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初陣アプレンティス
フェーズいこう6
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今回はちゃんと番号覚えてるから大丈夫。
9桁の個人情報と通話のボタンを押したら。聞こえてくるコール音。
鈴村さん。電話に出てくださーい。
仕事中かな。コール音はしてるけど。留守電に繋がるわけでもない。
あとでかけ直そうと諦めたとき。
「はい」
出てくれたー。
「もしもし佐倉です。携帯をお借りして電話してるんですけど」
「……」
「あれ? もしもし。鈴村さん?」
電波悪いのかな?もしもーし?
「君は今どこにいるのかな?」
「尾張大学病院の病室です。昨日あのあとに交通事故して入院しちゃいました。今日もこれから診察と検査があるんです」
でもそれが終わったら帰れるから。
そのために鈴村さん経由で安全なお迎えを用意して欲しいんです。
「それは大変だったね。ところで今はひとりなのかな?」
「違いますよ。病室にいて看護師さんが一緒についていてくれてます。この携帯も看護師のお兄さんが貸してくれて。検査が終わったあとの帰る支度をするために知り合いに連絡するようにって言われたんです。だから鈴村さんにこうして電話を」
最初に相談する相手に鈴村さんを選んだのは間違ってないよね?
「その看護師は身元のはっきり分かっている者かい? 誰かに紹介された?」
どういうこと?
看護師さんは看護師さんだよ?
「今の君と私を繋ぐ糸はとても細くてね。正直に言うとほぼ他人だよ。それを自ら親しげに電話をかけてくるとは阿呆かい?」
「他人だなんてひどい。僕、鈴村さんが一番頼りになるって思ったから電話したのに」
娘だと言ってくれたのは何だったの? 嘘なの?
ショックを受けている僕の耳元。
携帯電話の向こう側で鈴村さんが溜息をついたのが聞こえた。
「そこにいる看護師がもしもLittle WOMENの者だったらどうする?」
二上さんがLittle WOMENの関係者!?
そんなことあるの?
でもドラマみたいなカーチェイスをして車を炎上させてくる相手だ。
病院の中に仲間を紛れ込ませておくぐらい簡単なこと。
どうしよう。
僕、二上さんとたくさん話をしてしまった。
今だって鈴村さんとの通話を聞かれている。
パニックを起こしかけてる僕の手元から二上さんが携帯電話を取り上げた。
「佐倉さん。お電話返してもらいますね」
「えっ。駄目です。やだ。返してください。あっ痛っ」
返せっていう前に携帯電話取っちゃうのは反則だよ。
まだ鈴村さんと話したいことがあって腕を伸ばしたら、身体にビリって強い痛みが走って一瞬動きが止まる。
どうして? 二上さんは本当に悪い人なの?
「お電話変わりました、二上です。鈴さんのお願いだから仕方なしに世話しますが、お姫様が箱庭育ち過ぎて警戒心ゼロなんですけど」
二上さんがそう話しながら部屋に備え付けのテレビのリモコンを操作する。
テレビをつけてザッピング。情報番組を選んだ。
若い女の子達が夏の行楽を紹介するコーナー。
川下りの体験で黄色い声を上げる。
その甲高い悲鳴のような声で、電話の向こうで鈴村さんが何を言っているのか聞き取れなくなった。
「普通に朝食全部食べてますし。俺にも知り合いと名古屋観光に来たけど、その知り合いは仕事の都合で先に東京に帰ってるとか話してるし。危機管理がザルです」
えー。ご飯全部食べちゃダメだったの?
つい話し過ぎちゃったかなとは反省してたけど。
「今回は運良く俺が担当に付けましたが次はないですよ。……。運だけで生き延びれたら苦労しないんです。……。はい。病院内は俺が管理するんで、検査が終わる頃には染井さんも戻ってきますよね? お姫様の着替え持ってきてもらえるよう伝えてください」
運の良さだけで生き延びてるみたいな言われよう。
あと、さっきから僕のことをお姫様って呼ぶのはちょっとバカにした感じする。
微妙に手の届かない、電話相手の声が聞こえない所から見下ろされるの、不快。
最初は知的なカッコよさを感じた二上さんの視線も今では意地悪でトゲトゲしてる。
きっと二上さんは初めから変わってない。
僕の受け取り方が変化したんだ。
「はい。佐倉さん。鈴さんからお話があるそうですよ」
作り笑顔で携帯電話を返されても。
絶対に怒られるの分かるから受け取りたくない。
でも無視するわけにもいかないから、大人しく携帯電話を受け取った。
こんなことになるなら、変態でも僕に激甘な圭介さんに電話したら良かった。
選択ミスだ。
「先に増山先生と二上の両方から連絡をもらっていたから、あまり心配はしていなかったのだけど。底抜けに平和ボケしている君の緩んだ意識は何科に診てもらえば治るのかね?」
「ごめんなさい」
これでも気をつけてはいるんです。足りてないだけで。
「幸いなのは君の運が悪くないことだね。今、君のそばに付いていてくれている二上を私は尾壁と同等程度に信頼している。だから君も彼を頼りなさい。そして彼から離れないでいるのだよ」
「はい」
「君のはいは信用ならないので、私は二上を信じることにするよ」
「そうしてください。僕も僕が信じられないです」
9桁の個人情報と通話のボタンを押したら。聞こえてくるコール音。
鈴村さん。電話に出てくださーい。
仕事中かな。コール音はしてるけど。留守電に繋がるわけでもない。
あとでかけ直そうと諦めたとき。
「はい」
出てくれたー。
「もしもし佐倉です。携帯をお借りして電話してるんですけど」
「……」
「あれ? もしもし。鈴村さん?」
電波悪いのかな?もしもーし?
