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不動ベイシン
そうほうこうプレス7
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同業者に叱られたのはさすがに恥ずかしかったのか、責任が取れないからか。
帝都新聞の記者はようやく静かになった。
ピリ付いた空気の中、ようやく四葉出版の渋梨さんへの質問が始まった。
「未成年の少女のプライバシーを切り売りする行為はいかがなものでしょう」
これは質問のふりをした四葉出版への批判?
「あなたが私に質問をして、それを編集して報道するように。私は発信したい気持ちのある人の言葉を本にまとめて世に出すのを手助けするのが仕事です。今回は執筆者が未成年だった。それだけです」
自分のやってることと、報道機関がやったことの違いはあるのかと批判を投げ返した。
編集という言葉に事実を捻じ曲げて伝えたのではないかというトゲを隠してる。
さすが出版社の人だ。言葉の使い方がうまい。
「Little WOMANとの裁判に関する会見の場で本の宣伝をする理由をお答えください」
「本を発売するからには沢山の人に読んで欲しい。だから人の目が集まる、この場で宣伝をしています。それと、この本が売れて、少女Aが金銭的に力をつければ。今は出来ない裁判も出来るようになるんです」
渋梨さんが立ち上がりテーブルに置かれていたスタンドマイクを手に持った。
そして、YouTubeのカメラを真っ直ぐに見つめる。
芝居がかった仕草でビシッと人差し指を指してきたので、まるで画面のこちら側が見えているのかと、ドキリとした。
「カンパがしたいと言う、そこのあなた。是非とも1冊、本を買ってください。あなたが本屋で払うお金。それが少女Aに届きます」
「はいっ! 買います!」
渋梨さんに買えと言われて、僕は買うと宣言してしまった。
カンパのつもりで本を買って読んだらいいんだね。
分かったよ。
このあとも質問が矢継ぎ早にされる。
その全てを本を読めば分かると渋梨さんはかわす。
たしかに、MOZUちゃんの考えや気持ちは四葉出版の編集者さんには分からない。
それを直接みんなに伝えたいから、MOZUちゃんは本を出す。
そして、出すからには生活費諸々を稼ぎたい。
それはとても自然な欲求。
「わざわざ本にして売る事を中抜きと申される? Xやブログで発表しても一銭にもならないじゃないですか。そっちのほうがやりがい搾取でしょう? 書籍の販売価格は税込み1,650円。その中の少女Aが受け取る金額、いわゆる印税は1 冊あたり500円です。それとは別に出版に先立った契約金もお支払いしています。この契約金で少女Aは渡辺弁護士と契約しました。少女Aの顧問弁護士である渡辺弁護士立ち会いのもとに少女Aと交わした契約書もしっかりあります」
その金額を聞いて記者達がざわつく。
印税が本の値段の約半分って多いの?
ふつうは5~10%? 相場よりも高い印税や契約金を払って四葉出版は大丈夫?
「記者さん達なら分かりますよね? この金額の意味が。私達も赤字になるほど支援はできませんが、手弁当で本を出すことはできるんですよ」
巨悪に怯まず言葉をもって立ち向かうことがペンを持つ者の矜持だと四葉出版さんは言った。
それにうつむく何人かはLittle WOMANから圧力をかけられて、自由に記事が書けない記者なのだろうか。
こうして会見の全体を俯瞰で見ていると、言葉以上に伝わるものを感じる。
僕がこれまで真実だと思っていた報道も、一部を切り取り歪められていたのかもしれない。
MOZUちゃんや圭介さんが新聞やテレビにされたこと。
この攻撃方法は今回が初めてとは思えない。
各媒体でとてもスムーズな連携が取れていた。
これからは大手新聞だから、全国ネットのニュース番組だからと内容を鵜呑みにしない。
ちゃんと、自分の目と耳で情報を集めるようにしよう。
そのときは圭介さんにも情報収集を手伝ってもらおう。
これが僕がやりたい魔女見習いの仕事。
やらなきゃいけないと言われたこともやるから。
僕がやりたいことも少しやらせてほしい。
「ペンは剣よりも強し。伝えたい気持ちを歪めずに伝えることは閉塞感で重苦しい現代社会でも可能である。私個人が少女Aに示したかったことです」
渋梨さんのこの言葉で会見は終わった。
まだ質問がある、時間が足りないと騒ぐ人もいるけれど。
会見が始まって3時間以上が経過している。
質問も最後の方は既に答えた内容が繰り返されていた。
それなら答えるのは無駄だよ。
知りたければ配信内容を最初から見直せば良い。
「MOZUちゃんの本、たくさん買って応援しましょう」
買って応援だよ。
「たくさん買って、せっかくなら寄付しようか?」
寄付?
