうな小狡い人達がたくさんいる。
圭介さんはその人達のメールやSNSのやり取りをまとめて衣笠総理に託しているんだ。
衣笠総理が圭介さんの集めた情報を自分の中にためておいて。
時が来たら利用すると言っていた。
「だいたい。玲司君だってそういう意味ではめちゃくちゃ被害者だし。親に捨てられて。養護施設で虐待されて。薬害被害にもあってて。それでも玲司君はすごく優しいヒーローだもん。やっぱり育ちを理由にしちゃ駄目なんだ」
あやうく僕はまた間違えるところだった。
養育環境でみんながみんな犯罪者になるわけじゃない。
玲司君みたいに立派な大人になる人もいる。
「それを言ったらサクちゃんも、よう腐らんと育ったなー」
「僕は別に普通な環境ですよ? むしろ恵まれてるぐらいだし。20年前の事件だって、つい最近知るまでは覚えていなかったから。被害者として育ったわけじゃないです」
お義父さんは僕を普通じゃないと言った。
僕からしたらお義父さんの方がずっと普通じゃない。
僕達の普通はやっぱり違う。
その違いが僕達の関係を作るんだ。
「他にも僕が被害を受けたと言われたことはいくつかあって。セクハラとか就活時の個人情報書き換えとか。でも、それをした人達を今さらどうにかしたいと僕は思わないんです」
過ぎたことはそのまま終わらせてしまえばいい。
「もちろん、これから僕に意地悪する人がいて、我慢ならなかったら魔女見習いの魔法で追い払うつもりだけど。僕がなにかする前に圭介さんが何とかしちゃいそう」
だから僕は自分を守るよりも、みんなを守るために魔女見習いの魔法を使いたい。
「サクちゃんを守るのは圭だけじゃないぞー。儂も守ってやる。玲司や染井達もそのつもりだし。衣笠も腹に蛇飼っとる曲者だからなー」
衣笠総理をドルオタのおじさんみたいに思っていたけど。
総理大臣になるくらいの人だから腹芸だってできるんだろう。
「それに鈴ちゃんもおる。自分の願いは何ひとつ叶えられないが、人を守るのは得意な子だよ。安心して鈴ちゃんの傘の下にいればいい」
鈴村さんに守ってもらえるのは心強いけど。
鈴村さんのお願いは誰が叶えてあげられるのかな。
人のお願いを叶えてばかりいて嫌にならないのかな。
「僕は鈴村さんのお願いを叶えられる魔女になりたいです」
「そいつはでっかい夢だなー」
うん。目標は大きい方がいいからね。
僕には想像できない苦労があったんだろう。
「でも、それは御弓さんだけじゃない。そういう境遇でも真っ当に生きる人はたくさんいるんですよね」
御弓さんと同じ地域出身でも犯罪行為をしない人のほうが多い。
「圭介さんだって同じアパートに違法就労していた外国人や誘拐犯がいるような治安の悪い地域の出身だし。そもそも地域どころか家庭内に問題山積だし」
犯罪者っていうカテゴリーなら圭介さんも同じ。
物心ついた頃から数え切れないくらいに悪いことをしてきた。
「圭介さんも犯罪行為はします。そういうのが普通の環境に育ったから。今もインターネットのいろんな物を盗み見てます。圭介さんにとってハッキングすることは、僕がYouTubeで新しい知識を増やそうとするのと同じ感覚なんです。そこにあるから見る」
悪いことだと分かったうえで、逮捕されなければいいと思ってる。
そして、自分は知り過ぎた人間だから逮捕されないとも思ってる。
ずるい人。
「でも、圭介さんや御弓さんの犯罪行為は育ちのせいで本人達は悪くない。被害者だというのは、ちょっと乱暴な考え方で無理があります」
不当な扱いを受けたことや生育環境の問題があったとしても。
それと彼らが犯した罪の問題は別なんだ。
「圭介さんには僕が悪いことだと教えて反省させます。本当は圭介さんも逮捕してもらって、正しく司法の手で裁かれてほしいんですけど。圭介さんが知ってることを詳らかにしちゃうと困る人も多いみたいだから。それは我慢します」
