恋愛サティスファクション

くらげ

文字の大きさ
上 下
8 / 429
恋愛サティスファクション

誕生日はフルコース5

しおりを挟む
圭介さんから「唯の体をキレイにしようね」って言われて。
お風呂にでも入るのかなって思ったら、キレイにするのは僕の体の中のことで。
男同士でSEXするのがこんなに大変だなんて僕は知らなかった。

「唯、機嫌直してー」
「機嫌悪くなんてないです」
「ほら悪い」

そんなんじゃないって身じろぐとお湯がチャプンっと跳ねた。
僕は湯船のなか、後ろから抱き締められるように圭介さんの足の間に座っているから、自由に動けない。
圭介さんに包まれるように、僕は膝を抱えて丸くなって座る。

僕の濡れた髪を、お湯から顔を出す膝小僧を、ちょっと意固地になってほどかない腕を、圭介さんの手のひらは優しく撫でる。
こうやって背中を預けて触れ合えるのは嫌じゃないんだけど。

さきほどまでの記憶は今すぐ地平線の彼方に投げ捨てたい。

僕の内側をきれいにしたあと。
今度は体の外側をキレイにしようってお風呂に入ることになって。
圭介さんが僕を丁寧に洗ってくれるから、お礼に僕も圭介さんの体を洗って。
最後はお互いが泡をどれだけ相手に塗りつけるかの遊びみたいになってた。

そこまでは良かったんだ。楽しかったし。
だけど、ゆっくりお湯に浸かってるうちに、さっきの忘れたくて堪らないのに忘れられない記憶が疼いてきて。

やっぱりさ、僕はSEXにも夢を見ていたんだよ。
キスしてイチャイチャして、そういう雰囲気になったら体を重ねて。
そういうムードが大事なんじゃないの? 
それなのに、ふたを開けたら結構生々しい感じで。
僕は理想と現実のギャップに打ちひしがれていた。

こんな思いをするなら事前にネットで調べておけば良かった。
圭介さんはネットの情報は嘘も多くて信頼できないって言うから見ないでいたけど。
必要なことは俺が教えるって、本当に教えてくれたけど。
心の準備をする時間は必要だよね!

「唯、今夜はもう、やめておく?」

圭介さんの腕が僕の腕に絡むように抱き締めてくる。
後ろから耳元で囁くのはズルいと思う。
何がズルいかはうまく言えないけど。
なんか僕の思考力が弱くなる感じする。

それにやめるってエッチしないってこと? それはどうなの?
確かに今の僕は子供みたいに拗ねてるけど。
ここでやめてしまったら、さっきの僕の頑張りは無駄になるってことだよね?
そんなのは嫌だ。あんなに頑張ったんだから、ちゃんと最後までやりたい。

「今さらやめるとか言わないでください」

僕の失った誇り分くらいは気持ちよくなりたい。
そこは譲れない。僕だって男だ。
圭介さんとのデートでランチを食べていたら、僕だけレディースサービスのデザートを付けられたりする女顔だけど。
ちゃんと付いてるものは付いてる。

「続けるなら、唯にはもっと頑張ってもらうことになるよ」
「それでも」
「俺は唯のこと好きだから、ツライことしたくない」
「僕だって圭介さんのことが大好きだから。続けたいです」

ここまできたら僕だって腹をくくる。
なにされて大丈夫。のはず。
圭介さんも僕に気を使いすぎないで。
初めてなんて戸惑って当然、ぐらいの勢いでガツンってやっちゃってよ。

「全部、圭介さんにお任せしちゃうけど。僕は圭介さんと最後までやりたい」

僕の決意表明を圭介さんは黙って聞いていた。
俯く僕の顎を圭介さんはくいっと後ろを振り向くように掴んで。
ゆったりとした、微睡むようなキス。
激しいキスも好きだけど、この穏やかなキスも癖になりそう。

このキスが圭介さんの答えなんだよね。
言葉がなくても伝わってくる。
僕達もうひとつになってる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける

気ままに
ホラー
 家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!  しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!  もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!  てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。  ネタバレ注意!↓↓  黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。  そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。  そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……  "P-tB"  人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……  何故ゾンビが生まれたか……  何故知性あるゾンビが居るのか……  そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

【完結】欠陥品と呼ばれていた伯爵令息だけど、なぜか年下の公爵様に溺愛される

ゆう
BL
アーデン伯爵家に双子として生まれてきたカインとテイト。 瓜二つの2人だが、テイトはアーデン伯爵家の欠陥品と呼ばれていた。その訳は、テイトには生まれつき右腕がなかったから。 国教で体の障害は前世の行いが悪かった罰だと信じられているため、テイトに対する人々の風当たりは強く、次第にやさぐれていき・・・ もう全てがどうでもいい、そう思って生きていた頃、年下の公爵が現れなぜか溺愛されて・・・? ※設定はふわふわです ※差別的なシーンがあります

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く、が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!

処理中です...