恋愛サティスファクション

くらげ

文字の大きさ
上 下
120 / 429
可視化ライブラリ

そうだ名古屋に行こう9

しおりを挟む
一緒にご飯を食べるだけだと思っていたのに、今度は買い物へ行くことになった。
またあのごつい車で移動。

着いたのは老舗デパート、名倉屋本店。
入り口のフロアガイドにはメンズフロアは5階だと書かれていた。
それなのにエレベーターで7階に上がって、さらに奥にある個室に通された。
それは噂に聞く外商サロンってやつでは。

強面警備隊は扉の前までってルールなのか?
部屋に通されたのは僕と鈴村さんとお義父さん。

「えっ? 壁やんは?」

僕のスペシャルガードマンじゃないの?

「僕は外で待ってるよ。さっくんはゆっくり買い物を楽しんだらいい」

壁やんも他の警備隊員さん達と部屋の外にいるみたい。
ちゃんと待っててよ。
勝手に博多に行ったら嫌だよ。

落ち着いた調度品の部屋に招かれて、ふかふかのソファを勧められる。
最近流行りのヒヨコの形のケーキと紅茶でおもてなし。
一息ついたら手際よく全身を採寸された。

何事かと思っていたら今度は布の山の登場。
もしかしてこれはスーツのオーダー?
それはさすがに。僕にも遠慮ってものがあるよ。
でも後学のために見るだけなら。興味はある。
いつかフルオーダーのスーツ欲しいなって夢を見るのは自由だよね。
夢を語って良いのなら。ネイビーのスリーピースを。

大学の入学式の時、父さんがお祝いだと用意してくれたスーツはチャコールグレーのピンストライプだった。
僕が希望した無地のネイビーは童顔な僕をより幼く見せるからと却下されて。
就活の時もダークグレーを勧められたな。
あれって父さんの好みもあったんじゃないか?
いまさら聞けないけど。

でも今ならネイビーも着こなせる気がする。
最近、世間の荒波にもまれているし顔に締まりが出てきたでしょ。
王道の無地ネイビーの生地を見せてください!

青にも色々あって。鮮やかで明るい色から黒に近い落ち着いた色まで。
直感で好きだと選んでも、鏡で合わせてみたら似合わないの悲しい。
似合わないから憧れるのか。

「サクちゃんにはこれが良いんじゃないかー?」

お義父さんが勧めてくれたのは渋い濃紺。
それはどうだろうって思いつつ、まあ合わせるだけならって鏡の前に立ってみたら。

「いいかも」
「だろー」

大人っぽいを通り過ぎてオジサンっぽい印象の濃紺がお子ちゃまな僕の顔に意外とあっている。
これをさらっと選べるのすごい。

そのあとも衿のデザインやステッチの有無など。
お義父さんのアドバイスが尽く僕の好みを直撃してくる。

「無理に肩パットを足すより、自然なラインのままで良いんじゃないかー」

そうなの? 僕、自分のなで肩はあんまり好きじゃないんだけど。
スーツがカッコ良く着られないなって。
あのスクエアなフォルムが男らしさって感じするし。
でもお義父さんがそう言うなら。
細かい技術的なとこは全部おまかせで。

「かなりのを選んだなー。裏は少しぐらい遊んでもいいぞー」

好きなのを選べと裏地のカタログを渡される。
なんの制約もない中で選ぶ遊び心って難しい。
ひとりで決めるのは自信がないので、スタッフさんと相談して。
表の布地より少し明るい藍色のペイズリー柄に決めた。

「これでお願いします」

はっ! つい楽しくなってスーツをオーダーしてしまった!
お義父さんも楽しそうだからいい?
少し早い誕生日プレゼント?
それなら遠慮しすぎるのも失礼になるし、お義父さんのご厚意はありがたくいただきます。
仮縫い終わったあとのフィッティングも待ち遠しいし、いまさらキャンセルは出来ない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

【完結】魔王の三男だけど、備考欄に『悪役令嬢の兄(尻拭い)』って書いてある?

