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不動ベイシン
オペレーションらびっと5
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衣笠大臣は圭介さんの眠らないエピソードをいくつか教えてくれた。
あまりに眠らな過ぎて脳波を図られたこともあるらしい。
脳波の測定なら。
『増山先生ですか?』
『知ってるのか?』
『先日、交通事故で尾張大病院にお世話になった時に少しだけ圭介さんの話も聞きました。本当に少しだけ』
聞いたと言っても、聞く前と何も変わらないぐらいにちょっとだけ。
圭介さんが僕の存在を支えに過ごしていたらしいと言うことだけ。
『圭君の子供の頃の話なら、増山先生もだけど松川君が詳しい。彼らはつばさに保護された頃からの知り合いだからね。聞いてみるか? 調整するよ?』
増山先生とは話がしたいかも。
イマジナリー唯ちゃんについて聞きたい。
けど、松川さんは、ちょっと遠慮しておこうかな。
忙しい時に仕事を増やして怒られたくはない。
『増山先生の定期検診に立ち会えるよう私からも言っておくよ。圭君と一緒に行くといい』
『ありがとうございます。圭介さんと仲良くするコツとか教われたらいいな』
『もう十分に仲良しだろう?』
『もっと仲良くなりたいんです』
今日みたいに頑張る姿をそばにいて応援したいし。
疲れていたら支えたいし。
もちろん一緒に楽しいことをたくさんしたい。
衣笠さんとチャットでおしゃべりしてたら、あっという間に時間が過ぎちゃった。
『そろそろ予定してた時間ですね。圭介さんを起こします』
ずっと見ていられる寝顔だけど。
衣笠大臣をお待たせしても良くないから。
「圭介さん。時間ですよ。起きてください」
「ん。おはよ」
眠たそうに眉間にしわを寄せて、くしゅくしゅした顔で起き上がる。
こんなふうに寝ぼけた圭介さんを見るの初めてかも。
一緒に寝てるときも、圭介さんのが早く起きてたし。
「衣笠さんからメッセージが来てますよ。いつでも始められるそうです」
「それなら起こしてくれたら良かったのに」
圭介さんのスイッチが入ってきびきびと動き出した。
「圭介さんがショートスリーパーなこととか教えてもらってたんです」
「えっ? 変なこと聞いてない?」
変なこと? 普通に話してただけだけど?
それより、これから衣笠さんとビデオ通話するんだよね。
メイク崩れてないかの最終確認。
鈴村さんの娘としての泣きぼくろはすでに描いてある。
今日もカワイイって言ってくれるかな。
『圭介さんが起きたからアプリの設定してもらってます』
『こちらはいつ始めてもらっても大丈夫だ』
「衣笠さんも準備OKみたいですよ」
「じゃあ、繋ぐね」
ここからは声出し禁止。
魔女見習いとしてビデオ通話をする。
コール音が鳴るのとほぼ同時にパソコン画面に衣笠さんの顔が写った。
そもそも。この通信アプリも自作なんだよな。
それに僕の手話の翻訳アプリまで組み込んであるのって、普通にすごいこと。
趣味の時間に作るものじゃない。
「おっ。圭君か。おはよう」
「おはようございます。待ってないで起こしてくれたら良かったのに」
「君が寝てるなんて珍しいからな」
まるで親戚のおじさんとお話してるみたい。
保護者チームのメンバーだし、昔からこんな感じでお話ししてたのかな。
「唯。あとは自由に話して」
実際の会話になったら圭介さんは横に座って見てるだけ。
事前に用意したプログラムがきちんと動くかの確認だから話す内容も雑談でいい。
自由にって言われると。緊張するな。
『こんにちは。お忙しいところ、お付き合いいただきありがとうございます、衣笠大臣』
──こんにちは 忙しい とき 相手 する ありがとうございます 衣笠さん
通訳した文章は機械音声が言葉を読み上げてくれる。
これで細かいニュアンスに違いはあるけど意味は伝わる。
衣笠大臣が衣笠さんになっているのは、圭介さんがそう呼んでいるから。
だって圭介さんは衣笠大臣が大臣になる前からの知り合いだ。
「同時通訳と同じくらいのラグでこの精度か。さすが圭君だ」
『本当に圭介さんはすごいですよね』
──本当 圭介さん すごい です
そのまま圭介さんの学生時代に打ち立てた数々の伝説を聞かせてもらう。
その中には司法試験のことも。
司法修習の最後に受ける試験。通称二回試験の最年少合格記録は圭介さんなんだって。
「司法試験に受かる高校生は稀にいても、大概は大学に進学するから。そのまま司法修習に進む無鉄砲は普通いない。しばらくは記録保持者として名前が残るな」
やっぱり普通の人は司法試験に合格しても、まずは大学に進学するんじゃん。
なぜそこで誰にも相談せずに独断で司法修習に進んじゃうかなあ。
周りの人達に助けてもらえたけど。
うまくいかなかった可能性もあって。
『何でもひとりで決めちゃうから。もっと周りの人達を頼ってもいいのに』
──全て ひとり 決める から もっと まわり 人々 頼る 良い
「これからはまず唯に相談するよ。ひとりで決めたりしない」
これからは秘密にしないで聞かせてくださいね。
