恋愛サティスファクション

くらげ

文字の大きさ
上 下
232 / 429
初陣アプレンティス

フェーズいこう3

しおりを挟む
明るい。眩しい。朝日っぽい雰囲気を瞼越しに感じるけど。
もうちょっとだけ眠りたい。
眩しい方に背を向けるよう横向いて、掛け布団を肩まで引っ張って、落ち着くところをもぞもぞと探す。
このへんかなっていう場所が見つかったので、もう一度夢の中に。
そう思ったのに声をかけられた。

「佐倉さん、おはようございます。どうです? 起きられますか?」

誰? 僕はもう少し寝ていたいのだけど。
そういえば増山先生の診察の途中だったんだ。
自分で起こしてって頼んでたのに、二度寝したいなんてダメダメ。

大きく伸びをして、大きく息を吐いて。
よし。起きるぞ。

「起きます。ごめんなさい。寝ちゃって」

声をかけてくれたのは母さんぐらいの年齢の女の人。
服装から見て看護師さんかな?
穏やかで頼れる雰囲気の人だ。

「謝らなくても大丈夫ですよ。佐倉さんも大変でしたね。ぐっすり眠れたようで安心です。今は気持ち悪いとか痛いとかないですか?」
「とりあえずは痛くないです。あの、昨日の夜は動いちゃダメってすごく言われてたんですけど、起きてもいいですか?」

寝起きで、その、催してしまいまして。
お手洗いに行きたいです。

「増山先生から動いても良いって聞いてますよ。トイレでしたらそこのドアがトイレです。もし、気分が悪くなったらトイレの中に呼び出しボタンあるから遠慮なく押してくださいね」

ベテランの安心感がある女性看護師さんにトイレの使い方をレクチャーされる。
てっきり処置室の隅っこで寝てるのかと思ってたら。
病室内にトイレやシャワールームまである。これって特別個室ってやつでは?
普通の大部屋は空いてなかった?
夜遅くに搬送してもらったから大部屋は他の入院患者さんに迷惑か。
それは良くない。
豪華な病室に落ち着かないけど、とりあえずはここにいよう。

トイレとついでに目が覚めるように洗顔と歯磨きをする。
看護師さんは優しくて、僕が普段通りに動けることを良かったと言ってくれる。
そこまで? って思っていたけど、洗面台の鏡の中の僕の顔を見てビックリ。
顔の右半分。おでこから目尻、頬にかけて、えげつない紫色の痣になってる。

「やばっ。これって消えるのかな?」
「数週間は残っちゃうかもしれないけど、きっと消えますよ。佐倉さんお若いし、もし残っちゃっても痣を消す治療も出来ますから」

えー。残るのは嫌。
治療ってレーザーで焼いたりする美容医療みたいなやつでしょ?
時間で消えて欲しいなあ。
触れるとピリピリ痛いし。

ってか、この痣って昨日の夜から?
それは皆さんが心配してくれるのも分かる。
これは自分でもヤバいって見て分かるやつだ。

入院着から見える範囲の腕や足にも似たような紫色した痣がちらほらあるし。
特にシートベルトの食い込んだ肩から胸元と、右の二の腕は何にもしてなくてもジンジンと痛い。
これが翌日になったら痛くなるって説明されてた打ち身。
たしかに大きな痣になってる。
これもちゃんと消えてくれなきゃ困るなあ。
半袖の服が着にくくなっちゃう。

「そんなに落ち込まないで。今から数日が一番痣が濃くなる頃でそのあとはどんどん薄くなっていきますよ。紫色が黄色くなって、そのうちに消えてなくなることのが多いし」

自分の現状を知って、痣だらけな事に凹んでしまうのを看護師さんに慰められた。
交通事故にあった患者さんをたくさん診てきた経験のある看護師さんだからこそ、絶対に消えるとは言いきらなかった。
けれども、きっと消えるし消えなくても対処の仕方が色々あると教えてくれたのは誠実な優しさだから。
僕は看護師さんの言葉を信じて、あんまり悲観的にはならないようにする。

そのあとは検温と血圧の測定をされながら、軽く雑談的に今日の予定を教えてもらう。

「朝食はふつうに食べていいって事なので、通常食を用意してあります。アレルギーなどあったら教えてください。対応食を用意しますから。あとは増山先生が午前の診療前に朝の回診に来てくれますよ。もしかしたら食べてる最中に来るかもしれないけど、慌てて食べなくてもいいので」

昨日の夜中に僕のこと診てくれて午前中の診療にも出るって。
増山先生、ちゃんと寝てるのかな?

「それと10時頃に整形外科の診察の予定も入ってます。昨日診察したのは救急外来の先生だったので、専門の先生にも診てもらいましょうね。二の腕が痛いこととか相談してください。交通事故はあとから痛みが出ることが多いので、その都度、先生に伝えて診てもらうのが大事なんですよ」

昨日の救急外来の先生も言ってた。
ちゃんと痛いと伝えることの大切さ。
辛いと言葉にしないと伝わらない。助けられないと言われた。

僕はついつい嫌だと感じたことを心の中に仕舞ってしまうから。
意識して言葉にするようにしよう。 
痛みほどでは無い不快感も丁寧に言葉にして先生に相談しよう。

「それと時間はまだ決まってませんが眼科の検査もあります」

目の周りも痣になるほどぶつけているから。
視力に影響が出ていないかの確認をしてもらえるらしい。
交通事故っていろいろ検査が必要なんだな。
大きな病院に搬送してもらえて本当に良かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

初恋の幼馴染の女の子の恰好をさせられメス調教もされて「彼女」の代わりをさせられる男の娘シンガー

湊戸アサギリ
BL
またメス調教ものです。今回はエロ無しです。女装で押し倒されいますがエロはありません 女装させられ、女の代わりをさせられる屈辱路線です。メス調教ものは他にも書いていますのでよろしくお願いいたします

クラスの仲良かったオタクに調教と豊胸をされて好みの嫁にされたオタクに優しいギャル男

湊戸アサギリ
BL
※メス化、男の娘化、シーメール化要素があります。オタクくんと付き合ったギャル男がメスにされています。手術で豊胸した描写があります。これをBLって呼んでいいのかわからないです いわゆるオタクに優しいギャル男の話になります。色々ご想像にお任せします。本番はありませんが下ネタ言ってますのでR15です 閲覧ありがとうございます。他の作品もよろしくお願いします

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

トリビアのイズミ 「小学6年生の男児は、女児用のパンツをはくと100%勃起する」

九拾七
大衆娯楽
かつての人気テレビ番組をオマージュしたものです。 現代ではありえない倫理観なのでご注意を。

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

処理中です...