恋愛サティスファクション

くらげ

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こうどうマーチ3

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6回の裏。先発ピッチャーの球数が80球を超えた。
今ってテレビの画面に点数やカウントボードだけでなく球数カウンターまで表示されるんだ。
最近は球数制限があるのか。でも一週間に500球って意味ある?
球数を意識することが大事?
時代は変わったな。僕らの頃は一試合で150球くらい当たり前に投げてたけど。
試合終わりにアイシングをして。マッサージをして。必要ならテーピングをして。
連戦連投は美学のように思っていた。

懐かしさが痛みに変わる。
あの頃の僕は叶わない恋を隠して。友情のフリをして。彼の隣にいた。
彼に声をかけられるだけで嬉しかった。
頼られて、ありがとうって言われるのが嬉しかった。
だけど肌に触れたのは純粋な気持ちだけでなくて。
17歳の僕はとても嘘つきだった。

胸がズキリと痛む。だけど誰にも頼れない。ひとりで痛みを噛み締める。

テレビの中の試合は淡々と進む。
7回の攻防。スコアボードは3対1。
このまま終わるのか、どちらかに追加点が入るのか。
見たいような見たくないような。
自分のことなのに分からなくて、誰かに決めて欲しいけどリビングには僕だけ。

家の中には他にも人がいるのに、なぜだか孤独。
そろそろお義父さんからの荷物が届く時間だ。
また知らない人なんだろうな。
もう新キャラはいらないよ。覚えきれない。

って思ってたから、チャイムが鳴ってインターホンの画面の中に壁やんがいるのがすごく嬉しかった。

「暑い中来てくれてありがとう」

玄関まで出迎えて、僕の家じゃないけどゆっくりしていってと壁やんを招き入れた。

「ちょうど手が空いてたから」
「それならゆっくり休んでいたら良かったのに。今日は祝日だよ」

ヤクザに休日とかあるのか分かんないけど。

「お義父さんからiPhone預かってきてくれたんだよね。すぐに登録するから待っててよ」

お客さんが来るからって用意しておいた水出し緑茶をどうぞ。
リビングのソファに壁やんを誘って。書きかけのスコアはテーブルの端に寄せて。
待たせたら悪いから、すぐにiPhoneの引き継ぎをはじめた。

なのだけど、付けたままのテレビから聞き慣れた金属バットの音がする度についついテレビの方を見ちゃって。
引き継ぎ作業が進まない。テレビを消すか。
リモコンの赤い電源ボタンを押す。
それまでの賑やかなリビングがしんと静かになる。

「試合見終わってからでいいよ。今日は他に仕事もないし急がないから」
「僕も見たくて見てたわけじゃないから」

あと試合終了は明確に見たくない。
だって負けた学校の子達は泣くだろうから。
勝って朗らかな顔をして校歌を歌える側はまだ見られる。
でも負けてしまったチームを見るのは僕にはまだ無理。

「壁やんって僕のことをどれぐらい知ってるの?」
「一通りは聞いてるよ」

そうか。なら話してもいいのかな。
誰かに聞いてほしいんだ。
誰にも話したことのない話を。
急いでいないなら昔話をさせてくれる?
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