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初陣アプレンティス
フェーズいこう3
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明るい。眩しい。朝日っぽい雰囲気を瞼越しに感じるけど。
もうちょっとだけ眠りたい。
眩しい方に背を向けるよう横向いて、掛け布団を肩まで引っ張って、落ち着くところをもぞもぞと探す。
このへんかなっていう場所が見つかったので、もう一度夢の中に。
そう思ったのに声をかけられた。
「佐倉さん、おはようございます。どうです? 起きられますか?」
誰? 僕はもう少し寝ていたいのだけど。
そういえば増山先生の診察の途中だったんだ。
自分で起こしてって頼んでたのに、二度寝したいなんてダメダメ。
大きく伸びをして、大きく息を吐いて。
よし。起きるぞ。
「起きます。ごめんなさい。寝ちゃって」
声をかけてくれたのは母さんぐらいの年齢の女の人。
服装から見て看護師さんかな?
穏やかで頼れる雰囲気の人だ。
「謝らなくても大丈夫ですよ。佐倉さんも大変でしたね。ぐっすり眠れたようで安心です。今は気持ち悪いとか痛いとかないですか?」
「とりあえずは痛くないです。あの、昨日の夜は動いちゃダメってすごく言われてたんですけど、起きてもいいですか?」
寝起きで、その、催してしまいまして。
お手洗いに行きたいです。
「増山先生から動いても良いって聞いてますよ。トイレでしたらそこのドアがトイレです。もし、気分が悪くなったらトイレの中に呼び出しボタンあるから遠慮なく押してくださいね」
ベテランの安心感がある女性看護師さんにトイレの使い方をレクチャーされる。
てっきり処置室の隅っこで寝てるのかと思ってたら。
病室内にトイレやシャワールームまである。これって特別個室ってやつでは?
普通の大部屋は空いてなかった?
夜遅くに搬送してもらったから大部屋は他の入院患者さんに迷惑か。
それは良くない。
豪華な病室に落ち着かないけど、とりあえずはここにいよう。
トイレとついでに目が覚めるように洗顔と歯磨きをする。
看護師さんは優しくて、僕が普段通りに動けることを良かったと言ってくれる。
そこまで? って思っていたけど、洗面台の鏡の中の僕の顔を見てビックリ。
顔の右半分。おでこから目尻、頬にかけて、えげつない紫色の痣になってる。
「やばっ。これって消えるのかな?」
「数週間は残っちゃうかもしれないけど、きっと消えますよ。佐倉さんお若いし、もし残っちゃっても痣を消す治療も出来ますから」
えー。残るのは嫌。
治療ってレーザーで焼いたりする美容医療みたいなやつでしょ?
時間で消えて欲しいなあ。
触れるとピリピリ痛いし。
ってか、この痣って昨日の夜から?
それは皆さんが心配してくれるのも分かる。
これは自分でもヤバいって見て分かるやつだ。
入院着から見える範囲の腕や足にも似たような紫色した痣がちらほらあるし。
特にシートベルトの食い込んだ肩から胸元と、右の二の腕は何にもしてなくてもジンジンと痛い。
これが翌日になったら痛くなるって説明されてた打ち身。
たしかに大きな痣になってる。
これもちゃんと消えてくれなきゃ困るなあ。
半袖の服が着にくくなっちゃう。
「そんなに落ち込まないで。今から数日が一番痣が濃くなる頃でそのあとはどんどん薄くなっていきますよ。紫色が黄色くなって、そのうちに消えてなくなることのが多いし」
自分の現状を知って、痣だらけな事に凹んでしまうのを看護師さんに慰められた。
交通事故にあった患者さんをたくさん診てきた経験のある看護師さんだからこそ、絶対に消えるとは言いきらなかった。
けれども、きっと消えるし消えなくても対処の仕方が色々あると教えてくれたのは誠実な優しさだから。
僕は看護師さんの言葉を信じて、あんまり悲観的にはならないようにする。
そのあとは検温と血圧の測定をされながら、軽く雑談的に今日の予定を教えてもらう。
「朝食はふつうに食べていいって事なので、通常食を用意してあります。アレルギーなどあったら教えてください。対応食を用意しますから。あとは増山先生が午前の診療前に朝の回診に来てくれますよ。もしかしたら食べてる最中に来るかもしれないけど、慌てて食べなくてもいいので」
昨日の夜中に僕のこと診てくれて午前中の診療にも出るって。
増山先生、ちゃんと寝てるのかな?
