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そうだ名古屋に行こう13
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「無理だよ。君達はいま我々のブラックリストに入っているからね。こちらのホテルの敷地に入ることすら許されないよ」
ヤクザのブラックリスト。なんてことしてるんですか!
「唯のこと、親父の新しく見つかった子供として連れ回したのはそれが目的?」
「子供ってなんの事ですか?僕は圭介さんの恋人だから良くしてもらっただけで」
「皆の前でお父さんって呼んだんだろー」
それは義理のお父さんってことで本当のお父さんって意味では。
あーでも音だけ聞いたらオトウサン。どっちにも取れる。
ってか、一般的にはお父さんだ。
お義父さん、下半身ゆるゆるで子沢山らしいし。
ってことは、僕はその沢山いる子供の中の一人って思われたのか。
「警備顧問がやってる鮨屋に連れて行くのもお気に入りですよって見せびらかしたいからでしょー。そんなタイミングで俺が行ったら跡目争いのトラブルにしか見えない」
「理解が早くて助かるよ。私も一般の方々に迷惑は掛けたくないからね。くれぐれもホテルのロビーで一色触発などやめてくれよ」
「そう思うならもう少し穏便に済ませていただけませんかー」
「私はとっても優しくしているよ。サクラを守りたいという気持ちは君達と変わらないくらいにはね」
「どこが! 唯のことを晒し者にして!」
「我々はアプローチの仕方が真逆だね。圭君は隠したい。けれども私はどんどん表に出していくべきだと考えている。後ろ盾も示して、所在を明らかにして、堂々とお天道様の下を歩かせてあげたいと願う老婆心ってやつだよ」
「魔女の親切に涙が出そうだー」
「そうだよ。感謝したまえ」
圭介さんが鈴村さんにあしらわれてる。
どうやら今日の僕はお義父さんの子供で鈴村さんの後見を受けている奴だってアピールを名古屋の街でしたんだね。
たしかに背後にヤクザがいるって分かってる相手にちょっかいかけてくる人なんていないだろうし。
攻撃は最大の防御的な?
ずっと家に籠って過ごすより、ヤクザの庇護下に入ったとしても普通に外出できる方が僕は嬉しいな。
だいたいなんで僕は危険なの?
なにから守られてるの?
そのへんのところをクリアにしておこうよ。
僕はもう自分のことを誰かが勝手に決めるのは嫌だ。
これからのことを判断するために確認すべき点を鈴村さんに聞く。
「今日みたいなのはパフォーマンスで、普段はそこまで警備の人達が付くわけじゃないんですよね?」
安全のためって言っても。毎日あの強面軍団に囲まれるのは嫌だ。壁やんだけなら我慢する。
「勿論だとも。私は普段、一人で山手線に乗って通勤しているよ」
「それって僕も落ち着いたらそうなりますか? 好きに出掛けても良いのかな?」
「当たり前だ。何故出かけるのに他人の許可が必要なのだ? 何人たりとも他者の自由を縛ることは出来ないよ」
それなら。
圭介さんのとこに戻るより、鈴村さんと一緒にいた方が人間らしく生活できそう。
「唯……」
「圭介さん。僕のことは僕が決めます」
「決める前に俺の話を聞いてー」
「聞いたところで、僕の知りたいことを全部話してくれるんですか? そもそも僕は知らなすぎて何を聞けば理解できるのかすら分かっていないんです」
いつかは帰りたいけど今すぐは帰りません。
そう宣言した僕の言葉を玲司君は意外と納得してくれた。
「インスタ、佐倉専用の鍵アカでフォローしとくからフォロバよろしく」
とりあえずの連絡先ってことでインスタの相互フォロワーになれたらそれでいいんだって。
僕も鍵アカにして、毎日元気にしてる写真を投稿するのを約束した。
自撮りは苦手だけど、これを機に練習する。
玲司君のアカウントIDはヤミヤミライオン。
病み病み? 闇闇? yummy、美味しいって意味か。
美味しくなーれってオムレツにケチャップで書いた『がおー』を覚えててくれたの嬉しいな。
「いっぱい写真投稿するから、玲司君も写真アップしてね」
「エロいの期待しとく」
「鍵アカにしたとはいえ、BANされたくないし肌色は控えめにしておく。玲司君も気をつけて」
最後までエロを求めるその探究心。
別の方向に使いなよ。もったいない。
「ねえ。考え直そうよ。わざわざ鞘間の名前使わなくてもいいじゃんねー」
乗りかかった船だし鈴村さんとお義父さんの考えるお披露目を遂行するって言ってから。
圭介さんはずっとこんな感じ。
うだうだと女々しい。
「今さら止める方が中途半端に名前をお借りしてる状態になって危なそうじゃないですか? やるなら徹底的にやらないと」
「覚悟決めた戦士みたいなこと言わないでいいからー」
「覚悟は口に出してこそですよ」
あんまりしつこいと嫌いになりますよって脅して、なおも食い下がる圭介さんを半ば無視するように電話を切った。
大きく息を吐き出す。
啖呵は切ったけど不安がないわけじゃない。
僕には世界がぼんやりとしか見えてない。
曖昧にしか知らないって何も知らないより怖いんだ。
僕達はお互いに必要なことを言わないで。
疑問に思ったことを聞かないで。
問題を先送りにしすぎた。
見ないふりして耳を塞いで、気づけば身動きが取れない絡み合った現状。
僕はもう大人だけど、未熟者だから。
人生の先輩の手を借りるよ。
その判断がまた失敗だとしても。
何もしないでいるよりは成長できると思うんだ。
全部を更地に戻して。
それでもまだお互いを愛していられたら。
もう一度。小さな家を建てよう。
手のひらにおさまるくらいの小さくて安全な僕達の家を。
ヤクザのブラックリスト。なんてことしてるんですか!
