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くらげ

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初陣アプレンティス

こうとうレポート3

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「オレから言うか?」

黙り込んでしまった圭介さんに玲司君が助け舟を出してあげる。
さすがヒーロー。困っている子には手を差し伸べてしまうんだね。

「自分で話す」

圭介さんが自分で伝えると断った。
うんうん。偉いぞ。好感度1アップだ。

「去年、区役所を退職してる」

そうきたかー。
変なことしてるんじゃないかって心配したけど仕事辞めるくらい別に隠すことじゃなくない?

「唯と過ごす時間を増やすために辞めたんだ。たくさん一緒にいたかったから。それなのに暇してるなら親父に仕事手伝えって押し付けられて。俺、暇じゃないのに」

暇じゃないのは僕のストーキングに忙しかっただけだろう。
それならお義父さんの仕事のがずっと社会の役に立つし有意義だよ。

「でも、それだとマイナンバーの関係で会えなくなったのは? システムを直す過程で立ち会いが必要って話でしたよね?」
「マイナンバーの不正アクセスについて呼び出されたのは本当。復旧を手伝うシステム屋としてだけど。それと同じ時期に俺に対しての殺害予告等が増えて。実際に襲われたりもしたから、唯に会うのは控える事にしたんだ。唯まで襲われたらいけないだろ」
「襲われたって。誰に!?」

そんな危ないことがあったなんて。
教えてくれたら良かったのに。
なんでも黙ってるのは駄目だよ。

「唯も新聞で読んだでしょ? 支援が必要な女性への支援に関する法律。あれLittle WOMAN達の新しいシノギのための法律なんだよ。福祉っていう大義名分で金かき集めるスキームなんだ」

こんなところにもLittle WOMAN。
そんなにお金が欲しいなら勝手に悪い事してよ。こっちに関わらないで。

「あの法律の運用を話し合う有識者会議に、俺は親父の代役として出ることになった。会議に出てる俺以外のメンバーは、Little WOMANとそのお仲間だから居ても無駄なんだけど。誰も出ないわけにもいかない。発言を議事録に残してもらえない虚しい会議だとしても、親父の代わりに参加してるからには、おかしいなって思うことに声を上げてたら。嫌われちゃったみたいで襲われてさー」

Little WOMANの代表、園前寺さんが新聞で話してたイニシャルAってやっぱり圭介さんのことだったんだ。
自分達の都合の悪い存在だからって襲ったり新聞のインタビューで悪く言うのは違くない?
悪巧みの邪魔になる発言をした圭介さんを黙らせるために暴力に訴えるなんて自分勝手な人達だ。
向こうのほうが悪事の質が悪い。ヤクザよりもヤクザ。

「圭介さんは正しいことをしていただけなのに酷い。襲われたって大丈夫だったんですか? 怪我してないですか?」
「俺強いから安心して。ちゃんと返り討ちにしたよ。数ヶ月したら唯とも出かけられるようになっただろ」

たしかに、一緒に生活するようになってからは出かけられるようになった。
だけどLittle WOMANがいなかったら、システム復旧の仕事で忙しかったとしても少しぐらい会えたはずだ。
仕事を理由に会わないでいた本当の理由はLittle WOMANの手段を選ばない暴力のせい。

「僕達がデート出来なくなったのもLittle WOMANのせいだったなんて。絶対に許せない」
「俺の仕事のことは? 転職したこと怒ってない?」

転職なんて誰でもするし。グチグチ言うこと?
それ言ったら今の僕は無職だよ?

「転職したことは怒ってないです。だけど黙ってたことは悲しいです。僕はそんなに信用ないですか?」

僕、信じられてない?

「お義父さんの仕事のお手伝いって福祉関係なんですよね。立派な仕事じゃないですか。法律について話し合う会議にも出られるくらいの働きってすごいことですよ」
「そうなの? 公務員じゃなくても唯は気にしなかった?」

公務員じゃなくても、すごい仕事はいっぱいあるよ。

「公務員はモテるって聞いたから公務員してたんだけど。唯も俺が区役所の職員なこと凄いって褒めてくれたし。だから公務員やめたら嫌になるかなって」
「なんだよ。それ。別に僕は圭介さんを職業で好きになったわけじゃないし」

公務員がモテるのは結婚相手に選ぶならっていうアンケートじゃない?
僕は職業で恋人を選んだりしないよ。失礼だな。

「ストーカーのし過ぎで僕のことを決めつけるの本当に駄目。たしかに僕のこと理解してるとこもあるけど間違ったまま思い込んでるところが多過ぎます」

結局そこなんだ。
圭介さんは僕のことを知り過ぎて、そのせいで僕のことを見てくれない。

「ごめん。今度からはちゃんと唯に聞く」

そうです。

「もうイマジナリーな僕じゃなくて本物の僕に聞いてください。画面越しじゃない、目の前の僕を見てください」
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