「君は今どこにいるのかな?」
「尾張大学病院の病室です。昨日あのあとに交通事故して入院しちゃいました。今日もこれから診察と検査があるんです」
でもそれが終わったら帰れるから。
そのために鈴村さん経由で安全なお迎えを用意して欲しいんです。
「それは大変だったね。ところで今はひとりなのかな?」
「違いますよ。病室にいて看護師さんが一緒についていてくれてます。この携帯も看護師のお兄さんが貸してくれて。検査が終わったあとの帰る支度をするために知り合いに連絡するようにって言われたんです。だから鈴村さんにこうして電話を」
最初に相談する相手に鈴村さんを選んだのは間違ってないよね?
「その看護師は身元のはっきり分かっている者かい? 誰かに紹介された?」
どういうこと?
看護師さんは看護師さんだよ?
「今の君と私を繋ぐ糸はとても細くてね。正直に言うとほぼ他人だよ。それを自ら親しげに電話をかけてくるとは阿呆かい?」
「他人だなんてひどい。僕、鈴村さんが一番頼りになるって思ったから電話したのに」
娘だと言ってくれたのは何だったの? 嘘なの?
ショックを受けている僕の耳元。
携帯電話の向こう側で鈴村さんが溜息をついたのが聞こえた。
「そこにいる看護師がもしもLittle WOMENの者だったらどうする?」
二上さんがLittle WOMENの関係者!?
そんなことあるの?
でもドラマみたいなカーチェイスをして車を炎上させてくる相手だ。
病院の中に仲間を紛れ込ませておくぐらい簡単なこと。
どうしよう。
僕、二上さんとたくさん話をしてしまった。
今だって鈴村さんとの通話を聞かれている。
パニックを起こしかけてる僕の手元から二上さんが携帯電話を取り上げた。
「佐倉さん。お電話返してもらいますね」
「えっ。駄目です。やだ。返してください。あっ痛っ」
返せっていう前に携帯電話取っちゃうのは反則だよ。
まだ鈴村さんと話したいことがあって腕を伸ばしたら、身体にビリって強い痛みが走って一瞬動きが止まる。
どうして? 二上さんは本当に悪い人なの?
「お電話変わりました、二上です。鈴さんのお願いだから仕方なしに世話しますが、お姫様が箱庭育ち過ぎて警戒心ゼロなんですけど」
二上さんがそう話しながら部屋に備え付けのテレビのリモコンを操作する。
テレビをつけてザッピング。情報番組を選んだ。
若い女の子達が夏の行楽を紹介するコーナー。
川下りの体験で黄色い声を上げる。
その甲高い悲鳴のような声で、電話の向こうで鈴村さんが何を言っているのか聞き取れなくなった。
「普通に朝食全部食べてますし。俺にも知り合いと名古屋観光に来たけど、その知り合いは仕事の都合で先に東京に帰ってるとか話してるし。危機管理がザルです」
えー。ご飯全部食べちゃダメだったの?
つい話し過ぎちゃったかなとは反省してたけど。
「今回は運良く俺が担当に付けましたが次はないですよ。……。運だけで生き延びれたら苦労しないんです。……。はい。病院内は俺が管理するんで、検査が終わる頃には染井さんも戻ってきますよね? お姫様の着替え持ってきてもらえるよう伝えてください」
運の良さだけで生き延びてるみたいな言われよう。
あと、さっきから僕のことをお姫様って呼ぶのはちょっとバカにした感じする。
微妙に手の届かない、電話相手の声が聞こえない所から見下ろされるの、不快。
最初は知的なカッコよさを感じた二上さんの視線も今では意地悪でトゲトゲしてる。
きっと二上さんは初めから変わってない。
僕の受け取り方が変化したんだ。
「はい。佐倉さん。鈴さんからお話があるそうですよ」
作り笑顔で携帯電話を返されても。
絶対に怒られるの分かるから受け取りたくない。
でも無視するわけにもいかないから、大人しく携帯電話を受け取った。
こんなことになるなら、変態でも僕に激甘な圭介さんに電話したら良かった。
選択ミスだ。
「先に増山先生と二上の両方から連絡をもらっていたから、あまり心配はしていなかったのだけど。底抜けに平和ボケしている君の緩んだ意識は何科に診てもらえば治るのかね?」
「ごめんなさい」
これでも気をつけてはいるんです。足りてないだけで。
「幸いなのは君の運が悪くないことだね。今、君のそばに付いていてくれている二上を私は尾壁と同等程度に信頼している。だから君も彼を頼りなさい。そして彼から離れないでいるのだよ」
「はい」
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