──はい
僕が圭介さんの言葉に頷いたのを翻訳アプリが読み取ったんだ。
すごい。心の中を読まれてるみたい。
あまりに眠らな過ぎて脳波を図られたこともあるらしい。
脳波の測定なら。
『増山先生ですか?』
『知ってるのか?』
『先日、交通事故で尾張大病院にお世話になった時に少しだけ圭介さんの話も聞きました。本当に少しだけ』
聞いたと言っても、聞く前と何も変わらないぐらいにちょっとだけ。
圭介さんが僕の存在を支えに過ごしていたらしいと言うことだけ。
『圭君の子供の頃の話なら、増山先生もだけど松川君が詳しい。彼らはつばさに保護された頃からの知り合いだからね。聞いてみるか? 調整するよ?』
増山先生とは話がしたいかも。
イマジナリー唯ちゃんについて聞きたい。
けど、松川さんは、ちょっと遠慮しておこうかな。
忙しい時に仕事を増やして怒られたくはない。
『増山先生の定期検診に立ち会えるよう私からも言っておくよ。圭君と一緒に行くといい』
『ありがとうございます。圭介さんと仲良くするコツとか教われたらいいな』
『もう十分に仲良しだろう?』
『もっと仲良くなりたいんです』
今日みたいに頑張る姿をそばにいて応援したいし。
疲れていたら支えたいし。
もちろん一緒に楽しいことをたくさんしたい。
衣笠さんとチャットでおしゃべりしてたら、あっという間に時間が過ぎちゃった。
『そろそろ予定してた時間ですね。圭介さんを起こします』
ずっと見ていられる寝顔だけど。
衣笠大臣をお待たせしても良くないから。
「圭介さん。時間ですよ。起きてください」
「ん。おはよ」
眠たそうに眉間にしわを寄せて、くしゅくしゅした顔で起き上がる。
こんなふうに寝ぼけた圭介さんを見るの初めてかも。
一緒に寝てるときも、圭介さんのが早く起きてたし。
「衣笠さんからメッセージが来てますよ。いつでも始められるそうです」
「それなら起こしてくれたら良かったのに」
圭介さんのスイッチが入ってきびきびと動き出した。
「圭介さんがショートスリーパーなこととか教えてもらってたんです」
「えっ? 変なこと聞いてない?」
変なこと? 普通に話してただけだけど?
それより、これから衣笠さんとビデオ通話するんだよね。
メイク崩れてないかの最終確認。
鈴村さんの娘としての泣きぼくろはすでに描いてある。
今日もカワイイって言ってくれるかな。
『圭介さんが起きたからアプリの設定してもらってます』
『こちらはいつ始めてもらっても大丈夫だ』
「衣笠さんも準備OKみたいですよ」
「じゃあ、繋ぐね」
ここからは声出し禁止。
魔女見習いとしてビデオ通話をする。
コール音が鳴るのとほぼ同時にパソコン画面に衣笠さんの顔が写った。
そもそも。この通信アプリも自作なんだよな。
それに僕の手話の翻訳アプリまで組み込んであるのって、普通にすごいこと。
趣味の時間に作るものじゃない。
「おっ。圭君か。おはよう」
「おはようございます。待ってないで起こしてくれたら良かったのに」
「君が寝てるなんて珍しいからな」
まるで親戚のおじさんとお話してるみたい。
保護者チームのメンバーだし、昔からこんな感じでお話ししてたのかな。
「唯。あとは自由に話して」
実際の会話になったら圭介さんは横に座って見てるだけ。
事前に用意したプログラムがきちんと動くかの確認だから話す内容も雑談でいい。
自由にって言われると。緊張するな。
『こんにちは。お忙しいところ、お付き合いいただきありがとうございます、衣笠大臣』
──こんにちは 忙しい とき 相手 する ありがとうございます 衣笠さん
通訳した文章は機械音声が言葉を読み上げてくれる。
これで細かいニュアンスに違いはあるけど意味は伝わる。
衣笠大臣が衣笠さんになっているのは、圭介さんがそう呼んでいるから。
だって圭介さんは衣笠大臣が大臣になる前からの知り合いだ。
「同時通訳と同じくらいのラグでこの精度か。さすが圭君だ」
『本当に圭介さんはすごいですよね』
──本当 圭介さん すごい です
そのまま圭介さんの学生時代に打ち立てた数々の伝説を聞かせてもらう。
その中には司法試験のことも。
司法修習の最後に受ける試験。通称二回試験の最年少合格記録は圭介さんなんだって。
「司法試験に受かる高校生は稀にいても、大概は大学に進学するから。そのまま司法修習に進む無鉄砲は普通いない。しばらくは記録保持者として名前が残るな」
やっぱり普通の人は司法試験に合格しても、まずは大学に進学するんじゃん。
なぜそこで誰にも相談せずに独断で司法修習に進んじゃうかなあ。
周りの人達に助けてもらえたけど。
うまくいかなかった可能性もあって。
『何でもひとりで決めちゃうから。もっと周りの人達を頼ってもいいのに』
──全て ひとり 決める から もっと まわり 人々 頼る 良い
「これからはまず唯に相談するよ。ひとりで決めたりしない」
これからは秘密にしないで聞かせてくださいね。
──はい
僕が圭介さんの言葉に頷いたのを翻訳アプリが読み取ったんだ。
すごい。心の中を読まれてるみたい。
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