恋愛サティスファクション

初陣アプレンティス

はっぴー・ばーすでい・とぅーゆー3

帽子を返しに行くつもりが衝動的に新聞を持ってきてしまった。
新聞を読んでも僕に関わるようなニュースが載っているはずないのに。
こんなに胸がドキドキする必要ないじゃん。
なんで悪いことをしている気持ちになっているのか。
青ざめた鏡の中の自分と目が合って笑ってしまう。

落ち着けよ僕。新聞を読んだくらいで何になる。
せっかく持ってきたし軽く読んで元の場所に返そう。
それぐらいは許されるよ。
知識は人生を豊かにする。

一面の見出しは最新の内閣支持率。右肩下がりの支持率が国民の不満を表していると書かれている。
僕は不満を感じる余裕すらない。
けれどもこの数字が民意だ。
総理はじめとした政府の偉い人たちは今一度襟を正すべきなのだろう。

ぺらりぺらりと紙面をめくる。
国際。経済。スポーツ。
柳八関は千秋楽を待たずに優勝を決めたのか。
おめでとう。お祝いに今度は本物のひまわりの花を贈りたい。

甲子園の出場校もぞくぞくと決まっていて 日本地図が学校名で埋められている。
今日も決勝戦が行われる県があるんだ。
どちらも頑張れ。悔いを残さないように。

こうして読んでみても、僕に直接関わるニュースはとくにない。
新聞を読ませてもらえないというのは僕の被害妄想で、日々の生活が忙し過ぎて読む暇がなかっただけだ。
テレビが家にないのも最近ではよくあることらしいし。
思い込みで被害者ぶってしまった。反省しよう。

明日からは昼食後に新聞を読んでも良いかもしれない。
お義父さんに頼んでみよう。
きっと快く僕に新聞を貸してくれるだろうから。
新しい道の駅がオープンしたというローカルニュースとか、なんでもない時の話題にちょうどいい。

次のニュースを求めて新聞をめくる手が止まる。
それはとある法律に関する記事だった。
“支援が必要な女性の支援に関する法案”
さまざまな理由で支援が必要な女性へ支援を届けるための法案が今年はじめの国会で作られていたらしい。
そんなこと知らなかった。
僕は男で関係の無い法案だからニュースで見ても覚えてないのかな。

そして今はその法律の運用について専門家の人達が集まり話し合いが行われているそうだ。
その法律の運用方法を決める大事な会議で困った人がいるというインタビュー記事。

他の人の意見を真っ当な理由もなく否定する。
自分からは何も提案しない。
根拠の無い思い込みだけで発言する。
そういった数々の行為のせいで会議の進行に支障が出ている。

そう語るのはLittle WOMENの代表。園前地衣咲えんぜんじ　いさき。
記事には有識者会議の問題を語る園前地さんの写真も付いていて。
10年以上も前から活動している団体なのに園前地さんは若く見える。
僕とそんなに変わらない？

プロフィールには彼女自身もLittle WOMENの活動で助けられた過去があると説明されていた。
助けられたあと代表に就任したとしたら、その前の代表は誰なんだろう。

そして何よりも詳しく知りたいのが園前地さんが訴えている内容。
有識者会議の邪魔をしている構成員について。
女性達を脅かす存在だと強く非難している相手。

イニシャルで書かれているけれど、このA構成員って圭介さんの事じゃないか？
青木圭介。もしも彼が本当にこの法案に関わっているとしたら。
そしてそれについてこんなバッシング記事を全国紙に書かれているのなら。

ほうっておけない。
僕にも地続きの話だ。