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恋愛サティスファクション
すれ違い三叉路8
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「佐倉さん、離してください」
「やだー。店長さんの側がいいです」
「そこまでなつかれて悪い気はしませんが……。私も命は惜しいです。まだ死にたくありません」
「そんなっ!! 店長さん、死んじゃうんですか?」
「このままだとそうですね。あぁ。骨すら拾ってもらえなそうな死に様しか思い浮かばないです」
店長さんの顔色が真っ青だ。
もしかして持病の発作!?
「店長さん死なないで。大好きな店長さんには長生きして欲しいです」
「あー。今ので更に寿命が縮んだな」
「なんで?」
玲司君は不吉なこと言わない。
顔色が真っ青を通り越して土気色になってしまった店長さんをソファーに寝かせて。
意識はある。呼吸と脈拍が正常なことも確認。
きっちり絞めてあるネクタイを緩めて、シャツのボタンを3つほど外し、首もとを緩める。
あとやれることってなんだろう。
「佐倉そんぐらいにしとけ。あとは放っておけば治るやつ」
そっか。休むのが一番の薬って言うのもあるよね。
手が届くところに水の入ったコップを置いて。
ひとまず待機。
「佐倉は応急処置の訓練でも受けてんのかよ」
「学生の時にね。僕、中高と野球部で。安全講習とかあると部の代表として行ってたから」
他の部だとマネージャーが行ってたんだけど。
僕らの代は女マネが入ってくれなくて。
全くの未経験で入部した僕はマネージャー的な雑用も任されてた。
それはそれでチームに貢献できてる達成感はあって。
僕の後輩からはマネージャーが女子限定じゃなくて男子でもなれるって変わったのは良い事だ。
水やボールを運んだりとか女の子だけにやらせるには大変な仕事も多かったし。
やりとげて満足な僕に玲司君は後ろからのし掛かるように抱き付いてきた。
もう。玲司君は甘えん坊さんだ。
かまって欲しいのかな。
「応急対応としては悪くないんだけど。やりすぎ」
「なにが?」
「佐倉がテンチョーのこと大好きだって言っただろう」
「言ったけど、それがどうかした?」
「しかもテンチョー押し倒して服脱がせて」
「押し倒してない。休んでもらっただけ」
「結果だけ見たら押し倒してる」
玲司君が変なこと言うから、また店長さんが悲鳴をあげた。
大丈夫か様子を見たいのに玲司君が離してくれない。
「佐倉がそんなじゃ、圭が嫉妬に狂ってテンチョーのことボコすじゃん」
「圭介さんはそんな乱暴な怒り方はしないよ」
圭介さんは僕が間違ったことをしても頭ごなしに怒ったりしない。
次から間違えなければ良いのだと優しく諭してくれる。
そんな圭介さんが店長さんのことを殴ったりするわけない。
しかも理由がありもしない嫉妬だなんて。
圭介さんは大人の余裕で受け入れてくれるよ。
「絶対する。佐倉が自覚なく地雷をぶちまけるから。テンチョーは圭にタマ取られるってワケ。OK?」
「大事なところがなんの説明にもなってないよ」
「佐倉は圭のモノとしての自覚が足りてねぇって話だ」
「自覚もなにも、僕は圭介さんの恋人だけど、でもそれだけの存在だ。特にこれといった特技もない普通の男だよ」
「佐倉は自分の彼氏だって言う圭のこと何も知らねぇんだな」
それは言わないで。
知ろうとすればするほど、知らないことが増えていく。
このことを突き詰めるとネガティブがやって来る。
「オレから言うのはフェアじゃねぇから全部は言わねぇ。それでも聞くか?」
玲司君は嘘をつかない。
だからこそ、今から言われる言葉から僕は逃げちゃいけない。
「教えて。玲司君の知っている圭介さんのことを」
どんなことでも受け止めてみせるから。
「圭はこのクラブの実質的なオーナーだ。アイツはここ以外にも色々手ぇ出してウマイことやってんだよ。それこそ、昼間にアセクセ働かなくてもいいぐらいにな」
ああ。僕が抱えていた疑問の答えがここにあった。
ずっと不思議だったんだ。
圭介さんの生活感のなさが。
一般家庭育ちの僕とは違う何かの理由の一端が見えた気がする。
「あんな秘密主義のヘンタイなんて捨ててオレに乗り換えろよ。あんなクソッたれでも、拾ってもらった恩はあるからムリヤリ奪うわけにはいかねぇ。だから佐倉が選べ。圭は佐倉の決めたことに反対しねぇだろ」
「やだー。店長さんの側がいいです」
「そこまでなつかれて悪い気はしませんが……。私も命は惜しいです。まだ死にたくありません」
「そんなっ!! 店長さん、死んじゃうんですか?」
「このままだとそうですね。あぁ。骨すら拾ってもらえなそうな死に様しか思い浮かばないです」
店長さんの顔色が真っ青だ。
もしかして持病の発作!?
