恋愛サティスファクション

初陣アプレンティス

かいぎストラテジー6

「外部と繋がっているとはいえ圭さんの監視付き。誰にも相談できない状況で離れに一人きり。話し相手もいなくてメンタル病みそうですね」

二上さんが成瀬さんの現状を書き出して“メンタルケア必要では？”と付け足した。
たしかにストレス空間に一人きりでは健康を害してしまいそう。

「毎晩ケアはしてるよ？ 話し相手がいないと人は簡単に狂うから。泣きながら反省するのを聞いてあげてる。俺の見張り付きだけど足枷外して風呂にも入れてるし。成人男性に必要なカロリー計算して食事も与えてる。かなり人道的に配慮してる」
「爆弾付きの足枷つけてる時点で非人道的な行いなんですけど！」
「別に爆薬はブラフだし。あっ！ 唯に嘘ついたわけじゃないから、これは許されるよね？」

圭介さんが慌て始めた。
僕が嘘は嫌いだと言い続けた成果が出てきたな。
良い傾向だ。

「心配するのはそこじゃないです。僕についた嘘じゃないし、圭介さんが必要な罰だと思ってやったなら僕は関与しません。それよりも成瀬さんは本当に大丈夫なんですか？ 成瀬さんが鬱病とかになってたら、やり過ぎた嘘ってことで僕は許せないかもです」

圭介さんの拷問でメンタル病んでない？

「ちゃんと反省して、足枷のある生活を受け入れてるから大丈夫だよ。一生このままじゃないって説明してるし。俺達が塀の外に出られるようになるまでの辛抱だって耐えてる。精神は健康だよ。心配なら会いに行く？」

あとでお見舞いに行くのは良いかも。
監禁生活って暇だし、僕が話し相手になれたらいい。
庭の散歩すら許されないのはつまらないだろうから。

「成瀬さんの足枷を早く取ってあげるためにも。やっぱりLittle WOMANは徹底的に潰す必要がありますね」

諸悪の根源が残っているうちは僕達に安全な自由はない。

「何をもって潰すと言ってるんです？」

二上さんに聞かれた。
そう言われると潰すっていうのは曖昧な言葉だな。
団体を解散させることも潰すって言うし。
でも解散だけじゃ足りない。
中の人はそのままに名前だけ変えて新しい団体を作られる。

「Little WOMANがやってることを世間に公開して司法の場で裁かれることです」

これが僕の考えるLittle WOMANの潰し方。

「やってることとは？」
「“でもホス”で集めた女の子達に大麻を覚えさせて、覚醒剤を使った売春を強要して、妊娠したら無理矢理中絶させて、胎児の遺体でサプリメント作って。その全部ですよ」

続けての質問にも答える。
その答えを二上さんが付箋に書いていく。
他にも罪に問えることがあるなら教えてほしい。

「そんなことを世間に公開してどうなると思ってるんですか？ 普通の人は胎児サプリの存在を知ったらショックを受けるんです。しかも作ってるLittle WOMANだけを罪に問えたら満足するんですか？ 違いますよね？ サプリを買ってた客も晒すつもりだ」
「当たり前ですよ。買う人がいるから作り続けてるんだし」

悪いことをしたのなら観念して捕まるべきだろ。
こんな非道なサプリを愛用している人達もまとめてお縄につけばいい。

「サプリを使うのは美容目的の女優だけじゃないんですよ。アンチエイジング効果を求めた某国の王女が、身体機能向上を願うオリンピック金メダリストの選手が、他にもたくさんの著名人が様々な効能を期待して胎児サプリの愛用者だと知ってもそう言いますか？」

上級国民の顧客って。
売春だけじゃなくてサプリの客のことでもあったんだ。
王女って言い方は海外の王室なんだろう。
事を暴けば国際問題に発展する。
それを二上さんは心配してるんだ。
僕達の手に負えない話になると忠告してくれている。

「世の中知らないままでいたほうが良いこともあるんですよ」
「じゃあ、罪をなかったことにしろって言うんですか？」

二上さんの言うことは正しい。
でもその正しさは正義じゃない。