圭介さんが違法に集めた情報は衣笠総理にも渡している。
つまり圭介さんの罪は国家元首にあたる衣笠総理の罪になる。
さすがにふたり続けて総理が緊急時任してしまう事態は避けたい。
国家転覆を図るテロ組織ではないけれど。
このまま放置していたら日本の治安が悪化しそうな小狡い人達がたくさんいる。
圭介さんはその人達のメールやSNSのやり取りをまとめて衣笠総理に託しているんだ。
衣笠総理が圭介さんの集めた情報を自分の中にためておいて。
時が来たら利用すると言っていた。
「だいたい。玲司君だってそういう意味ではめちゃくちゃ被害者だし。親に捨てられて。養護施設で虐待されて。薬害被害にもあってて。それでも玲司君はすごく優しいヒーローだもん。やっぱり育ちを理由にしちゃ駄目なんだ」
あやうく僕はまた間違えるところだった。
養育環境でみんながみんな犯罪者になるわけじゃない。
玲司君みたいに立派な大人になる人もいる。
「それを言ったらサクちゃんも、よう腐らんと育ったなー」
「僕は別に普通な環境ですよ? むしろ恵まれてるぐらいだし。20年前の事件だって、つい最近知るまでは覚えていなかったから。被害者として育ったわけじゃないです」
お義父さんは僕を普通じゃないと言った。
僕からしたらお義父さんの方がずっと普通じゃない。
僕達の普通はやっぱり違う。
その違いが僕達の関係を作るんだ。
「他にも僕が被害を受けたと言われたことはいくつかあって。セクハラとか就活時の個人情報書き換えとか。でも、それをした人達を今さらどうにかしたいと僕は思わないんです」
過ぎたことはそのまま終わらせてしまえばいい。
「もちろん、これから僕に意地悪する人がいて、我慢ならなかったら魔女見習いの魔法で追い払うつもりだけど。僕がなにかする前に圭介さんが何とかしちゃいそう」
だから僕は自分を守るよりも、みんなを守るために魔女見習いの魔法を使いたい。
「サクちゃんを守るのは圭だけじゃないぞー。儂も守ってやる。玲司や染井達もそのつもりだし。衣笠も腹に蛇飼っとる曲者だからなー」
衣笠総理をドルオタのおじさんみたいに思っていたけど。
総理大臣になるくらいの人だから腹芸だってできるんだろう。
「それに鈴ちゃんもおる。自分の願いは何ひとつ叶えられないが、人を守るのは得意な子だよ。安心して鈴ちゃんの傘の下にいればいい」
鈴村さんに守ってもらえるのは心強いけど。
鈴村さんのお願いは誰が叶えてあげられるのかな。
人のお願いを叶えてばかりいて嫌にならないのかな。
「僕は鈴村さんのお願いを叶えられる魔女になりたいです」
「そいつはでっかい夢だなー」
うん。目標は大きい方がいいからね。
2
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
初恋の幼馴染の女の子の恰好をさせられメス調教もされて「彼女」の代わりをさせられる男の娘シンガー
湊戸アサギリ
BL
またメス調教ものです。今回はエロ無しです。女装で押し倒されいますがエロはありません
女装させられ、女の代わりをさせられる屈辱路線です。メス調教ものは他にも書いていますのでよろしくお願いいたします
クラスの仲良かったオタクに調教と豊胸をされて好みの嫁にされたオタクに優しいギャル男
湊戸アサギリ
BL
※メス化、男の娘化、シーメール化要素があります。オタクくんと付き合ったギャル男がメスにされています。手術で豊胸した描写があります。これをBLって呼んでいいのかわからないです
いわゆるオタクに優しいギャル男の話になります。色々ご想像にお任せします。本番はありませんが下ネタ言ってますのでR15です
閲覧ありがとうございます。他の作品もよろしくお願いします
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる