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くらげ

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初陣アプレンティス

別れ話は突然に5

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「ちゃんと圭が理解するように伝えたか?」

どういうこと? 僕はちゃんと伝えたよ。

「アイツ単純だから二度と嘘つくなって言えば嘘つかねぇだろ」
「そんな言い方しなくても嘘ついたことに怒ったら、次からは嘘を言わないでしょ?」
「そんな器用な事できねぇって」
「圭介さんって馬鹿なの?」

なんでそんなことも分からないの?
小学生でも分かることだよ。
怒られたことを繰り返したら、もっと怒られるし嫌われるって。

「バカだぞ」

そんなあっさり言うなよ。

「バカだから賢い佐倉が教えてやれよ。小学校の道徳からやり直しだ」

嘘をついてはいけません。
そんな当たり前なことを教えなきゃいけないなんて。
これまで圭介さんに勉強を教えてきた人達は何を教えていたんだ?
難しい漢字や数式よりも最初に教えるべきことだろ?
ってか、法学部なら嘘は駄目って学んでないの?

道徳なんてものはわざわざ勉強することじゃない。
幼稚園、小学校で友達や先生と過ごすなかで自然に学ぶもの。
ときには喧嘩もするけどごめんねって仲直りして。
自分の悪いところは直したり、相手の悪いところを許す経験を繰り返して僕達は大人になっていく。

だけど圭介さんの子供の頃って普通じゃないから。
嘘をついちゃ駄目だと教えてくれるはずのお母さんがそもそも社会のルールをあんまり分かってない感じ。
お母さん関係の大人の人達は明らかに悪い人。
 
保育園の先生達は圭介さんの生活面の躾を頑張ってくれたと言っていたけど。
性格とか内面までは無理だった。
だって圭介さんは物心ついた頃には嘘で塗り固めた生活を送っているから。
先生達も騙されていたんだろう。

普通は思わない。
保育園に通う子供が自分の親の薬物依存を理解したうえで隠して生活しているなんて。
その数年後にはアンダーグラウンドな人達から違法に薬を用意してもらって、お母さんの介護をする小学生。
そんな普通じゃない育ち方をした圭介さんにどうやったら僕の普通を分かってもらえるのか。

さっきよりも強くなった雨の中。傘をさして屋敷に戻る道を歩く。
濡れて滑る足元。前を行く玲司君の大きな足跡を見て進む。
背中は見れない。下を向いちゃう。

玲司君は圭介さんの普通じゃないところを一緒に生活してたから分かってるんだよな。
キレるポイントとかも知ってるから、僕のお願いより圭介さんが怒らないことを優先したりして。

玲司君なりに守ろうとしてくれていたのも今なら分かる。
僕の体を傷付け逃げられないようにして、本格的な監禁をするかもしれない圭介さんを思い留まらせてくれたのは玲司君なんだ。
SEXをして落ち着かせるっていう方法は微妙だけど、僕が逃げ出したあとかなり荒れたらしいし。
他に手がなかったんだろう。
まあ、僕が圭介さんを殴って止めたから未遂だけどね。

でも1回殴られたくらいで圭介さんがSEXしないってなったの、今思うと変かも。
だって圭介さんは暴力に慣れている。
たんこぶが出来ない程度に殴られたって構わず襲えたはずだ。

もしかして、あれが僕の“はじめて”だったから?
これまでの僕は人を殴ったことなかった。
圭介さんを殴ったのが人生で初めての経験だった。

きっと僕のストーカーをしてる圭介さんは僕が殴り合いの喧嘩なんてしたことないのを知っていて。
自分が殴られる初めての相手になれたことに喜んだ?
殴られて喜ぶっていうと変態みたいに聞こえるけど、圭介さんは変態だから。

その後、鈴村さんが写真を撮った。
あんな写真とはいえ僕達の初めてのツーショットだし嬉しかったのかも。

Roi君モードな玲司君と販促イベントでツーショット撮っただけであれだけ嫉妬したんだ。
柳八関とのことで怒ったのも写真や動画を撮ったことが原因なら。
圭介さんも一緒に写真を撮りたかったんじゃないかな。
鈴村さんが撮ってくれたから怒りが収まった?

翌朝に玲司君が撮った僕と鈴村さんの動画を自分が撮ったものだと人に配ったのも。
嘘でもいいから僕のプライベートな動画を撮ったのは自分だと言いたかったから?

あくまでも仮定だけど。
圭介さんがすごく僕に執着してて、僕のことを僕より知ってて、でも変なところで臆病な人だとしたら。
僕達の歪んだまま進んだ関係も、まだ修正出来るかもしれない。

好きなら好きなままでいいとMOZUちゃんは言ってくれた。
どうしようもない相手だと分かっていても嫌いになれないことってあるよねと笑ってくれた。
MOZUリスのみんなも僕のことを応援してくれた。
価値観が合わないのは直らないから別れたほうが良いと言ってくれた子達もいたけど。

別れるのは最終手段。
諦めの悪さは僕の長所になると福島の爺ちゃんは褒めてくれたんだ。
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