「店長さん死なないで。大好きな店長さんには長生きして欲しいです」
「あー。今ので更に寿命が縮んだな」
「なんで?」
玲司君は不吉なこと言わない。
顔色が真っ青を通り越して土気色になってしまった店長さんをソファーに寝かせて。
意識はある。呼吸と脈拍が正常なことも確認。
きっちり絞めてあるネクタイを緩めて、シャツのボタンを3つほど外し、首もとを緩める。
あとやれることってなんだろう。
「佐倉そんぐらいにしとけ。あとは放っておけば治るやつ」
そっか。休むのが一番の薬って言うのもあるよね。
手が届くところに水の入ったコップを置いて。
ひとまず待機。
「佐倉は応急処置の訓練でも受けてんのかよ」
「学生の時にね。僕、中高と野球部で。安全講習とかあると部の代表として行ってたから」
他の部だとマネージャーが行ってたんだけど。
僕らの代は女マネが入ってくれなくて。
全くの未経験で入部した僕はマネージャー的な雑用も任されてた。
それはそれでチームに貢献できてる達成感はあって。
僕の後輩からはマネージャーが女子限定じゃなくて男子でもなれるって変わったのは良い事だ。
水やボールを運んだりとか女の子だけにやらせるには大変な仕事も多かったし。
やりとげて満足な僕に玲司君は後ろからのし掛かるように抱き付いてきた。
もう。玲司君は甘えん坊さんだ。
かまって欲しいのかな。
「応急対応としては悪くないんだけど。やりすぎ」
「なにが?」
「佐倉がテンチョーのこと大好きだって言っただろう」
「言ったけど、それがどうかした?」
「しかもテンチョー押し倒して服脱がせて」
「押し倒してない。休んでもらっただけ」
「結果だけ見たら押し倒してる」
玲司君が変なこと言うから、また店長さんが悲鳴をあげた。
大丈夫か様子を見たいのに玲司君が離してくれない。
「佐倉がそんなじゃ、圭が嫉妬に狂ってテンチョーのことボコすじゃん」
「圭介さんはそんな乱暴な怒り方はしないよ」
圭介さんは僕が間違ったことをしても頭ごなしに怒ったりしない。
次から間違えなければ良いのだと優しく諭してくれる。
そんな圭介さんが店長さんのことを殴ったりするわけない。
しかも理由がありもしない嫉妬だなんて。
圭介さんは大人の余裕で受け入れてくれるよ。
「絶対する。佐倉が自覚なく地雷をぶちまけるから。テンチョーは圭にタマ取られるってワケ。OK?」
「大事なところがなんの説明にもなってないよ」
「佐倉は圭のモノとしての自覚が足りてねぇって話だ」
「自覚もなにも、僕は圭介さんの恋人だけど、でもそれだけの存在だ。特にこれといった特技もない普通の男だよ」
「佐倉は自分の彼氏だって言う圭のこと何も知らねぇんだな」
それは言わないで。
知ろうとすればするほど、知らないことが増えていく。
このことを突き詰めるとネガティブがやって来る。
「オレから言うのはフェアじゃねぇから全部は言わねぇ。それでも聞くか?」
玲司君は嘘をつかない。
だからこそ、今から言われる言葉から僕は逃げちゃいけない。
「教えて。玲司君の知っている圭介さんのことを」
どんなことでも受け止めてみせるから。
「圭はこのクラブの実質的なオーナーだ。アイツはここ以外にも色々手ぇ出してウマイことやってんだよ。それこそ、昼間にアセクセ働かなくてもいいぐらいにな」
ああ。僕が抱えていた疑問の答えがここにあった。
ずっと不思議だったんだ。
圭介さんの生活感のなさが。
一般家庭育ちの僕とは違う何かの理由の一端が見えた気がする。
「あんな秘密主義のヘンタイなんて捨ててオレに乗り換えろよ。あんなクソッたれでも、拾ってもらった恩はあるからムリヤリ奪うわけにはいかねぇ。だから佐倉が選べ。圭は佐倉の決めたことに反対しねぇだろ」
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