恋愛サティスファクション

不動ベイシン

いつわりガール2

「園前寺依咲は自分がやったことは犯罪行為だと理解してる。分かったうえで逃げた。そして捕まって、狂言自殺未遂。健康に問題がなければ、むしろ反省してない悪質性が認められそうだ」

ご飯が食べられないくらい深刻な病気だと嘘をついて。
こっそり隠れてご飯を食べて取り調べから逃げているとしたら。
ぜんぜん反省はしていないよね。

「園前寺依咲の弁護士は、一か八かでこの作戦を計画したんじゃないかな。それは園前寺依咲のためではなく、芸司真珠子や御弓鮎美、さらに別の誰かを守るために」

園前寺さんの弁護士なのに、園前寺さんを守ってはくれないの？

「この音声が本物だとしたら、弁護士は懲戒請求されるかもね。詐欺をはたらくように唆しているから」

詐病は詐欺罪にあたる。
よくある犯罪は病気と偽って治療費を集めること。
今回は取り調べを継続できないようにして、あわよくば不起訴処分を勝ち取ろうとした。
そういう何かを得るための嘘は詐欺。

YouTuberのタレコミ動画が配信された翌日。
園前寺さんは退院して、また拘置所へと戻っていった。
警察も次は狂言自殺未遂なんか許さないし、取り調べはさらに厳しくなるだろうと圭介さんは言った。

そして、世は国民総ジャーナリスト時代へと突き進んでいく。
と、それっぽく言いたくなるくらいに。
インターネットでの暴露が頻発していく。

真偽不明な物も多い。
だから、裏取りのない文字だけの書き込みは信頼されない。
信じて欲しい人はどうするのか。
写真や音声、動画を証拠として添えるようになっていく。

それは隠し撮りされたものも多かったけど。
そもそも、園前寺さんも客のSEXを隠し撮りしていた。
厚労省の若手官僚、有守さんも有識者会議の音声をメディア関係者にばら撒いている。
だから、自分達だってやって良いんだと勘違いした人達が、憎い相手の秘密をインターネットで公開し始めた。

その中にはLittle WOMANとは関係ない、有名人の不倫や、有名企業のパワハラなどもあって。
テレビや新聞、週刊誌などは毎日投げ込まれる爆弾告発の何を優先して取り上げれば良いのか分からない有り様。

報道で扱わないと、さらに隠していた情報を暴露される。
かといって、テレビで扱えばインターネットを普段使わない人達にまで問題を知られてしまう。
ほんの数日でも耐えられれば、すぐに次の話題が飛び込んでくるから、それを願って見なかったことにしていたせいで。
別の告発者からさらに精度の高い情報が投稿された事件もあった。

もちろんLittle WOMAN関係の暴露も数え切れないくらいたくさんある。
園前寺さんについても。

新聞に書かれていたプロフィールにもあるように、園前寺さんも昔はLittle WOMANに保護された少女だった。
でもその前は？ 自著でも触れられていないその過去。

当時を知る小学校のクラスメイトから語られる情報。
実は園前寺さんは宗教団体、極東亜細亜を明るくする会の信者だった。
通称、極東明会。それはキリスト教から派生した新興宗教。

極東明会の主だった教義に、産めよ増やせよ地に満ちよという一節がある。
早くに結婚、出産することを推奨する教団。
そして信者の大半が10代の若いうちに結婚をして、複数の子供をもうけるそうだ。
子供達を愛の結実と呼び、宝物のように大切にする教義を守る会員の中には、10人以上も子供がいる夫婦もいるという。

教団の本部がある群馬県高崎市は連日報道関係者がカメラ片手に市民を追いかけていた。
それは極東明会の会員だけに留まらず、関係のない市民にもカメラを向ける、無節操さ。
あまりの傍若無人ぶりに腹を立てた一般市民が自分のスマホのカメラで動画を撮ってSNSに投稿する。
Xでは#メディアつきまとい被害、なんていうタグまでトレンド入りする始末。
もう誰にも止められない。めちゃくちゃだ。