「それと10時頃に整形外科の診察の予定も入ってます。昨日診察したのは救急外来の先生だったので、専門の先生にも診てもらいましょうね。二の腕が痛いこととか相談してください。交通事故はあとから痛みが出ることが多いので、その都度、先生に伝えて診てもらうのが大事なんですよ」
昨日の救急外来の先生も言ってた。
ちゃんと痛いと伝えることの大切さ。
辛いと言葉にしないと伝わらない。助けられないと言われた。
僕はついつい嫌だと感じたことを心の中に仕舞ってしまうから。
意識して言葉にするようにしよう。
痛みほどでは無い不快感も丁寧に言葉にして先生に相談しよう。
「それと時間はまだ決まってませんが眼科の検査もあります」
目の周りも痣になるほどぶつけているから。
視力に影響が出ていないかの確認をしてもらえるらしい。
交通事故っていろいろ検査が必要なんだな。
大きな病院に搬送してもらえて本当に良かった。
もうちょっとだけ眠りたい。
眩しい方に背を向けるよう横向いて、掛け布団を肩まで引っ張って、落ち着くところをもぞもぞと探す。
このへんかなっていう場所が見つかったので、もう一度夢の中に。
そう思ったのに声をかけられた。
「佐倉さん、おはようございます。どうです? 起きられますか?」
誰? 僕はもう少し寝ていたいのだけど。
そういえば増山先生の診察の途中だったんだ。
自分で起こしてって頼んでたのに、二度寝したいなんてダメダメ。
大きく伸びをして、大きく息を吐いて。
よし。起きるぞ。
「起きます。ごめんなさい。寝ちゃって」
声をかけてくれたのは母さんぐらいの年齢の女の人。
服装から見て看護師さんかな?
穏やかで頼れる雰囲気の人だ。
「謝らなくても大丈夫ですよ。佐倉さんも大変でしたね。ぐっすり眠れたようで安心です。今は気持ち悪いとか痛いとかないですか?」
「とりあえずは痛くないです。あの、昨日の夜は動いちゃダメってすごく言われてたんですけど、起きてもいいですか?」
寝起きで、その、催してしまいまして。
お手洗いに行きたいです。
「増山先生から動いても良いって聞いてますよ。トイレでしたらそこのドアがトイレです。もし、気分が悪くなったらトイレの中に呼び出しボタンあるから遠慮なく押してくださいね」
ベテランの安心感がある女性看護師さんにトイレの使い方をレクチャーされる。
てっきり処置室の隅っこで寝てるのかと思ってたら。
病室内にトイレやシャワールームまである。これって特別個室ってやつでは?
普通の大部屋は空いてなかった?
夜遅くに搬送してもらったから大部屋は他の入院患者さんに迷惑か。
それは良くない。
豪華な病室に落ち着かないけど、とりあえずはここにいよう。
トイレとついでに目が覚めるように洗顔と歯磨きをする。
看護師さんは優しくて、僕が普段通りに動けることを良かったと言ってくれる。
そこまで? って思っていたけど、洗面台の鏡の中の僕の顔を見てビックリ。
顔の右半分。おでこから目尻、頬にかけて、えげつない紫色の痣になってる。
「やばっ。これって消えるのかな?」
「数週間は残っちゃうかもしれないけど、きっと消えますよ。佐倉さんお若いし、もし残っちゃっても痣を消す治療も出来ますから」
えー。残るのは嫌。
治療ってレーザーで焼いたりする美容医療みたいなやつでしょ?
時間で消えて欲しいなあ。
触れるとピリピリ痛いし。
ってか、この痣って昨日の夜から?
それは皆さんが心配してくれるのも分かる。
これは自分でもヤバいって見て分かるやつだ。
入院着から見える範囲の腕や足にも似たような紫色した痣がちらほらあるし。
特にシートベルトの食い込んだ肩から胸元と、右の二の腕は何にもしてなくてもジンジンと痛い。
これが翌日になったら痛くなるって説明されてた打ち身。
たしかに大きな痣になってる。
これもちゃんと消えてくれなきゃ困るなあ。
半袖の服が着にくくなっちゃう。
「そんなに落ち込まないで。今から数日が一番痣が濃くなる頃でそのあとはどんどん薄くなっていきますよ。紫色が黄色くなって、そのうちに消えてなくなることのが多いし」
自分の現状を知って、痣だらけな事に凹んでしまうのを看護師さんに慰められた。
交通事故にあった患者さんをたくさん診てきた経験のある看護師さんだからこそ、絶対に消えるとは言いきらなかった。
けれども、きっと消えるし消えなくても対処の仕方が色々あると教えてくれたのは誠実な優しさだから。
僕は看護師さんの言葉を信じて、あんまり悲観的にはならないようにする。
そのあとは検温と血圧の測定をされながら、軽く雑談的に今日の予定を教えてもらう。
「朝食はふつうに食べていいって事なので、通常食を用意してあります。アレルギーなどあったら教えてください。対応食を用意しますから。あとは増山先生が午前の診療前に朝の回診に来てくれますよ。もしかしたら食べてる最中に来るかもしれないけど、慌てて食べなくてもいいので」
昨日の夜中に僕のこと診てくれて午前中の診療にも出るって。
増山先生、ちゃんと寝てるのかな?
「それと10時頃に整形外科の診察の予定も入ってます。昨日診察したのは救急外来の先生だったので、専門の先生にも診てもらいましょうね。二の腕が痛いこととか相談してください。交通事故はあとから痛みが出ることが多いので、その都度、先生に伝えて診てもらうのが大事なんですよ」
昨日の救急外来の先生も言ってた。
ちゃんと痛いと伝えることの大切さ。
辛いと言葉にしないと伝わらない。助けられないと言われた。
僕はついつい嫌だと感じたことを心の中に仕舞ってしまうから。
意識して言葉にするようにしよう。
痛みほどでは無い不快感も丁寧に言葉にして先生に相談しよう。
「それと時間はまだ決まってませんが眼科の検査もあります」
目の周りも痣になるほどぶつけているから。
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交通事故っていろいろ検査が必要なんだな。
大きな病院に搬送してもらえて本当に良かった。
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