北川晶
BL
もっちり、ぽっちゃりなぼく、サリエルは、六歳のときに落馬したんだけど。目が覚めたら、人の横に備考欄が見えるようになった。そんなぼくが、魔族の国でゆるふわっと漂い危機回避する、のほほんハートフルライフ。うーん、記憶喪失というわけではないが、なんか、家族に違和感があるなぁ? わかっている。ここは魔族が住む国で、父上が魔王だってことは。でも、なんかおかしいと思っちゃう。あと、備考欄も、人に言えないやつだよね? ぼくの備考欄には『悪役令嬢の兄(尻拭い)』と書いてあるけど…うん、死にかけるとか殺されかけるとか、いろいろあるけど。まぁいいや。  ぼくに優しくしてくれる超絶美形の長兄、レオンハルト。ちょっと言葉のきつい次兄のラーディン。おそらく悪役令嬢で、ぼくが死にかかっても高らかに笑う妹のディエンヌ。気の弱い異母弟のシュナイツ、という兄弟に囲まれた、もっちりなぼくの悪魔城ライフです。  さらに、従兄弟のマルチェロやマリーベル、ラーディンの護衛のファウスト、優秀な成績ですごいシュナイツのご学友のエドガーという友達も巻き込んでのドタバタ魔王学園乙女ゲームストーリーもあるよ。え? 乙女ゲーム? なにそれ、美味しいの? 第11回BL小説大賞で、アンダルシュノベルズb賞をいただきました。応援していただき、ありがとうございます。完結しましたが、おまけなど、たまに出します。よろしくお願いします。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

トリビアのイズミ 「小学6年生の男児は、女児用のパンツをはくと100%勃起する」

九拾七
大衆娯楽
かつての人気テレビ番組をオマージュしたものです。 現代ではありえない倫理観なのでご注意を。

悪役令嬢への未来を阻止〜〜人は彼女を女神と呼ぶ〜〜

まさかの
恋愛
この国の始祖である一族として、何不自由無く生きてきたマリアは不思議な夢の中でいきなり死の宣告を受けた。 夢のお告げに従って行動するが、考えなしに動くせいで側近たちに叱られながらも、彼女は知らず知らずのうちに次期当主としての自覚が芽生えていくのだった。 一年後に死ぬなんて絶対にいや。 わたしはただカッコいい許嫁と逢瀬を楽しんだり、可愛い妹から頼られたいだけなの! わたしは絶対に死にませんからね! 毎日更新中 誤字脱字がかなり多かったので、前のを再投稿しております。 小説家になろう、ノベルアップ+、マグネットでも同小説を掲載しております

【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

BL
公爵家の長女、アイリス 国で一番と言われる第一王子の妻で、周りからは“悪女”と呼ばれている それが「私」……いや、 それが今の「僕」 僕は10年前の事故で行方不明になった姉の代わりに、愛する人の元へ嫁ぐ 前世にプレイしていた乙女ゲームの世界のバグになった僕は、僕の2回目の人生を狂わせた実父である公爵へと復讐を決意する 復讐を遂げるまではなんとか男である事を隠して生き延び、そして、僕の死刑の時には公爵を道連れにする そう思った矢先に、夫の弟である第二王子に正体がバレてしまい……⁉︎ 切なく甘い新感覚転生BL! 下記の内容を含みます ・差別表現 ・嘔吐 ・座薬 ・R-18❇︎ 130話少し前のエリーサイド小説も投稿しています。(百合) 《イラスト》黒咲留時(@kurosaki_writer) ※流血表現、死ネタを含みます ※誤字脱字は教えて頂けると嬉しいです ※感想なども頂けると跳んで喜びます! ※恋愛描写は少なめですが、終盤に詰め込む予定です ※若干の百合要素を含みます

新しい自分(女体化しても生きていく)

雪城朝香
ファンタジー
明日から大学生となる節目に突如女性になってしまった少年の話です♪♪ 男では絶対にありえない痛みから始まり、最後には・・・。

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

処理中です...