恋愛サティスファクション

くらげ

文字の大きさ
上 下
124 / 429
可視化ライブラリ

そうだ名古屋に行こう13

しおりを挟む
「無理だよ。君達はいま我々のブラックリストに入っているからね。こちらのホテルの敷地に入ることすら許されないよ」

ヤクザのブラックリスト。なんてことしてるんですか!

「唯のこと、親父の新しく見つかった子供として連れ回したのはそれが目的?」
「子供ってなんの事ですか?僕は圭介さんの恋人だから良くしてもらっただけで」
「皆の前でお父さんって呼んだんだろー」

それは義理のお父さんってことで本当のお父さんって意味では。
あーでも音だけ聞いたらオトウサン。どっちにも取れる。
ってか、一般的にはお父さんだ。
お義父さん、下半身ゆるゆるで子沢山らしいし。
ってことは、僕はその沢山いる子供の中の一人って思われたのか。

「警備顧問がやってる鮨屋に連れて行くのもお気に入りですよって見せびらかしたいからでしょー。そんなタイミングで俺が行ったら跡目争いのトラブルにしか見えない」
「理解が早くて助かるよ。私も一般の方々に迷惑は掛けたくないからね。くれぐれもホテルのロビーで一色触発などやめてくれよ」
「そう思うならもう少し穏便に済ませていただけませんかー」
「私はとっても優しくしているよ。サクラを守りたいという気持ちは君達と変わらないくらいにはね」
「どこが! 唯のことを晒し者にして!」
「我々はアプローチの仕方が真逆だね。圭君は隠したい。けれども私はどんどん表に出していくべきだと考えている。後ろ盾も示して、所在を明らかにして、堂々とお天道様の下を歩かせてあげたいと願う老婆心ってやつだよ」
「魔女の親切に涙が出そうだー」
「そうだよ。感謝したまえ」

圭介さんが鈴村さんにあしらわれてる。
どうやら今日の僕はお義父さんの子供で鈴村さんの後見を受けている奴だってアピールを名古屋の街でしたんだね。
たしかに背後にヤクザがいるって分かってる相手にちょっかいかけてくる人なんていないだろうし。
攻撃は最大の防御的な? 

ずっと家に籠って過ごすより、ヤクザの庇護下に入ったとしても普通に外出できる方が僕は嬉しいな。
だいたいなんで僕は危険なの?
なにから守られてるの?
そのへんのところをクリアにしておこうよ。

僕はもう自分のことを誰かが勝手に決めるのは嫌だ。
これからのことを判断するために確認すべき点を鈴村さんに聞く。

「今日みたいなのはパフォーマンスで、普段はそこまで警備の人達が付くわけじゃないんですよね?」

安全のためって言っても。毎日あの強面軍団に囲まれるのは嫌だ。壁やんだけなら我慢する。

「勿論だとも。私は普段、一人で山手線に乗って通勤しているよ」
「それって僕も落ち着いたらそうなりますか? 好きに出掛けても良いのかな?」
「当たり前だ。何故出かけるのに他人の許可が必要なのだ? 何人たりとも他者の自由を縛ることは出来ないよ」

それなら。
圭介さんのとこに戻るより、鈴村さんと一緒にいた方が人間らしく生活できそう。

「唯……」
「圭介さん。僕のことは僕が決めます」
「決める前に俺の話を聞いてー」
「聞いたところで、僕の知りたいことを全部話してくれるんですか? そもそも僕は知らなすぎて何を聞けば理解できるのかすら分かっていないんです」

いつかは帰りたいけど今すぐは帰りません。
そう宣言した僕の言葉を玲司君は意外と納得してくれた。

「インスタ、佐倉専用の鍵アカでフォローしとくからフォロバよろしく」

とりあえずの連絡先ってことでインスタの相互フォロワーになれたらそれでいいんだって。
僕も鍵アカにして、毎日元気にしてる写真を投稿するのを約束した。
自撮りは苦手だけど、これを機に練習する。

玲司君のアカウントIDはヤミヤミライオン。
病み病み? 闇闇? yummy、美味しいって意味か。
美味しくなーれってオムレツにケチャップで書いた『がおー』を覚えててくれたの嬉しいな。

「いっぱい写真投稿するから、玲司君も写真アップしてね」
「エロいの期待しとく」
「鍵アカにしたとはいえ、BANされたくないし肌色は控えめにしておく。玲司君も気をつけて」 

最後までエロを求めるその探究心。
別の方向に使いなよ。もったいない。

「ねえ。考え直そうよ。わざわざ鞘間の名前使わなくてもいいじゃんねー」

乗りかかった船だし鈴村さんとお義父さんの考えるお披露目を遂行するって言ってから。
圭介さんはずっとこんな感じ。
うだうだと女々しい。

「今さら止める方が中途半端に名前をお借りしてる状態になって危なそうじゃないですか? やるなら徹底的にやらないと」
「覚悟決めた戦士みたいなこと言わないでいいからー」
「覚悟は口に出してこそですよ」

あんまりしつこいと嫌いになりますよって脅して、なおも食い下がる圭介さんを半ば無視するように電話を切った。
大きく息を吐き出す。
啖呵は切ったけど不安がないわけじゃない。
僕には世界がぼんやりとしか見えてない。
曖昧にしか知らないって何も知らないより怖いんだ。

僕達はお互いに必要なことを言わないで。
疑問に思ったことを聞かないで。
問題を先送りにしすぎた。

見ないふりして耳を塞いで、気づけば身動きが取れない絡み合った現状。
僕はもう大人だけど、未熟者だから。
人生の先輩の手を借りるよ。
その判断がまた失敗だとしても。
何もしないでいるよりは成長できると思うんだ。

全部を更地に戻して。
それでもまだお互いを愛していられたら。
もう一度。小さな家を建てよう。
手のひらにおさまるくらいの小さくて安全な僕達の家を。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

初恋の幼馴染の女の子の恰好をさせられメス調教もされて「彼女」の代わりをさせられる男の娘シンガー

湊戸アサギリ
BL
またメス調教ものです。今回はエロ無しです。女装で押し倒されいますがエロはありません 女装させられ、女の代わりをさせられる屈辱路線です。メス調教ものは他にも書いていますのでよろしくお願いいたします

クラスの仲良かったオタクに調教と豊胸をされて好みの嫁にされたオタクに優しいギャル男

湊戸アサギリ
BL
※メス化、男の娘化、シーメール化要素があります。オタクくんと付き合ったギャル男がメスにされています。手術で豊胸した描写があります。これをBLって呼んでいいのかわからないです いわゆるオタクに優しいギャル男の話になります。色々ご想像にお任せします。本番はありませんが下ネタ言ってますのでR15です 閲覧ありがとうございます。他の作品もよろしくお願いします

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

トリビアのイズミ 「小学6年生の男児は、女児用のパンツをはくと100%勃起する」

九拾七
大衆娯楽
かつての人気テレビ番組をオマージュしたものです。 現代ではありえない倫理観なのでご注意を。

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

処理中です...