「唯のこと、親父の新しく見つかった子供として連れ回したのはそれが目的?」
「子供ってなんの事ですか?僕は圭介さんの恋人だから良くしてもらっただけで」
「皆の前でお父さんって呼んだんだろー」
それは義理のお父さんってことで本当のお父さんって意味では。
あーでも音だけ聞いたらオトウサン。どっちにも取れる。
ってか、一般的にはお父さんだ。
お義父さん、下半身ゆるゆるで子沢山らしいし。
ってことは、僕はその沢山いる子供の中の一人って思われたのか。
「警備顧問がやってる鮨屋に連れて行くのもお気に入りですよって見せびらかしたいからでしょー。そんなタイミングで俺が行ったら跡目争いのトラブルにしか見えない」
「理解が早くて助かるよ。私も一般の方々に迷惑は掛けたくないからね。くれぐれもホテルのロビーで一色触発などやめてくれよ」
「そう思うならもう少し穏便に済ませていただけませんかー」
「私はとっても優しくしているよ。サクラを守りたいという気持ちは君達と変わらないくらいにはね」
「どこが! 唯のことを晒し者にして!」
「我々はアプローチの仕方が真逆だね。圭君は隠したい。けれども私はどんどん表に出していくべきだと考えている。後ろ盾も示して、所在を明らかにして、堂々とお天道様の下を歩かせてあげたいと願う老婆心ってやつだよ」
「魔女の親切に涙が出そうだー」
「そうだよ。感謝したまえ」
圭介さんが鈴村さんにあしらわれてる。
どうやら今日の僕はお義父さんの子供で鈴村さんの後見を受けている奴だってアピールを名古屋の街でしたんだね。
たしかに背後にヤクザがいるって分かってる相手にちょっかいかけてくる人なんていないだろうし。
攻撃は最大の防御的な?
ずっと家に籠って過ごすより、ヤクザの庇護下に入ったとしても普通に外出できる方が僕は嬉しいな。
だいたいなんで僕は危険なの?
なにから守られてるの?
そのへんのところをクリアにしておこうよ。
僕はもう自分のことを誰かが勝手に決めるのは嫌だ。
これからのことを判断するために確認すべき点を鈴村さんに聞く。
「今日みたいなのはパフォーマンスで、普段はそこまで警備の人達が付くわけじゃないんですよね?」
安全のためって言っても。毎日あの強面軍団に囲まれるのは嫌だ。壁やんだけなら我慢する。
「勿論だとも。私は普段、一人で山手線に乗って通勤しているよ」
「それって僕も落ち着いたらそうなりますか? 好きに出掛けても良いのかな?」
「当たり前だ。何故出かけるのに他人の許可が必要なのだ? 何人たりとも他者の自由を縛ることは出来ないよ」
それなら。
圭介さんのとこに戻るより、鈴村さんと一緒にいた方が人間らしく生活できそう。
「唯……」
「圭介さん。僕のことは僕が決めます」
「決める前に俺の話を聞いてー」
「聞いたところで、僕の知りたいことを全部話してくれるんですか? そもそも僕は知らなすぎて何を聞けば理解できるのかすら分かっていないんです」
いつかは帰りたいけど今すぐは帰りません。
そう宣言した僕の言葉を玲司君は意外と納得してくれた。
「インスタ、佐倉専用の鍵アカでフォローしとくからフォロバよろしく」
とりあえずの連絡先ってことでインスタの相互フォロワーになれたらそれでいいんだって。
僕も鍵アカにして、毎日元気にしてる写真を投稿するのを約束した。
自撮りは苦手だけど、これを機に練習する。
玲司君のアカウントIDはヤミヤミライオン。
病み病み? 闇闇? yummy、美味しいって意味か。
美味しくなーれってオムレツにケチャップで書いた『がおー』を覚えててくれたの嬉しいな。
「いっぱい写真投稿するから、玲司君も写真アップしてね」
「エロいの期待しとく」
「鍵アカにしたとはいえ、BANされたくないし肌色は控えめにしておく。玲司君も気をつけて」
最後までエロを求めるその探究心。
別の方向に使いなよ。もったいない。
「ねえ。考え直そうよ。わざわざ鞘間の名前使わなくてもいいじゃんねー」
乗りかかった船だし鈴村さんとお義父さんの考えるお披露目を遂行するって言ってから。
圭介さんはずっとこんな感じ。
うだうだと女々しい。
「今さら止める方が中途半端に名前をお借りしてる状態になって危なそうじゃないですか? やるなら徹底的にやらないと」
「覚悟決めた戦士みたいなこと言わないでいいからー」
「覚悟は口に出してこそですよ」
あんまりしつこいと嫌いになりますよって脅して、なおも食い下がる圭介さんを半ば無視するように電話を切った。
大きく息を吐き出す。
啖呵は切ったけど不安がないわけじゃない。
僕には世界がぼんやりとしか見えてない。
曖昧にしか知らないって何も知らないより怖いんだ。
僕達はお互いに必要なことを言わないで。
疑問に思ったことを聞かないで。
問題を先送りにしすぎた。
見ないふりして耳を塞いで、気づけば身動きが取れない絡み合った現状。
僕はもう大人だけど、未熟者だから。
人生の先輩の手を借りるよ。
その判断がまた失敗だとしても。
何もしないでいるよりは成長できると思うんだ。
全部を更地に戻して。
それでもまだお互いを愛していられたら。
もう一度。小さな家を建てよう。
手のひらにおさまるくらいの小さくて安全な僕達の家を。
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