「唯が持ってても読むのは1冊で足りるだろ? それなら全国の図書館やコミュニティセンターの本棚とかに置いてもらった方が、沢山の人に読んでもらえる」
それはとっても素敵です。
裁判費用の支援にも、MOZUちゃんの名誉回復にも役立てる。
魔女見習いの魔法の正しい使い方だ。
帝都新聞の記者はようやく静かになった。
ピリ付いた空気の中、ようやく四葉出版の渋梨さんへの質問が始まった。
「未成年の少女のプライバシーを切り売りする行為はいかがなものでしょう」
これは質問のふりをした四葉出版への批判?
「あなたが私に質問をして、それを編集して報道するように。私は発信したい気持ちのある人の言葉を本にまとめて世に出すのを手助けするのが仕事です。今回は執筆者が未成年だった。それだけです」
自分のやってることと、報道機関がやったことの違いはあるのかと批判を投げ返した。
編集という言葉に事実を捻じ曲げて伝えたのではないかというトゲを隠してる。
さすが出版社の人だ。言葉の使い方がうまい。
「Little WOMANとの裁判に関する会見の場で本の宣伝をする理由をお答えください」
「本を発売するからには沢山の人に読んで欲しい。だから人の目が集まる、この場で宣伝をしています。それと、この本が売れて、少女Aが金銭的に力をつければ。今は出来ない裁判も出来るようになるんです」
渋梨さんが立ち上がりテーブルに置かれていたスタンドマイクを手に持った。
そして、YouTubeのカメラを真っ直ぐに見つめる。
芝居がかった仕草でビシッと人差し指を指してきたので、まるで画面のこちら側が見えているのかと、ドキリとした。
「カンパがしたいと言う、そこのあなた。是非とも1冊、本を買ってください。あなたが本屋で払うお金。それが少女Aに届きます」
「はいっ! 買います!」
渋梨さんに買えと言われて、僕は買うと宣言してしまった。
カンパのつもりで本を買って読んだらいいんだね。
分かったよ。
このあとも質問が矢継ぎ早にされる。
その全てを本を読めば分かると渋梨さんはかわす。
たしかに、MOZUちゃんの考えや気持ちは四葉出版の編集者さんには分からない。
それを直接みんなに伝えたいから、MOZUちゃんは本を出す。
そして、出すからには生活費諸々を稼ぎたい。
それはとても自然な欲求。
「わざわざ本にして売る事を中抜きと申される? Xやブログで発表しても一銭にもならないじゃないですか。そっちのほうがやりがい搾取でしょう? 書籍の販売価格は税込み1,650円。その中の少女Aが受け取る金額、いわゆる印税は1 冊あたり500円です。それとは別に出版に先立った契約金もお支払いしています。この契約金で少女Aは渡辺弁護士と契約しました。少女Aの顧問弁護士である渡辺弁護士立ち会いのもとに少女Aと交わした契約書もしっかりあります」
その金額を聞いて記者達がざわつく。
印税が本の値段の約半分って多いの?
ふつうは5~10%? 相場よりも高い印税や契約金を払って四葉出版は大丈夫?
「記者さん達なら分かりますよね? この金額の意味が。私達も赤字になるほど支援はできませんが、手弁当で本を出すことはできるんですよ」
巨悪に怯まず言葉をもって立ち向かうことがペンを持つ者の矜持だと四葉出版さんは言った。
それにうつむく何人かはLittle WOMANから圧力をかけられて、自由に記事が書けない記者なのだろうか。
こうして会見の全体を俯瞰で見ていると、言葉以上に伝わるものを感じる。
僕がこれまで真実だと思っていた報道も、一部を切り取り歪められていたのかもしれない。
MOZUちゃんや圭介さんが新聞やテレビにされたこと。
この攻撃方法は今回が初めてとは思えない。
各媒体でとてもスムーズな連携が取れていた。
これからは大手新聞だから、全国ネットのニュース番組だからと内容を鵜呑みにしない。
ちゃんと、自分の目と耳で情報を集めるようにしよう。
そのときは圭介さんにも情報収集を手伝ってもらおう。
これが僕がやりたい魔女見習いの仕事。
やらなきゃいけないと言われたこともやるから。
僕がやりたいことも少しやらせてほしい。
「ペンは剣よりも強し。伝えたい気持ちを歪めずに伝えることは閉塞感で重苦しい現代社会でも可能である。私個人が少女Aに示したかったことです」
渋梨さんのこの言葉で会見は終わった。
まだ質問がある、時間が足りないと騒ぐ人もいるけれど。
会見が始まって3時間以上が経過している。
質問も最後の方は既に答えた内容が繰り返されていた。
それなら答えるのは無駄だよ。
知りたければ配信内容を最初から見直せば良い。
「MOZUちゃんの本、たくさん買って応援しましょう」
買って応援だよ。
「たくさん買って、せっかくなら寄付しようか?」
寄付?
「唯が持ってても読むのは1冊で足りるだろ? それなら全国の図書館やコミュニティセンターの本棚とかに置いてもらった方が、沢山の人に読んでもらえる」
それはとっても素敵です。
裁判費用の支援にも、MOZUちゃんの名誉回復にも役立てる。
魔女見習いの魔法の正しい使い方だ。
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